2025年11月23日日曜日

アップデートの違和感はあれど究極のお伽話は健在 新国立劇場バレエ団 フレデリック・アシュトン版「シンデレラ」10月17日(金)~10月25日(土)






だいぶどころか余りの鈍行更新でブログを忘れ去られたお方もいらっしゃるかもしれませんが
10月17日(金)~10月25日(土)、新国立劇場バレエ団フレデリック・アシュトン版『シンデレラ』を計8回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/cinderella/


インスタグラムにも舞台写真多数投稿されています。シンデレラ目線での出会いの様子、珍しい角度です。



初日舞台写真




米沢さんと渡邊さんのリハーサル。歩く姿も語りかけてくる王子です。




10月17日(金)
シンデレラ:米沢唯
王子:渡邊峻郁
義理の姉たち:奥村康祐 小野寺雄
父親:中家正博
仙女:吉田朱里
春の精:五月女遥
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:根岸祐衣
物乞いの老女(変装した仙女):関優奈
ダンス教師:原健太
仕立屋:太田寬仁
洋服屋:花形悠月 山本涼杏
靴屋:樋口響
床屋:田中陣之介
宝石屋:朔元信
御者:上中佑樹
道化:木下嘉人
王子の友人:李明賢 中島瑞生 長谷川諒太 渡邊拓朗
求婚者:趙載範 西川慶


10月18日(土)昼
シンデレラ:木村優里
王子:速水涉悟
義理の姉たち:小柴富久修(2幕からは仲村啓さん)宇賀大将
父親:趙載範
仙女:山本涼杏
春の精:広瀬碧
夏の精:直塚美穂
秋の精:花形悠月
冬の精:金城帆香
物乞いの老女(変装した仙女):大木満里奈
ダンス教師:森本亮介
仕立屋:新井陸矢
洋服屋:飯野萌子 関優奈
靴屋:西川慶
床屋:西一義
宝石屋:中島瑞生
御者:水井駿介
道化:佐野一輝
王子の友人:中家正博 太田寛仁 小川尚宏 森本晃介 求婚者:原健太 渡邊拓朗


10月18日(土)夜
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿
義理の姉たち:奥村康祐 小野寺雄
父親:中家正博
仙女:吉田朱里
春の精:五月女遥
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:根岸祐衣
物乞いの老女(変装した仙女):関優奈
ダンス教師:原健太
仕立屋:太田寛仁
洋服屋:花形悠月 山本涼杏
靴屋:樋口響
床屋:田中陣之介
宝石屋:朔元信
御者:上中佑樹
道化:山田悠貴
王子の友人:李明賢 中島瑞生 長谷川諒太 渡邊拓朗
求婚者:趙載範 西川慶


10月19日(日)昼
シンデレラ:池田理沙子
王子:水井駿介
義理の姉たち:仲村啓 菊岡優舞 父親:中家正博
仙女:内田美聡
春の精:東真帆
夏の精:山本涼杏
秋の精:赤井綾乃
冬の精:吉田朱里
物乞いの老女(変装した仙女):大木満里奈
ダンス教師:原健太
仕立屋:太田寛仁
洋服屋:飯野萌子 直塚美穂
靴屋:樋口響
床屋:田中陣之介
宝石屋:朔元信
御者:小川尚宏
道化:上中佑樹
王子の友人:李明賢 中島瑞生 長谷川諒太 渡邊拓朗
求婚者:趙載範 西川慶


10月19日(日)夜
シンデレラ:柴山紗帆
王子:渡邊峻郁
義理の姉たち:奥村康祐 宇賀大将
父親:中家正博
仙女:山本涼杏
春の精:広瀬碧
夏の精:直塚美穂
秋の精:花形悠月
冬の精:金城帆香
物乞いの老女(変装した仙女):大木満里奈
ダンス教師:森本亮介
仕立屋:新井陸矢
洋服屋:飯野萌子 関優奈
靴屋:西川慶
床屋:西一義
宝石屋:中島瑞生
御者:水井駿介
道化:石山蓮
王子の友人:渡邊拓朗 太田寛仁 小川尚宏 森本晃介
求婚者:原健太 趙載範


10月21日(火)
シンデレラ:木村優里
王子:速水涉悟
義理の姉たち:小柴室々修 宇賀大将
父親:中家正博
仙女:山本涼杏
春の精:広瀬碧
夏の精:直塚美穂
秋の精:花形悠月
冬の精:金城帆香
物乞いの老女(変装した仙女):大木満里奈
ダンス教師:森本亮介
仕立屋:新井陸矢
洋服屋:飯野萌子 関優奈
靴屋:西川慶
床屋:西一義
宝石屋:中島瑞生
御者:水井駿介
道化:佐野一輝
王子の友人:渡邊拓朗 太田寛仁 小川尚宏 森本晃介 求婚者:趙載範 原健太


10月25日(土)昼
シンデレラ:柴山紗帆
王子:渡邊峻郁
義理の姉たち:小柴富久修 宇賀大将
父親:中家正博
仙女:山本涼杏
春の精:広瀬碧
夏の精:直塚美穂
秋の精:花形悠月
冬の精:金城帆香
物乞いの老女(変装した仙女):大木満里奈
ダンス教師:森本亮介
仕立屋:新井陸矢
洋服屋:飯野萌子 関優奈
靴屋:西川慶
床屋:西一義
宝石屋:中島瑞生
御者:水井駿介
道化:石山蓮
王子の友人:渡邊拓朗 太田寛仁 小川尚宏 森本晃介
求婚者:原健太 趙載範


10月25日(土)夜
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿
義理の姉たち:奥村康祐 小野寺雄
父親:中家正博
仙女:吉田朱里
春の精:五月女遥
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:根岸祐衣
物乞いの老女(変装した仙女):関優奈
ダンス教師:原健太
仕立屋:太田寛仁
洋服屋:花形悠月 山本涼杏
靴屋:樋口響
床屋:田中陣之介
宝石屋:朔元信
御者:上中佑樹
道化:山田悠貴
王子の友人:李明賢 中島瑞生 長谷川諒太 渡邊拓朗
求婚者:趙載範 西川慶



※英国ロイヤル・バレエ団からのゲスト ワディム・ムンタギロフさん出演日は観ておらず。ゲスト日について知りたい方は各自お調べください。
だいぶ日が経ってしまい、この約1週間で浪速、越中、京の都、2日連続仕事帰りにスペインへと出向いており、溜まり分があれこれ。さっさか参ります。


米沢さん柔らかな美と鋭さ溶け合うダイヤモンドの如き輝きで魅せ、ボロ着のときにしっとり優しい仕草を示すかと思えば、
変身後の、より立体的に踊りをくっきり描き出す美しさに惚れ惚れ。ゴージャスに誇示するのではなく
内側からじわりと膨らみを持たせながら発する透明感あるオーラの美しさといったら。
箒持っての捻りや回転も強弱しっかり付けた踊り方で、お掃除が本当に楽しそうでございました。

木村さんは健気で明るいシンデレラで、アシュトンの振付の特性であるう、ヴァリエーション冒頭での背中をびしっと客席に見せながらの振付を踊る姿の潔さも目を惹きました。
体幹の強さしなやかさ、この度も天晴れです。馬車に乗っていてもギンギラギンに輝く車体以上にオーラを放出していて
私が鑑賞した日の中で馬車走行時に拍手が起こったのは木村さん日のみで、
客席全体をも宮殿へと連れて行ってくれそうな導きをシンデレラからもたらされていた気がいたします。
2回目だったか、帰宅後にガラスの靴を取り出すときに苦戦してしまっていたご様子で、
よく見るとポケットは生地と同化していて見えづらくラッコのポケットに似ているとも思えました。

小野さんは溌剌と過ごす日々を心底楽しんでいそうなシンデレラでいじめられている感は年々マイルド路線になっている義姉たちの接し方を差し引いても一番薄かったかもしれません。
ダンスレッスンでの義姉たちのバタバタぶりを再現する踊りも蟹さんもびっくりな大きなガ二股で笑、床の鳴らし方もお手の物。
東京公演は札幌公演よりもずっと元気そうであったのも安心し、実は札幌では計算が苦手な私ですら予想が容易に思えてしまうほど
ヴァリエーションでの舞台周回が遅れてしまい、どう考えてもゴール地点である下手側に辿り着けそうにない事態をハラハラしながら眺めておりました。
札幌ヒタルの面積が広いのかその辺りは把握できずでしたが、舞台中央辺りでフィニッシュしてしまい、少々心配になっていたのです。
しかし初台では細やかに流れるような脚先のスピードも上がっていて尚且つお茶目な愛らしさもより強まっていた印象でほっとした次第です。

池田さんは伸びやか滑らかさに加えて大きな踊り方でシャキシャキと刻む様子が気持ち良く
パワフルな義姉たちに負けまいと奮闘しながらもお父さんを守ろうと堂々と遮る姿はどんな境遇であっても親孝行な娘ぶりに心を持っていかれました。
箒との踊りで結んだスカーフが落下してしまったときもありましたが、一切動じずむしろ言うことを聞かないパートナーに対して
巻き返しリードと言わんばかりに踊りのパワーが増して行った気すらいたします。

柴山さんは夢見る愛らしさとシャープな踊りが爽快なヒロインで、久々の役とは思えぬ力の抜けた伸びやかさも終始光る仕上がり。
大緊張に終わってしまった2016年、徐々に感情の通わせが見えるようになった2017年以来のシンデレラでしたが
馬車に乗っての宮殿行きも希望に溢れる表情で安心でございました。全シンデレラの中では最も清楚で物静かそうな雰囲気ながら
踊り出すと鋭くパキッと決めどころのポーズもダイナミックな要素も濃く出していて、踊りの振り幅が広く、観ていて良い意味で面白いヒロインでした。

井澤さんの王子はドンと派手な佇まいの力感が増して、少し身体が大きくなった印象あれど(失礼)、ソロの鋭さや跳躍からの捻りもきりりと決めていて好印象。
札幌では小野さんと並ぶと女王と家臣に見えてしまった上にパ・ド・ドゥもタイミングが合わなかったりとだいぶヒヤリとさせられましたが初台特に25日夜はようやくしっくり。
お互いの恋の喜びがじんわりと響き合い、自立心の強い少女が王子様に恋する物語を色濃く描画していたと捉えております。

速水さんは登場からの流れはいたく颯爽とこなして、笑顔のシャンデリア大点火。
1回目はパ・ド・ドゥが何箇所かぎこちない部分があり、息がもう少し合えばと辛めな目で観てしまいましたが2回目はだいぶスムーズになったかと思います。
ガラスの靴履きにて、義姉との静かなバトルも笑いを誘いました。
引き続き『くるみ割り人形』でも木村さんと組まれますから、パートナーシップの精度を上げていくと信じて開幕を待ちたいと思っております

水井さんは安定感抜群な全幕主役デビューで、池田さんとのバ・ド・ドゥの息がよく合い、突拍子もない振付三昧な中を滑らかで優美な情景を描画。
髪型のパーマはちょいと謎でしたが笑(ペサント時のナチュラルヘアのほうが良かったかと思います笑)
やや小柄な体であっても、高身長チームな友人達との共演では踊りの上手さでカバーなさっていて、飛び抜けた存在が伝わってきた印象です。

※ちょいと長くなります。オレンジ或いはかぼちゃのお菓子(季節はもう冬至が近いが)で小休止をどうぞ。

渡邊さんは登場時から人間ファンファーレで、金管楽器達の色味も音色も仰け反るであろう、宮殿の主なる存在感。
上階から観ても空間大きく捉えて支配なさっていて、真っ新になりがちな王子を舞踏会統括責任者且つお伽話の理想の結晶な奥行きある人物として描写なさっていました。
単なるきらきらだけではない、階段昇降時の背筋からも醸す高貴なオーラからは王家の伝統を背負う使命感までもが伝わる王子様です。
全募作品同じ公演期間中に米沢さんと柴山さん2人のシンデレラと組まれ、それぞれ違ったペアを目にできたのも喜びで
米沢さんシンデレラからは乙女らしさ引き出しつつも王者な風格で渡り合っていた印象。
対する柴山さんとは王道少女漫画な王子様で何度も顔を覗き込み微笑みながら甘酸っぱい香り通わす、爽やかなオレンジの甘みが伝う一方で
グイグイと行くパ・ド・ドゥ迫力満点。とりわけ2回目は2人でパワフルなテクニックを繰り出しつつ優雅に描き出すパ・ド・ドゥが眼福で、
シンデレラもただリードされる側にならず、星の精達に驚く王子にシンデレラが誇らしげに微笑んで
素敵な仲間たちが連れて来てくれた旨を王子に語りかけるような流れもロマンティック。
宮殿に到着までに妖精達とすっかり打ち解けていた情景すら浮かびました。
元々組めば端正な品格が表れ、近年は『夏の夜の夢」でのユーモアに満ちた変わり者妖精夫婦も印象にあるお2人ですが
2016年の『シンデレラ』共演時は柴山さんが大緊張、渡邊さん王子はひたすら励まし係で4階で観ていても励ます声が聞こえてきそうだったほど。
翌年の『シンデレラ』共演時は感情も通わせが見えてきて、そして今回、品格ある中に何てロマンティックな抑揚が溢れていたことでしょう。
お2人の誠実な踊りの良さはそのままに、満天の星空の如く広がる美しい感情が飛び交うパ・ド・ドゥは今も頭から離れません。
それにしても本来2人のダンサーと全幕で日替わりで組むのはさぞかし負担もあるはずながら、一切そう思わせぬどころか
それぞれ違った物語を存分に見せてくださり観る楽しみを何倍にも膨らませてくださる渡邊さんの力量はどこから来るのか、
1ヶ月経った現在も手を合わせたくなる紅葉の季節でございます。
同じ全幕公演期間中に2人と組むとなると相手の心身と向き合い、受け止めて、と相当なサポート力の持ち主でないと任されないでしょうし
しかも正統派クラシックとは異なる特徴ある振付が散りばめられたアシュトン版の全幕ですから信頼性の高さを窺わせ
山本さんや菅野さんと似たコースを歩まれていると再度感じ入った公演でした。

ソロのテクニックも申し分ない上に、シンデレラの家へやってきたときの靴とマント持ってのジャンプもスムーズで颯爽としていることよ。
マントもお飾りではなく出張時や視察時の愛用品であろう慣れた持ち方も好印象でした笑。
ファンファーレな登場ばかり焦点がたりがちですが2幕最後、正面に向かってシンデレラが落としたガラスの靴を掲げる姿は大勢の捜査員達を束ねる大事件捜査本部長を彷彿させ
何としてでも探し出そうと信念が恐ろしく強い、凛然としたお姿も焼き付いております。
そうでした、前にも触れた通り運動部のトレーニング並みに階段昇降の試練が多き王子ですが、
ヴァリエーション直後に階段を颯爽と上ってからの手を叩いてのオレンジ呼び出しも体勢全く崩れぬ身のこなしで立派でございました。

照明や宮殿装置の隅々までとどう調和しているか、上階からも観たかったため初日は上階から鑑賞。
立体感ある身のこなしやマズルカ勢や王子友人4名を始め全体の統率力の強さが目を覆うばかりでした。
よく不思議がられますが渡邊さんの日だからといって毎回舞台近く席を確保しているなんでことは全くなく
特に3回以上複数回ある公演に関しては3階4階からも好んで鑑賞しております。
装置や美術との全体の調和美を観たい欲もあり、また上階席まで届くスケールある踊りを目にすることや上階観客の反応の確認も楽しみの1つなのです。
道化ともキャスト違えば全く違ったやりとりで、木下さん道化とは有能な同僚同士な趣で、招待状作成や郵便局への持ち込みもこなす道化と、
赤ペンチェックもきっちりこなす舞踏会統括部長な王子様のお姿が浮かびます。
初役の石山さん道化とは上司と部下で、ソロをフレッシュに踊る道化をちょこっと厳しい目で見守るご様子もあれば、
後にも述べますが道化が王子の脚にしがみ付く場もあり笑、愛すべき弟分として日頃から可愛がっていると想像させる関係性です。

義理の姉たちは3キャスト。奥村さんと小野寺さんは大安定コンビで、奥村さんの美貌とやりたい放題になり過ぎないよう
舞台をコントロールする力量は回数重ねているベテランだからこそでしょう。小野寺さんのホクホクとした素朴な可愛らしさは癒しな存在で、そうかと思えば通り出すと達者でございます。
今回から解禁になったカーテンコール撮影では奥村さんが率先して観客のシャッターチャンス時間を作って小野寺さんにも指示。サービス精神旺盛な姉妹でした。

小柴さんと宇賀さんはほんわか系な姉妹で、小柴さんが怪我で途中降板の日もあり回復が心配でしたが期間中に無事復帰。
宇賀さんは一見とにかく愛くるしい妹ながら持ち前の身体能力で繰り出す踊りから言葉を整理整頓して伝えてくださる上手さにびっくり。
また騒ぎ過ぎないキュートな魅力や、しょんぼりしたときの可愛らしさにも注目いたしました。
初役同士の仲村さん菊岡さん姉妹はパワフルにぶつかり合う迫力で、仲村さんの背高く振る舞いもゴージャスな勢いに仰天笑。
仲村さんは急遽2幕から登場された日もあり思えばこの回がデビューだったかと思いますがそう思わせぬ溶け込み具合にも拍手です。

四季の精達はファーストキャスト陣が皆人間国宝か、世界遺産かと思う職人で春の五月女さんの曇り寸分もない歯切れ良さといい
夏の飯野さんの冗長になりがちなゆったり振付をいたく立体感を持たせながら身体を奏でる術、
秋の奥田さんの軸維持と素早いステップコントロールの高さは観るたびに仰ぎ見る至芸でございました。
そこへ冬は初挑戦の根岸さんで、初役とは思えぬ厳冬に瞬時に変える舞台支配力や、両腕をぴんと横に伸ばしたポーズからも季節の変わり目を語りかけてくる佇まいもお見事。
セカンド、サード陣の重圧は如何ほどかと思う恐るべきレベルなファースト陣でしたが山本さんの夏のスケール感や秋の赤井さんの瞬発力や深く入り込む角度の鋭さの連鎖も好印象。
私も長くこの版を観ているからこそ春は、夏は、と清少納言かと言われかねないくらいに
あれこれ要望やら過去の名人芸が出てきてしまうわけで初挑戦した方々にも勿論拍手を送りたいばかりです。

道化は5人でそれぞれに魅力がまた違って、木下さんは最上のもてなし上手で王子の有能な秘書のよう。
重箱の隅っこまでをもコントロールなさっている印象で最年長のはずながら、宮殿を駆け巡る振付もクオリティ高し。
札幌でも初日に登場された山田さんは機敏な統率力で、忙しい振付をきっちり整理頓しながら王子とも宮殿の人々とも
抜かりなくコミュニケーションを図って観客に伝えてくださっていたように思います。
上中さんは以前は引っかかっていたドヤ!!な力みがだいぶなくなって持ち前の高いテクニックを滑らかに強弱も付けて綺麗に制御しながら楽しませてくださいました。
前回急遽の登板であった佐野さんは力が随分と抜けて、やや粗めな部分はちょこっとあったものの身体の弾けっぷりはきらきらの宮殿を更に明るく照らすパワーで満たしていたと思えます。
石山さんはとにかく可愛らしく、ソロの部分は上司のような王子(笑)からはちょいと険しい顔で見守られていて、厳し目愛情を注がれていたと想像。
開脚跳躍はスパッと爽快で、振り向いてからの観客との会話も、王子へのお仕えも、特に2回目はよりナチュラルにこなしていたと見受けました。
鬼上司な王子であっても心から慕っているのか、シンデレラ宅でガラスの靴を義姉たちに履かせねばならぬときは
王子の脚にコアラのようの抱きついて道化のマーチな構図に笑。日頃からこう甘えては王子もまんざら嫌でもないどころか可愛がって一緒に宮殿で遊んでいるのであろうと想像いたします。

(あとにも綴るが、王子の友人は全然友人らしい振る舞いがないため笑)
道化の皆さんに共通していたのが相棒のお人形棒の丁重な取り扱い。
どれだけ急速テンポな振付であっても人形の顔の角度まで意識しながら見せる工夫で持ち続け、カーテンコールでも前を向かせてあげてお辞儀をしたり、
魔法をかけられると人形もくるくると回らせてあげたりと一心同体な相棒としての存在が伝わる扱いでございました。

王子の友人は年々平均身長が高くなっているのか、初台に立山連峰或いはヒマラヤ山脈が連日誕生。
友人とは言っても妖精たちとは連んだりと儀式的な繋がりしかなさそうな4人組で笑、
王子が捜査本部長を務める靴の持ち主捜索における踊る大捜査線にも不参加で
しかし結婚式には登場するのは設定としていかがなものかと思うものの、王子を華々しく支える存在感。
それとも宮中行事と普段は関係性が全く違うのか、想像はそれくらいにして
キャスト変更で全員体格異なる3人の冬の精と組んで連日王子の友人を務めた渡邊拓朗さん功労賞な活躍でした。

お伽話とはいえ疑問が浮かぶ箇所も多々あり、されどこれといって正解が明かされておらず、余白を考えるのが楽しいのもまた魅力でしょう。
仙女に命じられてシンデレラが巨大なかぼちゃを両手で持ち、段ボール箱を持ち出して行く東京地検特捜部の如く
さっさか運搬してきますが実は怪力?それとも既に魔法がかかっていたか、想像が巡ります。
それから銀色に輝く馬車も見所で、あらゆる版の中で最たる煌びやかな作りでしょう。
仙女がかぼちゃを投げると閃光のように輝きを放ちながら1周して瞬く間に走り去っていく馬車登場は毎度観てもうっとりです。
装着したベールも一緒に靡いていて、疾走感がより強まっています。もう1周して欲しい気もするものの、あの儚さもまた美しいときめきを誘う要素の1つでしょう。
2幕シンデレラ登場は淡い虹色を醸すベールのような照明に包み込まれ、宮殿にいる人々と同様に魔法にかけられた心持ちとなります。
シンデレラと王子が一旦なぜはぐれたのかも前々からの疑問ですが、宮殿の人々の波に続いていくうちに左右対称に離れてしまったかそして2人は何をして過ごしていたか。
されどパ・ド・ドゥの始まりが王子によるシンデレラ聞き込み探しからのロマンティックな再会ですからあまり深く考えないのが一番であるのかもしれません。

衣装の繊細さや緻密な刺繍の凝りようも顕微鏡で観察したいくらいで、とりわけ四季の精達の葉っぱや枝が組み込まれた凝った頭飾りの装飾は何度観ても息を呑みます。
それぞれのソロの前に紗幕が開いて季節を模した背景が現れる贅沢な演出等、隅々に至るまでお伽話の世界観に見入らずにいられません。
シンデレラの台所道具の細かさや舞台上では決して使用しない調理器具も多々掛けられていて、細部まで手の込んだ作り。
その台所を始め家を丸ごと動かして仙女の魔法の威力たるや。
そついえば履いて踊っても、エフロンホケットに入れたまま転倒しても壊れない力ラスの靴の、日本の町工場も防犯用品店もびっくりな強化ガラスですが
家を丸々動かしてはかぼちゃを馬車に変化させる仙女の魔法の強さを考えれば、
また時間を厳守したシンデレラへのご褒美も含めていると、何があっても割れないガラスにも納得です。
アシュトン版名物キャラクターである御用商人の方々も個性豊かで、許される範囲の中で皆さん工夫を凝らしての表現も生き生き。
中でも西川慶さんの靴屋さんは徹底した頑固お爺さんな造形で、もう素顔がよく分からないほどに老けているメイクを施して腰を屈めながら奮闘。
一方で、暖炉に手を翳して温まっている様子はほくほくとさせ、きっと肌寒い時期の設定なのであるうと季節の想像をも楽しませてくださいました。
義姉たちとは反対にシンデレラが優雅にダンスステップを踏む箇所では誰よりも喜びを露わにしていた、心優しい靴屋さんなのでしょう。
日によっては王子様のすぐ背後辺りにいらしたため、カーテンコールでもちょうど写り込んでくださり嬉しい限りでした笑。
端正な風貌が全壊する宝石屋さんの髪の靡きも、アシュトン版の上演がある限り装着は継承されていくのでしょう。

それにしても、シンデレラー家ほど、強烈な顧客は他にいないであるう慌しく大騒ぎな舞踏会準備であっても
品が下がったり嫌味に思えないのは音楽の抑揚と振付が余りにも滑らかに合致している上に、義姉たちの慌てぷりとそれを見守る商人達の反応や
シンデレラの優雅さが引き立つステップで締め括る呼吸もまた、愉快なキャラクタ一達のひと騒動としての効果を呼んでいるからでしょう。

チップ貰いに来る、登場時間1分もないにも拘らず今回は水井さん、嘗ては渡邊さんといった王子役ダンサーも掛け持ちする御者も注目度高き役柄で、
縦に垂直に持つ鞭を義妹からビヨーンと弾かれるのがお馴染みのイタズラですが、
義妹に対して初挑戦の小川さんの叱り飛ばして懲らしめているのも妙に脳裏に焼き付いております。

頼りないと思われがちなお父さんも、中家さんは仕立屋さんによる脚の長さ計測時により長い数値を出したいのか体勢変えてまで再チャレンジ。
舞踏会では整列する延臣男性陣を巡回中の上官の如くずっと凝視なさっていて、時にはメガネを至近距離に当てて、
日頃の生活の鬱憤を晴らしていたのか視力検査なイタズラも行うお茶目なお父さんです笑。
石山さんや上中さんら、道化役ダンサーが日替わりで付いていた位置の方々が標的だったのか、石山さんは笑ってはいけないゲームに勤しむ人と化していたほど笑。
本当に吹いてしまったらどうなっていたのか気になるところです。

今回大きな改訂部分もあり、時代に即しての対応とのことでしたが仙女変身前の老女を美しい女性として描写し、
ナポレオンとウェリントンの名前を載ず求婚者としたものの半端なアップデートに思えたのは否めず。
東京に先駆けて行われた札幌公演初日開演前にナポレオンやウェリントンの名前が未記載である旨に気づき、1幕での仙女変身前の老女役名は明記。
このときは2幕の鬘ネタがなくなり、1幕はシンデレラの運命決定に拘る大役である老女役を演じるダンサーにも敬意を表する意図かと思っておりました。
求婚者という役柄名はやや分かりづらく、しかし札幌は趙さん西川さんのお名前があったため背丈条件からおおよそは予想がついた程度でした。
質の装着者や髪の少なさをからかうのは正直明るい気分にはなれず、何より本当に悩まれている方々に対して失礼にあたりますし
ナポレオンを風刺して小柄で丸々した容姿で描く一方で背高くウェリントンはヒロイックに見せる演出も、今は英国でも受け入れてはもらいづらいでしょう。
ところが、仙女変身前の老女は素顔がわかりなほどに綺麗な女性に変更。服もボ口布でもなく、前世は星の精でしたと言わんばかりの
抑えた中からキラッとした輝きすらある女性と見て取れ、このまま仙女になってもおかしくないと思ったほどです。
ですから義理の姉たちが追い払おうとする展開や、相手が醜かろうが嫌われ者であったとしても
関係なく手を差し伸べるシンデレラの優しさに説得力が生まれにくい演出となっていた印象です。
ただ救いであったのは老女役に配された関優奈さん、大木さんがともに演技力もあって工夫した造形であったこと。
関さんは謎めいた雰囲気を厳かに表出し、近寄り難い女性として描画。対する大木さんはキツめに迫ったり、シンデレラには笑みをしっかり送って性格の見抜きを伝えて
安心感を与えたりとよりチャーミングな表現。 頷いてシンデレラの内面をしっかり確認する仕草や仙女現れる寸前までシンデレラを見つめて去る様子に説得力がありました。
お2人とも立ち居振る舞いに立体感もあり、怪しい空気が流れる中でメリハリを効かせてのマイムや動き方も冗長さを一切感じさせず、
暗めな照明の中でも存在感を示してシンデレラの未来を運命づける役割を果たしていらして好印象でございました。

宮殿のマズルカ陣は札幌公演よりは格段に背中の使い方やの捻りが効いて、一安心。
星の精たちは全身での瞬きがあれば尚宜しく、ただやり過ぎてもならず、表情だけ走ってもならず、和も乱してはならず、その加減もまた難しいのでしょう。
ベテランが一気に抜けてまとめ上げが難しいのはどのシーズン始まりもよくあることで、
プロ初舞台がこのシンデレラである団員の方もいらして、いきなりアシュトン振付の群舞は例えば白鳥の湖や眠れる森の美女と比較するとハードルは遥かに高いでしょう。
指導方法、進め方には問題がなかったか、気になるところです。
それはそうと、指先まで行き届いた星々のキラキラ感と時計の針を融合させたような鋭くも美しい振付を不穏さと高揚感を混ぜ合わせた曲調にのせての
変則的はフォーメーション変化をめくるめくと見せたのちに 四季の精達、仙女が再び登場して
かぼちゃを馬車を出迎えて見送り付き添っていく1幕最後の場面は何度観ても溜息がこぼれる場面です。

改訂点について疑問な部分はあれど、またシーズン開幕にしては大々的な看板や垂れ幕も無く、ゲスト日以外は集客に苦戦してしまい新たな課題も沸いた幕開けになった気もいたしますが
伝統ある究極なお伽話を連日鑑賞できたのは誠に幸い。これからも再演重ねて欲しい作品でございます。



※以下、写真色々ございます。カーテンコール写真は座席の都合上1キャストに偏っていますが悪しからず。


木村さん速水さん組



木村さん速水さん組、拡大。



小野さん井澤さん組、全体ズームなし。



小野さん井澤さん組、全体ズーム少し。



小野さん井澤さん組緞帳前へ



ホワイエで販売モンブラン。滑らかな舌触りで栗の甘みしっかり!プラス、かぼちゃデザートもあれば尚嬉しうございました。いつぞやのかぼちゃプリン、懐かしい。



ガラスの靴に憧れるしらかわん。劇場のガチャガチャにて購入された方より、撮影させていただきました。



壮観!(25日昼)



向かい合うお辞儀。緞帳前にて19日。



向かい合う瞬間!



柴山さん渡邊さん組、青みがかった写りも幻想的で美しい。



にっこり。蕩けます。



お辞儀拡大



優雅な礼!



シンデレラの結婚式がそのまま続いていると思わす夜のオペラパレスのテラス。しらかわん、星灯りに包まれている気分に浸っています。
地元の王子様がいつも主役を務めているホームの劇場の美しさにすっかり心奪われると同時に、王子様を益々誇らしく思ったそうです。
終演後ちょこっとテラスに出たところ、ある観客の方も灯りが優しげに連なって輝く光景を写真に収めたくて出てきてみたと
幸せそうなご様子で短時間ながら穏やかな余韻を共有でございます。



偶然の失敗、星達が光の雨を降らせてくれていると思える写りです。しらかわん大興奮!初台残念写真グランプリに輝けそうでしょうか笑笑。



また来たいな、オペラパレス!しらかわんも記念撮影です。加えて何でもっと早くに初台に連れて来てくれなかったのかとも言いたそうです。
観劇デビューは帰省も兼ねてのコミネス白河、次が今夏7月ロンドンのロイヤルオペラハウス、その後は東大阪文化創造館、鎌倉芸術館、福岡市民ホール、名古屋のホール、
コミネス白河、京都の八幡市民文化センター、岡山の矢掛町のホール、札幌のhitaru、
愛媛の西条市総合文化会館を経てようやく初めてのオペラパレス。順番が大胆過ぎると訴えています笑。



帰りは2回目のマエストロへ。友人も私もこの回で見納めです。この日はお互い昼夜鑑賞!



人参ムースとコンソメのジュレ 魚介のマリネ。爽やかさが何層にも重なり、シャンパンによく合います。
研修生時代からの拓朗さんをずっと応援なさっている方で、3人の冬の精と組んだ功績も大きな話題に。



サーモンと生海苔のアーリオオーリオ。初めて食べる組み合わせです。サーモンと生海苔の不思議な滑らか食感もよく絡んで美味しい。



鶏もも肉の赤ワイン煮込み。ブルゴーニュの赤ワインが進みます。



ショコラテリーヌ。赤ワインにも合う濃厚重厚な味わいで、プロコフィエフ音楽を彷彿です。



米沢さんに駆け寄る



柴山さんに駆け寄る。
渡邊さんの駆け寄り方が毎回パッションに溢れていた惚れ惚れ止まらず。


優しく強く骨の髄まで気品宿るエレガントな王子様です。宮殿では普段どのようにお過ごしなのでしょう。
王様達に代わって財務、防衛、福祉等国政全般をお1人で担っていそうな気概すら感じさせ
ただ綺麗なだけではない、生き様の背景までもが見えてくる使命感凄まじい王子様でした。


プリンシパルの皆様のモノクログラビアもありました。お1人だけ上半身裸体なのは何故でしょう笑??


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