8月28日(土)29日(日)、バレエアステラス2021を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/asteras/
※初日は客席に着き、さあいよいよ開演を待つ中で突然スタッフが書類を手にピット近くに立ち、研修所関係者に発熱者が出た為研修生出演の演目は全て見合わせと告知。
リハーサルを一緒に行っていなかった他のパ・ド・ドゥ出演者は全ペア予定通り出演とは仰っていたものの
ホワイエに掲示する時間も無かったようで、突如の事態に観客も動揺を隠せず。中でも、後にも触れますが急遽最初に登場されたコッペリアの橋本さんと鷲尾さん
そして第2部登場の予定が、観客にも知らされぬまま第1部に繰り上げとなり、オーケストラピット内もそわそわとしていたほど対応に追われる中で登場された
ドン・キホーテの福田さん荒木さんはたいそう緊張されていたと察します。フィナーレ音楽も無しで、無演奏で拍手のみ鳴り響く中でパ・ド・ドゥ6組が登場し終演でした。
2日目は研修生演目全上演、フィナーレには恒例のポロネーズも演奏され、無事終演。初日は2009年に始まって以降前代未聞なガラとなりましたが
まだまだ不安が過る中での舞台開催。出演者やスタッフ、公演に関わった方々に敬意を表したい思いです。
そして発熱された方は陰性であったとの告知もあり、まずは安堵いたしました。誰しも起こり得ることで、どうか気を重くなさっていないことを願っております。
『シンフォニエッタ』(29日)
出演:新国立劇場バレエ研修所
菅沼咲希 渡邊拓朗(ゲスト)
第17期生・第18期生、予科生
牧阿佐美さん振付の研修所伝統作品でグノー作曲の交響曲第1番ニ長調第1楽章、第4楽章をアレンジしているとのこと。
何度か観ておりますが綺羅星の如く華やぐ旋律に再度聴き入り、研修生達の瑞々しさが広がるピュアなクラシックを堪能です。
幕開けに相応しい晴れ晴れしさもあり、上演を重ねて欲しい定番作品でございます。
研修所修了生の渡邊拓朗さんは4年前(入団直前?)のアステラスでもこの作品に出演され、貫禄の付いた存在感に舞台経験の歳月を感じます。
また4年前に比較すると髪型も自然なスタイルに。
『コッペリア』第2幕よりパ・ド・ドゥ(28日)
『海賊』より奴隷のパ・ド・ドゥ(29日) 橋本有紗★(カザフ国立オペラバレエ劇場)
鷲尾佳凛★(京都バレエ団/元ジョージア国立バレエ団)
初日は研修生演目3本カットである旨の開演直前告知によってまだ観客も動揺が隠せない重たい空気の最中、登場が急遽最初になりながらも優しい雰囲気を湛えて披露。
踊りづらい状況であったでしょうに、ほんわかと可愛らしさ全開の橋本さんと明るさを放つ鷲尾さんに救われた思いです。春めくピンク色で統一した衣装も目の癒しに。
2日目の『海賊』では一層本領発揮。盤石な技術からもしっとりと悲しみを零しながら踊る橋本さんグルナーラに対して
観客を市場にやってきた人々として見立てて引き込み、無背景であってもあたかもそこに商人達が集い賑わっていると思わせるほどに
取引のマイムや美女を連れてきたアピールも臨場感たっぷりな鷲尾さんランゲデムで、全幕を観た気分。踊りもパワーと伸びやかさを持ち
カーテンコールでも一歩下がった位置から橋本さんの美しさを観客に訴え、商売熱心なキャラクターを維持。たっぷり楽しませてもらいました。
橋本さんの、薄い緑色チュチュを彩る斜めに流す模様や布地にも思わず注目。
『人形の精』組曲よりパ・ド・トロワ(29日)
出演:新国立劇場バレエ研修所
安達美苑
宇賀大将 石山 蓮(ゲスト)
安達さんの芯がしっかり通った安定感、大舞台で先輩ダンサー2人と組んでも物怖じしない落ち着きにも驚かされ今後が楽しみな逸材です。
宇賀さんの愛嬌光線放出なユーモアに笑いを引き出され、石山さんの見せ方の上手さやパートナーとの呼応も万全な実力も頼もしく入団後の活躍も期待大。
『海賊』第2幕よりパ・ド・ドゥ(28日)
『パリの炎』よりパ・ド・ドゥ(29日)
上中佑樹★(元スロバキア国立劇場バレエ団)
塩谷綾菜(スターダンサーズ・バレエ団)
2021/2022シーズンより新国立入団の上中さん。次々と超絶技巧を決めて披露しまだ粗削りな部分はあれど
入団後はコール・ドからのスタートのようですから踊りのスタイルも変わっていくかと思われます。
塩谷さんはきびきび軽やかで、華奢であってもパワーも十分。お2人の息はなかなか合っていて、珍しい組み合わせを目にでき幸運。
『ドン・キホーテ』第3幕よりパ・ド・ドゥ(28日)
『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥ(29日)
福田侑香★ 荒木元也★
(ロシア カレリア共和国音楽劇場)
初日は第2部から出演の予定が観客への告知も無しに第1部に繰り上げとなり、客席もそわそわした状態の中で登場。
しかも『海賊』の直後で、順序としても如何なものかと思わざるを得ず、橋本さんと鷲尾さんと同様大変踊りづらい心境であったかと察します。
しかし動じず手堅くおさめ、翌日は福田さんの濃厚であっても現地でしっかり仕込まれたのであろう
音楽をたっぷり使っての作り込みが丁寧な黒鳥に引き寄せられました。赤い模様だったか、流線形模様の付いたチュチュもいかにもロシアらしく、私の好みでございます。
荒木さんは体格の良さに最初は驚きを覚えましたが踊り出すとポーズ1つ1つが端正で脚先もよく伸び、サポートも安定。
そしてアステラスのお楽しみの1つであるロシアや周辺地域の地名勉強、カレリア共和国とは初耳の国。フィンランドと国境を接する国とのことです。
キジ島の平原に建つ木造教会群、いつか観に行きたいと旅情を誘われます
『Conrazoncorazon』より(29日)
出演:新国立劇場バレエ研修所
青山悠希・菅沼咲希・根本真菜美・山本菜月・中川奈奈
小野田陽斗・高橋隼世・竹花治樹
青木恵吾 石山 蓮(ゲスト)
振付はカィェターノ・ソトでバルセロナ出身。世界中で引っ張りだこな人気振付家とのことで、今回日本初上演。
音楽はトナ・ラ・ネグラの第2曲であるそうで、テレビの宣伝広告で耳にした記憶あり。薄い水色のジャケットに帽子を被り、
黒いソックスで乗馬を嗜む少年少女といった趣きの姿で軽快に走り去るように踊っていく作品でした。
純粋無垢な研修生達の持ち味を少し捻り面白可愛らしい魅力が前面に出たユニークな作風で、余りに短く観客もまさかの終了に時間が立っても暫く拍手も起こらず
あと5倍ぐらい長く観ていたかったほど。尚、バレエオータムコンサートでは全9曲中5曲を上演とプログラムに告知あり。ご覧になる方、お楽しみに。
『薔薇の精』
水井駿介★(牧阿佐美バレヱ団/元ポーランド国立バレエ団)
青山季可(牧阿佐美バレヱ団)
牧バレエの主演看板になりつつある水井さん、牧へは2019年からの入団でそれ以前はポーランド国立に在籍していたとのこと。
張りと余裕ある跳躍で踊りにムラも無く、吸い付く着地も柔らかく妖しさは抑え目でしたが安心感を与える妖精でした。
頭飾りが輪っか状であったのも幸いで、何かの写真で大振りの花びらを重ねて頭上に載せているダンサーを目にした際
薔薇の花びらではなく変色したキャベツに見えたことがございまして(申し訳ございません)、輪っかで安堵。
青山さんはほっそりとした肢体に淡い雰囲気でレース状の白い衣装も似合い、眼前に現れた妖精の姿に戸惑いながらも惹かれていく様子を儚く描写。
また水井さんの濃さ、青山さんの淡さはバランス良く、以前アナニアシヴィリとルジマトフが組んだ同作品を新国立の新潟公演にて訪れた新潟県民会館資料室で映像鑑賞したところ
2人とも歴史に名を刻む大スターであるのは分かりながらも存在感や持ち味が揃って濃厚で
濃度50倍の芳香剤を画面越しに噴射された心持ちとなったのは今も忘れぬ記憶。そんな過去もあり、バランスの妙も大切と思ったものです。
『タリスマン』よりパ・ド・ドゥ
大久保沙耶★(元オランダ国立バレエ団)
森本亮介★(ハンガリー国立バレエ団)
大久保さんの艶やかな美しさが目を惹いて着こなしが難しそうな白い短いスカートの衣装もよく絵になり
日本を拠点に移すと紹介文にありましたので幅広い役柄での登場を待ちたいところです。
森本さんは真っ直ぐな軸から繰り出す躍動感が光り、やり過ぎない点も好印象。大久保さん森本さん共に大阪出身だそうで、
紹介文を読む限り、大久保さんはオランダ国立バレエ、森本さんはオランダ国立ジュニアバレエ団時代が重なり、接点があったのかもしれません。
※あと1本と思いきや、ここから一気に長くなります。水分補給なり、小休憩をどうぞ。
『ライモンダ』パ・ド・ドゥ
柴山紗帆・渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団)
6月の全幕公演は平日昼間の1回のみであったペアがアステラスに2日間登場。大トリに相応しい品格、気品でフィナーレへと繋げてくださいました。
全幕公演時より一段と息も合う淑やか姫と勇ましい騎士なお2人で、ガラ特別版として全幕公演では2009年以降カットされている
アダージオ(2020年のニューイヤーではこの部分のみ抜粋を2組が披露した、他版での序曲の印象が強い壮大な曲)に
3幕のヴァリエーションと2人用に音楽も振付も再構成されたコーダ付です。
我が記憶が正しければ、2008年に高松と東京で開催された樋笠バレエ国際交流ガラにて牧バレエの田中祐子さん逸見智彦さんが踊られた曲構成と同じと思われます。
話を2021年に戻します。
全幕公演において、並びはとてもお似合いで慎ましく優しいライモンダと、普段は温厚そうであっても姫に危険が及べば豹変し身体を張って目に炎を滾らせ
相手を撃破して守り抜く騎士っぷりがまあ鳥肌ものであったペアでしたが1幕、3幕ともパ・ド・ドゥの呼吸が今一つ合わずであった点が心残りでした。
また全幕ではカットの、ニューイヤーでは呆気ない短さで不評であった謎のアダージオ挿入と予想し少々心配もありましたが
幕が開き2人で手を取り合う姿から杞憂で終わると確信。視線と心の通わせがぐっと深くなってどのステップも流れるようにしっくりと合い
前日あたりに激闘を制してからの結婚式であろうと想像できる、全幕の如く命懸けの試練を経た空気感も強く安定性を超越。
美しいフォルムを描きつつ、めでたさのみならず覚悟や決意も伝わるパ・ド・ドゥでした。
渡邊さんは2020年のニューイヤーにて米沢唯さんとこのアダージオ部分のみ踊っていらっしゃいますが、このときは全幕経験前であった事情もあるでしょうが
ひたすら姫にお仕えしている姿勢は申し分なく前面に出ていましたが、今回はお仕えに加えて
姫を守り切ったプライドが滲む逞しい質感がアダージオからも放っていた印象。管理人、今も尚思い出しても目が心臓印状態でございます。
さて夏の最後もやります髪型観察、今回も二重丸。やや明るめの色味にも目が慣れたのか、金と白地の衣装にも合い、前髪も自然な分け方でした。
グラン・パ・クラシックを編曲した2人用特別コーダではジャンの3連続跳躍が上げ下げ激化リフトに変更となり
渡邊さんの勇猛斬り込みジャンプを拝見できずであったのは残念でしたが、それに代わる姫君ダイナミック連続リフトもお手の物でしたので良しといたしましょう。
仮に作品の設定期である中世の時代に息づく様子も容易に浮かぶお2人で、深窓の淑やかな姫君と、華美を好まず毎日欠かさず道場、ではなく(武士ではないか)
戦闘の訓練に励むため練習場に通い、日々の鍛錬を怠らぬであろう凛然たる愚直騎士で2021年夏終了です。
【フィナーレ】(29日)
『バレエの情景』Op.52より第8曲"ポロネーズ"
出演者全員
アステラスでの楽しみ要素の1つ、2日目のみとはなりましたが今年も聴けて嬉しいポロネーズです。格調高く華麗で祝祭感に満ちた旋律にのせて全員登場し締め括り。
※過去のフィナーレの様子
アステラス2016 58秒あたりご注目を。
アステラス2019 2分32秒あたりご注目を。
初日は突如の事態に会場にいる全員が動揺しての開幕となりましたが、2日目は研修生出演作品も上演でき、ほっと胸を撫で下ろしました。
昨年は中止となり今年は2年ぶりの開催で、現在海外で活躍中の日本人ダンサーだけでなく帰国して3年以内も対象とし募集枠を拡大。
また鷲尾さんも新国立劇場ホームページ掲載の挨拶文で語っていらっしゃいましたが、井田さんの指揮と東京フィルの生演奏で鑑賞できることも喜びで
お馴染みのドリゴやミンクスのズンチャッチャ系パ・ド・ドゥ(毎度大雑把表現で失礼)も生で聴けるのは格別です。
以前よりも小規模ではあっても満足度の高いガラで、来年以降も開催継続を願っております。
※先月末に発売のファッション誌25ansにて渡邊さんと小野絢子さんがジュエリーモデルを務めていらっしゃいます。
お2人が持つ翳りある神秘的な美しさが危うく色めいて響き合う、シックな誌面、映像です。リンク先の中間あたりの映像、是非ご覧ください。
渡邊さん洋装でのグラビアなる記事としては4年前に団内兄弟対談としてアイドル系ダンス雑誌にて掲載され、その誌面での写りはどこか素朴でございましたが(そこも魅力ですが笑)
3年前にはオペラシティの冊子の表紙を館内のベーカリーカフェにて撮影された写真で飾っていらっしゃり
写りは洒落たカフェよりも純喫茶が合う向田邦子ドラマに登場する古き良き時代彷彿の青年でしたが(そこも魅力ですが笑)
今回は思い切りスタイリッシュで隙の無い美をご披露。何処か古風な美しさも宿り
東宝ニューフェイスや高橋英樹さんがいた頃の時代の日活のブロマイド、小津安二郎映画に登場する美青年といった、銀幕のスターにも見えます。
周囲では中国映画の男前な俳優との印象もあるようで、そういえば古い上海映画の租界場面にてレトロな建築空間と調和しそうですし
三国志など歴史物の装束も似合いそうです。切れ長で力のある目が視界に入るたび、妄想が止まりません。
https://www.25ans.jp/fashion/jewelrywatch/a37276371/ballerinapearl-210828/
誕生日祝いとして先月鑑賞でお世話になっている方よりいただいたスパークリングワインで乾杯。
今年の夏最後を飾る、渡邊さんの凛然とした愚直騎士の余韻に浸りながらの終演帰宅後飲みでございます。
そしてある方の名言が再び脳裏を過ります。渡邊さんは武士にも騎士にもなれる、と。
いつも同じ場所での撮影で失礼。
それにしても濃い8月で、哀愁BTS(本編はしっとりエスメラルダ)、光GENJI系ハワイアンセンター、
アンドロイド、妖精王、騎士。7月も含めればサムライ太郎も再披露。個性色々キャラクター博覧会2021夏ができます。
「バレエ・アステラス 2021」2日間終演後いたしました✨
— 新国立劇場バレエ団 (@nntt_ballet) August 29, 2021
ご来場いただいた皆さまに感謝申し上げます!
終演後、指揮の井田勝大さんと😊 pic.twitter.com/oeHuB1ZAv4
柴山さん、井田さん、渡邊さんが揃って新国立劇場バレエ団のツイッターにも終演報告。見れば見るほど美しく勇ましい、男前なジャンでございます。
しかしいつまでも余韻に浸っている場合ではございません。そろそろ伊予の国の上空に差し掛かり、ここでお開き。
東京でジャンを堪能してからの翌週の今回はアブデラクマンの虜となって参ります。
舞台概要を知って以来共演対決実現を密かにずっと妄想。いや、実現が叶った暁には5月の配信ローラン・プティ版『コッペリア』千秋楽どころの興奮では収まらず
生死を賭けた場面であり、誘惑されたいでも助けにも駆け付けて欲しい願望の狭間で失神間違いない。妄想は横に置き、まずは心落ち着けて鑑賞して参ります。
0 件のコメント:
コメントを投稿