2024年7月15日月曜日

新たな冒険と旅立ち  怒涛の青赤坊主な週間  新国立劇場バレエ団『アラジン』6月14日(金)〜6月23日(日)  計8回







だいぶ遅くなりましたが、新国立劇場バレエ団デヴィッド・ビントレー振付『アラジン』を8回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/aladdin/


※速報でもないがの記事と重複する部分が多々ありますが悪しからず。

2024年6月14日(金) 19:00

【アラジン】福岡雄大
【プリンセス】小野絢子
【ランプの精ジーン】渡邊峻郁
【魔術師マグリブ人】中家正博

2024年6月15日(土) 13:00
【アラジン】速水渉悟
【プリンセス】柴山紗帆
【ランプの精ジーン】木下嘉人
【魔術師マグリブ人】中島駿野

2024年6月15日(土) 18:30
【アラジン】奥村康祐
【プリンセス】米沢 唯
【ランプの精ジーン】井澤 駿
【魔術師マグリブ人】中家正博
※3幕は米沢さんが体調不良のため降板。
アラジン福岡さん、プリンセス小野さんに交代。

2024年6月16日(日) 14:00
【アラジン】福田圭吾
【プリンセス】池田理沙子
【ランプの精ジーン】渡邊峻郁
【魔術師マグリブ人】中島駿野

2024年6月21日(金) 13:00
【アラジン】福岡雄大
【プリンセス】小野絢子
【ランプの精ジーン】渡邊峻郁
【魔術師マグリブ人】中家正博

2024年6月22日(土) 13:00
【アラジン】奥村康祐
【プリンセス】米沢 唯
【ランプの精ジーン】井澤 駿
【魔術師マグリブ人】中家正博

2024年6月22日(土) 18:30
【アラジン】福田圭吾
【プリンセス】池田理沙子
【ランプの精ジーン】渡邊峻郁
【魔術師マグリブ人】中島駿野

2024年6月23日(日) 14:00

【アラジン】福岡雄大
【プリンセス】小野絢子
【ランプの精ジーン】渡邊峻郁
【魔術師マグリブ人】中家正博








福岡さんアラジンは憎めないやんちゃ坊主でここぞという見せ場での作り方、アクセントの付け方も巧みに見せ、年々若返るお化けな身体能力にまたもや脱帽。
21日は高校生達楽しませようと⁈枠外迄はっちゃけ踊って更に驚異な若さが加速していました。
この日は林檎食べ過ぎて咽せかけ、千秋楽はプリンセスの手を取る寸前のもういっちょ齧って笑、食べることに命懸け。
薬混入時の布被りが遅れても纏める力に恐れ入りました。
小野さんは芳しく知的なプリンセスで、登場時のそっと足を差し出す僅かな間にも気品が吹く貴さにうっとり。
プリンセスのソロはこれといって難易度高い振付ではないながら腕の差し出し方や音楽と繊細に戯れる優美さに心溶かされた思いでおります。
マグリブ人誘惑でのダークなお色気戦術も鳥肌ものです。
福岡さんと小野さん、言わずと知れた大看板ペアですが、トリッキーで角度の付け方やバランスも非常に難しいパ・ド・ドゥを
何とも音楽を共に奏でるように紡ぐ鉄壁超越なパートナーシップはこの2人ならではでしょう。

アラジン初挑戦の速水さんは笑い上戸な能天気アラジンで、ママ大好きな甘えん坊少年。駆け回る姿を始めとても似合っていて
前回のバヤデールでは時折見かけた力みもなく、大担ぎ半周リフトも成功。(ふう)
益田さん演じる母と楽しい親子ぶりで、母親が現れると怒られそうとビクつくこともなく途端に目がキラリとして「ママー」との吹き出しが見えたほど笑。
柴山さんは淑やかゆかしいプリンセスでアラジンに静かに心を開いて行く様子がいじらしい。マグリブ人誘惑は笑みも湛えて大胆に変化していました。
お風呂場ではシャララララと響く楽器と共鳴しながらのポーズが何とも魅惑的で、
顔を少し傾けての表情や腕を上下にしながらのゆったりした動きも慎ましさから覗く品が愛らしく映りました。
バヤデールのときは冷や冷やが尽きなかったお2人のパ・ド・ドゥも破綻なく、ひとまず無事終了。札幌公演も楽しみにいたします。(札幌も無事終了)
速水さんの札幌公演に向けてのインタビューのお言葉を拝借し、私もお腹パンパンで劇場に向かうのは間違いありませんが笑。(間違いなかった笑)

奥村さんアラジンは可愛さが倍増で悪戯するときのはしゃぎっぷりも子供らしい無邪気さ。
好奇心旺盛でその上踊りも若さが戻っていた気すら覚えるとにかく可愛らしいアラジンでした。
宝石場面の仕草が細かく、エメラルドの手のポーズの真似やダイヤモンドお付き達が次々と登場し
目の前を通過していく光景に興奮して数えたり、両腕を大きく掲げたりと反応が多彩。
洞窟に閉じ込められたときの不穏な嘆きも寂しそうで、さっきまでの宝石達を目の前にした歓喜が跡形もなく消え去って窮地を訴えていました。

米沢さんはしっとり上品で、輿に乗る直前にアラジンを再度見つめて笑みを送っていた表情が実に愛らしいプリンセス。
浴場での指先脚先から潤いが零れるような踊りや、3幕にて狩りへ行こうとするアラジンに対して
甘酸っぱい香りを漂わせながら寂しさを募らせる箇所もすっと伸びるポーズの美しいこと。
奥村アラジンとは優しさがほわっと広がるパ・ド・ドゥを披露され、心安らぐ気分で幸せに。
しかし15日夜公演では3幕前に米沢さんが体調不良のため3幕は降板。約30分遅れて開演して3幕は福岡さん小野さん組が代役を務めました。
眠りやドンキとは全然違った独創的なパ・ド・ドゥが3幕にもあり、ペアごと交代でないと対応不可能であったのでしょう。
緊急事態でしたが福岡さんと小野さんは全く動じず、幕が開くと1幕2幕で踊っていたかのように
新婚生活を謳歌しチェスで遊ぶアラジンとプリンセスとして登場され、大きくあたたかな拍手が沸き起こりました。
2年前の『シンデレラ』最終日に奥村さんが2幕で怪我をされ、3幕からは井澤さんが代役を務められたときも登場時には大きな拍手で迎えられたことも思い出します。
カーテンコールでは緞帳前に奥村さんも登場され、大喝采。そして奥村さんが福岡さん小野さんを呼び込んで3人で手を繋いでの特別挨拶が心に沁み入りました。
突如の事態に最も苦しい思いをなさっていたのは米沢さんご自身でしょう。22日昼公演は奥村さん米沢さん揃って
全幕主演できて安堵。米沢さん包む奥村さんのあたたかさにほっこりいたしました。

福田さんのアラジンは市場の後方から現れる一見見えづらい登場シーンであっても
屋台を覗く仕草や友人への挨拶、隙を突いて泥棒行為に走る部分始め行動全てがはっきりと見え、友人達と輪になっての水平跳びも形がぴったり。
22日夜公演であった惜しまれつつさよなら公演では、(実は後日のまさかの事態により22日夜がさよなら公演ではなくなったのだが)
登場時から演奏が聴こえづらくなるくらいの割れんばかりの拍手で迎えられ、全出演者のベクトルも全力で福田さんに向いている公演でした。
いたずらっ子なアラジンであっても大騒動を巻き起こしても、何だか周囲も怒りつつも嬉しそうで笑、悪さする様子を楽しんでいる印象すら受け止めた気がいたします。
宝石場面ではシルバー役の衣装から布が落下してしまうも、自然に拾い寧ろ演技に溶け込ませて
ラッキーと言わんばかりにひらりと見せて帽子に収納する対処の名手。最後まで必殺仕事人です。
中家さんのサルタン守衛とは浪速な面白バトルで、一呼吸置いてからニヤリとドヤ顔してからの追いかけっこで
強面なはずの守衛がどうしても見れば見るほど笑いの渦に呑まれてしまうのでした。

池田さんはちょこっとクールで近づき難いお姫様が少しずつ心を開いて行く様子が愛らしい。
2幕パ・ド・ドゥはアラジンとプリンセスこれまで全く異なる人生を歩んできた過程をゆっくり振り返りつつ気持ちの昂りが一気に突き上げていく流れを
大らかに表現されていました。マグリブ人誘惑の踊りでは足の軸が非常に強く、音楽にふらっと身を委ねてからの切り返しも巧みで
手にした杯をアラジンに向けて薬を早く入れるように示す合図はかなりの強気で揺らしながら作戦実行!

22日夜公演は18年間在籍されていた大功労者の福田さんのラスト公演であり、前代未聞な特別フィナーレも用意。
満場の観客からのカーテンコールが鳴り止まぬ中、ジーンがふわっと舞台袖に向かって誰かを呼び込み、
登場したのは福田さんを労う獅子舞。そして獅子の頭を取ると、中に入っていた主は同門である大阪のKバレエスタジオ出身の福岡さん!
いつ練習していたのでしょう笑!?後ろ足担当は獅子舞のベテラン達人の1人、安心の原さんでした。
そうこうするうちに福田さんは突然シューズを脱ぎ始め、何事かと出演者も観客も見つめていると山口百恵さん風にシューズを幕前に置き、一礼。
そうは言っても靴位置が定まらず、もっと前に置くようにスタッフから指示が飛んでいたと見受けましたが福田さんよりも先に池田さんが即座に理解してチャキチャキと指示。
最後までしっかり者のプリンセスと抜けたアラジンな物語がカーテンコールまでずっと続いているお2人でした。
プリンシパルではなくファーストソリストの退団での大フィナーレに疑問を投げかける方もいらっしゃるかもしれませんが
牧阿佐美さん、ビントレーさん、大原永子さん、吉田都さんの4名の芸術監督下で18年在籍され、入団間もない頃はラッパ手も務め地道な努力で遂に掴んだ全幕初主役は2019年のアラジン。
そして再びの全幕主役が退団公演のアラジンとなりましたが、主役ではなくても
ありとあらゆる公演にて舞台をぐっと引き締める役で大活躍され、舞台の何処かしらにいて欲しいと思わせる存在でした。
近年は振付活動でも新国立内外で活躍の場を広げ、特に大和雅美さんと組んでのDAIFUKUは定期公演化しています。
福田さんによる振付で存在を一気に押し上げたダンサーも何名もいらっしゃり、
殊にDAIFUKUでの小柴さんによるクラシックバレエも⁉きちんと踊る猫役は、強烈なキャラクターでございます。
福田さんの主役デビューも、退団公演も、アラジン初演メンバーやダンサー仲間も多数駆けつけ、福田さんの人徳でしょう。
懐かしい光景で溢れ、初演メンバーによる人数縮小版の財宝の洞窟の場面上演も可能な集結ぶりでした。

王子貴公子ではない、貧しい少年が主人公なわけですが、それにしても今回は4人中3人の昭和末期世代アラジンが
前回より若返っていたり表現が一層子供らしくなっていたりと深化にびっくり。
福岡さんはガキ大将、奥村さんは無邪気な子供、福田さんはやんちゃ坊主。
初挑戦の速水さんはママに甘えん坊将軍といった印象で、誰も似たり寄ったりがなく連日楽しませてもらいました。
そんなお騒がせアラジンに試練を与えてとことん追い詰めて行くのがマグリブ人で、中家さんのマグリブ人は豪胆で太く濃ゆい攻め。
中島さんはすっと冷たく入り込んできてからの高笑いが怖し。

ランプの精ジーンも三者三様。渡邊さんは力み無く何処へでもふわりと舞う妖精らしい浮遊感に、主人に仕える忠臣ぶりに加えて上に立つ支配者らしい威厳も増強。
大看板であり誰も太刀打ちできそうにない福岡さん小野さんペアをがっちり支えて導く風格や存在感に天晴れでした。
日によって、お仕えするアラジンによって変化もあり、学校公演の21日は笑みが多めで平伏しから起き上がる過程も美が濃縮。
学校公演時のポスター撮影場所はジーン、高校生達にも大人気で、腹筋を指でなぞりながら
鍛え抜かれた体型に感心している生徒さんもいて、満喫された様子が微笑ましく思えました。

福田さんラスト公演ではアラジンに呼ばれると宙吊りであっても喜び隠せず笑、ランプの精としての威厳は薄まっていたのはご愛嬌。
睦まじい関係性であり、ジーンがアラジンを慕って全身全霊で尽くしていて眺めているとほっと和む、そんな2人でした。
3幕終盤、無事絨毯に乗って故郷へ帰還した福田アラジンに再度呼び出され、いつものように恭しく平伏すも
解放を言い渡されたときは喜びの中に寂しさも入り混じった少しショボンとした表情が何だか可愛らしかったのでした。
対する福岡アラジンには互いに一歩も引かぬ火花を散らし合う強気のバトルな主従関係で、ギラついた熱さを重ね合いながらの展開。
ファーストキャストの福岡さん、ラスト公演であった大先輩である福田さんの18年間を締め括りの双方に相応しいジーンでした。
ジーン5回も拝見でき、場面から場面への橋渡し時の後ろ姿や浮遊姿もじっくり語りかけ
総踊りでのキンキラキンな側近達を束ねる力量や、ジャンプの成分表を網羅するかの如くふわふわ優美系から瞬発力の強いものまで
多種の跳躍を踊りこなし常に宙に浮いているように見せる、それでいて勢い任せにせず
全体に品を行き届かせるセクシー且つ高貴な妖精で、恐れ入る技術と支配力でした。
そういえば、3幕にてアラジンプリンセスの新居で違法訪問販売なマグリブ人に呼び出され寝台の下から出現したときの、
ビヨンビヨンとスプリングのように上下に動く様子が現れたばかりの妖精感があって目に焼き付いております。
アラジンに初めて呼び出されたときの、合わせた両手を片耳に当ててお寝んねしていましたの仕草を見ると、
このジーンは眠るときは子供の寝巻きに付いているような三角帽子を被って就寝しているのであろうと想像を膨らませ
一方で洞窟の上にシルエットとして現れたときの色めき立つ威厳や指先や顔の角度までもがこの世のものではないような美しいフォルムには息を呑んだり
ご主人は誰でも良いかと言ったらそうではなくマグリブ人の家に呼び出されたときの苦渋や、プリンセスを苦しめるマグリブ人の横暴な接し方に対して放つ鋭い眼光からは
ジーンにも心はあり、仕えたい相手とそうでない相手の差がはっきりと住み分けされているのだろうと初めて意識して考察。
ただご主人の言いなりになって跳んで回るだけでない、ジーンの多面性に気づかされました。

意外にも初役な木下さんは俊敏に跳ね回って舞台を取りまとめ、とりわけ仕草や目線も優しげ。
かなりやんちゃそうなアラジンに人生訓話を言い聞かせていそうな笑、今までお目にかかったことがないタイプのジーンでした。
井澤さんは大魔神な圧のある重厚感と前回よりキレキレ感も増した印象。
寝ているところを起こした奴は名乗れと言わんばかりの出現シーンは閻魔大王なおっかない迫力もあって、
アラジン母子が怯えるのも頷けます。3人見事なまでに全く異なるジーンです。

アラジンが辿り着いた洞窟の宝石達の場面は目にも眩く独特な質感の衣装もじっくり観察。
シャキシャキと飛び込んできてはコロコロ転がるようなピアノの音がパールやオニキスの軽やかさを思わせるオニキスとパールは爽快で
上下左右に次々とスピーディーに動きをペアで拡張させていく様子もユニークで面白い。
ゴールドとシルバーは渡辺与布さん朝枝さんの味わい深い煌めきが音楽を溶け合ってゆったりと心地良さを誘い
デカシルバーこと(褒め言葉です)吉田さんのはらりとした靡きや内田さん の柔らかくも芯あるゴージャス感も目に響きました。
サファイアは池田さんはくりっとした愛らしさで、木村さんは艶かしい風情を香らせ両者異なるアプローチ。
4人のサファイアのお供達からは水の泡がふわりと放っていそうな潤いが漂い、
どなかただったか福岡アラジンから肩をツンツンと突かれていてもにこやかな笑みやしっとりした体勢を崩さず動じず笑。

ルビーも3組個性様々。直塚さん渡邊さんは振り幅拡張型セクシー変わり種路線燃ゆる灼熱なルビーで
直塚さんの身体能力や技巧の上手さが存分に発揮されている上に、盤石に受け止め
更に背中のうねりや雄弁な腕運びによるダイナミックなサポートで規格外なポーズを構築していく渡邊さんも見事というほかありませんでした。
序盤の肩や背中の粘りや後も姿でも引き寄せる燃ゆるルビーでございます。踊りに加えて坊主に派手な曲線模様の頭飾りもセクシーに魅せていました。
新国立の投稿によればエジプトの赤をイメージと記されていましたがエジプトには見えないものの(坊主頭にシュッと髪が纏まって髷のようの出ているので中国?)
闇の帝王思わす妖しさやダークなオーラも放散するルビーでございます。
奥田さんと渡邊拓朗さん組のルビーは真っ直ぐ力強く美しく、整理整頓され敷き詰められたような宝石で
男性のお顔はそっくりながら笑、特に15日の昼夜での見比べは非常に面白く思えたのでした。
男性のおでこの装飾模様は彎曲系と直線系と2種あるのか、それぞれ違っていたのが気になるところ。
木村さんは洞窟の女王、井澤さんは洞窟の大魔王な組み合わせで急斜リフトもぴたりと綺麗な空中姿勢。

エメラルドは小川さんの上半身が蛇化したように語る柔軟性もびっくりで、立体感とストイックな雰囲気も好印象。
眩い光を纏い身体の緩急の付け方も鮮やかな渡辺さん花形さん、トリオのバランスもよく取れていました。
中島さんは瞬時に華やぎが広がり、益田さん原田さんの神経が行き届いた腕運びや身体の捻りの美しさも目の保養。

背中含めて全身が磨き抜かれた精巧な輝きを纏うダイヤモンドそのものな奥田さんはまさに宝石職人で、構造が複雑なステップもくっきり正確。
利き足と逆回りであろう回転も余裕綽々である上により一段階粘ってのされど音楽にぴたりと嵌る至芸に痺れました。
山本さんは空間の使い方がとても大きく、お付き達を従えていても新人抜擢感を思わせず舞台度胸も強し。
お付き達のコール・ドは何度観ても、集合体からの散りばりのフォーメーションの変形やシャキンと構えるポーズといい
爪先立ちのまま両腕を流れるように掲げながらの移動といい、ダイヤモンドの多面的な光を体現する振付に唸ってしまいます。
ダイヤモンドからそのままコーダへの突入し、宝石それぞれの音楽を盛り込みながら特徴ある振付を再度踊り登場してくる展開や、
最後、円形になって内側からのリフトの連鎖も初演時からずっと胸をキュッと揺さぶられる場面の1つです。
ディヴェルティスマンとは呼んでも、踊り終える度にアラジンが絡んで次へと橋渡ししていくためぶつ切りには感じさせず
宝石の受け取り方も、宝石達を眺める様子もアラジン各々に委ねられているのか
可愛らしく摘まんでイチゴ狩りもあれば頭から根刮ぎ取ろうとするアラジンもいて笑、人それぞれです。
コーダが終わると再び流れる序曲にのせて、ダイヤモンドの合図で全宝石達が身体を交わしながら道のりを作ってアラジンを案内し
ランプへと到達させる導きもよく練られた演出で、のちの冒険に欠かせないランプと遂に対面する場面として申し分ない浪漫掻き立てる出会いでしょう。
思えば2022年には吉田都セレクションで演目変更生じてこの財宝の洞窟場面を抜粋上演するはずが中止に。
2012年の記念すべき第一回NHKバレエの饗宴ではトップバッターとしてこの場面が上演された日が懐かしく思い出されます。
ところでジーンの出現と同時にザルにたっぷりと宝石を盛ってやってきた宝石達。アラジン母が家の中にジーンと宝石達をそのまま招き入れていましたが、
いったいどんなもてなしを受けたのでしょう。裕福なお家ではないはずですから、お茶淹れての宴でも開催したのか。

アラジンと取り締まる、警察ならぬ守衛24時な活躍を見せるサルタン守衛もダブルキャスト個性が全然違っていて
渡邊拓朗さんの守衛隊長の取り締まりも毎回ツボ。とりわけ福岡アラジンを取り締まるなんていくら舞台の中でのこととはいえ余程の勇気がないとできないはずでしょうが
しかし首根っこの掴み方といい鬼の形相での追いかけ方といい懲らしめっぷりがおっかない。
また今回初めて守衛隊長の動きを追ってみると、アラジンを部下達が一斉に捕まえようと覆い被さろうとするときは
直前に守衛隊長が部下達に指示を即座に与えて連携対応させたりと実は張り巡らしも万全に行っていると初演から16年経ってようやく分かった次第です。
中家さんは福田アラジンの箇所で少し触れましたが、一呼吸置いてからのニヤリとした表情や間の取り方が
どうしてもコメディ路線に走り、怖そうな風貌とのギャップに毎度笑わせてもらいました。
ただアラジンの女性風呂侵入を防げなかったのは謎で、のちに警護任務違反としてサルタンに罰せられなかったのか、心配も募ります笑。

問題児なアラジンを育てるアラジン母の愛情もそれはそれは大きく、中田さんはオカンで突き抜けた迫力。腰を傷めている設定なのか
市場でのアラジンの騒動では愛息子を追いかけては出店の屋台に手を置いて腰をさする様子がリアルで自然。
2幕アラジンの裁判にてサルタン守衛やサルタンには命を差し出す覚悟すら滲む肝っ玉母さんでした。
益田さんは可愛らしいママで、息子の罪の許しを願うときのひたむきさが健気。
怒るときもそこまでおっかなくはなく怒っても息子が愛おしくて仕方ないママっぷりです。

大掛かりな仕掛けや美術装置も見どころで、やんちゃな少年アラジンが誰かの助けを借りつつも困難を乗り越えプリンセスと結ばれるまでを
楽しくユーモアに富んだ展開で進行していきます。マグリブ人の腰掛けた定位置が実は既に魔法の絨毯の仕掛けが隠されている点や
高台の上に登ったアラジンが後方を向いている間にぐるっと装置が回転して洞窟への階段が現れる転換、
行方不明になったアラジンが母のもとに帰ってくる煙を炊くびっくり箱な演出も毎回アラジン母の気分で仰け反り驚いてしまう息子の帰還です。
時間軸戻ってアラジンを中心とした街の喧騒では音楽の波にのって街の人々がうねりを作ったり
浴場から裁判行う宮廷への転換には真似する一呼吸続出!?サルタンや裁判官達の鷹揚とした登場の行進が含まれ
さりげない箇所や次場面への過程においてもぶつ切りにならぬどころかより面白さが増幅するような隙なき工夫が随所に見られます。

またカール・デイヴィスの音楽が時に東洋の趣を帯びた美しい旋律に彩られて聴き惚れ、
遥か彼方へと導かれていきそうな壮大な序曲から管理人は毎回胸が一杯になっております。
楽器多彩で東洋の趣な音楽を万華鏡の如く連日演奏してくださった東フィルにも拍手です。
ちなみに、札幌公演での札幌交響楽団はだいぶ演奏カラーが異なりましたので、また後日綴って参ります。

それから全く同様の内容を速報でもない速報で記しましたが、今後の再演時に劇場側にお願いしたい要望で、
アラジン親子の格好や所々中国の文化が取り入れられている理由についてはプログラムに明記願いたい。札幌公演でも中国への疑問を語るお声が多々聞こえました。
幕が開くと街はアラビアな風景ながらアラジンと母親は中華帽に中華服な格好で登場し、結婚のお祝い事では獅子舞、3幕フィナーレでは龍の舞が披露され
当たり前ですがホワイエの会話でもあちこちから聞こえてきました、何で中国やねん。
決してビントレーさんが適当にアジアンミックスしたわけではなく、初演のプログラムによれば<アラビアンナイトの原作では、
アラジンは「中国の町」に暮らす中国人の少年なのである>
<ディズニー映画『アラジン』が公開されるまで、イギリスの子どもたちは中国風の格好をしたアラジンに親しんできた>と紹介されています。
そして他のビントレーさんのインタビューにて、日本ではアラジンといえばアラビアンナイトだから、
アラジン親子はアラビアの街に移住した華僑に設定したと明かしていらしたかと記憶しております。
様々な地域の文化が混在した演出にはなっているものの、露骨で恐ろしく問題ありな描写は概ね見当たらず
同じくビントレーさんの振付全幕作品で2011年に新国立で上演した『パゴダの王子』の4地域の王様達の描写
(21世紀に制作した作品としては問題視を避けられない衣装や設定と思います汗)とは違って許容範囲かとは思っております。
肌を青緑に塗ったマグリブ人の描写については、賛否両論もあるかもしれませんが。

新国立劇場バレエ団のために振り付けられた世界初演は2008年は直前にリーマンショックが襲い、当時の総理大臣が突然辞任したりと明るくはない報道が立て続けに発生していた頃で
牧阿佐美芸術監督も世相を憂慮する挨拶文を初演のプログラムに寄せていらっしゃいました。

アラジンが走っていってモロッコに辿り着いたとされる設定や、ジーン、マグリブ人、プリンセスの人形が飛んでいくときと魔法の絨毯で浮遊時に
アナログな差し金の鳥さん達が飛翔している演出等突っ込みどころが全くないわけではありませんが、
開放感のあるハッピーエンドな大団円で爽快な気分で劇場をあとにできる作品と感じております。
次回上演ではきっと新たなアラジン、プリンセスも誕生することでしょう。4年後と仮定して渡邊ジーン、可能ですわな。次もルビーも⁉
5年ぶりの今回も、青と赤の坊主限定髪型期間を堪能いたしました。
※札幌公演へ続く




アラジンのポケットサンド。宝石をいくつも採ってはポケットに入れていく行動にちなんでのサンドイッチらしい。(羽田空港バージョンは空港で食べたことがあります。)
ビールの注ぎ方は自画自賛笑。まずまずジューシーなカツサンドでした!
ところで私はラッコ好きなのですが、バレエでのアラジンは一見帽子の中が四次元ポケット状態にあるのかと疑うような、宝石を入れた帽子をそのまま被っていましたが
ラッコは身体を自在にポケット化させて次々と貝やら石やら収納していく名人です。




洞窟場面の氷柱に似ている夜のオペラパレス外階段の灯り。



米沢さんが心配になってしまった15日夜。22日(土)昼公演は奥村さんと米沢さん揃って全幕出演でき、心から安堵いたしました。魚介と夏野菜のマリネ、いただきます。



帆立貝とルッコラのトマトソースのペンネ。帆立ゴロゴロ。サファイアの海模様な衣装、振付はいつ観ても涼やかで美しや。
果肉たっぷりトマトソースそして赤ワインの輝きがルビーにしか見えません。



フロマージュブランのムースとファーブルトン。チェリーらしきフルーツがぎゅっと濃縮。
フワフワクリームと一緒に締め括りです。イチゴやソースがルビーにしか見えません笑。美しく赤きルビー。



毎度のオアシスで、チャイナブルー。今回の演目役柄にぴったりです。



足りなくて、ビールも欠かせません。



さあこれからルビー!そして、どうか予定通りの主演ペアで全幕上演できますように。
千秋楽はカップケーキに長細いお菓子が刺さっていた気がしたが、増えたのかシュークリームか何かの代わりか。気になるところ。



良かった、奥村さん米沢さんの久々の全幕共演が無事実現。まずはこの話題で持ちきりでした。お2人特有のほんわか爽やかな雰囲気、心癒されます。
そしてルビーも堪能。赤が目立つ前菜盛り合わせとキールロワイヤルで乾杯です。



5年前の公演にて木村さんと組まれたときはほんのり妖しいペアでしたが直塚さんとはコブシの効いた、ねっとり規格外ダイナミックルビーでこれはこれで大興奮。



奥村さん米沢さん組の公演を思い起こさせるまろやかなシュレッドチーズとクリームソースでした。



いよいよ福田さんラスト公演。ジーン、しっかりお仕えを!



千秋楽!やっとこさケバブサンド。トマト味強めで刺激は抑えめだったかと記憶。具がはみ出過ぎず、食べやすい。



前週とは異なるグラスの形でチャイナブルー。



3ジーン、三者三様で見比べ楽しい期間。プログラム上から、強気なときと忠臣なときの振り幅が大きいふわふわ妖精、
シュッとした切れ味で優しげに導く仙人、初台の大魔神、と全員違って面白く鑑賞いたしました。



ブルーハイボール。赤もありつつ7回分の5回は青い、なる公演期間でした。しかし新国アラジンの冒険はまだ終わっておらず、このあとは札幌公演。(公演終了、感想は後日)
カール・デイヴィスの壮大で東洋の趣きを帯びた色彩豊かな音楽を札幌交響楽団が演奏するのも注目しております。
空飛ぶ絨毯に、ではなく飛行機に搭乗して、1幕序曲や3幕絨毯飛翔の音楽を脳内再生しながら管理人も津軽海峡夏景色を眺めつつ北の大地へと飛んでいきました。
5年前の富山公演と同様、7月にマイ誕生石のバレエ版を虜なお方で拝見できるとは、うう楽しみ。
アラジンではないが、宝石ではなく美味しい飲食物をたらふく胃袋に入れての鑑賞になりそうで、
体型がこれ以上サルタン化しないよう注意を払わねば。(もう遅い。ラーメン3杯食べて参りました)

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