1月13日(金)から15日(日)、新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエを計4回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/newyearballet/
初日速報。透き通るように清らかな米沢さん、逞しさと色気兼備な渡邊さんが放つ視線とお2人のフォルムが描き出す形に注目です。
本日「ニューイヤー・バレエ」が開幕🎉
— 新国立劇場バレエ団 The National Ballet of Japan (@nntt_ballet) January 13, 2023
新制作『A Million Kisses to my Skin』とバランシンの名作『シンフォニー・イン・C』、そしてヤスミン・ナグディとマシュー・ボール、アリーナ・コジョカルとアレクサンドル・トルーシュという世界を代表するプリンシパルたちがゲスト出演✨
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身を重ね合わせたお2人、官能的でございます。
A Million Kisses to my Skin
【振付】デヴィッド・ドウソン
【音楽】ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
【美術】デヴィッド・ドウソン
【衣裳】竹島由美子
【照明】バート・ダルハイゼン
13日(金)、14日(土)夜
米沢 唯 柴山紗帆 小野絢子 五月女遥 中島春菜 根岸祐衣
渡邊峻郁 速水渉悟 中島瑞生
14日(土)昼、15日(日)
直塚美穂 柴山紗帆 飯野萌子 五月女遥 山本涼杏 川口 藍
奥村康祐 速水渉悟 森本晃介
中止を乗り越えやっとの上演。バッハ『ピアノ協奏曲第1番』の厳粛な音楽との溶け合いや
ステップが淀みなく連鎖しての舞台空間を目一杯使った、研ぎ澄まされたシャープな展開も気に入り
身体の線や移動の軌跡がよく見えるシンプルな照明も好みな作品です。(顔の判別がつきにくい黒影照明は見辛かったが)
ダンサーの出入りも工夫に富んでいてパ・ド・ドゥあればソロ、トロワも用意。
女性陣は人によって各々少しずつ色味が異なる水色系レオタード1枚でも、男性陣の透け網?ぴったりTシャツ型ウェアや水色タイツ姿もしなやかで美しい。
男性陣の髪型は全員ぺったり七三分け指定だったのか、古式ゆかしい趣な方もいらっしゃいましたが
高品質な整髪料なのか、激しい動きを繰り返しても誰も『シンデレラ』宝石商状態な靡きにならぬ髪型維持も安堵でございます。
「ミリオン」の呼び名も定着し、早くも再演が待たれる作品です。
Aキャストは主役級を何名も投入。まず主軸の米沢さん渡邊さんペアの引き伸ばすポーズの造形美にうっとり。
互いに後ろ側に掲げた腕で、算数数学の授業で使用可能であろうくっきりと平行四辺形を作画していらっしゃいました。(上の写真参照)
渡邊さんの各関節から先端まで、音楽に触れては全身の細胞活性化を思わす踊り方や時折放つ肉食獣な視線にも仰け反りそうになり身震いの感覚に襲われた次第。
特にアダージョ部分において、ただ怪しいのみならず繊細詩的な米沢さんの内面の扉をふわりと開かせ
心を解きほぐすような誘いを思わすパ・ド・ドゥの連なりは目にも心にも不思議な快楽もを呼び起こし
物哀しい音楽の中で身体同士で呼応し放っていく細やかな波動からも目が離せませんでした。
モダンな作品は恐らく初見である根岸さんのスタイリッシュで機敏な、斜めに取るポーズも見事。コンテンポラリーでも一層観たくなったダンサーの1人です。
面白味濃縮であったのはBキャスト。ベテランプリンシパルから今シーズン入団の新人まで大混在編成で、
奥村さんは直塚さんと、飯野さんは森本さんと等ベテランや中堅も今まで目にしたことがないペアで登場し、フレッシュな刺激いっぱいな布陣でした。
中でも話題大沸騰であったのは直塚さんの存在感。入団は今シーズンであるバレエ団の中では「新人」ながら
ロシアで培った長年のキャリアに裏打ちされた技量、押しの強さ、作品牽引力にも拍手。
(バレエ・アステラス2019ではモスクワ音楽劇場バレエの団員として『海賊』グラン・パ・ド・ドゥを披露されています。鮮やかなテクニシャンな印象でした)
身体を隅々深々とパワフルに操って大地を切り開くように踊り刻む姿、そして大先輩奥村さんにも物怖じせず渡り合うパ・ド・ドゥも目に残る衝撃でした。
奥村さんの、パートナーを落ち着かせながら(褒め言葉)気持ちよく踊らせていくサポートや、相手に翻弄されているようでされど安泰な踊りっぷりも好印象。
そして幕開けにソロで飛び込んできた山本さんの空間支配力、巧みなオフバランスや無駄のないしなやかな躍動も鮮烈でした。
全日程出演の五月女さんによるソロでの踏ん張りを全く見せず立体感のあるポーズで決めながら踊り繋いでいく展開も圧巻で
舞台にたった1人、しかも決して大柄ではない背丈とは微塵も思わせず、音楽の中で自在に身体を奏でていく姿に何度目を見張ったことか。
公演2日目以降、キャスト変更により全日程出演となった柴山さん速水さんの鋭く突き進みつつ、
針穴に糸を通すように2人接近したままするりと移動しながらも身体の傾けや手の掲げまで息の合い方が抜群であった序盤の見せ場も刻まれております。
眠れる森の美女
【振付】マリウス・プティパ
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【衣裳】ルイザ・スピナテッリ
【出演】ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール(英国ロイヤルバレエ)
休憩後、無背景の空間にていきなり結婚式の場面であっても、恐らくはアステラスでもよく使われる白カーテンやシャンデリアであっても
踊る姿からカーテンコールまで上階席まで届くゴージャスな佇まいな英国ロイヤル・バレエ団のお2人(特にナグディ)でした。
ナグディはやや粗削りになるかと思いきや、パの1つ1つにメリハリがあり脚のおさめ方も丁寧。王子衣装の光具合の無さにびっくりしたが(失礼)、ボールは淡白端正。
ドン・ジュアン(抜粋)
【振付】ジョン・ノイマイヤー
【音楽】クリストフ・ヴィリバルト・グルック、トマス・ルイス・デ・ビクトリア
【衣裳】フィリッポ・サンジュスト
【出演】アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)、
アレクサンドル・トルーシュ(ハンブルク・バレエ )
タイムテーブルを見て尺の長さに驚いたものの、しんみりな作風ながら浮世離れした貴婦人コジョカルの身の寄せ方や身体が透けて反対側が見えそうな幽玄ぶり、
トルーシュに掲げられたときの体重を感じさせぬ浮遊姿にも見入りました。コジョカルが予定通り来日し、予定通りの作品を踊ったことにまず安堵(これ大事)。
コジョカルとナグディの並びから本来の座長コジョカルと、偶々他公演のために来日中であった関係で急遽呼ばれた代役ながらナグディが実質の主役となった
2020年2月に開催されたアリーナ・コジョカル ドリームプロジェクトを思い出す私でございます。
今だから申し上げられますが客席も豪華でございました、殊に男性陣。行けなくなった知人の代わりに行ったはずが、
某着席者を上演演目に重ねては想像を巡らせたり、(1本は初台でのお披露目の願い叶いました)
こんなにときめく思いを満喫して宜しいのか身体がそわそわした忘れられない出来事です笑。
それにしてもNBSとは対話と連携(外交か笑)に転向したのか、新国立来場者に向けた今回のゲストの出演宣伝として
今春のハンブルクと今夏のロイヤル来日公演特別チラシも刷られ、新国立劇場開場記念公演時期の1997年10月に発売された
SPEEDの代表曲White Loveの歌詞「雪が溶けてやがて春が来る頃」なる関係を、開場から約四半世紀の時を経てようやく構築と見て取れます。
(在籍時期は異なりますが作詞作曲者が同じ高校の出身でございます。ちなみに管理人はSTEADY派、お若い皆様はご自身でお調べください。私の中では近年の曲である)
2015年頃であったか、東京バレエ団が新国立の中劇場で初公演のときも遂に和解の時代かと話題にはなりましたが
新国立劇場とNBSの文字が手を組む意味合いで同じチラシに掲載される日が到来するとは、時代の変遷を思うと同時に
初台における世界バレエフェスティバル短縮版開催も含め、佐々木忠次さんが天国で何と仰っているかは想像を控えることといたします。
シンフォニー・イン・C
【振付】ジョージ・バランシン
【音楽】ジョルジュ・ビゼー
【衣裳】大井昌子
【照明】磯野 睦
第1楽章
米沢 唯 福岡雄大(13日、14日夜)
柴山紗帆 福岡雄大(14日昼、15日)
広瀬 碧 飯野萌子 中島駿野 小柴富久修
第2楽章
小野絢子 井澤 駿
玉井るい 廣田奈々 清水裕三郎 趙 載範
第3楽章
池田理沙子(13日) 木下嘉人
奥田花純(14日昼夜、15日) 木下嘉人
奥田花純(13日) 広瀬 碧(14日昼夜、15日) 五月女遥 小野寺雄 佐野和輝
第4楽章
吉田朱里 中家正博
渡辺与布 川口 藍 原 健太 浜崎恵二朗
バレエ団の十八番と言えるでしょう、デヴィッド・ビントレーさんが就任された2010/2011シーズン開幕公演における初鑑賞以来ずっと観続けております。
2013年のゴールデンウィーク公演でのトリプル・ビル上演時にはプログラム最初の上演であったため、
知人の結婚式に行く前にインCのみ鑑賞し、おめでたい気分上々で式場へ向かった日も良き思い出でございます。
第1楽章の米沢さんは精緻なステップと、少し柔らかみが増した感もある腕の使い方にも注目。初役の柴山さんはミリオン全日程出演となってしまいながらも
正確な足運びやきりっと決まる且つ丹念に描き出すポーズも美しや。そして福岡さんがきびきび歯切れ良く踊りつつ日替わりダブルキャストの2人を好サポート。
同日にミリオン兼任の米沢さん、初役な上にミリオンと兼任になった柴山さんをきっと精神面でも支えていらしていたかと思わせる
頑丈鉄壁ぶりで観る者にも安心感を与えてくださいました。米沢さんもですが、2010年からずっと第一のプリンシパル専門の福岡さん。若さの秘訣が気になるところです。
全楽章の中でもベテランから昨年入団の若手まで混在編成であったコール・ドの統一感も好印象。
音楽が放つ明快さを身体の角度や移動のタイミングも守りつつ晴れ晴れとした美を描き出していました。
第2楽章は小野さんの憂いを含んだ踊り姿に鷲掴みされ、過剰に押し出さなくても隙のない、クールな女王の風格。
冒頭にてパ・ド・ブレでの登場からして空気をひんやり神秘的な色へ変えていた印象です。
フィナーレにおける、音楽が益々高らかさを帯びていく箇所での井澤さんにサポートされながら片脚立ちで腰を捻りつつもう片脚を差し出す振付も
急速な中にも情緒を匂わせる美しさに背筋がすっと伸びる思いがいたしました。
井澤さんとは意思疎通の深さまでは感じ辛かったものの、バランシンですしこの楽章においては近寄り難い女王をひたすら引き立てる構図が好ましいのかとも推察。
第3楽章は初日、フィナーレ途中で池田さんが離脱し木下さんも舞台袖へ。第3楽章の部分では呼吸の合う跳躍を
次々と繰り出していただけに、フィナーレにおける全楽章女性プリンシパルが横並びでの回転箇所にて
池田さん不在の光景が、最後のポーズにて第3楽章の主役2人が不在の光景が視界に入ったときは茫然となり、身体の状態が大変心配になりました。
余程の事態だったのでしょう、状態悪化を防ぐためにも途中離脱は良い判断であったと思いたい。
(周りでも話題は持ちきりでしたが、昨秋のジゼルとペザント、春の祭典、くるみで昼主役同日夜ルイーズといった過酷な配役日程に限界があったかとしか思えず)
この日は初日、しかも平日夜公演でしたから終演は20時半頃。次公演は翌日土曜日昼ですからもう時間もなく
当初ダブルキャスト予定であった廣川さんがお正月くるみにて本番中に転倒で怪我をされ、既に降板。池田さん頼みであったところにこの事態で
女性は登録ダンサーまでもが総動員で臨む大人数作品のため、代役探し奔走の現場はさぞかし緊迫していたかと察します。
そして翌日以降は初役で奥田さんが代役で登場。盤石な軸を保ちつつ溌溂軽快な脚捌きが実にクリアで表情も明るい音楽そのもの。
前夜からの翌日昼の急遽の代役ましてや初役とは到底思えぬ大好演でした。代役初回はカーテンコールにて
出演者全員から拍手が沸き、奥田さんを讃える様子に胸が一杯になりました。
思えばこちらも初役木下さんとの跳躍での掛け合いもそれはそれはにこやかさが溢れ返り、
しかもサポートも名手、加えて勝手に呼んでおります「困ったときの木下さん」。奥田さんとのパートナーリングも安定感の上をいく楽しさで見せてくださいました。
奥田さんが抜けたコリフェには広瀬さんが1と兼任して担当。(鉄人ペンギンと呼んでしまった点、お許しください)磐石な支え人として活躍され、疲労感も皆無。
配役急変更に伴い、初日は終始奥田さんと、翌公演以降は3楽章部分は広瀬さんと、
フィナーレは原田さんの3人と組んだコリフェ(現在はドゥミ・ソリストと呼ぶらしい)佐野和輝さんの功績も讃えたいばかりです。
そして3楽章、土曜日以降は女性プリンシパルとコリフェが3人ともビントレーさんの就任と同時の入団組。ベテラン職人トリオ、天晴れでございました。
コリフェ小野寺さんの技術達者且つほのぼの純朴ぶりも和む要素の1つでした。
あれよあれよとフィナーレになだれ込みながら終わってしまう第4楽章には木村優里さんの代役で吉田さんが登場。
手脚、特に腕がまことに長く急ピッチな曲調に合わせての方向転換にやや苦戦していたかもしれませんが堂々たる優雅さに注目。
そして中家さんの登場してすぐのハノ字ジャンプにー幸福度は更に急上昇。(忘れていたが初役であった中家さん)
踊った直後に立膝から立ち上がってのサポートも慌ただしさを感じさせず寧ろ心から楽しんでいる姿でいつでも安心中家さんはバランシン作品でも健在でございました。
ところで女性プリンシパル横並び回転における足踏み振付にて、真横に伸ばした両手の掌が上向きと下向き、人によって違いがあり。その点が少々気になりましたが
フィナーレ終盤、隊列が真っ二つに割れながらの大移動は上階中央席から眺めているとモーゼの十戒の名場面をも彷彿させる
吸い込まれそうな舞台展開で(例えが宜しいのか否か)全出演者の壮観な光景に、とりわけ今回は
プリンシパルペアが1から4まで揃う状況がこうにも愛おしく思えるとは、高揚も極致へと到達いたしました。
ただ今回いたく首を傾げた点があり、第1楽章のテンポと演奏の特色。随分とゆったりそして穏和に思えたのです。
ドン・ジュアンから休憩無しでの上演でしたからしんみりした雰囲気を私が引き摺ってしまったのか
或いは年明けから約2週間経過した金曜日夜で暗めの落ち着いた空間に身を置くと疲労が襲い掛かってきたのか当初は初日特有の自身の勝手な印象と自覚。
ところが、2日目以降も印象は変わらず、第1楽章に長年抱いていた歯切れ良さ、鋭い潔さ、ピリッと引き締まる感覚が
封じ込められてしまったと感じてなりませんでした。2010年の初鑑賞時から1、2、3の中では
格調高い調べが彩る1が最も気に入っているが故の単なる思い入れの強さからくる印象かもしれませんが。
唯一ティンパニと思わしき打楽器が要所要所にて、目を覚ませて鼓舞させるような大音量での叩きっぷりが独走状態とはいえ私には救いにすら感じ取れたものです。
今回はメリー大晦日あけましてクリスマスなる年末年始過密くるみの影響もあり故障者が続出。
初日から本番中の負傷発生でヒヤヒヤになり、配役の負担具合や日程調整の課題が更に浮き彫りになった公演でした。
来年はいかにして開催か。年末年始に再び二桁台の公演回数を打つのであれば、主役以外の配役にも今一度目を配って負担具合を確認するなり
ニューイヤーの演目の組み合わせを考え直すなり、1月の2週間過ぎ辺りは世間もお正月、新年な気分にはもう浸っていませんから
時期をずらして厳冬ガラにするか(来場者が見込めぬ名称だが汗)由々しき事態に至った今回の課題を生かして欲しいと願います。
また、女性は登録ダンサーまで大総動員ながら男性の出演者が少なく、これまた勿体無い。
ミックス・プログラム等に相応しい男性主体作品のレパートリーがあれば(除くトロイ・ゲーム)尚望ましいかと思います。
マエストロメニュー、サインはゲストの4人。
バーニャカウダ。めでたいカラフルな野菜達です。
ゴルゴンゾーラクリームとほうれん草のペンネ。チーズの癖が程よく抜け、白ワインによく合います。
いちごのグラタン。ほかほかまろやかな甘さでございます。
踊り盛り、抜擢が続くダンサーの故障者が相次ぎ、しかも本番舞台上で発生。
公演回数の増加は嬉しいことである一方、配役の負担具合や日程調整は要課題です。
ロンドン出身のドウソンさん、スタイリッシュで澄んだ美しさのある作品をありがとうございました。
店内でスタッフさんが売り歩いていたため、ちょうど次の1杯を考えていた機会でしたので購入。確かカシスとウイスキーのブレンドらしい。
前回『ジゼル』公演期間中の購入時は葡萄がのっていましたが、今回はいちごです。そしてウイスキーのときはコインチョコレート付き。
ああ2020年2月、1回きりにはなってしまったものの渡邊さんで観たいと望んでいた色悪系役なるレスコーを思い出します。
ただ悪人ではなく、周囲との橋渡しや金欲の塊な部分がチャーミングでもあり、
人間味の深い人物として描写されていた点に大変好感を持ちました。しかも狡猾そうな風貌からの色気も備え、束ねた髪のおリボンもお似合い、
GMに向けた憎悪の眼差しの最期も忘れられず。うう、もう1回観とうございます。
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