
6月26日(木)、バレエミュージカル「カルメン』を観て参りました。
https://balletartsjapan.com/
https://www.dancersweb.net/%E8%A4%87%E8%A3%BD-top-interview-2
構成演出振付:上島雪夫
音楽:笠松泰洋
振付助手:稲葉由佳利
歌唱指導:蛭牟田実里
カルメン:寺田翠
ホセ:菊地研
エスカミーリョ:秋元康臣
スニガ・トレアドール:吉留諒
ミカエラ:吉田早織
現代の恋人・オンブレ:東山光明(歌手)
現代の恋人・ムヘール:noyori(歌手)
街の女・ジプシー:佐藤彩未 テッラコーネ沙夜 長谷川未紗 中村優希
寺田さんのカルメンは研ぎ澄まされたラインが引き立つ艶かしいヒロインで
ウクライナやロシア圏の地域の大きなバレエ団にて長らく主役を張ってこられたキャリアを思わすオーラと身体能力、揺るぎない技術のすぐさま虜となりました
少し顔を上げての視線の向け方や余韻を残しながらすっと香りを放つ色っぽさといい、同性でも沼に落ちてしまいそうな危うさを宿すヒロインです。
寺田さんはこれまで3度舞台を拝見しておりますが2013年と2017年の新国立劇場バレエアステラスでのダイアナとアクティオン、
2016年大阪でのMRBスーパーガラのパリの炎、と全てガラで、しかもどれも超絶技巧お披露目路線パ・ド・ドゥの鑑賞。
幕物作品での主演が今ひとつ思い浮かびづらかったのは正直なところでした。
ところが、序盤にてシルエットが見えた瞬間から身体での語りかけに魅せられ、踊り出すとこれ見よがしなことをせずとも脚線や肩の使い方にも見入り、
色っぽさはありつつも磨き抜かれた職人気質な踊りに圧倒されっぱなしに。これはホセもエスカミーリョも心持っていかれるのも頷けました。
プロフィールを拝見するとモスクワ国際バレエコンクール入賞やノヴォシビルスクオペラ劇場の経歴しか書かれておらず、文字数制限等あったのかもしれませんが
実際にはタタールスタン歌劇場バレエやウクライナのオデッサ歌劇場でも主役級で活躍されてきた豊富なご経歴も掲載していただきたかったとも思っております。
菊地さんは見るからに優しそうなホセで、任務中は上官から何度も優しさに漬け込まれていそうな真面目青年。薄いブルーの軍服も雰囲気後押しです。
カルメンの誘惑に負け、純朴勤勉さがみるみると剥がれ落ちていくさまをおどろおどろしく体現され
カルメンに恋い焦がれて酔いしれて、遂には刃物を手に取るほどに凶暴化していく変わり様も内側から沸き上がるような熱を帯びて斬り込んでいらした印象です。
菊地さんの舞台は直近ではバレエ教室の記念発表会全幕『ドン・キホーテ』でのタイトルロールで
それはそれは上品で優しげな風を吹き込んで場を引き締めてくださいましたが、今回のような幕物の踊る主要役もまだまだ観たいと思わすホセでした。
エスカミーリョの秋元さんは出番少ないのが惜しく、されど短時間にぎゅっと詰め込まれた場にて花形闘牛士な空気を流していらして、
エルビス・プレスリーも仰天しそうな地にキンキラキン衣装もしっかり着こなしていたのも丸。
スニガとトレアドールで変幻自在な活躍を見せていたのは吉留さん。冷酷そうな鋭い上官スニガと、エスカミーリョを支える一歩引いた感のあるトレアドール、
一見別の人が出てきたかと思うほど、衣装だけでなく表情も見せ方も大きく変えてくる即座対応でこなす腕前でございました。
ただ清楚で一途な部分にとどまらない描き方でハッとはせられたのは吉田さんのミカエラ。
可愛らしいブルーの村娘風ワンピースな衣装でそれはそれは恋するピュアな愛くるしい娘である一方、罪に手を染めたホセを変わらず信じて励ます強さが光りました。
目を見張ったのはホセがカルメン刺殺後のシーンで、ホセだけでなく彼に関わってきた人々が
続々と心理崩壊していく展開をミカエラによるリードで描写。罪を犯したホセ本人のみならず
周囲をも悲痛の奥底へと突き落とす行動をホセが取ってしまったかを重たい余韻を引き摺りながら描き出す、印象深いひと幕でした。
今回80分間休憩なし1幕全幕仕立てでしかも少人数構成。ぶつ切りな面も出てくるかと思いきや
街の女やジプシーのダンサー達が役を変えながら間をスムーズに繋げて場面転換を後押しし、先述の通り吉留さんの即時対応活躍も大きな貢献であったでしょう。
それから最大の関門、歌との融合。本来言葉を使わずして伝えるバレエの中でどう描いて行くのか当初は心配でしたが笑、始まってしまえばしっくりとした仕上がり で
東山さんとnoyoriさんの穏やかな語り口で物語のドアが開いて19世紀のセビリアへ。
歌も多過ぎず、お2人とも出しゃばらずあくまでダンサーを引き立て一緒に呼吸するような歌唱で好印象でした。
「カルメン」の曲が余りに有名で、またあらゆる振付家によってバレエ化もされており
オペラは2年に1回観るか観ないかの頻度の私でさえほぼ全曲把握しているくらいですから
所々ロックな編曲や日本語歌詞での披露に全く違和感を覚えなかったわけではありませんが、よく纏まっていたと思います。
そうでした、2年前に歌やミュージカル、朗読とバレエの共同公演にて上演された別団体主催のラフマニノフの生涯を描いた作品にて
帝政から共産主義に変わる頃のロシア、ソ連の歴史内容も取り入れたりと台本はきちんと書かれていて学び多き面日さであったものの
劇中でラフマニノフとチャイコフスキーが坂本丸さんの名曲を熱唱する時空超過にもほどがある場面を目にしてからは
どんな構成でも受け止め可能になりました汗。今回の「カルメン」にはラフマニノフのときほどの腰抜かす衝撃場面はありませんでしたので、一安心。
最後は上島さん、そしてミュージカル風に一部の出演者によるご挨拶もあり。(ミュージカルは毎回そういう挨拶習慣があるのでしょうか)
バレエダンサーも例外ではなく笑、皆さん普段なかなか生の声を聞くことないですよ~と観客に対して上島さんが声かけなさっていたほどで
NHKの工作番組『できるかな』における、無言を貫いてきたノッポさんが最終回になって初めて声を出したときのような珍しさでしょう。
寺田さんと菊地さんが代表して挨拶され、特に菊地さんが、言葉無き芸術を日々追求し続けている身からすると当初は抱かずにはいられなかった歌との融合への不安は
バレエダンサーならば、またバレエ愛好者なら誰もが思うであろうことを誠実に代弁してくださり
しかし、リハーサルが始まってみると歌の感情にも乗せられてよりも入り込んで踊ることができた喜びを晴れやかに語ってくださいました。
上野の森バレエホリディでも感じましたが菊地さん、言葉の選び方といい聞き取りやすい口調といいお話がとてもお上手です。
そういえば、ラフマニノフ及び翌年のバレエやミュージカル共同企画公演にて終演後に挨拶なさった
男性プリンシパルバレエダンサーは校長先生風な口調で役柄とかけ離れた感がそれはそれで貴く思えたものです笑。
終演後の演出は今回のカルメンも、以前に鑑賞した別団体主催のラフマニノフや翌年の同主催団体によるプッチーニ企画もバレエとミュージカル合体型公演では
どちらかといえばミュージカルの手法が重視されている感がありますが、異文化体験を楽しんだ私でございます笑。
そんなこんな、バレエとミュージカルで名作文学を描いた公演、堪能いたしました。
バレエ芸術推進協会さん主催公演は、昨年のGENJIや2021年2023年のロックバレエと、所属団体を越えた共演企画も毎回面白く、次回も心待ちにしております。
※カーテンコールは写真撮影可でした!

集合ポーズ

決めポーズ!

色々な角度で撮影タイム。

バレエとの共演の楽しさを語るNoyoriさん。最初はダンサー達に圧倒されてしまったそうです。

お話上手な菊地さん。

寺田さんも、感謝を丁寧に語っていらっしゃいました!

亀有といえばこち亀。リリオに来る度に記念撮影しております。漫画に疎く、こち亀も漫画自体は読んだことありませんが、何故か撮影したくなるキャラクター達です。

赤ワインと生ハム等で乾杯です。プログラムも合わせて赤で統一!