2024年7月25日木曜日

清く正しくきらきらと Jewels Story プッチーニの奏でた世界 7月14日(日)




7月14日(日)、Jewels Storyプッチーニの奏でた世界を観て参りました。
https://jewelsstory.jewels1.info/jewels-story-2024071314/






朗読劇やバレエ、歌でプッチーニの生涯や代表作『蝶々夫人』完成までを描き、1回の休憩込みで約2時間に纏められた演出でした。
Jewels Storyはシリーズ化していて、鑑賞は昨年に続き今回で2度目。前回のラフマニノフのときのほうが
世界史を学んでいる気分にもなったほどの詳しい歴史解説や、バレエシーンはパガニーニの主題による狂詩曲と
ピアノ協奏曲第2番を使用しての重厚な鬱屈さを次々と踊りで吐露していく場が設けられたりと
見応えがあった印象でしたが、今回はさらりと綺麗路線を貫き、これはこれで魅力があろうかと考察。
プッチーニが交通事故後に小間使いのドーリアとの間で芽生えた倫理に反する関係といった女性問題や、妻エルヴィーラとの泥沼な確執、
蝶々夫人と結婚し子供まで身籠るものの蝶々夫人はあくまで現地妻で、祖国へ戻ったあと、再びの来日時には
妻ケイトを連れてあっさり現れるピンカートンの軽率さや裏切り行為には触れず、「清く正しく美しく」「きらきら」路線。
Jewelsさんの投稿からして妙なきらきら感が描出されていますし今回新登場したアートムービー演出も装飾光過多にも見て取れましたので、
台本も含めて一貫して「きらきら」と、えぐみやアクを1滴も残さず取り除いた高純度なスープの如くさらりと覆い尽くす舞台空間も宜しいかと思えた次第です。

主な出演者はプッチーニ役がLE VELVETSの宮原浩暢さん、エルヴィーラ役が珠城りょうさん、蝶々夫人役が木村優里さん、ピンカートン役が渡邊峻郁さん。
バレエシーンは益田裕子さん、奥田花純さん、吉田朱里さん、内田美聡さんが彩っていました。(バレエダンサーは全員新国立劇場バレエ団より)
開演すると、ジャンニ・スキッキより私のお父さんの曲が流れ、蝶々が舞うピンク系のアートムービーが流れ、春うららな世界へとご案内。
ちなみにこの曲、レッスンにおける太古の昔、人生初のプリエの曲でしたので懐かしく思い起こされました。(まだ両手バーのみの年齢期)

人物達の台詞は動きつつも開いた本を手にしての朗読劇式で展開し、プッチーニとエルヴィーラの出会い、
特に家庭に問題を抱えながらも徐々にプッチーニに惹かれていったエルヴィーラの葛藤や歓喜、
自身の健康よりも作曲への邁進を優先してしまうプッチーニの焦りは細やかに描かれていた印象です。
私は宝塚観劇経験がないためお恥ずかしい話、珠城さんのお名前は今回初めて知りましたが
スラリとした立ち姿が美しく、スターオーラの持ち主。ロビーには珠城さんのCDが華々しく販売されていて、
恐らくは1階前方席はファンクラブの方々が大勢集っていたであろうと見受けました。

1幕の終盤辺りにやっとこさ木村さんと渡邊さんが登場。さくらさくらの曲にのせてまず木村さんがお1人で登場され、
淡いピンク色の和装に蝶々の頭飾りを付けて、可憐ではんなり。オペラは記憶の彼方ですがKバレエの『蝶々夫人』を振り返ると
1幕のピンカートンに出会う頃の蝶々さんはあどけない上にピンクな衣装であった覚えがありますが
木村さんの華やぐ無邪気さが身体全体から放出され、たちまち花々満開になるような香り高い踊りにすぐさま魅了されました。
そして、暫くすると渡邊さんピンカートン登場!髪は明るめ茶色、水色軍服でメルヘンアイドル風のデザインな衣装に目を疑いかけたものの
そうです。この舞台ではきらきらが大事なのです。海軍士官らしさを考えたら白地の軍服姿にお目にかかれたらと思い描いておりましたが
サファイアブルーに輝くボタンまで留まっているきらきらピンカートンも魅力的に思えてきたのでした。
また衣装はピンカートンのままで、『星は光りぬ』を踊り出す摩訶不思議なシーンもあり、
闇深い中で不安や苦悩を募らせて行く様子を表していく姿も目に刻まれるソロでした。
しかし昨年のジュエルズストーリーにて、1幕の中盤にラフマニノフとチャイコフスキーが星空を眺めながら語らう場面にて
時代の先取り或いは時空の超越か、歌い出したのが『見上げてごらん夜の星を』であった演出に比較すれば腰抜かす衝撃は抑えめで、
星が煌めいている、の歌詞をからしてきらきら増強作戦かもしれません。それはさておき、何より曲は『トスカ』より、キャラクターはピンカートンと
本来の設定とは不一致こそあれど渡邊さんの真骨頂な踊りを堪能でき感激いたしました。

ここではピンカートンの軽率さは描かれず、あくまで蝶々さんと純愛を交わす一途な男性として現れて活躍。そうです。きらきらが大事なのです。
ありったけの思いを捧げるシーンは回転や跳躍も豊富に披露され客席も沸いていました。
パ・ド・ドゥは優しく絡み合うようにふわっと触れ合って吸い上げられるパートナーリングも光り、美しや。
バレエが目当てな客はアウェイ状態で押され気味だったのが正直なところながら
バレエを普段ご覧になっていない方々にも目にも心にも訴えかけてくるバレエシーンでございました。
要所要所で奥田さん、益田さん、吉田さん、内田さんが4人で彩り、和装とワンピースを融合させたようなはらりと舞う衣装姿も麗しく繊細で、目の保養。

最後はミュージカルのお作法に則って、昨年と同様出演者からご挨拶。バレエダンサーは木村さん、渡邊さんが代表して挨拶なさり、木村さんはかちっと纏めて潔く。
渡邊さんは本日は生憎のお天気の中、と天候の話題から出してくださり、出発時は土砂降りであった管理人の自宅近辺。
こちらこそ恐れ入りますと思わず頭を下げながら聞き入っておりました。前日に客席から鑑賞した感想や異なるジャンルの方々と共演できた喜び等
今回は派手めな雰囲気からは想像つかぬ、学校の先生風な語り口をじっくり拝聴。
皆様ご自宅に着くまでが鑑賞です、とまで締めにはおっしゃるのではなかろうかと思わせ、背筋を伸ばして道中は気をつけて帰ろうと気持ち新たにいたしました。

コンクールやワークショップも盛んに企画している団体のようですが、作曲シリーズにおけるバレエ以外の分野の方々との共演企画は
なかなか面白いとは今回再度思いました。




前々日の夜に纏めて借りてきた書籍やCD。予約の冊数、枚数が多かったため、くり抜いた段ボールに一式入っていて、館員の方が持ってきてくださいました。
読める読めるぞとムスカのように言い走ってもとても全部は読めず。斜め読みでしたが、
作品の見どころやプッチーニの負の部分をも曝け出して綴っている書籍もあり、今後オペラ鑑賞にも役立ちそうです。



7月21日に渋谷駅が変わる!?



開演前のボード。



終演後。台詞がいっぱい。



1階のレストラン。2016年に1度来ましたが、それ以来の訪問です。



渋谷蜂蜜をたっぷり入れたプリン、白ワインと一緒に美味しくいただきました。



夜は長崎ちゃんぽん!



海鮮ちゃんぽん、具沢山です。丼には眼鏡橋や天主堂、長崎くんち等、名所名物がが描かれていました。



ジュエルズからの人魚姫なグミ。淡いピンクの煌めきがプッチーニが奏でる世界のイメージの色彩と重なります。
さくらさくらは高校の吹奏楽部時代に野球応援歌としても定着しており、木村さんが奏でるような繊細儚げな風情とは正反対に
大音量大味な演奏で応援しておりました汗。当時使用していた楽譜コピー、まだ保管しております。
ただ、ルパン3世や山本リンダのねらいうち、X JAPANの紅やピンクレディーのサウスポーならともかく
なぜこの曲が高校野球応援曲として定着していたかは、我々の高校時代とは別次元な暑さになっても、
屋外での運動は極めて危険との警報が出されている真夏の炎天下での試合開催と同様に謎でございます。



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