2021年9月2日木曜日

夏の八王子に舞い降りた妖精達 BALLET NOW バレエ ナウ 発表会 8月25日(水)《八王子市》




8月25日(水)、八王子市芸術文化会館にてBALLET NOW バレエ ナウ 第14回発表会を観て参りました。2019年に続き、2度目の鑑賞です。
http://ballet-now.com/

発表会概要。新国立劇場よりゲスト出演。
  http://ballet-now.com/news_topics/news/post-3535



※バレエナウさんのインスタグラムより。皆様晴れ晴れした表情です。ライサンダーとディミートリアスが濃い笑。





第1部は小品集。計8作品で、音楽の分野もクラシックから久石譲さんの曲まで多彩。当日の状況にぴたりと合う、また好みな曲がいくつもあり全て満喫です。
小さなお子さんほど2作に出演したりと掛け持ちし、しかも皆最後までしっかり務めて大活躍。
幕開けは『海と真珠』よりパ・ド・トロワで、速水渉悟さんもご出演。丁寧に可愛らしく踊る2人の生徒さんを優しくサポートしつつ
豪快なジャンプには私の近くにいた小さなお子さんが大喜び。マリンブルーの斜めマントな不思議衣装も涼しげで猛暑の八王子にて嬉しい清涼剤です。
(後にも述べますが、近くにいた2人の小さなお嬢様、第1部から真夏の最後までじっくり堪能していた様子)
何しろ京王八王子駅に降り立ち暫く歩くだけでも明らかに私の勤務先や自宅周辺とは暑さのレベルが違い、そうだ冬は数段階寒く夏は暑い八王子であると
京王八王子駅から徒歩で移動しつつJR八王子駅前の、都内ですが一足お先に積雪です中継が冬の風物詩となっている広場に目を留め、思い出した次第です。

2曲目のポルカ、3曲目Summerはどちらも子供の生徒さん活躍でカラフルでお洒落な衣装姿で勢揃い。
後者は久石譲さんの曲で、夏の終わりのこの季節にこそ聴くとしんみりとした思いに駆られ、管理人この時点で既に八王子のイチョウホールにてどっぷり癒し時間。
やや長めの曲ながらあどけない生徒さんが4人だけでしっかりと踊り切る姿にも拍手です。
続いては葦笛はパ・ド・トロワ形式。木下嘉人さんが出演され、きっちりと端正、呼吸の合ったトロワで衣装がクラシカルであった点も一安心。
ゲストの皆様やバレエナウ版真夏…の振付者が所属する団では今年は年越し公演となる作品の演出に不満は申し辛いものの、この曲に蝶々は今も納得いきません笑。
大人の生徒さんでドン・キホーテのボレロに挑戦された方もいらっしゃり、能天気な余り人前で舞台に立つ心構えなんぞ一生かかっても身に付きそうにない私からすると
姿勢を見習いたいと感じるばかりです。貝川さんの好サポートもあって喜び一杯に披露なさっている姿が印象に残っております。

久石譲さんの曲はもう1本、『千と千尋の神隠し』のテーマ『いつも何度でも』ピアノ版に乗せて子供の生徒さん達が可愛らしい衣装で披露。
幼いながら並び方からしてきちんと順番を守る協調性に、大人の自身も学ぶべきことが多々ありでございます。
宮崎駿さんの映画は基本どれも好きですが、ラピュタやナウシカ、トトロといった飛行物が飛び交う作品を好むため千と千尋は劇場では観ておらず
4年前とある舞踊家へのインタビュー映像拝聴がきっかけでようやく鑑賞。日本と少し台湾の街並みをも取り入れた繊細な情緒に驚きを覚え、
劇場で鑑賞していなかったことを後悔。イメージで決めつけてはならぬとその映像のお話を教訓にしたいと思ったものです。
そして男の子3人でスキップからして元気一杯なHappy Boyも楽しく、ミラーボールの演出に思わず声を上げてしまうお子さんも多数。
私が絶叫マシン克服の契機となった浦安市の夢の国における水しぶき系の乗り物にて流れていた思い出深い曲でございます。
第1部最後はクラコビャック。マズルカ系の舞踊と思われますが(違ったらすみません)
キャラクターダンスもレッスンに取り入れていると前回2019年鑑賞時に知り、緩急自在に操りながら6人で躍動感と熱量溢れる踊りを見せてくださいました。

第2部は貝川鐵夫さん振付『真夏の夜の夢』。子供からゲストまで総出演で、4年前の上演に続く再演とのこと。
ゲストは少し入れ替わりオーベロンは渡邊峻郁さん、パックが福田圭吾さん、ライサンダーが木下さん、ディミートリアスが速水さん。
平日夕刻の八王子であってもこの布陣、オーベロン求めて管理人が行かないわけありません笑。

オーベロンの渡邊さんは序曲の最中、暗闇に照明が当てられぽっかりと出現した立ち姿からして溜息が零れるほどの美しさ。
何処を切り取っても彫刻の如き美が宿り、引き締まった表情も気高く、風格も十二分な妖精王でした。
王は王でも妖精であり、鷹揚とした威厳ばかりを示せば良いのではなくそれらを持ち合わせつつ素早い振付も随所で披露。
中でも序盤のスケルツォの部分は予想以上に目を見張り、高身長であっても持て余さずもったりするどころか
急速なテンポでも抜群のコントロール力で俊敏さを維持し、回転して予期せぬ箇所からの跳躍も余計な力み皆無で実に軽やか。そのまま飛翔しそうな浮遊感に感嘆です。
跳んだまま舞台袖へと入っていく場面なんぞ、そのまま八王子駅まで飛んで行ってしまいそうで
そしてちゃっかりパンか何かをお買い物して袋を手にふわっと戻ってくる姿も容易に想像がつく、骨の髄まで妖精さんでした。
目で語る力も強く、ある1点を見つめ一呼吸置いてからパックに向き直り指示する場面がいくつかあり
決して特別大きな目ではない、むしろやや切れ長ですから元々の瞳の力の強さもさることながら視線の運び方1つ1つに気を配っていらっしゃるのでしょう。
歯切れ良いテンポで進んで行くパックとのやりとりでも急かされている印象が無く余裕ある展開に思わせ、雄弁且つ品が香るマイムも美しや。
王であっても掴みどころがない点はご愛嬌なのか、夫婦喧嘩の末にインドの王子(いたく小さな子供が演じていて、落ち着いた舞台姿にびっくり)が妻側に渡ってしまうと
不貞腐れるだけでなく突如床に寝転んで拗ね、駄々っ子並に我儘な一面も。されどいざ再びインドの王子を前にすると思い切り頬を緩ませ
出迎える様子は保育士を超えまるでムツゴロウさん笑。威厳があるようで無いときも多し掴みどころ無き妖精王にお仕えするパック、これは大変な仕事です。

さて、スーパーエンジェルでは割愛しましたが八王子ではやります髪型観察、今回は二重丸。
ほぼ真ん中分けで、きらりと輝く輪っか状の頭飾りを装着した姿がまた眼福。アシュトン版やそれに似せた重厚な王冠ではなく
また衣装も葉っぱモシャモシャな装飾は抑えめにしたやや濃いめのエメラルドグリーンのすっきりとしたデザインでしたが
綺麗な線の持ち主である渡邊さんの耽美な魅力がより引き出され、また生地に金色の縦線装飾もあったためか森と宝石を掛け合わせた妖精にも見えむしろ嬉々として観察。
葉っぱモシャモシャ衣装は近い将来に実現と思いたい新国立劇場でのアシュトン版真夏初演の楽しみにとっておきましょう。
それから王に相応しいマント姿も喜ばしく拝見。ただ激しく踊る箇所多き役であり、牧阿佐美版『ライモンダ』における
装着時間およそ15秒限定の帰還でござるマントでジャン!場面とは違って終始装着ですから、長過ぎても困り物。されど短いとパーマン状態になりますから
なかなか難しいところですが踊っても鬱陶しくならず、加えてパーマンにも見えぬ、肩から膝下程度に伸びる絶妙な長さでございました。

タイターニアは生徒さんが踊り、優美な雰囲気で堂々たる大役。妖精達や蜂さん達からも慕われ、にこやかな笑みで見守る様子もエレガントで
光を帯びた淡い水色の柔らかな衣装もお似合いです。一見楚々としていますがインドの王子を巡っては目力オーベロンにも負けぬ芝居で引き寄せ、王妃の気の強い一面を明示。
また並びも絵になり、上品な空気を纏った王と王妃でした。

展開の要所を締めたのは福田さんのパック。手を広げてアピールする登場からして観客の心を瞬時に捉え、
オーベロンからの命令で花の汁を垂らして行く流れを観客にナレーションを同時に行っているかのように分かりやすく語りかけ、物語を動かしてくださいました。
何度も笑いを沸き起こし、特にボトムが変身したロバとの掛け合いにはドカンと沸騰。小さな子供の観客の笑い声もあちこちから聞こえたほどです。
怒ると怖そうな笑、堅物な王にもへこたれず忠実且つ剽軽にお仕えする姿も健気です。
ハーミアは主宰の川崎さん、ヘレナは生徒さんで、うっかりパックの失敗から引き起こる誤解し合っての争いも潔くエアービンタ大会で女の戦い白熱!
濃いキャラクター炸裂な怪しいライサンダーと少しチャラそうされど純情にも見て取れるディミートリアスと踊りも表現も対等に渡り合う光景に度々興奮いたしました。
ボトムは全世界見渡しても歴代最高身長であろう!?貝川さんが飄々と踊られ、木こりの男子3人引き連れ軽快な場面を描き出してくださいました。
ロバに扮してもスタイル映えるボトムさん。しかしとぼけてしまったのかパックとの咄嗟と思われる掛け合いにも大笑いで、会場沸きました。

それから心から讃えたいのは生徒さん達の表現の上手さ。2019年に鑑賞した発表会でも心底感じましたが、
きちんと踊っている更にその先を行く印象で、集団で何か表現する際も似たり寄ったりな様子が無く、いたく自然。
またゲストとの絡みでも臆することなく演じる光景の広がりは頼もしいばかりで、日頃の訓練の賜物かと思わせます。
とりわけ寝転んで駄々を捏ねる笑、お困り妖精王への対処に辟易するパックが妖精達に救助を頼もうとするも
拒絶され、自己解決するよう促される場面は妖精だけでなく人間の日常にこそしばしば起こり得ることで
妖精界でもトラブル続きは日常茶飯事なのだろうと説得力あるひと幕でした。

また貝川さんのセンスなのでしょう。配役配置も上手く、ゲスト一辺倒或いはゲストと生徒に壁ができ一方通行な舞台にならぬよう
程よく絡ませての展開描画にも感じさせます。結果として出演者全員で作り上げている感が伝わりました。
大人数構成ではなくても、楽しくぱっと華やぐ舞台に仕立ててしまう構想力にこの度も見入った次第です。
小さな子供の生徒さん達による蜂さんも、ただ出番増やしの為に作った役では全くなく、妖精さん達によるさりげない先導効果もあって
森に咲き誇る花々に集まる蜂と妖精達の仲の良い生活ぶりまでもが窺える微笑ましい様子に映ります。

音楽はメンデルスゾーンの曲を崩さず使っていらした点にも好感を持ち、3年前に観たコンテンポラリー版真夏にて他のバロックや映画音楽を挿入した演出を目にしたために
出演者は文句無しであったはずが心底満喫には至らずであった経験あり。オーベロンの威厳やタイターニアの気品、
妖精たちの囁きや浮遊がそのまま聴覚に訴え高揚感を誘う旋律が煌びやかに、時に重厚に連なる
作品として既に完成されたメンデルスゾーンの曲のみでの演出を昔から切望しているため、安心そして幸福に浸れる貝川さん版真夏でした。
補足として、これまでに観た他の真夏で自然と引き込まれた演出はバーミンガム来日のアシュトン版、NBAのウィールドン版、矢上恵子さん版(大阪)、キミホ・ハルバートさん版、
都内の沖田バレエスタジオや福岡の田中千賀子バレエで、どれも音楽はメンデルスゾーンのみで構成していたかと記憶しております。
英国ロイヤルによるアシュトン版は1992年の来日プログラムに含まれていながら、ラ・バヤデールしか鑑賞せず。観ておくべきだったと後悔。

それから、前半に触れた近くに座っていた2組の親子のお子さん達が最初から最後まで真剣に集中して楽しんでいた姿にも感激。
ジャンプの凄いお兄さんの印象が刻まれたであろう速水さんの海と真珠に始まり、ミラーボール演出にも喜んだり休憩時間には衣装の可愛らしさについてお母様に主張。
真夏では暗闇に妖精達の花冠の明かりが浮かんでくるとうっとりと驚いたようで、続いて福田さんパックが登場しただけでニコニコと嬉しそう。
渡邊さんオーベロンが袖へと飛翔していくと暫く目で追い、恐らくは本当に飛んで行ってしまったと思ったのかもしれません。
カップルの関係の拗れも、本気の潔いされどコミカルな争いに笑いが止まらなかったようで、仮に細かな設定は分からなかったとしても
眼前で起こっていることに鮮烈に反応して心から楽しんでいたようでした。
3歳ぐらいと6歳ぐらいのお子さんに見えましたが、テクニックや衣装、お芝居、演出とバレエが持つあらゆる要素を目一杯堪能する感性から学んだことは大きく
お2人のお陰で総合芸術であるバレエの面白さを再確認した思いでおります。
同時に小品集、真夏共に飽きさせぬ上質な構成であったこともお子さん達の忖度の無い正直で鋭い鑑賞眼が物語っていると思え、
川崎さんと貝川さんの舞台作りのセンスにも天晴れでございました。次回の八王子の夏も今から心待ちにしております。


※ご参考までに、2年前の2019年の発表会バレエナウさん初鑑賞時の感想。近くの席にかけていた、出演者のご友人で部活帰りと思わしき中学生くらいのお客様達とも
抱腹絶倒しながら楽しみました『長靴を履いたネコ』。悪役ながら子猫達や少女達のぬいぐるみ奪いの絡みでは保育士に見えた魔王、
悪代官風な曲(実はドニゼッティの曲)での登場時における突如の540繰り出しに大仰天、しかもだいぶ床スレスレのヒヤヒヤであったのはご愛嬌笑。
2019年鑑賞舞台の5本の指に入る「笑」撃作で、主人公ネコと魔王は同じキャストで、再演お待ちしております。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-77ba7a.html





京王八王子駅からの移動中、見つけた喫茶店の八王子珈琲。早退し慌ただしくしながら向かったため、一息入れようと暫しコーヒー時間です。
すっきりとした気分になる味わいで、ロートレックの絵が何枚も飾られた内装も素敵。



海と真珠の思い出。2012年、鳥羽水族館にて購入したラッコのぬいぐるみが女性2人のヴァリエーション最後の抱擁ポーズにそっくりで、
購入後目の前に浮かぶミキモト真珠島前にて周りの釣り人達からは不思議そうな視線を浴びつつ撮影。



自宅に保管しているSummerの楽譜。弾けませんが、何処か懐かしさが募る良い曲です。坂本龍一さんのエナジーフローも載っています。
余談ですが、坂本さんは同じ中学校の卒業生でいらっしゃり、勿論知り合いではありませんが、偉大な作曲家の誕生は喜ばしく学校にとっても誇りでございます。
話がずれました。プログラムの表紙を目にした途端脳裏に浮かんだスパークリング日本酒澪のラベル。夜空に星屑と花を散りばめたような煌めく色彩が重なります。
彫刻の如き美しさを備えながらもどこか間抜けで我儘で、子供を前にするとムツゴロウさん状態になってしまう
様々な魅力凝縮なオーベロンの夢の余韻に浸って乾杯です。

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