5月31日(土)夜、オーストラリア・バレエ団『ドン・キホーテ』を観て参りました。2010年以来、15年ぶりの来日公演実現です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/australia/
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バレエチャンネルさんの取材レポート。
※キャスト等はNBSホームページより
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:ルドヴィク・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
衣裳デザイン:バリー・ケイ
装置デザイン:リチャード・ロバーツ(バリー・ケイデザインのオリジナル映画に基づく)
照明デザイン:ジョン・バスウェル
本作は、インターナショナル・アーツとオーストラリア・バレエ団が1973年に制作した映画「ドン・キホーテ」を舞台化した。
ドン・キホーテ:ジョセフ・ロマンスヴィッチ
キトリ:ジル・オオガイ
バジル:マーカス・モレリ
サンチョ・パンサ:ティモシー・コールマン
ガマーシュ:ジャリッド・マデン
ロレンツォ:ルーク・マーチャント
街の踊り子:イゾベル・ダッシュウッド
ドリアードの女王:キャサリン・ソネカス
エスパーダ:ダヴィ・ラモス
ロマの首領:イチュアン・ワン
キューピッド:山田悠未
ファンタンゴ:清遠ラリッサ、メイソン・ラヴグローヴ
ブライズ・メイド:根本里菜
友人たち:渡邊綾、リラ・ハーヴェイ
指揮: ジョナサン・ロー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
オオガイのキトリは落ち着きと色っぽさを備えた大人の雰囲気で、きりっと纏め上げる踊りに感激。
どちらかといえば小柄な体型であってもステップやポーズの決め方が大きく且つ洗練された大胆さがあり、惹きつける陽のオーラもあたたかでした。
バジルに拗ねる箇所は可愛らしく、怒って思い切り足を踏んづけてもチャーミング笑。
バジルのモレリは軽やかでヌレエフ特有のややこしい脚捌きも余裕綽々で楽しそうにこなす技量に天晴れ。
サポートも大安定で、1幕のリフト見せ場では随分と長く数ミリも動かず片手で静止のまま、更には拍手を手招きするサービス精神まで繰り出していました。
狂言自殺はキトリにだけ仕掛けを明かす設定で、ちょこんと寝る姿も愛嬌いっぱい。
グラン・パ・ド・ドゥはよく観るロシア系の振付とはかなり違った構成で、2人で爪先立ちしてのポーズや身体捻り、更には走り込んできたりと息が合わないとおかしな経路になる振付。
しかし2人とも息ぴったりでマスゲームではなく明るい息遣いの中で自然とシンクロする朗らかさが広がる幸せに満ちたペアでした。
そして愛されキャラクターとして君臨していたのはマデンのガマーシュ!満開の薔薇の花園から出てきたようなラブリーな貴族、どころか王族に見え
白いレース地のパラソルや白いフリルのお洋服、パラソルや靴にもピンクのおリボンで、歩くピンク薔薇のアレンジメントなご活躍でした。
何をしてもお茶目で優雅で、サンチョのラッパ音噴射のときは自身のハンカチをラッパの傘の中に入れてミュート対策も行う細やかなお芝居も心躍らせました。
(大事なハンカチ、サンチョに鼻をかまれてしまう笑)
細かいといえば、野営地での人形劇ではキトリ、バジル、ロレンツォやガマーシュが登場し、子役が同じ衣装でそっくりに演じていました。
殊にロレンツォ本人はびっくりしていても何だか微笑ましそうにしていたのもほっこり。
パペットと言われなければ本物のお馬さんかと思わす、ロシナンテも精巧で大きく、表情は愛らしい作りで
ドン・キホーテが馬から下りるときは踏み台が必要なほど立派な馬ですが、
広場でドン・キホーテ達を囲みながら賑やかな光景を刻む一方でロシナンテは後方で旅の小休止と言わんばかりに人形師が持つ草をハムハム。
愛くるしいお食事タイムを披露です。街の人々もロシナンテに触れたり、お食事タイムを覗いていたりと
ロシナンテも人気者且つ大事な出演者として存在を示していました。カーテンコールにも人形師と一緒に登場して、喝采に対して深々とお辞儀。観客も興奮してしまいます。
そういえば、前回と前々回公演での『白鳥の湖』1幕では庭園の奥側でずっと釣りに勤しんでいる人がいたりと、隅々まで芝居心が息づく演出であったと思い出しました。
それから夢の場の衣装が壮観。森ではなく宮廷が現れて胸元のカッティングが平たい、中世風なゴージャス衣装の埋め尽くしに驚嘆いたしました。
金色系、ブルー系、青系な3チーム編成で模様も違いがあり、肩紐にも装飾が彩られたデザインや頭飾りや胸元にも大ぶりの真珠風飾りが散りばめられていて
ドンキと知らずに目にしたら『ライモンダ』と思い込んでしまう光景でした。考えてみればドン・キホーテは中世の騎士道に憧れを抱いていますから辻褄の合う設定です。
夢の場のみならず衣装や装置は豪華でしっかりした作りで、1幕はバルコニー付きの装置が迫力ある上に、
仕事中のバジルやお料理中の人もいたりと生き生きしたバルセロナの人々の生活ぶりが覗くのも楽しい。
結婚式では1幕と同じ装置であっても蝋燭の灯りがずらりと並んで天蓋も掛けられ、装置もドレスアップです。
船での運搬、そして文化会館への搬入、大変であったと察します。
唯一気にかかった場面が狂言自殺のあと、成功するとキトリとバジルはすぐ走り去ってしまい、ロレンツォが事態を把握できたのかよく分からずであったこと。
そのまま結婚式に移りましたから、裏では諸々状況整理をしていたのかもしれませんし、
通常酒場のフィナーレで行われる一斉指パッチン踊りが3幕最後に行われましたから、めでたしめでたしと捉えて良いのでしょう。
ヌレエフの振付と聞くと作品問わずややこしいステップの詰め込みな印象が先行しておりますが、今回はだいぶ変化。
忙しそうな振付であるのは想像通りであったものの、誰も必死な形相の人はおらずいとも易々と、
心から喜びを溢れさせながら踊っていて、コール・ドに至るまで技量の高さを確認。
加えて団特有の大らかさが全体を包んで朗らかなエネルギーを放っていたように思えます。
観ていて疲労感が伝わってこない感じさせないヌレエフ版全幕なんて珍しいはず笑。(褒め言葉です)
演奏は全体を通してエレガントで大らか、編曲はロシア系とはだいぶ異なる、節々に花が咲くようなお洒落な曲調満載で
所謂ズンチャッチャ!ズンチャッチャ!な音頭は控えめに思えました。オケピに貝を持ったラッコが何頭もいるのかと思わすような
カスタネットカチカチも抑え目。優雅さ繊細さの方が前面に出ていた印象です。
前回来日から15年も経ち、久々の実現に歓喜したと同時に次回は間を空けず、3年後あたりには来日してくださると嬉しうございます。
眠りのような古典も観たくなり、コンテンポラリーもバランス良く上演しているようですからミックス・プログラムも歓迎です
ヌレエフ版『ドン・キホーテ』はミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座来日公演で観ているはずが、
洒落た衣装やバヤデールの逢瀬の場面曲を野営地での使用、バジルのソロが多い点くらいしか記憶になし。(オーストラリアの曲構成にはバヤデール曲はなく、また違う演出らしい)
ダイジェスト映像で観た、日本人男性ダンサーがバジルを踊られたトゥールーズの3幕や舞台写真のほうが遥かに脳に刻まれており、人間とは身勝手な生き物です笑。
衣装はだいぶ違っていましたが、お洒落な色味の組み合わせであったのは共通。バジルは赤、黒、白で整えられていました。
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ちらっと映像にも映っていらっしゃいます。ロットバルトも。
https://www.dansesaveclaplume.com/14688/en-scene/ballet-du-capitole-de-toulouse-dans-les-pas-de-noureev/
http://www.forum-dansomanie.net/pagesdanso/critiques/cr0242_dans_les_pas_de_noureev_28_11_01_12_2013.html
舞台写真はこちらに掲載。フランス語記事です。ヌレエフ・ビルな構成の公演。
当方批評内容の細かな部分までは把握できず、内容は各自でご解読ください。ロットバルトも観てみたい、興味持たせる役です。
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?p=96507
アントレの大ジャンプ写真あります。真ん中あたりまでスクロールを。他にも魅力的な作品写真多数ございます。
https://lesballetonautes.com/2013/12/20/surprise-dautomne-hommage-tardif/
ポスターにもなっていたようです。わお!
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話が干支一回り前近くの南仏寄りになりましたので南半球に戻します。私がオーストラリア・バレエ団に再度着目したきっかけでもある2022年のワールドバレエデーのレッスン。
ハイライトは残されており、最初の方にクラスレッスンが収録されています。
スタジオが広々としていて明るく、天井も高く開放感抜群。またバーの配置もあるのか
人数は多めであっても区画整理がきちんとなされた印象を受け、観ていて非常に爽快でございました。
常日頃から同様のレッスンであるのか、カメラが入るワールド・バレエ仕様であるのか詳細は分かりかねますが、何処を見てもすっきり。
そしてホールバーグ監督自ら指導をなさっていて、バレエ団のクラスでも美しくクリアなお手本を次々に披露しながら
丁寧に、加えて大変聞き取りやすいお声と話し方であったのも驚きを覚えました。
周囲がロイヤルやパリ・オペラ座で話題沸騰の中で、私はじっとオーストラリア派を貫いておりました。
リハーサル写真パネル。開演前にはホールバーグ監督とゲストコーチのギエムによるトークも開催。自然や動物に囲まれながら生活しているギエムのもとに
ホールバーグから突然依頼の電話がかかってきて、喜んで引き受けたとのこと。
ホールバーグは監督就任後の野望リストにギエムによるバレエ団指導を挙げていたほど、念願叶ってのリハーサルであったそうです。
型にはめずに色々試しながらダンサーに合った役作りを一緒に追求していくギエムの指導が紹介され、
ホールバーグはダンサーが持つ探究心の大切さを強調。時には厳しさも必要だが、
基本は一緒に作り上げる作業を楽しんで行いたいと思いながらリハーサルを進行しているそうです。
お2人の現役時代を何度も観てきた者からすると嬉しくも不思議な並びでした。
ロイヤル移籍時には国家的損失とフランスの国会でまで話題になっていたギエムですが、自身のキャリアについては一切触れず
終始オーストラリア・バレエ団での仕事の充実についてにこやかに語っていた真摯でピュアな姿勢にも頭が下がりました。
前年2006年に世界バレエフェスにてルシンダ・ダンとマシュー・ローレンスが抜粋で披露し、バレエ団来日と全幕上演を心待ちにしており
初めてオーストラリア・バレエ団来日公演を鑑賞したのは2007年。英国王室スキャンダルを取り入れた白鳥の湖を目にし、驚きを超えて英国上演はよく許可されたと衝撃。
スキャンダル慣れしたお国柄なのか、バレエに取り混ぜての風刺は王室側からしても許容範囲なのだろうかと今も記憶に残っております。三角関係なトロワ、ドロドロとしていたかと思います。
白鳥は翌来日公演でも鑑賞し、加えてくるみ割り人形も。バレエとしての場面は物足りなかったがオーストラリアのバレエ発展史をクララを3世代で紡ぐ、
朝ドラのカムカムエヴリバディのくるみ版なる時代超えていく演出は面白く鑑賞。
くるみには、初台の不思議の国のアリスでも大活躍されたハリス、マッデンのお名前もあり。
今やプリンシパルとして、バレエ・アステラスでもお馴染みで今回のファーストバジル、グオさんは水兵さんでした。
帰り、バルでオーストラリア産の赤ワインで乾杯。しっかりとした味わいがありつつすっと喉を通る爽やかさもあり、飲みやすいお味でした。
タコのお出汁いっぱいのアヒージョと、外はカリッと中はツヤツヤフワフワな食感のバケットです。
そしてお店名物のニュージーランド産のラムチョップ!お肉そのものが脂身なく、しかし旨味がギュッと詰まっていて、シンプルなスペイン塩での味付けがおすすめ。
焼き鳥と同様なのか、タレもありますが、まずは塩で是非。ジンギスカン好きな管理人、
塩味ならあと5本くらい食べられたかもしれません笑笑。次はビールと一緒にいただくつもりです。
焼いています!
拡大。ソースは辛くはなく、酸味がちょこっと効いている程度ですので辛さが苦手な方もご安心を。店員さんの説明通り、お箸で塗って付けていただきます。
上野広小路駅近くの、下町バルながおか屋です。メニューの案内や食べ方の説明も店員さんがとても親切で好印象でした。
今年はジゼルだけでなくドンキも当たり年。発表会含めると春から何回観ているんだ??夏も全幕観る、
秋はKバレエ、牧バレエ、東京バレエ団と続きます。上野でのドンキ鑑賞帰りにまた立ち寄りたいと思っております。