
7月5日(土)ヒューストン・バレエ スタントン・ウェルチ版「ジゼル」を観て参りました。
ジゼル:加治屋百合子
アルブレヒト:コナー・ウォルシュ
ヒラリオン:ジュリアン・レイシー
ベルタ:ジェシカ・コラド
ウィルフリード:ハーパー・ウォッターズ
公爵:ナジール・ムハンマド
バチルド:アリッサ・スプリンジャー
狩猟長官:ジャック・ウォルフ
花嫁:徳彩也子
新郎:エリック・ベスト
ミルタ:ブリジット・アリソン・クーン
ドゥ・ウィリ
ズルマ:藤原青依
モイナ:タイラー・ドナテリ

加治屋さんのジゼルは全幕、パ・ド・ドゥ問わず初見。ピュアな愛らしさと年齢やキャリアを重ねたからこそ滲み出ているであろう包み込む優しさにも感激。
豊かな情感が満ちる踊りにもすっかり魅せられ、無邪気な中から醸す品ある美しさにもうっとりです。
ベテランでありながらますますエネルギッシュに魅了する全幕主役を務めていらっしゃることにも平伏す思いで拝見。
2幕で驚かされたのはパ・ド・ドゥにて、今までに観たどのジゼルよりも表情が明るく希望に溢れるような朗らかさで
アルブレヒトを少しでも楽な状態にさせることができると安堵の表情が広がっていた気がいたします。
加治屋さんのジゼルといえば上海舞踏学校時代の2000年のローザンヌでのヴァリエーションが今も印象深く、あたたかな可愛らしさある少女と記憶。
あれから約四半世紀。ようやく全幕にて鑑賞でき、感激の一夜でした。
ウォルシュは2012年、2013年の新国立劇場バレエ団客演以来の鑑賞で、今もびっくりするほどに若々しく青年貴公子に見える容姿。
ちょびっと遊びなアルブレヒトでしたが、事態が急変したとき、ジゼルと仲良く交流を深めていた心優しいバチルドに詰め寄られている狼狽ぶりが妙にリアルなオロブレヒトでございました。
腕が柔らかで長く、あとにも述べますが通常の版よりも多めに音楽を使用した演出においても優雅さが引き立つアームスが物語っていた印象です。
加治屋さんとウォルシュの黄金とも思わすバートナーシップも見所で、終始目と呼吸するように会話するお2人。
ジゼルとアルブレヒトのやりとりも他の版よりたっぷり、あるいは繰り返しての曲使用部分もあり、下手すれば場が持たないでしょうが
持たないどころが更にドラマが深まってもっと観たいと思わせるペアでした。
レイシーのヒラリオンはブーツではなく、また見た目もそこまでもっさりしていないため一見貴族とそう違いが見えず。
しかし友人から見せてもらったプログラム解説によれば貴族達の狩猟場を守るリーダーな存在と知って納得です。
大概のヒラリオンは皆の前で一斉にアルブレヒト身分詐称大暴露をしますがウェルチ版ではまずはこっそりジゼルに伝えようとする場も描写。
しかしジゼルに相手にされず、ヒラリオンはいじけたのか精神統一なのか、心を無にしながら大暴露に走ろうと決意に至ったのか
ペザントやフィナーレギャロップの最中に舞台後方端にて短剣を駆使しながら木工細工に勤しんでいて 遠目で見るとこけしに思えるもそんなわけはなく、木彫りのくまさんか。
完成すると近くの樽の上に置き、そしていよいよヒラリオン砲のスクープを暴露する展開となっていました。小さな小鳥にも見えたが真相はいかに。
それはそうとヒラリオンの心理変化や憎悪の昂りのカウントを静かに刻んでいるような木工細工演出、なかなか面白味がありました。
2幕冒頭はウィリ達の気配に脅がされる場にてビュンビュンと疾風のように跳躍をしながら 舞台袖までぐるぐると回転移動。
ミルタのみならず、ウェルチにも散々踊らされるヒラリオンです笑。
先述してきたようにとにかく通常版より音楽の数が増え、踊りの見せ場も豊富なウエルチ版。
2時間弱では終わらず、1幕2幕ともにそれぞれ1時間以上でした。しかし村人や貴族達の踊り増加のみならず
さりげなく細やかなドラマが組み込まれていて説得力ある流れを描写。ウェルチの鋭い感性に触れた思いでおります。
例えばジゼルとアルブレヒトの戯れは何度か同じフレーズが繰り返されて長くなっていたものの加治屋さんとウォルシュの語らいがいたく繊細であたたかみがあり、
2人で更に伸びやかなポーズや仕草を繰り出して 恋する楽しさを体現。長くなっても流れが断ち切れずもっと観たいと思わせたほどです。
そして貴族達は男性は『白鳥の湖』1幕の宮廷のワルツかと見紛う踊りやすいすっきりした衣装で
百貨店のギフトの如く白地に太い赤リボンの装着帽子は首を傾げるも(色は違えどトトロのメイちゃんをご想像ください)
跳躍を多用した振付をパワフルにこなしていました。女性陣もバチルド筆頭に長いドレスを翻しながら舞っていて、裾のコントロールカ含めて見事。
ペザントは新郎新婦を主軸にした徳さんとベストの歯切れ良いリードや、踊り終えた後のにこやかに並んでの睦まじい新婚姿も魅力いっぱいでした。
パチルドはジゼルと交流して打ち解ける親切な女性として描かれ、最初ジゼルをシッシッと追い払おうとした狩猟長官と思わしき人物を制してまでジゼルを引き寄せていたほど。
だからこそ、アルブレヒトがジゼルとも婚約していたと知ったときには怒りの矛先をアルブレヒトに向けて詰め寄り、
ジゼルに対しては心を痛めながら慰め、大切な友人を傷つけた男を決して許そうとしない強さが光る女性でした。
2幕はヒラリオンや村の青年達が大勢来ていて時間としてジゼルの死から数年が経った頃らしい。
悲しみに暮れている様子がなかったのは序盤のみで、ウィリ達の気配に震えながら逃走したところへミルタが登場。鮮烈な墓地の始まりでございました。
どのダンサーも技術表現力ともにレベルが高く、踊って踊ってドラマもしっかりと見せようと展開していくウェルチ演出の期待に応えるのは相当の訓練が必要なは ず。
ウィリ達のコール・ドも統制力抜群で、一斉交差時にはくるっと1回りしてからポーズに入ってアラベスク移動する技巧派なウィリ達でございました。
米国のバレエ団のジゼルと聞くと大味、パワフル過ぎるかと思いきやとんだ失礼で見せ場も人物の背景描写もボリュームアップしたウェルチ版、たっぷり堪能いたしました。
1幕村娘達のくすみを効かせた品あるスカートやジゼルの愛らしい快活さをそのまま色彩化したような黄色い衣装も可愛らしいセンス。
初日に上演されたオール・ウェルチ作品ガラも次こそは観てみたいと思っており、再び企画されますように。

舞台写真展示。1幕バチルドと

皆で1幕

ウィリたち

蝶々夫人。疾走感が写真からでも伝わってきます。 星条旗な鞄のセンスはなかなか、、、。

カーテンコールにて、2人。

ウィリ達

カーテンコールは撮影可。カメラの腕不足で顔がわかりづらい写りばかりですが、雰囲気が伝われば幸いです。

皆で前へ。

帰りは赤ワインで乾杯! 今年の国内ジゼル祭り2025はひと段落。とにかく多かった。 ウクライナ、スタダン、新国、東バ、牧、ヒューストン。

後ろにお世話になっている、関東圏の遭遇劇場数1位なお方がいらして合流! 過去には現地にてヒューストンバレエをご覧になっていたそうで、お話を聞かせてくださいました。
0 件のコメント:
コメントを投稿