
順番前後いたしますが3月22日(土)、新百合ケ丘でスターダンサーズ・バレエ団NEXT ピーター・ライト版『ジゼル』を観て参りました。若手主体の企画です。
https://www.sdballet.com/performances/2503_next/
< ジゼル:塩谷綾菜
アルブレヒト:林田翔平
ヒラリオン:西澤優希
ミルタ:小川紗季
クールランド公:宮司知英
バチルド:角屋みづき
塩谷さんのジゼルは1幕前半は快活な朗らかさが可愛らしく、恋することにも積極的でアルブレヒトによく懐く少女。
おっとりしたアルブレヒトよりもしっかり者そうでにこっと明るい笑みを向けつつポーズは1つ1つ淀みなく、
スカートを持つ仕草も細やか。離すときもヒラリと広がるような光景を残していたのも好印象でした。
ジゼルの茶色系衣装は決して好みではないのだが内側から明るさを発光する存在感から気にならず鑑賞。
これまで元気溌剌とした役の印象が強かったためジゼルはなかなか想像つきにくい役柄であったものの、出色であったのは狂乱の場。
とにかく恐怖感の押し出しが強く、顔は青ざめて目は虚ろ。既に魂も抜け落ちて微かな気力だけで身体を保っているかのような危うさがある一方
左右の村人達にも奇襲の眼差しで迫るおどろおどろしさに背筋が凍りついたほどです。
ウィリーになってからの回転登場では速度も速く、人間味が削ぎ落とされて宙に浮いたまま回っているようにも見て取れました。
林田さんのアルブレヒトは、純愛か遊びかがはっきりとしない点が寧ろフラフラとした先行き不安な行動に説得力を持たせ、どっちつかずなユルブレヒト。
舞台袖近くに腰掛けたジゼルのバチルドからもらったネックレス装着姿を見るや否や顔が青ざめたりと隅っこでの出来事もしっかりと描画していて
アルブレヒトの危なっかしさや、誤魔化しが苦手で顔にすぐ心境が出る性格も興味を持たせる造形です。
ミルタに苦しめられる踊りの場は垂直跳びから舞台にて半円描きながらの跳び上がり移動もあり、かなり多彩に動き回る振付と今回把握いたしましたが
苦しそうにしつつも要所要所はきっちりと決めて、ミルタに許しを求めていらっしゃいました。
塩谷さんとは何度も組んでいるだけあって安心感あるパートナーシップを築くと同時にジゼルでは初共演。
恋の戯れの喜びいっぱいな微笑ましさからの、急転直下な悲劇への疾走を丁寧に作り上げるお2人でした。
西澤さんのヒラリオンは粗暴な要素は皆無な優男風の青年で、ジゼルへの接し方も強引な印象はさほど受けず。
ベルタも全面の信頼を寄せるようにヒラリオンの肩に手を添えたりと娘の将来の夫として未来予想図を描いていたに違いありません。
事件の展開を握る人物でもあり、全体を見据えた視線で観客を捉えて次の展開を音楽とマイムをかっちりと合わせた表現も目に届きました。
沼落ちはひょいっと身体が軽々と舞って妙に綺麗なフォームにも注目。
小川さんのミルタは余りに華奢で少々不安も思わせましたが鋭い怖さは十分にあり、
登場のパ・ド・ブレの地に足が付いていないような浮遊移動もお手の物。パ・ド・ドゥ直前のジゼルの揺るぎない愛に打ちのめされそうになったとき、
まさかの新入りウィリーの反逆ぶりにどうしたら良いか分からずな悔しさ滲ませる戸惑い表現も
内側からくっきり分かりやすく、女王らしい貫禄はこれからついてくるでしょう。
ライト版『ジゼル』は4回目の鑑賞ですが、前回2022年公演でようやく気づいて面白味を感じるようになった点が、貴族と村人達の階級差の明確な描写。
お互い決して歩み寄ろうとはせず、村人達に蔑みの視線を送り続ける貴族達は一見冷たく見えるものの住む世界が違う者同士、打ち解けなんぞできなかったはず。
狩猟長だったか、村人の女性に興味を持つも顎に手を当てて顔を無理やり上げさせようと卑しい行為に走る貴族もいて
しかし村人は立場上逆らうこともできず。こういった理不尽な事情は多々あったと想像できます。
ベルタの描き方も特徴があり、居眠りしてしまったりとマイペースに見えながらも
愛娘が息絶え、亡骸に近づくときにはラスボスの登場かのように曲のテンポの速度が落ちて怒りの溜めが凄まじく呼応。誰も近寄れない恐ろしさを強調です。
ウィリー達の群舞は所々不揃いな部分が目に留まり、脚を上げる高さや腕の角度が異なっている箇所はありましたがこれも経験。
若手主体育成と銘打っている公演ですから舞台数を踏んで頑張ってくれたらと応援しております。
それにしても今年は『ジゼル』当たり年。ライト版のリアルな描写を重要視し、ジゼルは自ら剣で刺しての自殺や、きちんと葬ってもらえず粗末なお墓といった
バレエとして上演するには目を背けたくなる点も挿入するも気づけば考えてみればそうか、と自然と納得いく演出です。
考えてみれば版によってはお墓が立派過ぎて、ジゼルの死後時間軸からすれば恐らくはその晩にはお墓が出来上がっているのもおかしく
中世ドイツには注文から即日対応墓石センターがあったとも思えず。エレベーター完備のお墓で地中から出てくる演出もあり、それはそれで好きでしたが。
来月は新国立劇場での上演。装置美術も細部まで凝りに凝った2022年新演出の再演。満喫したいと思っております。2幕にて月が出る消える瞬間も見逃せません。

暖かな晴天!

ステンドグラスのオレンジ色の光

ワイン
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