2025年11月28日金曜日

本物のお菓子が添えられたクララとドロッセルマイヤーの旅路 地主薫バレエ団『くるみ割り人形』 11月12日(水)《大阪市》







11月12日(水)、大阪フェスティバルホールにて地主薫バレエ団『くるみ割り人形』を観て参りました。
大阪へのバレエ用事訪問はかれこれ3桁台に達するであろう回数でございますが、地主バレエは初鑑賞です。
演出改訂振付は地主さん、振付はユニバーサルバレエ団や韓国国立バレエ団でプリンシパルとして活躍されたのち、2004年にはご自身のカンパニーも設立された李元国さん。
地主さんのご挨拶文によれば、昔モスクワ国際コンクールで李さんの踊りに大変感動なさったそうで、時が巡り共同で舞台作りができた喜びが綴られていました。

https://www.jinushi-ballet.com/

https://www.festivalhall.jp/events/5311/


ドロッセルマイヤーにかなり重きを置いた演出で幕が開くと、ネズミ王達から苦しめられている
お菓子の王国の人々についての話をパーティー出発前に聞き、自宅の書斎で苦悩している光景から描写。
そんな実質主役であろう存在な人物を務められたのは山本隆之さんで、チラシデザインやプロフィール紹介欄の宮廷のモーツァルトやハイドンな雰囲気とは違った
若々しくスタイリッシュなドロッセルマイヤーとして物語を先導なさっていました。髪の色味も濃い茶色に。
パーティーへの出発前は頭を抱えながら書斎に腰掛けてお菓子の国の王達を憂え、心の痛みが伝わってくるプロローグを描き出してくださいました。
舞台上手側ではネズミの王様や手下達が暴れ、お菓子の国の人々が苦しむ光景を設けられて、なぜドロッセルマイヤーがクララの家へと向かったかをはっきりと描写。
舞台転換すると大概の演出にあるパーティーに向かう人々の音楽が始まって玄関から出てきたドロッセルマイヤーが道行く姿もあり、
雪で遊ぶ子供達やガス灯の保安員らしき労働者もいたりと、生活が息づいた街の活気が窺える、幕開けがワクワクとさせられる場の1つでした。
ドロッセルさん、パーティーではいくつか手品を颯爽とご披露。これからの季節、忘年会や新年会にて山本さんご自身もなさるのかもしれないと思うほどに
さらりと自然な所作でこなされていました。勿論手品のみなさず、クララ達への接し方や表現も全てにおいて上品な香りが漂い、
舞台芸術の全体の格をぐっと上げていらしたのは明らかです。

クララは奥村唯さんで、活発に涼やかに踊る姿がたいそう爽やかで、仲間達にテキパキと声をかけながら頼もしく辛いる少女でした。
勇気ある行動派な性格を特徴づけてその後の展開を大きく左右し、ドロッセルマイヤーから提示された
くるみ割り人形を助け出す冒険に、周囲の友人達男女とも怯える中で1人だけ立候補。
それから2幕でのお菓子の国の王子(くるみ割り人形王子)とネズミの王様の再対決では争いをやめるよう仲介して立ちはだかり、
クララの決然とした物言いや態度にネズミの王様は徐々にたじろいで退散。ただ状況を見守るのではなく
クララ自らが起こした勇気ある平和的解決行動が誠に爽快で、未だ争いごとが絶えぬ世の中、胸に訴えかけてくるひと幕でした。

くるみ割り人形とお菓子の国の王子は奥村康祐さんが務められ、戦闘、クララとの出会い、雪、2幕はクララとドロッセルマイヤーと一緒に終始各国の踊りやワルツを隣席でご鑑賞。
どの場面もダイナミックに踊られ、若返りが見えた気もいたします。雪の場では雪が舞い群舞がひしめき合う中でフェスティバルホール広大な舞台を勢い良く跳躍しながら2周され
2幕大団円は次々と現る各国の踊りと一緒にクララと達に踊られたりと出番多く大活躍でした。

そして影の主役!?福岡雄大さんのネズミの王様がたっぷり踊る支配感で舞台を盛り上げ、幕開けから不気味に登場してはお菓子の国への脅かし、
戦闘場面では開始前にスクワットや腕立て伏せを無駄な動きなくクリアにこなしていらして、
思い出すのは、2020年春や初夏、相次いで公演中止になってしまった状況を逆手に取って新国立の団員達とオンライン対談を行った
インスタグラムライブトーク(通称 雄大の部屋)やご投稿映像で楽しませてくださった、バレエ音楽にのせてのドラマティック筋肉体操。
いざ戦闘場面に入るとパワフルスピーディーにネズミ達を率いてはくるみ割り人形達を追い詰めるも凶悪邪悪な風味はなく、
福岡さんの素顔の形跡が最早無き面白メイクもまたチャーミングな要素を後押ししていたかと思います。
王冠が意外にもクラシック作品女子用な丸みあるクラウンデザインでした。

チラシやポスターのグラビアや先述の通り、クララとドロッセルマイヤーの冒険の旅を重視した演出で、
その1つがクララと王子の出会い。くるみ割り人形はすぐには王子様には変身せず(お着替えの時間確保事情もありますが)
暫くはクララとドロッセルマイヤーのパ・ド・ドゥが続いたのちに王子が颯爽とご登場。
いくら勇気ある性格なクララとはいえくるみ割り人形達の戦闘には不安感もあったはずで、安堵の息を整えドロッセルマイヤーと分かち合う場にも見て取れました。
そして王子が登場すると交代してクララとは組み、雪の場には再び3人が登場。
何とドロッセルマイヤーも高いジュテで舞台袖へと捌けたりとクララ達に負けじと舞踊豊富に用意されていて、
一生懸命にお跳びになる山本さん、微笑み溢れる拍手で讃えられていました笑
雪の力強くシャープな群舞も見応えあり、整然とした美よりも、統一感の中で1人1人立体感ある踊り方の連なりが
クリスマスの夜の雪舞う幸福感やお菓子の国への出発の期待感へ繋がっていた気がいたします。

時間軸戻ってネズミ達は末原雅広さんらテクニック実力者が集っていて、福岡ネズミ王に仕えて肉体労働に従事するに応しい有能な布陣。
対するくるみ割り人形軍は女性ダンサー構成の兵隊で、ビシッと揃う迫力や素早い隊形変化もお手の物でネズミ軍を翻弄し、
それぞれの陣営のリーダーである奥村さん福岡さんのパワーと面白さ濃縮な対決もお2人が生まれ育った大阪での実現に再度喜び募った次第です。

地主バレエが大切にする世界観なのか、全体が上品且つちょこっと笑いやユーモアも押さえた作風であった点も好感を持ちました。
2幕幕開けの旅は皆小さめのゴンドラ舟に乗っていて、王子が一隻、クララとドロッセルマイヤーが1隻、ネズミの王様は1隻、ネズミ達は平泳ぎ笑。
ネズミ王、遠泳部の監督のように手下達を鼓舞して泳がせていて、ほくほくするオチです笑。
そしてクララの勇気ある仲介にネズミ王が退散して各国の踊りが催されていきますが、
踊りが変わるたびにその地域にちなんだ本物のお菓子や飲み物が提供されて、実際に召し上がっていたクララとドロッセルさんです。
お菓子のコースプラン招待客3人貸切ディナーショーな展開でございました。
どんなお菓子か、踊りが始まる前に合図としてパティシエたちがそれぞれの地域の巨大なお菓子や食器のパネルを運搬して設置すると、
上手側のテーブル席に着席したクララ達にウェイトレスが運んで提供。
スペインはカットチョコレート、アラビアはコーヒー、中国はお茶、葦笛は砂糖菓子で、
衣装はお国柄が表れている踊りもありましたが役名は全てお菓子名や飲み物名が付けられていました。

葦笛(砂糖菓子の精)は男女ペア2組で、交差する恋のハプニングをコメディータッチで描き、音楽の抑揚にぴったり合わせながら振り付けられていて
パステルカラーだったか、カラフル衣装も踊りもユニークな可愛らしさが光っていました。
男性2人が軽快に踊る中国(お茶の精)は一部の振付、衣装、ヘアスタイルがレトロ過ぎた感はあったものの
佐々木嶺さん、巽誠太郎さんによるハイテクニックの連鎖や相手が跳び上がっている間をスルリと抜けてポーズを取る、
中国雑技団も仰天しそう且つテクニックが満面の笑みで弾んでいる踊り方には良い意味で口あんぐり笑。

花のワルツはデコレーションケーキの精の設定で登場。全員丸みあるピンクの要には最初仰天したのも束の間、
モダンな味も効かせながらのお洒落な踊りがめくるめく繰り広げられ、ソリストペアであるケーキトッパーの精を務めた
金恩棲さんと宗近匠さんによる、甘さ弾けるようなリード力も見どころでした。
そうでした、ケーキのワルツ前には巨大な2段型だったかケーキが運び込まれクララが一口掬って食べていてああ美味しそう。
それにしても本番中に無言でグルメレポートするクララとドロッセルマイヤー、羨ましそうに!?隣で見守るお菓子の国の王子、びっくり面白展開でございました。
落下厳禁な各地域の飲食物を丁寧に運んできたウェイトレスさんにも拍手です。

グラン・パ・ド・ドゥの金平糖は地主バレエの山﨑優子さん、お菓子の国の王は韓国国立バレエ団プリンシパルの李帝字さん。
山崎さんは優美でソフトな踊りで刻む姿が印象深く、李さんは2メートル近い長身なのか身体のコントロールやサポートがやや大変そうでしたが見るからに王様な貫禄です。
奥村さんが隣の2人の横で笑みを湛えつつも飲まず食わずのままこのまま時間経過かと思いきや笑、大団円ではクララと共に踊り出して
各々のお菓子や飲み物の精達と共演しながらフイナーレを構築。
思えば1幕パーティーとグラン・パ・ド・ドゥ以外はずっと登場なさったままで、体力の維持も驚かされると共に各場面にて様々な奥村さんを目にできたのも楽しうございました。

地主バレエを何度かご覧になっている方からは、宝石箱なイメージの舞台が多いと耳にしておりましたがまさにその通り。
可愛らしいお菓子やお花達が遊び出すような展開で瞬く間に過ぎていったように感じます。

だいぶ戻りますが1幕パーティー場面は子役は少数出演し、但しほぼ脇での芝居に徹していて、
あくまで前面に出て踊るのはクララの奥村唯さん、フリッツの三枝功宜さんを始め皆大人のダンサーがお友達役に配されていた点も好印象。(公演ですから)
踊る量が多めで移動も多彩な振付を皆さんエネルギッシュに軽やかに踊っていらして同時に子供らしいあどけなさもきちんと体現。
とりわけ男子役の皆様の鼓笛隊やおもちゃ貰ってのはしゃぎっぷりは最早出演者の実年齢不詳なほど違和感なし笑。
びわこの風オーケストラによる演奏も贅沢で、関西歌劇団合唱部の歌声が雪の場を落ち着いた温もりで満たしてくださいました。
地主バレエ独自の『くるみ割り人形』でドロッセルマイヤーさん達と一足早いクリスマスの旅を大阪の舞台芸術の殿堂にて大満喫した夜となりました。





2009年、モスクワ国際バレエコンクールでの奥村康祐さん、金子扶生さん(現在英国ロイヤルバレエ団プリンシパル)グラン・パ・ド・ドゥ写真。
現地のバレエ誌にカラー掲載されていました。
初々しくもカラッと晴れやかなお2人です。当方が同年の新国立によるボリショイ劇場公演でのモスクワ滞在時にグリシコで購入。



ポケットに貝を入れたラッコの絵、そして仲間がいる!?しらかわん、よくシナモロールやクレヨンしんちゃんのシロと間違えられます笑。似てはいるか。


まだ昼前ですがフェスティバルホール到着。赤い階段を背景にクリスマスツリーが煌びやかです。


プレゼントを貰う子供の気分になっているしらかわんです。



大階段を背にして、スター気分!



階段上る



11:00に到着、フェスティバルホールすぐ横にあるビアレストラン。 オフィスビルでもあるフェスティバルタワーですので平日タワー内での昼食は12時頃は避けるべしと思い、早めですが参りました。



開店とほぼ同時に入店。店内広々。入店者はまだ少なめでしたが12時過ぎる頃には満席でした。 平日ランチは少々値段お安めです。パン、ご飯、ドリンク、スープのブッフェもあ り。 パンは次々と違う種類が焼き上がって出てきます。 この日は丸1日休暇ですので、昼前ですがビールもいただきます笑。ハッピーアワーだったか、少しお値段も抑え目だったかと記憶。 赤い飲み物はざくるジュースです。ルビー色が麗ですがワインではありません



紅はるかのパンが滑らかな甘さで美味しうございました。紅茶が何種類もあり、かぼちゃ紅茶をいただいてみたところ香り高くふくよかな味わいあり。



渡辺橋!



中之島周辺は大阪中心部の中では屈指の落ち着いたエリアでしょうか。道頓堀周辺と比較すると同じ内とは思えずです。 淀屋橋からの風景、大阪の中でも特に好きな景色です。



中之島図書館へ。玄関部分は撮影可。階段が立派な作りです。



ドーム。天井にエメラルドのような緑色の輝きがあります。 館内には大阪各地の貴重史料もあり。東大阪や八尾の歴史写真集なるものを閲覧いたしました。



中之島公会堂。赤煉瓦の堅固でエレガントな建築は遠くからでも目を惹きます



しらかわんも大阪のこの辺りに来るのは初。道頓堀や東大阪とはだいぶ違った街並みに興味津々です。



内部も一部は見学可能のようです。玄関ホールがロンドンのロイヤルオペラハウスによく似ていて驚き!! 行ってからまだそう月日が経っていないせいかロンドン滞在も思い出してしまいました。 しらかわん、ミャクミャクさんも一緒に行きました。



フェスティバルホール前の大通りを南下して四つ橋駅まで約20分で徒歩移動。 今回行ってみたかったお菓子屋さん、くるみ製菓店へ。マドレーヌ専門店のようでショーケースには宝石の如くマドレーヌが美しく並べられています。 カフェもあり、カフェ限定メニューが今回の目的でございます。 3席しかないため平日でも要電話予約です。



来ました!素敵プレートです。抹茶のバスクチーズケーキ、島根のソフトクリーム、看板商品のマドレーヌ。 ルイボスティーをサービスで出してくださり、アイスとホットどちらでも選択可。 ルイボスティーは酸っぱいイメージが強かったのですがくるみ製菓店さんのはまる やかな味わいで飲みやすく、苦手意識のある方も是非味わってみてください。 そして、チーズケーキは味変のお塩もあらかじめ置いてくださり、ずっしり重厚。 ソフトクリームはツヤっとした喉越し(店員さんのアドバイスでソフトクリームへのお塩一振りもまた味に締まりが効いておすすめ)、マドレーヌは柔らかふわりで、お茶はまろやか。美味しい物カルテットです。 とにかく1食分以上のボリュームあり。しかもソフトクリームはお替わりできます。 お腹に余裕ある状態でのご来店をおすすめいたします。 カフェの会計時に親族用にマドレーヌをいくつか購入し、後日渡したところ瞬く間に平らげていて笑、それだけ美味しく感じてくれたのでしょう。 お店にはひっきりなしに常連さんが訪れていて交わされる挨拶が清々しく聞こえました。 手土産にもおすすめでございます。


お昼に続き満腹になり、会場への徒歩20分移動がちょうど良い腹ごなしとなりました。 北海道でも福島でも福岡でもソフトクリームを味わっているところをしらかわんに見られている私でございます笑。 灯りが燈るフェスティバルホール、光り輝いています。



川と橋が見える好きな場所です。フェスティバルホールに来るとここにプログラム等を置いて窓の外も入れて撮影したくなり、 そういえば昨年の山本さん版『白鳥の湖』再演も、直前に主演2人が変更になったため足を運んだ 2019年の新国立劇場バレエ団こども『白鳥の湖』でも、ここで撮影いたしました。



2019年の新国立劇場バレエ団こども「白鳥の湖』は、大阪府出身の奥村さんに代わってあらかわんの地元の王子様が出演し、 この辺りを始め変更告知の掲示が正面玄関や各フロアのあちこちに設置。王子の代役のこの人誰や~??といったお声も至る所で飛び交っていましたがこればかりは仕方ない涙。時に思いを馳せるしらかわんです。 2日くらい前の直前変更にも拘らず重圧に負けず、しかも幕開きと同時に佇んでいる演出であっても 大阪での舞台芸術の殿堂にて堂々と品格ある王子様を踊られたことにしらかわんも 益々誇らしくなったようです。 そして私は今回ようやく奥村さんをフェスティバルホールで鑑賞できたことも大きな喜びでございます。 あの日は地元凱旋での主演が怪我で叶わず、悔しい思いをなさっていたと察しま 。す。



小さな灯りがあちこちに。妙に照明を落としてやや薄暗い場所です。



初めてフェスティバルホールでの鑑賞は2008年、新国立「白鳥の湖』でした。何故だかゲスト招聘で、 隣席の地元マダム達が「ルンキナさんは素敵やったけど、大阪やったら山本隆之くんおるのに何で出えへんかったんやろ??」と仰っていて、一緒に語り合いました笑。 あれから17年。マダム達、お元気でいらっしゃいますように。山本さんがフェステイバルホールにて出演なさる公演をあのときの東京人はようやく観に参りました!!



帰り、バス出発までそう時間がなかったため、またこの日のお昼とおやつで3日分は食したくらいにお腹がまだ膨れており笑、乗り場に近い場所にて梅田ハイボールバー。 ーへ。



梅田ハイボールで乾杯。チャージも今宵にぴったりで、1人黙々ナッツクラッカー。 好物のピスタチオが多々いているのも嬉しい。



2025年の大阪訪問はこれで終了。さらば大阪、また来年!! 関東以外の地域での鑑賞は年内あと2回続きます。

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