2025年3月16日日曜日

新作と伝統  団ならではのミックス・ビル  牧阿佐美バレエ団  ダンス・ヴァン・ドゥⅢ   3月8日(土)





3月8日(土)、牧阿佐美バレエ団  ダンス・ヴァン・ドゥⅢを観て参りました。

https://www.ambt.jp/pf-danse-vingt-deux3/







『グラン・パ・ド・フィアンセ』
振付:ジャック・カーター
音楽:ピョートル・イリイチ・チィコフスキー
衣装デザイン:ノーマン・マクドウェル

高橋万由梨  三宅里奈  秦悠里愛  久保茉莉恵  土川世莉奈  茂田絵美子

『白鳥の湖』より、花嫁候補達による踊りでアントレ、6人それぞれのヴァリエーション、コーダと続く展開。
現在全幕においてこの音楽構成での披露は大概は割愛されている場面と思われ、記憶が確かならば30年以上前のキエフバレエの放送にて
6人分のヴァリエーション付きでお披露目していたかと思います。出演者の中にはフィリピエワもいたはず。
しかしその後に4カ国分の民族舞踊にオディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥもありますから、冗長に感じてしまうのは致し方なく
更にはアントレは平坦な旋律でヴァリエーションは滋味深いものもあり。
全幕ではカットされがちであるのは頷け、抜粋でやるならこれぞ大プリマ!な人々でないと
場を持たせるのが難しい作品でしょう。全幕ではありませんから無背景にシャンデリア数台ある程度です。
初演時は大原永子さんやゆうきみほさん、その後日本バレエフェスティバルでは藤井直子さんや草刈民代さんも踊っていらっしゃるはず。

さて序文が長くなり失礼。いくら継承は大切であっても盛り上げ高難度な作品を令和もやるのかと概要発表時には驚きを覚えたわけですが
6人揃って悠然と軌跡を描いていく光景や、初演の頃からデザインは変わっていないであろう色違いのはっきり濃いめなオペラ型チュチュの並びが古き時代を偲ばせ
失礼ながら予想以上に見応えはあった印象。殊に三宅さんの背中の豊かな表情や、秦さんの瑞々しさを放つ魅力が目に残っております。



『ホフマン物語』第2幕より幻想の場
振付:ピーター・ダレル
音楽:ジャック・オッフェンバック
編曲:ジョン・ランチベリー
美術:アステリア・リビングストン

ホフマン:石田亮一
アントニア:米澤真弓

牧バレヱでの上演は2002年の全幕上演以来23年ぶりとのこと。その23年前の上演を観ている私でございます。
当時のホフマンは逸見智彦さん、アントニアは柴田有紀さんで会場はゆうぽうとでした。
2015年には新国立劇場バレエ団が衣装装置を一新してバレエ団初演。以来再演を重ねて直近では昨年2024年2月に上演されました。
牧での全幕は観たといっても3幕の舟歌が綺麗だった点と全体通して暗鬱な雰囲気であったことくらいで23年前の管理人をお許しください。
しかし2015年の新国立での一新上演以降、音楽構成もホフマンの人生を幕ごとに辿る振付も面白味があると思え、
洗練された衣装効果もあって今ではとても好きな作品の1本となりました。

さて抜粋とはいえ久々の牧での上演。アントニアの米澤さんは細い肢体からきらりとした華を香らせて踊られ、
病弱な身のアントニアが夢の中でバレリーナになる願望を叶える喜びと何処か悲しみを帯びた風情が折り重なった魅惑的なヒロイン。
技術が大安定ではなかったものの、儚くもすっと抜けるように舞う姿が、オディール思わす黒いチュチュであっても(丈はやや長め)透明感がまさって美しや。
ホフマンの石田さんは踊りはもう少し、な箇所も散見されるも1幕の若気の至りなオリンピアへの恋の失敗を経ての包容力もある青年ぶり。

衣装は新国立の透け感のある黒いものとはデザインは大幅に異なり、女性はこってりゴージャスなフリルやレースも付いたピンク系のデザインで、男性も華々しい色合い。
新国立ではひたすら繊細なオーロラ風のカーテンが覆うスタイリッシュな空間であるのに対してお伽噺の森の中で男女ペアが囲うように踊るのも新鮮。
牧バレヱでも久々の全幕上演を望みたいところですが、例えばこの2幕ならば終盤にドクターミラクルに肩を揺さぶられながらピアノを弾かされるホフマンと
病弱である我を忘れて狂うように舞うアントニア、そしてとことんホフマンを背後から苦境に追い詰めるドクター、と3者の危うい関係が同時に現れる場面であり
ホフマンと敵役の怪しい医師ドクターミラクルが互角な強度で修羅場にてバトルを繰り広げられる男性ダンサーが不可欠です。
今の牧では果たして可能か。しかし全幕版もまた観てみたいと思っております。
それにしても新国立での上演以降聴くたびに思うのが、ホフマンのヴァリエーション曲が
BoAさんの『メリクリ』そっくりに聴こえております。私だけの空耳アワーかもしれませんが。


『Tryptique~1人の青年と成長、その記憶、そして夢』
演出・振付:金森穣
振付アシスタント:井関佐和子
音楽:芥川也寸志「弦楽のための三楽章」(トリプティーク)

金森穣さんの新作。男女ともブルーやグリーン系で整えたシンプルなレオタードが色図鑑を開いたかのようなグラデーションが広がり、
涼しげな見た目の一方、振付は熱量多しでその対比も面白く感じました。
清瀧さんを主軸に、青年の浮き沈みありながらも生き抜こうと藻掻く人生を丹念に描写していて、弦楽の歯切れ良くもどこか哀愁感を帯びる低音から繰り出す重厚な響き
そしてゆったりと悲壮を迸らせる曲調にもぴたりと合って瞬く間に終わってしまったと思えたほどです。
ダンサーへの照明の当て方も1点1点の光が数珠繋ぎのように連なって吸い寄せる力もあり。
この曲といえば牧阿佐美さんの振付が真っ先に浮かび、新国立劇場でのバレエアステラスや研修所公演における研修生達の舞台にて度々目にしているため
金森さんの振付がどう映るか少々心配もありました。しかし当たり前といえば当たり前ですが全く異なる作風で、序盤から男性群舞を一気に押し出す展開といい
主軸を務めた清瀧さんが踊りで次々と語り尽くす技量や過去の恋人やライバル達とのすれ違いや散らし合う火花といい青年の歩みがぎゅっと凝縮。
金森さんも、牧さんが振り付けた同じ曲で新作を手掛けるのは重圧もあったかと思いますが
師匠への敬意とご自身のオリジナリティの双方を合わせた見応えある作品と捉えております。是非とも再演を重ねて欲しい作品です。


『ガーシュインズ・ドリーム』
振付:三谷恭三
音楽:ジョージ・ガーシュイン  斉藤恒芳
衣装デザイン:前田哲彦

三谷さんが手掛けてきたダンスヴァンテアンの1997年第5回公演にて初演とのこと。
ガーシュインの曲を用いた作品が世に溢れる中でやや長丁場に思えてしまい、今ひとつ洗練や粋な要素は感じ取れず。
しかし男女カップルのアンサンブルは綺麗に纏まり、女性陣がまっすぐに伸ばした脚線も皆すらりとしていて見栄え十分。
フィナーレにアイ・ガット・リズムが来ると気持ちも晴れ晴れとするのは音楽の力も大きそうです。

パ・ド・ドゥ集ではなくバレエ団ならではの作品をある場面をまるごと、作品によってはコール・ドや美術付きで上演するプログラム構成は好印象。
好みはそれぞれあるものの継続願いたい企画です。無料配布のプログラムはダンサーの顔写真含めて
オールカラーで掲載されていて作品解説も大変詳しく、重宝しております。

ジャック・カーターのプロフィールを読んでいて思い出し、復活上演に興味を持たせているのが『ナムーナ』。
1990年の上演以来再演が恐らくはなさそうで、当時の主演は佐々木想美さん。
ただ批評によればかなり古めかしいスタイルでの振付とのことで、またギリシャのコルフ島を舞台に奴隷の娘と貴族の男性が関わるあらすじからしても
掲載された写真からしても、西洋人にとっての東洋への憧憬をそのまま視覚に訴える作品と見て取れます。
現代においては上演が難しいタイプの作品かもしれませんが、根岸正信さん小嶋直也さん久保紘一さんが踊られた劇中のモロッコ舞曲の様子も気になるところ。
この曲を聴くとトゥールーズの『海賊』ダイジェスト映像音楽しか浮かばずかもしれませんが、どう描かれているのか、全体を通して観てみたいものです。




シビックには飯田橋から大歩道橋を歩いて行くのが好きな道。



シビックへ



ロビーの曲線



雪混じりな寒い日。ホットワインで乾杯。友人や親族とは度々訪れている水道橋駅のお店ですが鑑賞帰りに行くのは初です。



生春巻き。サパナとは、ネパール語で夢との意味らしい。今回偶々、タイトルに夢がつく作品が複数並びました。



お国混在なセット。このお店のトムヤンクンはお初ですがとにかく寒い日でしたので、辛いスープで温まりたい気持ち



トムヤンクン拡大。魚介類たっぷり!!



2010年、兵庫県三田市での新国立クラシックバレエハイライト公演。同月の本拠地ニューイヤー・バレエも1発目にグラン・パ・ド・フィアンセでした。
この面々であっても盛り上がったとは言い難かった。
三田市はこの日大寒波で粉雪舞う1日。今回の天候と似ておりました。



2002年ホフマン物語全幕プログラムの内側。1幕?



大原永子さんかもしれません。


0 件のコメント: