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2020年11月25日水曜日
鉢巻して市ヶ谷で叫ぶ印象の先行はだいぶ変わった 三島由紀夫没後50年 東京バレエ団「M」11月21日(土) 《横浜市》
度々順番が前後いたしますがこちらから先に。11月21日(土)、神奈川県民ホールにて東京バレエ団「M」を観て参りました。初鑑賞の作品です。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=36809
少年:大野麻州
Ⅰーイチ:柄本弾
Ⅱーニ:宮川新大
Ⅲーサン:秋元康臣
Ⅳーシ(死):池本祥真
聖セバスチャン:樋口祐輝
射手:和田康佑
船乗り:ブラウリオ・アルバレス
女:上野水香
海上の月:金子仁美
オレンジ:沖香菜子
ローズ:政本絵美
ヴァイオレット:伝田陽美
予習をするべきと思っておりましたが気づけばうっかり公演当日。
誠にお恥ずかしい話、代表作の概要を一部把握はしているものの三島由紀夫の書籍を手にとって読まぬまま鑑賞日を迎え
この日の夜に放送され録画したNHKのドキュメンタリー番組は視聴いたしましたが、引き続き学びたいと思っております。
当初は鑑賞を予定しておりませんでしたが、近所の図書館にて開催中の三島由紀夫特集コーナーを眺めているうち
無性に観たくなり、足を運んだ次第です。(その割には読んでいない点、そしていつも以上に頓珍漢感想多き点はお許しを)
冒頭ではエメラルドグリーン色のハイネックとゆったりした長いパンツ姿の女性がずらりと並び、海を表現。
昔のラジオ放送で箱に大量の小豆を入れて左右に揺らしながら再現していた漣のような優しさだけではなく
力強さも持ち合わせた音色が響き渡り、イメージとしては東映映画オープニングの波しぶきといったところ。
女性の頭に逆さにした扇のような装飾(髪?)を貼り付け、不思議な格好もまた神秘性を高める効果がありました。
幼い三島少年(身体が病弱だったらしい)記憶を辿るように穏やかな母のような海上の月の金子さんのもとで眠り、
その後は執筆作品のモチーフ金閣寺も登場したりと軌跡に導かれるように鑑賞。
サティの音楽が寂しがりやであった三島少年の鬱々とした内面を映し出すに相応しいとも唸らせました。
キーパーソンである樋口さんによる聖セバスチャンの登場姿には驚きの余り声を発しそうになりましたが強いインパクトを残したのは確かです。
帰宅後『潮騒』でふと思い出したのは、8年前の三島由紀夫命日前日にあたる2012年11月24日(土)に映画のロケ地である神島を訪問していたこと。
トヨタグループ主催四日市交響楽団『オーケストラとバレエ チャイコフスキー2大バレエハイライト』鑑賞前日に鳥羽入りして
午前中は鳥羽水族館へ、お昼はすぐそばの魚貝小屋にて獲れたての牡蠣とサザエを焼いてもらい寒い日でしたので熱燗呑みつつ舌鼓を打ち
店員さんが目を丸くして飲酒の強さに仰天なさっていた表情はさておき笑、すぐそばの鳥羽港から定期船で神島へ渡ったのでした。
主演の山口百恵さん、三浦友和さんも登った堅固な監的哨跡があると知り、海好きな私も見てみたいと思って出向いてみたのは良かったものの 辿り着けず。
しかし高台へ行き振り返ると風光明媚な景色が広がっていていたく感激いたしました。
あまり1人でウロウロ散策していると地元の方が心配なさるかと察し、また鳥羽港行の定期船最終便まで時間もそうなかったためさっさか後にいたしましたが
ひと気が少ない場所に来ると、いかにして少女初江と少年新治は駆け落ちや密会をしたか映画を思い浮かべながら感じたものです。
詳しいアクセスはこちらからどうぞ。 https://www.iseshima-kanko.jp/course/1849/
また今回M鑑賞にあたって三島由紀夫に対する印象もだいぶ変わり、これまでは鉢巻して自衛隊に向かってクーデターを叫ぶ映像ばかりが脳内を巡っておりましたが
鬱屈した精神を持つ若者の儚さを硝子細工を扱うように描写した作風に今更ながら驚きを覚えた次第です。
題名は何であったか、ストイック過ぎる青年が仲間達による規律破りに怒りも落胆もできず精神が崩壊していくさまを描いた作品もあり
壊れゆく心の襞を、滴り落ちる雫の如く美しくピュアに言語化する才能を持っていたと捉えております。
『春の雪』は嘗て新国立劇場バレエ団に在籍されていた市川透さんによる振付演出、ベートーヴェンの音楽を用いて制作され
名古屋を拠点に活動するBALLET NEXTによって上演を重ねており他にもバレエ化できそうな作品もあるかもしれません。
BALLET NEXTの舞台は2007年に市川さん版『ドン・キホーテ』を観ており、3幕ボレロを道中で知り合ったジプシー2人組がお祝いに踊るなど
登場人物の関係性を重視した演出で、新国立で約20年前から上演されているファジェーチェフ版よりも好みでした。
『春の雪』においては人々の心の移ろいを丁寧に描写し、踊り繋いで行く素敵な作品であろうと想像できます。
本日2020年11月25日、まさにちょうど没後50年を迎えた三島由紀夫は私にとっては壁が高い作家ですが
ベジャールさんが思い描いた三島の世界を想像しつつ息が詰まらない程度に何冊か読んでみようと思っております。
神島の海辺、冒険心を掻き立てる場所です。2012年11月24日に撮影。
高台からの眺望。監的哨跡には行き着かず残念でしたが、1人で黙々と探検。
いかにも映画の舞台にはなりそうな、秘密基地のような神秘的な場所が点在していました。
神奈川県民ホールへ行く前、元町中華街駅にて下車し元町へ。長編小説『午後の曳航』の舞台になったブティックポピー。お洒落な建築が目を惹きます。
足を延ばして港の見える丘公園へ。急な坂を上りましたが、途中には外国人墓地もあり見所も色々。
雲一つない青空に恵まれた、港のヨーコ横浜です。
テレビ東京の短編番組 『新美の巨人たち』で放送されていた歴史と格式のあるホテルニューグランド。
和洋折衷な内装を次回はじっくり鑑賞してみたいと思っております。
そしてホテル発祥とされているシーフードドリアも味わいたい。(食いしん坊な管理人)
大さんばしターミナル内のカフェにて、海を眺めながらスパークリングワインとピスタチオブリュレ。
粉砂糖が雪化粧を思わせます。県民ホールすぐそばです。1人でしたが予約して正解でした。
ピスタチオは大好物で、自宅にて食する際には敷いた広告に殻を置きながらリスの如く延々と食べ続けてしまいます。
氷川丸とベイブリッジ。三島由紀夫や川端康成、五木寛之他、計17名の作家による横浜港を舞台にした物語を取り上げた『横浜港ものがたり』表紙を想起させます。
中でも川端康成『花のワルツ』はバレエ好きな方には是非お読みいただきたい物語で、 友田星枝と早川鈴子という2人のバレリーナを描いた物語。
舞踊研究所の看板として巣立つ記念の舞台で花のワルツを踊りますが、華やかな舞台の裏ではお互いの態度に対して腹を立てたり、バレエに対する考え方巡って言い争いが絶えません。
ただ、単なる女の園ならではの陰湿な争いごとではおさまらないバレエへのひたむきな情熱のぶつかり合いが美しくゆかしい言葉で綴られているため読んでいてどこか清々しさを覚えました。
川端康成によるバレエ題材小説として『舞姫』もバレエの博学書のような知識量の多さで
ペトルーシュカの音楽やあらすじにキャラクター紹介、アンナ・パブロワや崔承喜、 ダンスール・ノーブルの役割に加え
西洋と異なりお稽古事として人気を博して行く日本特有の浸透の仕方を問う文章には既にこの時代の日本にて疑問を投げかける人がバレエ界以外にいた事実に驚かされます。
そういえば、三島由紀夫はノーベル賞を受賞できず、受賞者の川端康成と並んだ映像が流れていましたが
讃えつつも悔しそうな心の内が覗いていたと感じます。
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