2025年7月3日木曜日

障子と長年の壁を突き破ってのオペラパレス討ち入り!!!東京バレエ団『ザ・カブキ』 6月29日(日)





6月29日(日)、新国立劇場オペラパレスにて東京バレエ団「ザ・カブキ」を観て参りました。
これまで東京バレエ団は中劇場では「ザ・カブキ」全幕、
『ボレロ』『イン・ザ・ナイト』『スプリングアンドフォール』のトリプル・ビルは上演していますが、遂にオペラパレス初見参です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/kabuki/cast.html

※キャスト等はNBSホームページより

振付:モーリス・ベジャール
音楽:集敏郎
由良之助:柄本弾
直義:安村圭太塩治判官:大塚 卓
顏世御前:榊優美枝
力弥:小泉陽大高師直:鳥海 創
伴内:池本祥真
勘平:樋口祐輝
おかる:足立真里亜
現代の勘平:山下湧吾
現代のおかる:安西くるみ
石堂:宮村啓斗
薬師寺:後藤健太朗
定九郎:岡崎隼也
遊女:加藤くるみ
与市兵衛:岡崎 司
おかや:伝田陽美
お才:平木菜子
ヴァリエーション1:加古貴也
ヴァリエーション2:井福俊太郎







最初に申し上げておきますがお恥ずかしい話、鑑賞3度目であっても今ひとつあらすじ理解に至らず。
前回2024年10月公演も今回も2幕後半の討ち入り群舞を目当てに足を運んでおります。加えて今回はオペラパレス討ち入り。
ただ幕開けから終幕まで、歌舞伎の幕を用いながら場面を区切る緊迫感のある話の運びには引き込まれており、
電脳都市秋葉原を思わすテクノ系音楽や派手なネオン風色彩で彩られた幕開けは今回もインパクト大。
作品初演時の1986年のままでは今の感覚では古い時代に思えるためか、恐らく映像や人物描写は所々毎回アップデートなされているようで
新国立劇場の正面玄関の角張ったガラス製も屋根らしきもの、東京スカイツリー、スマートフォン上のLINE画面、舞台の上を電動ボードで走る人もあり。
一方で残されている映像もありそうで、営団地下鉄の表示は懐かしや。

バレエでタイムスリップが描かれての現代といえば、タイムスリップとはまた違うものの
つい先週まで同じ会場で上演されていたウィールドン版アリスもこの先30年40年と再演されていくでしょうが、
エピローグで登場する「現代のラジカセ」が今でいう蓄音機なレトロ機械としていずれはみなされるときが到来するでしょう。

今回、柄本さんの芸術選奨文部科学大臣賞受賞を記念した公演でしたが中日にはテクニックキレキレの宮川さんが同じ役でご出演。
柄本さんご本人は相当な重圧もあったでしょうが、お若い頃の勢いは抑えめにはなったものの力強さとさを自在に体現された由良之助で
タイムスリップしてどうしたら良いか路頭に迷うところからの取り憑かれたように覚悟を決めての討ち入りまで、生奥深く体現なさっていた印象です。
名物の三角隊形の討ち入り群舞の先頭に相応しい豪胆なオーラにも吸い寄せられました。四十七人(途中から24人構成?)の中にいてもすぐさま目に留まります。

榊さんの顔世御前も印象深く、歩き姿も仕草も嫋やかで静けさの中から滲む香りや物憂げで伏し目がちな眼差しにもうっとり。
全体をぐっと引き締めていたのが池本さんの伴内で、深く鋭く迫る踊り方や強弱をミリ単位で付けて見せる術もお手の物でした。
討ち入り前にも男性群舞の見せ場は多彩にあると今回ようやく気づかされ(過去2回何を観ていたんだ)、赤褌隊には仰天。
それから巻物を下手側端から滑らかに転がし、上手側端での待機者が足でぴたりと止める流れも強豪チームのサッカーのパスの如く無駄が一切なく行われていてびっくり。
その後皆で片手を床に突く光景がどうしても一世風靡セピアを思い出してしまいましたが(失礼、どの世代まで通じるでしょうか)迫力は壮観でした。
そして討ち入り。舞台後方の上手側下手側から交互に四十七土達が腰を落とした体勢で走り込んできて整列し、出来上がる三角隊形の見事なこと。

今回3階席で観たところ、『ザ・カブキ』及び東京バレエ団は文化会館の感覚でいたせいか新国立オペラパレスで観ると舞台と客席の近さに驚くばかり。
何度どころか年間50回程度は来ている新国立劇場であっても、
通常は他の会場で公演を行っている団をいざホームな劇場で観てみるといつもとは大きく異なる気分が生じて、まことに新鮮な体験でした。

何しろつい10年ほど前までは東京バレエ団による新国立劇場での公演開催なんて、太陽が西から昇り始めるくらいの天変地異がない限りあり得ぬことで
以前に理事を務めていらした佐々木忠次さんの新国立批評が強力な影響を及ぼしていました。
客席の少なさ、ハードは作ってもソフトの未熟さなど、紙媒体で定期的に刊行されていたNBSニュースのコラムは頻繁に新国立への批判な言葉がズラリと並び、
また著書でも相当な吠えっぷり。欧州からの歌劇団やバレエ団招聘の立役者であるのは紛れもない事実で、創立から数年でソ連や欧州での公演を成功した東京バレエ団の実績からすれば
長年の構想を経て設立されるも新国立という国立の名を冠するものの体制やダンサ一の雇用の面等々
言いたい不満は常時ヒマラヤ山脈状態だったのは致し方ないのかもしれません。(しかし痛烈だった汗)
中でも2003年に新国立が公演をNHKでテレビ放送したときの当時の芸術監督のインタビューについては猛批判をなさっていた記憶がございます

今回カブキ再演人気で、ただでさえ「座席が少ない」オペラパレスのZ席にあたる4階RL1列周辺は売らずの対応であったため文化会館に比較すると更に席数が減り千秋楽は完売。
文化会館ではバーミンガムロイヤルの『シンデレラ」公演中でしたが東京バレエ団側は全幕古典でない作品であってもキャンセル待ちの列ができており、
佐々木さんのご意見は間違ってはいなかったとも多少は思えますが。

しかし時代は変わり、最近では新国立ダンサーが上野の森バレエホリディ企画に登場したり、新国立ニューイヤーバレエ来場者向けに
ニューイヤーゲスト出演者が関連する来日公演のお知らせをNBSが配布したりと、徐々に壁は薄くなりつつありました。
物価高騰にホール不足問題が絡み、もう非難し合っている場合ではありません。協力体制を願います。

東京バレエ団好きな方から「討ち入りに来ました!」と挨拶され、こちらからは「ようこそ討ち入りへ!」と歓迎の回答をしたりと
思えばきわどい会話を繰り広げていたホワイエでしたが笑、元々ファン同士はいがみ合うことなく(多分)、相互理解してきた。わけです。
今後の舞台公演実施についても考えさせられた東京バレエ団オペラパレス初見参公演でした。

それから、人数多く毎回助っ人が欠かせないらしい四十七士群舞はもしかしたら助演に会場を本拠地とする新国ダンサー達が参加か、
いよいよ協力体制強化か?と微かな希望持って観ておりましたがそこは無し笑。
しかし誰よりも、ひょっとしたら東バ陣よりも⁈熱血鉢巻着物武士姿が似合う、
ベジャール作品経験ありのプリンシパルが初台におりまする。いつかチャレンジ機会あれば出陣願いたいところでございます。




オペラパレスに東京バレエ団がやってきた、討ち入りへようこそ!横断幕こそなかったが笑、新国立劇場バレエ団好きとしては大歓迎です。



大入!新国立シーズンガイドブックを販売している辺りでプログラムを販売。
プレゼント受付の横では東京バレエ団クラブアッサンブレ会員募集受付も行われていました。
新国立ファンからしても、アッサンブレは会費といい特典といい、かなりお得と感じます。非会員ですが、私も勧めたくなります。
新国立バレエの公演ではないため公演限定飲食メニューはなかったものの、新国立ホワイエ名物レギュラーデザートのシュークリームやカヌレ、
軽食のライ麦サンドイッチやハンバーガーも?販売しておりもしかしたら今回初めて召し上がった東バファンもいらっしゃるかもしれません。お口に合えば幸いです。

東京文化会館では公演限定飲食は恐らくは販売されていないため(様々な団体が使用しますから仕方ない) ザ・カブキならカブキ饅頭、カブキあんみつ、
カブキおにぎり、四十七土達が食べた説の有無は謎に包まれていますが、ちなんだメニューとして飲食店で見かける討ち入り蕎麦!
(新国立ならば大晦日くるみの定番化のおかげで蕎麦販売のノウハウあります笑)などあればより気分が上がりそう。ネタが色々浮かびます笑。



新国立バレエの上演時と同じ、額縁や設置場所に東バキャスト表。新鮮です。新国立の物品使用も嬉しい。



タイムテーブルも新国立のバレエやオペラと同じように設置され、カブキ!



任務を終えたハートのジャックはハートの女王様による斧持っての討ち入りから逃れるために笑!?
不思議の国の安全な場所へお帰りになりましたが、代わって由良之助パネルが出現!



写真つき説明。



写真付き説明。


ポワント・シューズ基金への感謝の言葉が並びます。柄本さん池本さん。



榊さん。



伝田さん。



帰りはオペラシティのお店へ。長年通っているエリアだがバレエ鑑賞帰りになかなか和食系のお店には行かぬためか初訪問です。



イワシの梅酢刺し、さっぱりと美味しい冷酒で乾杯です



つくね。タレがほどよく苦味があり、好みな絡み具合です。和食なお店ですが店内 のBGMはビートルズでした。アビーロードへの興味が強まってきます。



うずら。顔世御前が手にしていた花の枝に似ている気がいたします。 これからも新国立とNBS/東京バレエ団、仲良く協力体制で!

2 件のコメント:

aruyaranaiyara さんのコメント...

>アビーロードへの興味が強まってきます。
是非、ロック史上のみならず、音楽史上の金字塔作品アビーロードを聴き込み下さいませ。
特に、後半のメドレーはマスターピースで、管理人様の心に届くと思います。
東バのKABUKI、大好きな作品で、文化会館でのマッチィングが馴染で、新国立の空間にどのように舞い上がったのか、興味津々です。
観たかったな~!

管理人 さんのコメント...

aruyaranaiyara様

こんばんは!アビーロードについてもご反応をありがとうございました!
心に届きそうな構成、じっくり聴いてみます。

ザ・カブキ、お好きなのですね!
本当に仰る通り、都内では文化会館での上演があまりに刷り込まれていますよね。
新国立では新鮮に映り、何度も来ている劇場であっても舞台と客席の近さには誠に驚きを覚えました!