バレエについての鑑賞記、発見、情報、考えたことなど更新中
2020年よりこちらに引越し、2019年12月末までの分はhttp://endehors.cocolog-nifty.com/blog/に掲載
2024年5月31日金曜日
代官山の駐車場で地下バレエ 牧阿佐美バレヱ団DANCE ALOUD 5月25日(土)昼
順番が前後いたしますが5月25日(土)、代官山のヒルサイドテラスにて、牧阿佐美バレヱ団DANCE ALOUDを観て参りました。
牧バレエも遂に、所属ダンサーによる振付作品を一挙上演です。一度スタジオにてファンクラブ向けに上演したそうですが
アンケートにて良かった作品を1本選択との問いに悩みに悩むほど良作揃いで驚かされました。
https://www.ambt.jp/dance-aloud/
プログラムにて、作品、振付者、出演者、そして使用音楽や構想のもとになった文献等実に詳しく紹介されています。
特に音楽はあとからもう1回聴いてみたい曲も多々あり、曲目リストは大助かりでした。
「収集狂」振付:前田龍生
近藤悠歩 今村のぞみ
蝶々の収集を密かな趣味としているサラリーマンが意中の女性に対して危うい行為を働き、やがて夢の中で睦まじく戯れる展開。(違っていたらすみません)
映画『収集狂』から構想を得て時代は現代に設定。トップバッターからいきなりホラーサスペンスな作風で意表を突く順序ながら
近藤さんがどう見ても渋谷辺りで高層マンション物件の成約を次々と取っていそうなやり手の不動産営業で
だからこそ気を張っているビジネスから解放されて夜な夜な秘密の趣味に没頭する姿が妙にしっくり。
白い衣装に身を包んだ今村さんのしっとり妖しい色香と淑やかさが隣り合わせになった女性役が、過剰なことをせずとも見惚れてしまう危険性を匂わせ説得力もあり。
6作品の最初は健全系な作品がくるかと思いきやいきなりアダルトサスペンスな攻めプログラムで
ただ音楽と振付、サラリーマン男の哀歌も含ませた雰囲気がよく合っていて印象に最も残った作品となりました。
「Phantom」振付:小笠原征論
女怪盗:門脇紅空
男怪盗:大平歩 𡈽屋文太
警備員:小池京介
女怪盗と2人の男怪盗3人が侵入し宝石を盗むもうとしていると警備員が駆け付けて到着。
怪盗達は御用になるかと思ったら逃げ遅れた女怪盗が警備員を誘惑していく、少々カルメンなお話。
序盤からピンクパンサーのテーマ曲で3怪盗が嬉々として美術館を徘徊していて、
門脇さんが小柄で可愛らしい、どちらかといえば幼い雰囲気を持ちながらふとした瞬間に見せるお色気がムンムン。こりゃ警備員も職務放棄して落ちます笑。
そして小池さんの警備員が警備室でコーヒー(見間違いでなければ、恐らくは蓋つきのこぼれにくい、
オフィスでよく使用されていそうなステンレスマグカップだったか)飲んでいる姿からしてリアリティがあり、
私の勤務先にもいる警備員さんと腰掛け方がそっくり笑。制服姿や、警報がけたたましく鳴ってから懐中電灯手に
大慌てで巡回する様子も違和感皆無。女怪盗からの誘惑で、制服のボタンを1箇所だけ外すところも平静を保とうと踏ん張る姿として自然に映りました。
女怪盗のあの手この手な作戦を隅から応援する男怪盗達、ハラハラしながら壁をつたったりと何だか楽しそうに周りを固めていました。
尚、3怪盗達はアニメコスプレのような派手衣装ではなく、黒系で纏めてシックな装い。
だからこそ門脇さん怪盗の可愛らしいお色気が引き立ち、観ているこちらまで終始ドキドキさせられました。2年前に多摩センターでの発表会で拝見しておりますが、
益々お美しくなられたお姿をスタジオにて間近で目にでき嬉しうございました。
「flower,piano and motorcycle」振付:渡會慶
田切眞純美 檀上侑希 近藤悠歩 前田龍生 岡本尚之
ショパンの音楽を丁寧に紐解きながらダンサー1人1人が曲調に沿って形を作っていく様子が柔らかで、時折悲しい、寂しいような感情が広がるも
最後は心がふわりと花開くような良き後味で終演。例えば身体をくっつき合わせで集合体になった状態においても無理な体勢に思わせず
あくまで音楽が終始流れているように形作っていて、そこから離れて斜めに連なってもぶつ切りにならぬよう繋ぎの部分もとても滑らか。
笑いや派手な振付が一ミリもない、シンプルに綺麗に突き進む、
ショパンの音楽を目一杯生かした作品でした。
「NADJA」振付:石田亮一
山本翔子 細野生 石田亮一 依田俊之 鰐渕ののか 加藤瑚子 𡈽屋文太
アンドレ・ブルトンの『ナジャ』からナジャとアンドレの出会いから別れまでを石田さん独自の考察も入れて形にして振り付けられたとのこと。
音楽はラヴェルのラ・ヴァルス。曲の起伏や変化と振付、物語が見事なまでに噛み合っていて、
山本さんのナジャは清純さと奔放さが合わさった神秘的な艶かしさでアンドレをみるみると魅了。
そしてびっくりしたのが細野さんの鮮やかなテクニックで語る力で、リーズのアランを始めキャラクテールでの活躍の印象が先行しておりましたが
全編通して多彩な技巧、サポートも駆使してアンドレの喜びや苦悩も雄弁に表現され、作品を牽引。
波乱に満ちた2人の浮き沈みを更に引き立てるようにアンサンブルの彩り方もよく練られ、確か黒と白のチームに分かれて明暗をもくっきりと描き出していました。
『ラ・ヴァルス』の曲は元々は好きであったはずが、我が観劇歴の中でも駄作上位7本に入るであろう某作品での使用曲であったことがきっかけで好みから転落。
このバレエ団の公演感想記事では振付者のお名前はとても申せませんが、音楽は流麗なはずが平坦な振付に客席の集中度も怪しく
18年前にはワシントンD.C.でも上演され私もその場で鑑賞いたしましたが現地の反応は、以下略。(もう正解が見えつつあるか)
しかし今回、曲中のじわりとした襞のような部分に至るまでナジャとアンドレが交わす心の動きや展開に生かされていて、音楽の魅力も再発見でした。
「Devils Variation」振付:田切眞純美
佐藤かんな 光永百花 佐藤まひる 高橋晴花
清瀧千晴 大川航矢 渡會慶 小池京介 岡本尚之
題名からして、悪魔の宴組曲風の賑わいかと想像しておりましたが、お洒落で刺激的でユーモアな笑いも含む悪魔を万華鏡で眺めるような面白さに満ちていました。
音楽も古い映像に流れていそうな音源もあればシューマン、ビートルズもあり、多ジャンルから選曲で衣装は男女全員黒い小さなチュチュ付き。
中央での不思議な集合体から重心を下に、両腕を垂れ下げながら一斉に踊り出して、
ソロのヴァリエーションやカトル、パ・ド・ドゥへと繋げていく流れもよく考えられていました。
大川さんがぶったまげるジャンプで沸かせ、近くで観るのは初でしたから口あんぐり笑。
清瀧さんはキックボードに乗る姿も脚がピンと伸びていてしなやか。光永さんはしなるような身体の使い方で奇怪な美を体現。
佐藤かんなさんがすらりとした長身を伸びやかに操りながら小池さんと絡むパ・ド・ドゥも見応えありました。
最後は何処へ仕組んでいたのか踊りながら黒い涙の如き悪魔メイクを施し邪悪感倍増。ユーモア一杯な黒いオーラで締め括りでした。
「Fix You」振付:織山万梨子
久保茉莉恵 近藤悠歩
大トリが大人数大掛かり作品ではなく純白そうなパ・ド・ドゥであるのがまた面白い順序と思っておりましたが、いざ観たら納得。
多岐に渡る作品を上演してからの、映画のエンディングテーマの如く総まとめな趣きもありました。
スケール感のある音楽に身を委ね、混じり気のない美しさをひたすら大らかに奏でていく振付で久保さんと近藤さんに持ち味にぴったり。
(近藤さんからはやり手サラリーマンの雰囲気はすっかり消え去っていた)
久保さんの優しげな包容力から繰り出す優雅さにも惹かれ、エンディングに相応しいお2人でした。
一般公開は実質第1回目の企画のはずで(恐らく牧バレエでは初)、ダンサー振付の感性豊か且つよく練られた作品が予想以上に続々登場。
サラリーマン、悪魔、警備員等の変わり種から純白な作風まで多岐に渡り、本公演では脇やコールドでの活躍が多い方をも中心な役柄で鑑賞できたのは新鮮でした。
外部の地下スタジオでの開催で、劇場と違って照明や演出にはだいぶ制約もあったかと察しますが
出入りや照明の切り替え、大道具小道具の使い方も工夫に富んでいてとても楽しい企画でした。
こういった団員による振付作品上演はバレエ団問わず足を運びたい企画ですので、継続開催を望んでおります。
会場は駐車場にあるこの建物の地下です。まさか地下スタジオが広がっているとは思いもよらず。
帰り、会場から渋谷駅方面へ歩いていると行ったつもりで台湾なお店を発見。アクビという店名です。
台湾のクラフトビールも多種。塩気が効いたタイフーブルーイングをさっぱりといただきます。グラスもお洒落。
味変用の調味料。後ほど活躍。
魯肉飯。スパイスが効いた挽肉がふわりと盛られ、上品な味付けです。角切り肉の脂身が苦手な方はこちらおすすめでございます。
レトロな内装。虎と竜が合体して楽しそう。虎舞竜でしょうか。さて、食後は渋谷駅まで、安全第一に移動。
何でもないような事が幸せだったと思う、と言い聞かせながら更に歩いて向かいましょう。
桜丘に差し掛かって渋谷の大和田さくらホールに着く頃、そういえば5月23日に来たばかりと思い返していたところ同会場での7月の素敵企画が発表され、ニンマリ。
その前に、23日の件は次回を予定しております。(もしかしたら、ヴェローナが先になるかもしれません)
2024年5月27日月曜日
一級戦士からの駄目男没落悲恋録 新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』 4月27日(金)〜5月5日(日)
だいぶ遅くなりましたが、4月27日(金)〜5月5日(日)までのゴールデンウィーク中、新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』をゲネ含め7回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/labayadere/
【振付】マリウス・プティパ
【演出・改訂振付】牧 阿佐美
【音楽】レオン・ミンクス
【編曲】ジョン・ランチベリー
【美術・衣裳・照明】アリステア・リヴィングストン
【照明】磯野 睦
4月28日(日)昼
ニキヤ 廣川みくり
ソロル 井澤 駿
ガムザッティ 直塚美穂
ハイ・ブラーミン(大僧正)中家正博
黄金の神像 森本亮介
ラジャー(王侯)趙 載範
マグダヴェヤ 宇賀大将
つぼの踊り 渡辺与布
影の王国
第1ヴァリエーション 五月女 遥
第2ヴァリエーション 池田理沙子
第3ヴァリエーション 飯野萌子
4月28日(日)夜
ニキヤ 米沢 唯
ソロル 渡邊峻郁
ガムザッティ 木村優里
ハイ・ブラーミン(大僧正)中島駿野
黄金の神像 木下嘉人
ラジャー(王侯) 中家正博
マグダヴェヤ 上中佑樹
つぼの踊り 原田舞子
影の王国
第1ヴァリエーション 花形悠月
第2ヴァリエーション 金城帆香
第3ヴァリエーション 吉田朱里
5月3日(金)
ニキヤ 廣川みくり
ソロル 井澤 駿
ガムザッティ 直塚美穂
ハイ・ブラーミン(大僧正) 中家正博
黄金の神像 森本亮介
ラジャー(王侯)趙 載範
マグダヴェヤ 宇賀大将
つぼの踊り 渡辺与布
影の王国
第1ヴァリエーション 五月女 遥
第2ヴァリエーション 池田理沙子
第3ヴァリエーション 飯野萌子
5月4日(土)昼
ニキヤ 米沢 唯
ソロル 渡邊峻郁
ガムザッティ 木村優里
ハイ・ブラーミン(大僧正) 中島駿野
黄金の神像 木下嘉人
ラジャー(王侯) 中家正博
マグダヴェヤ 上中佑樹
つぼの踊り 原田舞子
影の王国
第1ヴァリエーション 花形悠月
第2ヴァリエーション 金城帆香
第3ヴァリエーション 吉田朱里
5月4日(土)夜
ニキヤ 小野絢子
ソロル 福岡雄大
ガムザッティ 直塚美穂
ハイ・ブラーミン(大僧正)中家正博
黄金の神像 奥村康祐
ラジャー(王侯) 趙 載範
マグダヴェヤ 福田圭吾
つぼの踊り 渡辺与布
影の王国
第1ヴァリエーション 五月女 遥
第2ヴァリエーション 池田理沙子
第3ヴァリエーション 飯野萌子
5月5日(日)
ニキヤ 柴山紗帆
ソロル 速水渉悟
ガムザッティ 木村優里
ハイ・ブラーミン(大僧正)中島駿野
黄金の神像 石山 蓮
ラジャー(王侯) 中家正博
マグダヴェヤ 菊岡優舞
つぼの踊り 益田裕子
影の王国
第1ヴァリエーション 花形悠月
第2ヴァリエーション 山本涼杏
第3ヴァリエーション 吉田朱里
1枚目、米沢さんニキヤと渡邊さんソロルによる3幕。お2人の悲しみを含ませた真っ直ぐな視線、完成された造形美に息を呑む写真です。
※本日ダンスマガジン最新号が発売され、プロの評論家による完璧な記事及び米沢唯さんの連載(バヤデール中心の内容のようです)、
表紙を飾られた速水渉悟さんの大インタビューも掲載されていますので
今頃になっての更新となった当ブログ感想はもう用無しかと存じます。また私と面識ある方はご納得と思いますが
当方の容姿をそのまま反映した余分な脂肪多量な内容ですので、忍耐力を鍛えたい方のみ、以下お読みください。
廣川さんはひたむきにソロルを愛するニキヤで大きく語りかける役デビュー。登場時ベールが取られたときの訴えかける深い眼差しの瞳もぱっと目に飛び込み
艶かしさと透明感が溶け合った独特の雰囲気を香らせていた印象です。 2回目の3日はより感情を素直に乗せつつ肩や腕、
背中からも言葉が聞こえてきそうな伸びやか且つ雄弁なラインで語るニキヤで存在感が一層強まって
ソロルヘ向ける愛情が全身から溢れ出ていていじらしくもあり。時折感情が洪水状態になってしまっていた箇所もあれど
そんなニキヤを大きな器でしっかり受け止める貯水池を懐に備えていたのが井澤さんソロル。
初役の廣川さんに目線でも安心感を与えながら心を砕き、廣川さんニキヤが伸び伸びと踊れるような優しいサポートが光っていました。
今年2月のホフマンに続きテクニックも万全である上にニキヤとガムザッティの板挟み状態が実に似合い、
有能であれど人柄優しいがゆえに転落一直線なソロルでした。ソロルも可哀想でございます。
登場時、前回はややおっとり上品な坊ちゃん戦士でしたが今回は戦士達を取り纏める姿が雄々しく、頼もしく映った次第。
初回のカーテンコールは廣川さんがフライングで指揮のバクランさんを迎えにいきそうになったり、直塚さんが前進しそびれそうになったりとハプニングあれど
井澤さんの見守りやリードがいたくスマートで、特に廣川さんをバクランのもとへ送り出すときのさらっとにこやかな促しも好印象。
小野さんは顔出し出現の瞬間から何処か危うい黒いオーラを匂わせ、触れてはならぬ、神聖な強さあるニキヤで誰も近寄れない存在。
孤高な輝きを纏っている分、ソロルへ向ける無防備な麗しさが悲劇を呼んでいるかのようで、
展開が分かっていても禁じられた行為に手を染めるニキヤの行く末を胸を高鳴らせながら観て行った次第です。
終始削ぎ落とされた美しさで魅せ、登場のソロでの静けさを奏でる手脚の動きや、
ガムザッティとの対決でのクールな潔さといい3幕影になったときの無の境地に到達しているような神々しさといい手を合わせながら見入ってしまう舞姫でした。
福岡さんは見るからに豪胆そうなソロルで、最強戦士の称号を得ているのはすぐさま分かる風貌で登場。虎狩りも1人で何頭も行えそうな逞しさです。
ただガムザッティの前で、果物にしか興味がなさそうな笑(ガムザフルーツパーラー状態であった)意気消沈したお見合いや
ありったけの愛情をニキヤに注ぐ逢瀬の場面を目にすると、戦士として相当気を張りながらの任務にあたっていたのか、弱さや内心が露わになる勢いもまっしぐら。
2幕のオロオロ具合や3幕の大懺悔な水タバコシーンへの移り変わりを観ると1幕冒頭の最強戦士からの転落がああ激しい。
技術の安定感はお化けな若さを維持され、2幕ヴァリエーションや3幕コーダの振付が
幻影の場に相応しいか否かの疑問を忘れさせるほど大跳躍や回転の連続も一時より若返っている印象すら持たせました。
ゲネで鑑賞した柴山さん速水さん組は、柴山さんが抑えた立ち姿からも情熱を滲み醸す、誇り高く神に仕えるニキヤ。
大僧正からの迫りの断りは前回の2019年公演時よりきっぱり拒絶度が強まり冷たい視線で追いやっていて、
寺院での禁欲的な日々の中で鍛えられたしたたかさであろうかと想像いたします。
逢瀬の場はドラマティックでありつつも研ぎ澄まされたラインが目を惹き、ポーズ1つ1つが崩れぬ美しさ。
奉納においても前回より絶望の淵にいる感情がより出ていながらも過剰には出さず、
抑えるべきところは抑えてしっとりと紡ぎ上げる踊り方や、美しいバランスに加えて終盤の高速回転移動も乱れがない影ニキヤもたいそう目に響きました。
ソロル役デビューの速水さんはまずサポートは要精進!実はゲネのとき影の王国での3人のヴァリエーション前のニキヤとの決めポーズにてニキヤを支えきれず
しかし5日の本番(29日は鑑賞できず)では無事クリア。ただガムザッティとの婚約式アダージオでガムザッティとタイミングが合わなかったり
影の王国にてニキヤを抱えながらくるりと回して行く箇所も滑ってしまったのかあわや柴山さんが横転しそうな危うさを引き起こしてしまい、
ヒヤリな場面が目立ってしまいました。ソロでの切れ味鋭い技術は申し分ないものをお持ちですし
ニキヤとガムザッティに挟まれ右往左往な弱さの表現もゲネよりだいぶしっかり見えるようになっていましたから
あとはサポートや、暗闇で1人佇みながら次場面へと橋渡ししていく流れをはっきりと描き出せるようになれば、全体がぐっと良くなるはず。
米沢さんのニキヤは身体から涙が零れてきそうな舞姫で、澄み切ったラインはそのままに深く柔らかな余韻を残しながら踊る姿に何度心を掴まれたことか。
ソロルに会うと無垢な雰囲気や悲しそうな視線から一変、ぱっと目を輝かせて潤うものが身体中から溢れてしまう
可愛らしさ健気さに思わず首を大きく縦に振り見守ってしまいました。
奉納は悲痛さに胸が締め付けられそうになり、頭のてっぺんから手先脚先まで伝う苦しみの伝導回路の凄まじいこと。
いかんせんソロルがガムザッティにすぐ心変わりしてしまい汗、訴えても訴えても心を向けてもらえない
谷底に突き落とされたかのような悲壮感に包まれていた気がいたします。
3幕では誤魔化し一切効かぬ純クラシックな振付を、粗が微塵もなく盤石、且つ音楽をそっと奏でるように繊細に踊る神秘的な美しさに息を呑み、
悲劇な場面であっても静謐な美がまさってその空間を客席で体感できた喜びが今も呼び起こされております。
以下長くなります。小休止をどうぞ。
渡邊さんは勇猛優秀そうな戦士からガムザッティにすぐ心変わりしたと見て取れた駄目男没落まで描写が非常に細かく、テクニックの見せ場もスケールたっぷり。
重厚な物語を背負って場面の移り変わりも滑らかに自然に、そして力強く動かしてくださっていました。
前回5年前にに比較して身体ががっしりなさったためか、また迷いのない鋭い視線もギラッと放っていて第一線で揉まれている高名な戦士らしさも強まっていた印象です。
マグダヴェヤとの主従関係が最も色濃く出ていたのが渡邊さん上中さん組で、指から矢を飛ばしているかの如くソロルの指図が静かにおっかない笑。
良き友でありながらいつの間にか主人な存在となっていたのであろうソロルの指示に、
職務規定違反ではあるとはいえ、マグダヴェヤ自身の立場も危うくなり得るとはいえ
聞き入れてニキヤとの逢瀬の巡回監視警備員も務めるマグダさん。中間管理職な、最たる苦しい立場かもしれません。
(ソロルから多少はお駄賃もらっていることを願います)
ニキヤと会えそうな予感を募らせると、さっきまでの1級戦士な風貌や軍を取りまとめる威厳や堅物ぶりはすぐさま消え去り、目をキラキラさせて恋する青年に変身。
時間軸で考えるとニキヤが壺を持ってしっとり舞う様子は木陰から「ソロルはミタ」状態なはずで
舞台には現れない場ではあっても、止まらない鼓動を抑えながら見つめていたに違いありません。
逢瀬でのパ・ド・ドゥはただ突っ走るだけでない、互いの愛情を丹念に確かめ合うように1つ1つのフォルムが軌跡に至るまで美しや。
その上で2人から流れ出る情感が瑞々しく音楽とも溶け合い、ニキヤがすっぽりとソロルの腕と胸の中で安堵に浸っている姿のいじらしいことよ。
(しかし幸福はここまでなのだが)
前回とがらりと変わった造形がガムザッティへの接し方で、前回は気の乗らないお見合いにしぶしぶ臨んでご趣味は、等と
必要最低限の質疑応答しか行わないお堅く無口なソロルだったのが、今回はガムザッティ以上にやる気満々で笑
武勲の主張やらガムザッティの装いや屋敷の内装の褒めちぎりと、ニキヤの立場は既に悲劇まっしぐらです涙。
ガムザの美貌に圧倒され、出世の欲に打ち負かされたのでしょう。
ヴァリエーションやソロはエネルギッシュで、ドンキのバジルでも感じましたが踊りの輪郭が太く熱量も終始発射。
されど乱れや崩れがなく滞空で美しい放物線を描き出しながら成熟した余裕を思わせ
力技で押し通しておらず品格があるからこそ、例え駄目男ソロルであっても笑、何度でも観たいと欲が募りっぱなしになるのでしょう。
婚約式終盤は奉納のニキヤを見るも、ガムザに傾倒中な心情はすぐさま変えることもできずであったのか
裏切りの詫びが腰掛けた正しい背筋から苦し紛れに醸し出されていた印象です。
3幕影の王国のニキヤとのパ・ド・ドゥは張り詰めた静けさの中で振付の規範を保ちながらあってもみるみると拡張する息呑むドラマ展開で
ニキヤの悲喜とソロルの後悔が大きく交わりながら舞台を覆い尽くして行ったように見て取れました。
1幕も含め、ソロルは暗闇に1人で過ごす場が度々ありますがどの暗闇な場も滑らかに物語を運びながら次場面への橋渡し役を務めていらした姿も目に響き
暗闇1人場面も空間の捉え方や背の向け方においても大きく物語を動かし、話がぶつ切りにならないように意識を向けて
身の置き方も入念に考えて臨まれていたことと察します。水タバコ寝そべりも妙にセクシーで笑(ホフマン物語をちょこっと思い出した)
影の王国への繋ぎ方も幻想的でふわり。その延長上に影の王国が出現する流れが実に自然でした。
その後ガムザに傾倒していたはずがニキヤの夢を見て改心したのか、泣き喚きそうになりながら結婚を承諾するも
雷と寺院崩壊ではいよいよトロラグヴァを頼りに逃げ回り、1幕冒頭の有能な戦士なお姿はもう皆無。
幕切れでの、ニキヤのベールを掴みきれずに倒れ込む身体の置き方も美しいラインで、且つ嘆きは訴えかけるものがありずっしりと余韻が残る終幕でした。
最後のニキヤの足取りは演者によって様々ではあれど、神に仕える身としてはソロルの行為は断じて許さぬのは当然としても
ニキヤとしては、米沢さんはソロルに対して微かに許しを向けるようにして坂上りをなさっていて
禁じられた中で通わせた燃え上がるような恋の残像を胸に旅立っていったのだろうかと想像が巡っております。
直塚さんのガムザッティは強力テクニックを繰り出す男前で女王感なガムザッティ。
ベールを外されると、きりっと見据える視線や父親が仮にいなくても藩の政治も行っていけそうな強気で知性的な表情、貫禄にソロルもたまげたことでしょう。
ただ決して意地悪で怖いのではなく、パワーと立体感のある踊りであっと唸らせながら誇り高い姿を示す、魅力ある姫で
2幕の婚約式でのソロルと同じくらいにふわっと高く宙に浮くジャンプやお馴染み過ぎるヴァリエーションであっても新鮮味を与える空間支配力、
ぐっと引き上がった状態での余裕ある静止も目に残っております。蛇混入の修羅場は私はやっていないと脆くなっていくさまも怯えながら見せていて
今まで観た直塚さんのクラシックの役では一番好感を持ったかもしれません。
木村さんは前回はちょこっとわがままお嬢様なガムザッティと思えましたが、今回は腰掛けたときの振る舞いや
家を建てた父親の財力をソロルに理解してもらおうとする所作も媚びがなく、いたく優雅。
ソロルへの恋心のアピールだけでなく、父親のため国繁栄のための覚悟が滲む気高いガムザッティでした。
ベールを外されたときの美貌はこりゃ仰け反る麗しさで、華やぎや愛嬌、気品、どれもバランス良く備わって凝縮。
ヴァリエーションは勢い任せにせずエレガントな魅力を放っていて、姫の祝宴な雰囲気十二分でした。
2人に共通していたのは決して意地悪ではない、理知的で品格のある令嬢で、奉納の最中もニキヤを嘲笑うこともせず。
父親の言うことを素直に聞き入れ、正式な婚約を行ったはずが突如踊り子のニキヤが現れ掻き乱されるわけですから
毒蛇はやり過ぎかもしれませんが国運を背負ったガムザッティからしたらニキヤへの報復を誓うのも無理はないと思うわけです。
思えばニキヤもソロルも大僧正も職務規定に反する行為に走るダメキャラクターに感じてしまい、ガムザッティとラジャーが真っ当な人間に思えてきますが
身分が絶対であり、コンプライアンスも逃げ場もない時代、ハラスメント相談室もない時代。
(相談ホットライン等が整備されてきたのは本当にここ数年の話と思います。特殊な分野もあるようですが)
ニキヤからすれば勤務先の長に執拗に迫られたら拒絶も決死の覚悟でしょうし絶望しか募らず、
だからこそ禁断の恋であるとしてもばれたら命取りとは重々承知はしていてもソロルが益々救いや清め、拠り所な存在として強まり、突っ走ってしまったのも頷けます。
ソロルもまた、普段は弱肉強食な男社会で過ごしているとしても人間ですから色づいた事柄にも興味を持ってもおかしくなく
ましてや世間から見れば汚れが一切ないと見て取れる舞姫のニキヤは寺院に潜めている身であると分かっていても
目も心も瞬時に癒して洗浄してくれる女性と思えたのかもしれません。しかし上司しかも逆らい厳禁なラジャーからの命令ならば断りは許されず。
ガムザッティへの心変わり、一目惚れか、ニキヤへの未練か、どのあたりの感情が大きく出るかは出演者によってそれぞれ異なり、観察が面白く思えたのでした。
大僧正も身分は聖職者であり、自身の行為が断じて許されぬものとはよく分かっていたでしょうに弱さに勝てず、引き締めるのはできなかったのか。
本能を抑えられず最も苦悩していたのは本人でしょうが、人間が起こした事件と思うと観る者も考えさせられます。
しかし欲に勝てずにいたり、裏切り行為に手を染めたりと禁断の崖っぷちな人間関係が露わとなっていく展開であっても、
全幕で観ると作品の総合力やスケールに圧倒されると再確認。おどろおどろしい緊迫感ある序曲で幕が開き、森の木々が斜め上に開けていく序盤から吸い込まれそうになり
1幕の水色舞姫達の透き通るように涼やかな美も感嘆。物哀しい音楽にのせた踊りや手先脚先から澄んだ潤いがもたらされる場面と捉えております。
2幕パ・ダクシオンのピンクとブルーチュチュの大柄模様も目に留まるデザインで他の演目では使い回しが不可能であろうインドらしい柄は
観れば観るほどバヤらしい婚約式と思わせ、ワルツのピンクや黄緑色、黄色の緻密模様や装飾品、全体を覆う天蓋の細部まで凝った豪華さも
何度もはっと声をあげそうになったほど。振付は太鼓の踊りを追加して欲しい願いは変わらずですが、衣装美術は牧版が好みでございます。
影の王国32人のジグザグ三段坂下りは連日息を呑みながら鑑賞。1人1人が機械的ではなく柔らかな統制が取れた仕上がりで
客席も一斉集中修行な精神で眺めながらも優しく吸い込まれるような混じり気のない白の世界に心地良く触れていた気がいたします。
頭飾りに反射光までもが動きが揃っていた点も鳥肌ものでした。
人目が無いのを確認しつつ笑、マンションのスロープでやってみましたが
32人呼吸合わせながらやるなんて、しかもこのあとにも縦2列や3人ずつで風車のように回ったり半円になって座って斜め体勢で片腕をワイパーのように振っていく箇所もあり
考えるだけでも気が遠くなりそうです。まず少しでもぶれたらあとに続く影たちは総倒れになりかねない責任重大な坂下り先頭ポジションを
シングルキャストで務められた中島春菜さんに、そして影コール・ドの皆様に心からの賛辞を送りたい思いでございます。
黄金の神像3人も個性様々で奥村さんは国宝のように大事な扉の中に普段は収められていそうな仏像で、菩薩のような品を感じさせる、
パワフル超絶技巧繰り出しとは全く違った造形でとても魅力的に映りました。木下さんは鋭いテクニックも駆使しつつピタリと正確で端正。
森本さんはガシッとパワー全開で、みるみると勢いづいていく踊りが印象的。石山さんは「アイドル」。仏像界でも(存在するか否かはご想像に任せます)金粉まみれでも可愛がられていそうな容貌で
されどいざ踊り出すと軽快なジャンプで大きく宙を舞い、数分で場をさらうインパクトが非常に強し。
個性は各々異なっても人々に拝まれていそうなブロンズアイドルでした。
ニキヤとソロルに強力なメスを入れて行く濃密キャラクター達も忘れられず、中家さんの大僧正はどっしり構えた立ち姿からして支配力が強烈。
誰も反対意見なんぞ言えぬ風通しがよくなさそうな閉ざされた空間を思いのままに操っていそうな黒いオーラがムンムン。迫られたニキヤはさぞ怖かったことでしょう。
4日夜のカーテンコールでは叶わぬ恋を嘆いて⁈福田圭吾さんマグダヴェヤと特別寸劇を披露され
帽子をゆったりと取って客席に掲げ、道を踏み外す行為を慎むよう横のマグダヴェヤが大懇願。笑いで持っていかれました笑。
中島さんはゲネで観たときは失礼ながら存在がぼんやりとしてしまい、(ラジャーが中家さん、トロラグヴァが拓朗さんの重圧感たっぷりコンビがいたためかもしれないが)
しかし所作に威厳が増して一歩の踏み出し方も変化。まだ若く綺麗目なお坊さんが恋をしてしまった風に見て取れ、ニキヤそこまで大拒絶はしていなかった印象です。
差し出した解毒剤を断られたときは一途な恋にやぶれ、ちょいと可哀想に思える僧侶でございました。
前回公演時に存在すら初めて知ったトロラグヴァは2キャスト。清水さんは軍人らしい堂々と構えた様子でありつつ、ガムザッティとの結婚を命じられ戸惑うソロルに対し
理解を示しながらそっとガムザのほうに促していて、優しさも垣間見える友人。
拓朗さんは速水さんソロルと並ぶとどう見ても友人には見えず、ソロルの上官。
ソロルの助けも頑なに拒絶して顔から「ラジャーの命令は絶対服従」と太字で見えかけました。渡邊さんソロルとのときは同情成分も発していた印象。
中家ラジャーと悪巧みコンビな様相で、もし水戸黄門がバレエ化されたら、悪代官側の役に配されることでしょう。
婚約式では壺の踊りの人差し指振りを真似るラジャーと、喜び合うドロラグヴァ、ラジャーからの声かけに困る大僧正、と壇上からも目が離せずにおりました。
さて本編は結びとなりますが、私の中で、ソロルはターバンやふわふわハーレムパンツよりも
羽根付き鉢巻とかっちり戦闘服派なので、牧版の戦士の称号のように宝石が細かく彩られた1幕衣装はとても好きでございます。
ポスター、プログラム、チラシ、どこを観ても1幕の熱血鉢巻堅物ソロルが採用され、今回はたいそう嬉しうございました。
5年と空けず3年後にはまた是非再演を、そして男性ダンサーの出番が少ないのは寂しく、太鼓の踊りの追加、大歓迎です。ご検討願えれば幸甚です。
プリンシパルダンサー1人1人のレッスン動画やダイジェスト舞台映像が公開されました。
ひとまずお1人分。他の方々の分は各自検索なさってください。
以下、速報でもない速報と重複写真もあるかもしれませんが写真が多々ございます。
「本来の」高名な戦士ソロル並に修羅場での忍耐力辛抱力に自信のある方はどうぞご覧ください。
人生いろいろ ソロルもいろいろ。 誰一人似たり寄ったりなソロル、いませんでした。だから全組鑑賞がやめられない止められない。
今回のヒット、タンドリーチキンサンド!布教活動してしまった。
是非アラジンで継続販売希望!不思議スパイシーなソースもやみつきに。
季節外れな暑さもあってか、周囲には1公演の中で2本キングフィッシャー飲んでいらっしゃる方も。お気持ちはよう分かる!
サイン入りメニュー。エネルギーたっぷり且つ格式高い味わい深い三角関係でした。
野菜のケークサレ。具沢山で、程よい塩味効いていました。
帆立貝とわさび菜のアーリオオーリオスパゲッティ。帆立貝がゴロゴロ、旨味もじゅわり。
マンゴープリン。濃いオレンジや黄色の印象があるせいか、大きなお皿に苺も添えてクリーム色で盛られていてお洒落。このあと深夜バスで姫路へ。
30日に東大阪から戻りまして5月3日。ただいま、初台!公開クラスレッスンを見学。ファーストアーティストやアーティスト中心で、満遍なく見渡しながら見学です。
バヤデール1幕幕開け音楽が伴奏されると、隅っこで菊岡さんと石山さんによる、2人バヤデール再現が即興でお披露目。
菊岡さんがマグダヴェヤ、兵士達、ソロル3役、石山さんが助っ人で兵士。
もし大僧正や舞姫達の曲も伴奏されたら、なり切って演じ踊ってくださったのだろうか笑。
そして管理人恒例、私と着用物の種類が似たお方を探していると(素人な私が失礼)いらっしゃいました、内田さん。柔らかなバネもあって美しや。
宣伝!この日の組も皆様ご覧ください〜と許されるなら私も叫びたくなりました。
マエストロ2回目、ニキヤの廣川さんガムザッティの直塚さんは今回のバヤデールがメニュー初サイン!(直塚さんは小野さん福岡さんキャストでもサイン)
どんなお気持ちで書かれたことでしょう。
前菜にもマンゴー!
ペンネ、ゴルゴンゾーラとほうれん草のクリームソース。マエストロでお馴染みのメニューですが、気に入っております。白ワインが進みます。
エル ド ブーレのソテー マサラ効かせたソース。インドですからカレーなメニューも嬉しい。そしてブルゴーニュの赤ワインと相性良し!
ブランマンジェ マンゴーラッシーソース。
オペラシティのガンジスで昼下がりからビール。ジャンペの皆さんが登場しそうな内装です。
インドの炊き込みご飯ビリヤニも好きです。ふわっと香りが漂います。
前回の初役同士であった組み合わせも素敵ペア。私の家族も観に来まして、
バヤは作品そのものは好きではないが(作品好きな全国の皆様すみません汗)ソロルの印象は良かったらしい。
我が後輩と後日にバヤデール反省会。金色器がラジャーの屋敷彷彿です。ピリッとした刺激がじわりと伝うフィッシュチリカレーが特に好みでした。
バヤ好きな後輩は2組(米沢さん組、廣川さん組)鑑賞し、どちらも鑑賞できて幸せいっぱいだったとのこと。
話の中心は私に合わせてくれたのか笑、28日夜と4日昼のソロルだったが、とにかく1幕の羽根付き鉢巻とカチッとした戦士衣装が凛と絵になる姿と繰り返し語り合いました。
ソロル、ジーン、ソロル、ジーン。何周でも歩き回れそうな心ときめく楽しい円柱。次回公演は6月の『アラジン』です!!
日によってはランプの代わりに形状が似た持ち手付きのカレーの器を持参、いたしません。
ルビーの指環を嵌めて、は行きません。そうはいっても、もしやバヤの大僧正の生まれ変わりであるわけはありませんが笑
日によっては寺尾聡さんの名曲も頭に流しつつ真っ赤な情熱や妖しい色気を醸すルビー坊主さんを満喫していそうな私でございます。
それはそうと、今回はポスター、プログラム、チラシ、どこを観ても1幕の熱血鉢巻堅物ソロルが採用され、嬉しうございました。
2024年5月17日金曜日
世界バレエ名作物語『海賊』『ラ・バヤデール』『ライモンダ』
汐文社から出版されている、子供向けに書かれた世界バレエ名作物語『海賊』『ラ・バヤデール』『ライモンダ』を読んでみました。
異国情緒系3本立てで、現代において上演するには東洋を描く演出の工夫が強く求められる3本かと思います。
直近で観た全幕が2本入っているため、大きな関心を持ちながら手に取りました。
全作品が小説風に綴られていて、原典とは違うかもしれませんが実際には舞台で描かれていない行間も丁寧に描写。
人物達の内面もよりくっきり浮かび上がってきて心を掻き立てられました。
例えばラ・バヤデールのソロル。村人達に慕われ勇者ソロルよ、と讃えられながら呼びかけられる場面や、
彼らが恐れる虎(子供を連れ去るらしい)を退治できる戦士の中の戦士である旨が冒頭に綴られています。
ガムザッティとの婚約は、村人達も大納得な出世であったに違いありません。
また鑑賞時の謎である、ラジャーの屋敷でガムザッティに命じられアイヤが呼びに行くとすぐニキヤがやってくる時間軸。
鑑賞していると舞姫達の待合室が隣部屋にあるとしか思えず笑、ガムザッティ医師の診察を待つ患者のニキヤ、に見えてなりません。
しかし本では、アイヤが屋外まで出向きニキヤと一緒に宮殿の裏口から入ってくるくだりも描写。
ガムザッティが父親のラジャーからソロルの肖像画を見せられると心から喜び、勝気な顔つきが綻ぶ変化も描かれ、この辺りを読み進めていると
また先日の新国立劇場バレエ団公演で鑑賞した直塚美穂さん、木村優里さん2人のガムザッティの造形を観ていても
ガムザッティが意地悪で我儘な女性だなんて一切感じられず。政略結婚ではあれど
父親が正式に決めた結婚を喜び受け入れる様子からしてもむしろ最も真っ当な生き方をしている人物といえるでしょう。
ニキヤはソロルと結婚できるなら寺院から出られる希望を秘めていた内面が前半には綴られていましたが
万一叶ったならば最初はよかれど、やがてソロルがガムザッティとの結婚を命じられたらソロルは承諾するしかないでしょうし、
離婚したニキヤの生活は立ち行かなくなるでしょう。一級戦士と第一舞姫な立場を捨て無職になった2人が果たして運命を共にできるのかと聞かれたら首を縦には振れません。
殊に『ライモンダ』ではヨーロッパ優位な視点で捉えた東洋描写の疑問点や現代における上演工夫についても触れています。
胸の中はジャン一色なライモンダをからかう友人達の微笑ましさや、突然のサラセン人達の到来にも毅然と対処する
ドリ伯爵夫人の凛とした立ち居振る舞いも絵としてぱっと浮かび立ちました。
絵は漫画風ですが子供のみならず大人もしっかり楽しめる学びたくさんな書籍です。
そうでした、帰還した時のジャンの台詞が演劇の決め台詞並にいたく格式高い言葉が並んでいましたが、
婚約者が戦地での敵にあたる人物に強引に連れ去られそうになっている緊急事態に口から出るか?
兼業脚本家な騎士でもない限り、もっと荒くれた口調になりそうな気もしてちょいと疑問も笑。
あくまで子供達、青少年に向けた、きちんとした言葉遣いが連なる点もこの書籍の魅力なのでしょう。
表紙の絵が目に入ると手に取るときは一瞬躊躇うかもしれませんが、是非一度お読みになってみてください。
登場人物達の背景や感情について、新たな発見がきっとあるかと思います。
2024年5月14日火曜日
Dance Marché 池上直子さんによる新作振付作品『Eden』の公開リハーサル 5月11日(土)
順番が前後いたしますが、5月23日(木)に本番を控えたDance Marché 池上直子さんによる新作振付作品『Eden』の公開リハーサルを
田町駅の港区立男女平等参画センターリーブラホールにて見学して参りました。
アーキタンツのすぐ隣、図書館も備わった建物内にある綺麗で大変立派なホールです。
https://spice.eplus.jp/articles/328560
ダンサーズサポートさんによる詳細レポート。
https://www.dancersweb.net/post/5-23(木)開幕!池上直子の新作『eden』公開リハーサル行われる
先月池尻大橋で開催された第1回 BAJ 2023'最優秀ダンサー・振付家受賞式イベントにおけるオルガンワークスの平原慎太郎さんとの振付家対談にて
作品振付やダンサーを見るときの重視事項、コンテンポラリー界の課題等を熱量充満させながら、
コンテをそこまで多くは観ていない者にも理解しやすいように丁寧に語ってくださった池上さんのお話は記憶に新しいところ。
学園を舞台にタイムリープが展開する池上さんオリジナル台本による作品で、
オリジナルのコンテンポラリーで1人1人に役名がある、しかもSFな学園物語は珍しいかもしれません。
新作にも益々興味津々になった私の中では最良のタイミングでの公開リハーサル開催となりました。
受付時間になり客席に入ると既にリハーサルは始まっていて、これといって形式的な挨拶もなし。
すぐさま普段の練習風景や創作過程が眼前に現れたのは嬉しい驚きでした。そして座席もリハーサルスペースをすぐ目の前に見渡せる距離で非常に近く
リハーサルスペースの床にリノリウムを敷いた状態。客席は最初から段差ありで、恐らく可動式。高さのある位置に設置された構造でした。
ただ至近距離度でいえば忘れもしない、2017年11月の東京タワー隣スタジオ事件のほうが衝撃は強し、です笑。
創作過程を目にしていると、池上さんが池尻大橋での対談やインタビュー記事でも仰っていたように、
まずダンサーに声をかけて伝えつつ返ってくる反応から更に何かを引き出しながら振り写しをなさっている印象。
身体のみならず言葉のやりとりも活発に同時進行していて、意図を即時理解し体現するダンサー達の対応力にも感嘆するばかりでした。
また作品作りにおいて池上さんが池尻大橋対談で強調なさっていた、物語を大事にされながらの感情の紡ぎ上げやダンサーに対して考えを聞くスタイルも目撃でき
壁を作らずフラットな関係性の中で出来上がって行く清々しい空気に包まれていたように捉えております。
コンテンポラリーも振付家によって指導は様々でしょうし、中には軍隊のような厳格な指導で心身を追い詰めて
限界を超えさせながら精度を上げていく教え方をなさる先生もいらしたとの話は耳に入ってきたことがありますが(令和だったら完全アウトです多分)
池上さんはあくまで穏やかに朗らかに、そっと掬い上げるような指導を通してリハーサルを展開していく方針のようです。
ダンサー間でも意見交換や確認作業が次々となされていき、特に八幡顕光さんの声が度々よく響いていて積極的に声かけしながらリードしていらしたかと思います。
劇中では先生役を務められますが、リハーサルにおいても安心感ある存在感を示していらっしゃいました。加えてお声がよく通る!
そしてどうしても主人公タイキ役の渡邊峻郁さんに釘付けになったわけですが(最大の目当てでございます)
新国立劇場での公演ではコンテンポラリーの上演が少なくなった現在、リハーサル風景を眼前で拝見できるとはまたと無い貴重な機会。
池上さんが描く意図が吹き込まれて身体が生き生きと躍動していく姿や、上下左右に至るまで
しなやかで立体的な動きを自在に繰り出していく様子に瞬き厳禁な観察をしておりました。
全員で走る場面が多々あり、これがどのようにタイムリープとして舞台上で表現されるのか、注目したいと思っております。
後半は池上さんと出演者全員が並んでのトークタイムもあり。1人1人が務める役柄の紹介をされ、
寄せられた質問にも簡潔に回答してくださり、出演者同士のマイクの受け渡しも実にスムーズ。皆様の賢さ、気配りの細やかさや知性の豊かさに恐れ入った次第です。
そしてどうやらキーワードは「テイ!!」らしい笑。
それから、何か話そうとするも暫く黙り込んだ直後に何だっけ??と1発ふわりと笑わせてくださった渡邊さん笑笑。
それはそうとタイムリープの展開について、繰り返されるためどう変化していくかも見所のようで渡邊さんの説明がとても分かりやすく
個性豊かな生徒達が織りなすエデン学園を舞台に、優等生な主人公タイキが壊れていく変貌も含め、本番が一層待ち遠しくなりました。
ダンスマルシェの皆様、楽しい企画をありがとうございました!
※撮影タイムがあり、集合写真撮影いたしました。しかし我が撮影技術があまりに劣っており失礼。実際には皆様は写真の何倍も素敵な方々です。
ダンスマルシェさんのインスタグラムに、登場人物紹介として写真と説明が掲載されています。
タイキの渡邊さん、現在の朝ドラに出演なさっていても違和感が無いであろう古式ゆかしい雰囲気や知的な顔つき、翳りを湛えた容貌が美しうございます。
Edenのチラシを読んでいて、タイムリープとの解説から随分前に図書館で借りて読んだ、高校生が時空を冒険する小説を思い出し、久々に借りてみました。
新国立劇場開場の年に佐藤藍子さん主演で映画化もされ、映画では分かりかねますが小説内には私と同じ名字の人物が登場するのも嬉しい。
以前は新書版であったはずだが、最近文庫版も出版されたらしい。
読み進めていくと、公立の進学高校に通う主人公の翔香が何度も曜日を飛ばしたり記憶が丸々抜けてしまい大混乱に陥っていると
クラスメイトの男子生徒が冷静に理路整然に向き合い状況を解明してくれる場面が度々あり
読んでいてもカレンダー眺めながらでないと管理人、全く整理ができず。
ダンスにおいては果たしていかにしてタイムリープを表現していくか、タイキがどんな時空冒険へと繰り出すのか、更に楽しみな今日この頃です。
田町駅。アーキタンツ以外の用事での下車は初。レッスン関連荷物なくこの駅へ来るとは、不思議な気分です。
帰り、田町にて乾杯!嬉しい公開リハーサル企画に感謝でございます!毎度のアーキ帰りのオアシス鮮魚バルが入っているビルは点検のため早々に閉館し、北側まで行ってみた。
乾杯はビールです!
面白いさつま揚げや、カナッペのような大葉の天ぷら盛り合わせにびっくり。じっくり味わいました。
2024年5月10日金曜日
4年3カ月ぶり 東大阪のガレージアートスペースでレッスン
4月30日(火)、山本隆之さんが主宰なさっている東大阪市のガレージアートスペースさんへレッスンを受講して参りました。講師は勿論山本さんです。
レッスン自体は1月半ばの東京のアーキタンツさん以来3ヶ月半ぶりで今年に入ってからは2回目。
ガレージさんでの受講はコロナ禍以前の4年3ヶ月ぶりです。ズンドコドッスン!!
ガレージさんにて2013年以降2020年1月まで、年に1、2回受講していた初級クラスは現在開催されていないため
前日に姫路での山本さんの舞台鑑賞に合わせて1泊し、初めて初中級中級を受講。平日にガレージさんの受講も初でございます。
12歳の初夏以降はあくまで鑑賞専門としてきた私にふと転機が訪れ、大人になっての再開時の2013年秋にまず訪れたのがガレージさんでした。
例えば東京住まいの場合、大概の方であれば大阪での年1、2回の受講するならば自宅から通いやすい場所でもレッスンしつつ大阪へ出向くのが常識なのかもしれませんが
私の場合鑑賞専門から中心になっただけで、あくまで山本さんのレッスンしか心身が欲せず、ガレージさんのみピンポイントで受講。
つまり大人になってからのレッスンイコール指導も周囲の会話も大阪弁が当たり前となり1人標準語捲し立てておりました。
コロナ渦前の最後に2020年に受講した休日の初級クラスがやがて開講されなくなって平日の初中級クラスのみの開講となるとレッスンから更に遠ざかり
2年2ヶ月が経った2022年3月以降は訳あって東京でも年に5回程度受講するようになり
(東京でもピンポイントで心身が欲する特定の先生のときのみ受講。あくまで鑑賞中心です笑)現在に至っております。
さて初のガレージさん初中級中級クラスは教室の主宰者や全国規模のコンクール入賞者、都内の主要バレエ団の元団員といった実質上級者ばかりで進みは速く、
細かく素早い方向転換も多々あったりと難度の高い複雑な内容たっぷりでしたが、雰囲気は和やかで山本さんがお手本も見せながら優しく説明してくださっていたので
初級未満レベルのズンドコな私も安心して受講できました。また、じっくりゆっくり基礎を見直しながら進む初級に対して初中級中級は進みが速い分
より多彩なことにチャレンジできる面白さもあり、それぞれのクラスに魅力があると感じた90分でした。
山本規子さんのピアノ伴奏付きである点もガレージさんの魅力で、前日の姫路の影響か!?『ライモンダ』の曲が多数。
1幕貴族達(版によってはジャン達)の踊りやワルツ、2幕のアブさんとのアダージオに3幕の序曲、と耳は祝宴です。
あっ、アンシェヌマンの私の覚えについては聞かんといてください汗。鑑賞とレッスンの回数の比率が90:4くらいになると
どうしたってバレエ音楽を聴くと作品の光景ばかり、作品によっては複数の版が思い浮かんでしまい、案外鑑賞をそこまでなさっていない方のほうが
レッスンの振りはすぐさま素直に頭に入るんちゃうかと大阪でも東京でも思うわけですが笑、しかしバレエ音楽が伴奏されるとやはり嬉しいものです。
他に『もののけ姫』もあり、映画も好きで昨年米良美一さんのコンサートで聴く機会を得た記憶も過って感激いたしました。
(即座に映画のハイライト集が脳内再生されてしまいましたが笑、ラピュタやナウシカですともっと危ない私でございます)
知り合ってから10年以上経ちながらレッスンご一緒は初めましてな方もいらっしゃり、また初対面の方も皆様明るく優しく、ピリピリな空気は皆無。
山本さん規子さんが醸す雰囲気がそうさせてくださっているのかと思います。
スタジオに入った瞬間から優しく迎えてくださるお2人のあたたかいお人柄にどれだけ緊張や不安が和らいだことか。本当にありがとうございます。
当方ただでさえ身体がふっくら重たいため、嵩増し及び重量増加回避のためクラスで1人、最初から最後までまだ中学生(もう中学生、という芸人さんいますが笑)な
袖なしレオタードにピンクタイツ、黒いショートパンツしか身に着けない至極シンプルな必要最小限な格好で受講しておりましたが
皆さんお洒落なパーカーや腰巻きなど大人なセンス抜群。踊るお姿とともに勉強になりました。(しかし私はこの先も中学生路線でいくだろうが笑)
疲れは一切無しで、可能ならすぐにでももう1度同じ内容を丸々90分受講したかったほど。
これといった運動習慣もない私ですので30分以上継続する有酸素運動自体も今年2度目でしたが、日が経過しても筋肉痛無し。講師マジックでございます。
東京のアーキタンツさんの01スタジオと同じくらいの広大な面積、天井の高さ、そして新国立と同じリノリウムらしく、心身共に開放感たっぷりになるスタジオです。
山本さんは初級時と変わらぬ穏やかな光に包まれるような教え方をなさり、対する時折スリルと刺激に満ちた教え方をなさる
熱血鉢巻姿な東側の先生の教え方それぞれ魅力があり、楽しくそして私は恵まれていると心底感じております。
3年前の一昨日は管理人にとって人生最大の幸福日であったお2方の共演日。配信でも喜ばしかったが
しかしあのとき有観客公演ができていたなら2023年の二・二三事件は起きなかった、と毎年5月8日に募ってしまいそうです。
スタジオ最寄り駅の高井田駅周辺は4年3ヶ月前と殆ど変わりなく、猫のお菓子屋さんや我がオアシスで大人になってからのレッスンとセットと捉えてきた魚輝水産も健在。
そしてスタジオへ行く通り道の自販機に描かれていた虎が甲冑を着用していて強そう。東京では今年『ラ・バヤデール』が相次いで上演ですが、
阪神タイガースがあります関西、特に兵庫や大阪で虎退治なんて禁句です笑。虎は強くて当たり前な地域でございます。
以上、ガレージさんでの心身が気持ちよくなれるレッスン、出来たか否かは別として、たっぷり楽しみました。現在は基本平日のみ開催のため、しかも大阪ですから
なかなか受講に行き着くのは容易ではありませんが、また受講したい欲が早くも沸いております。
上本町のホテルを出発!祝日から平日の1泊であったためか、そこまで混雑はせず。私が泊まるホテルらしくない⁈シャンデリアに見送られながら行って参ります!
地下鉄中央線。JRではない。(JR中央線は帰京後に乗る路線)
スタジオ近くの猫のお菓子屋さん。3Dな猫さんが見守ってくれています。
虎は強くて当たり前な地域。分厚く強固な甲冑を着けている虎さんをソロルは倒せるのだろうか。
28日夜と4日昼ソロルは一見豪胆ではないが、獅子奮迅 な気迫と巧みな戦術で退治しそうやなあと脳内で想像。あかん、今日は西日本で有酸素運動でっせ。
スタジオへの道中に位置する魚輝水産。記憶が正しければ2014年にオープンした海鮮レストランです。
お寿司と串揚げのセット。お刺身が大きめ、そしてとにかく美味しいのです。レッスン後のビールは欠かせません笑。
ガレージさんに行き始めた頃は帰りの新幹線で1人で乾杯しておりましたが、
2年目つまりは魚輝水産がオープンした頃からこちらを訪問しての乾杯が習慣づいております。(年数回ですが。今回4年3ヶ月ぶりでしたが)
赤出汁を呑んでいたら、日本酒に見えると言われた私でございます。
ご一緒したお2人とはかれこれ知り合って約10年。昨年2月には新国立劇場にお越しになり、私が歓迎すべきところどうしても不可能だった心境をずっと慰めてくださっていた方々です。
加えて変わり種なレッスン習慣(鑑賞中心で受講は年数回)な性格にも理解を示してくださっている優しいお2人です。
東京での年数回されど毎回が人生大行事なレッスン事情の話も親身に聞いてくださいました。
帰りの新幹線、姫路と東大阪の余韻に浸りながら帰京です。
2024年5月8日水曜日
近年では貴重 幕物作品のみの構成 グラッシオバレエスクール第43回発表会 『ライモンダ』 『アラジン』 『キャンディの国』4月29日(月祝)《兵庫県姫路市》
4月29日(月祝)、兵庫県姫路市にてグラッシオバレエスクール第43回発表会を観て参りました。
今回で6回目の鑑賞で、グラッシオさんのおかげで姫路を堪能する機会をいただいております。
http://www.grazio.jp/news/
基本バレエコンサート形式がなく、オリジナル創作のクラシックや全幕作品を毎回上演していて纏まりがあると観るたびに感じさせてくださっているスタジオです。
最初は子供達による『キャンディの国』。2019年以来の鑑賞で10本くらいのパートで構成され、
可愛らしいチュチュや衣装の生徒さん達が次々と登場して楽しませてくださいました。
背景の美術はお菓子柄の甘美な色彩ながら曲は『くるみ割り人形』より様々な場面からの抜粋で、1幕のクリスマスパーティー場面の曲を抜粋式で聴くととても新鮮。
少子社会の現在、これだけたくさんのお子さんが集まり大きな作品の上演が可能なスタジオも今や珍しいかと思います。
次は『アラジン』全幕。振付は赤松優さんで、2019年にグラッシオさんで観ておりますが
偶然なのか前回も今回も東京の新国立劇場バレエ団の『アラジン』上演と同年に鑑賞。不思議なご縁です。
音楽はディズニーもあれば、『ラ・バヤデール』パ・ダクシオンやジャンペもあり、
インドではないはずが妙にしっくり。これまた偶然でちょうど新国立劇場でバヤデール上演真っ最中で、この日29日も上演していて
既に3回鑑賞してからのグラッシオさん鑑賞のため、東京でも姫路でもバヤデール三昧。
国は違えど大まかに捉えれば同じ東洋圏の物語であるせいかアラジンであっても違和感なく、面白味ある嬉しさでした。
また東京でお世話になっている方が、新国立での演目がバヤデールの次がアラジンで衣装にあまり変化が無いと話していらした旨も脳裏を通過したのでございます。
子供達も総出演で、市場での賑わいや宮廷での宴を順々に彩ったりと大活躍。ジャスミンは生徒さんの交代制でしたがぶつ切りにならぬようバトンの受け渡しがなされ
アラジン役の地主薫バレエ団の石神航一さんはディズニー映画からそのまま出てきた感のある姿で市場でいたずらしてばかりかと思えば
何人ものジャスミンとのパ・ド・ドゥもスムーズに映りました。。
ジーニーは全身タイツな衣装で登場。ここ最近訳あって6月に上演を控えている新国立劇場バレエ団デヴィッド・ビントレーさん版『アラジン』における、
地肌を青く塗って眼光はギラリ、腹筋がバキバキに割れているランプの精ジーン(ジーニー)が大々的に写されたチラシやポスターを穴が空きそうなほどに眺めているせいか
赤松さん版のジーニーはまろやかに思え、また子供達にも優しいためほのぼのとした雰囲気があると感じさせました。
1時間弱に纏められていながら装置転換も巧みになされ、工夫が散りばめられた演出です。
3作品目は『ライモンダ』全幕。グラッシオさん初鑑賞の2017年に鑑賞して以来の再演の高岸直樹さん振付版で(土台はグリゴローヴィヂ版と思われる)
夢の場面は全てカットされているため正確に申すと「ほぼ」全幕な構成ながら、満遍なく網羅されている印象を受けております。
発表会はもとより全幕版はプロの公演でも上演機会が少なく、ましてや昨今の世界情勢を鑑みると19世紀末のロシアやヨーロッパの視点で描いた
イスラム側を倒した十字軍の正義と勝利万歳なあらすじが問題視され、特に近年はヨーロッパや周辺地域での上演は非常に難しい状況。
殊にガザ地区の痛ましい報道を目にするたびに、デンマークロイヤルやイングリッシュナショナル、オランダ国立が新制作したような
時代設定の変更や決闘で絶命ではなく和解の演出にするなど、大改訂版でないと上演不可能と感じます。
先述の通りちょうど新国立劇場バレエ団が上演真っ最中である『ラ・バヤデール』も脳裏を過ぎり、インドの描写が問題になりがちですが
いくら19世紀末に完成した作品とはいえヨーロッパ側の優位を誇張しているとも受け止められかねない『ライモンダ』のほうが上演の壁が高い気がいたします。
しかしグラズノフの音楽が繊細且つ格調高く、中世のフランスやハンガリーとイスラム圏の交差を描いた舞踊展開もあって
作品そのものは面白い味わいがありますから「ほぼ全幕」であっても上演は大変嬉しく、再演を待ち侘びておりました。
ライモンダは前回と同じく主宰の先生のお1人で、登場から清楚で優美なオーラを纏う貴族の令嬢。
ジャンとの暫し(実際は10年くらいか?)の別れが待っている、決して夢いっぱい花いっぱいではない切なさも帯びた踊り方も印象深く残っております。
(私がもし容姿端麗ならこの登場シーン、いつかやってみたい笑。そんな日は来ないと思うが汗)
ジャンは山本隆之さんで、この演出では最初からたくさん登場なさるため、凛とした眉目秀麗なお姿に喜ばしい限りです。
アブデラフマンも前回と同じく地主バレエの金兌潤さん。パワフルに縦横無尽に、特にスペインでも見せ場たっぷりに踊りながらも
悪人にはならず品を崩していなかったのが好印象。(これ大事)ライモンダに求愛する
危うい香り漂うアダージオもカットであったため、スペインやソロでの濃縮求愛も見応えがありました。
1幕ワルツやサラセン達の踊り、結婚式でのハンガリーは大人数構成で、呼吸合わせて大勢で踊る生徒さん達の協調性から学びが多々あり。
子供の頃の私なら、対応困難であるのは間違いない。
衣装、特に貴族や伝令が時代数百年先取りなデザインであったのは気になりましたが、例えば実在したジャンが活躍した第五回十字軍の時代である1200年代を現す衣装なんぞ
メジャーなバレエ団の公演でない限り確保は難しいはずで、そこは『眠れる森の美女』な趣になっても仕方ない。
まずは発表会のレパートリーとして全幕を持っているだけでも貴重であり、感激でございます。
決闘でのジャンの剣が記憶が正しければ前回は護拳付きで、これまた随分と近代開発な種類の出現と思ったものですが
今回はより当時の時代に寄せた平たく大きな形状の叩き割る系なデザインでしたので、より好印象。
(小姑のように煩くてすみません。史実を題材にした作品であるため時代考証の面も気になるのです)
決闘は臨場感と迫力があり、20年前に東京の初台で興醒めしてしまった、これぞ会議室ではない現場での「打ち合わせ」状態にならず。
マントでジャン!な帰還姿も目にでき、大満足でございます。
グラン・パ・クラシックは通常は別場面で披露されるヴァリエーションも挿入され、ヒュルヒュルと流星のような旋律が耳に残る夢の場の第2と、
それから2幕にライモンダが踊る帰還のヴァリエーションもあり。特に後者は発表会でお披露目される機会は滅多になく、もしかしたら初めてお目にかかったかもしれません。
吹奏楽器による主旋律が次々と変わり、私の中では世界一好きなヴァリエーションなのですがこれといって派手な技巧もなく披露されることが殆どないため、
今回は笑みが何度も零れました。昨年『ラ・バヤデール』影の王国のニキヤを務めた講師の方が踊られ、
ポジションの切り替えやメリハリも美しく、鮮やかな軌跡を残していくお姿をじっくり観察した次第です。
さてフィナーレの後に少しの時間が空き、ゲストのお1人酒井直希さんが観客に対してもう少々待つよう合図してくださってきっと何か始まるのであろうと眺めていると
出演者が続々と可愛らしい包みを客席に投げ入れるサービス。一生懸命投げても近くに落下してしまうのも微笑ましく
一方で野球経験者か、或いは阪神戦の見過ぎなのかアクリエ姫路ではなく六甲おろしが流れる甲子園球場と思い込んでいらっしゃるのか笑、
遠方まで投げてくださる方もいて、皆さん様々。私も1包みいただきました。キャンディ(兵庫でも飴ちゃんと言うんやろか笑?)が何種類か入っていて職場で重宝しております。
ヴァリエーションやグラン・パ・ド・ドゥ中心では全くない、大人数作品の毎回の上演に
先生方の指導、何より生徒さん達の協調性の強さに毎回頭が下がっております。
アラジンだったか、ずっと泣いてしまっていた小さな子供の生徒さんをそこまで年齢も変わらないであろう隣の生徒さんが手を繋いであげたり、
音楽や振付に遅れないようにささっと誘導してあげたりと大人顔負けの細やかな気配りをしていて、見習いたいと思いました。
今年は例年の4月半ばよりも1週間後のゴールデンウィーク真っ只中の開催で、姫路に行くようになって6度目にして初めて快晴に当たらず
午後からは雨に見舞われましたが、気持ちは晴れ晴れとしてアクリエを後にいたしました。
相変わらずオタク気質である。しばしば出向いている図書館の方にもそう思われているかも。
古代インドの戦闘の歴史本が見つからなかった分、こちらの時代に走ってしまった。
『ラ・バヤデール』の音楽が脳内旋回する中で東京の新宿から夜行バスにて三宮到着、そして姫路駅へ。
姫路駅を出ると姫路城が見える構図な駅前。バスの上にお城が乗っているようにも見えます。
朝風呂後、まずはみゆき通りを歩いてはまもと珈琲へ。
姫路へ行くと必ずアーモンドトーストを食べますが、これまで4店舗訪れた中で、スライスアーモンドをたっぷり使用したはまもとさんのトーストが好み。
保存ができぬため、アーモンドバターのお土産や通信販売は不可能らしい。食べたくなったら直接店舗へ。
ライモンダの時代よりだいぶ先の頃の時代の甲冑。お店の守護神とのこと。
今年も来ました姫路城!
毎度のアングル。しかし藤の花が今回は咲いていない。いつもは4月半ばに来ていたためか。
姫路へ来たら必ず立ち寄っているはりかい。今回で6回目で、いつも席も同じ。姫路城を目の前に眺められるテラスの立て看板前の席に毎回座っております。
播州の日本酒で乾杯。私が文豪ならば、毎年座っていた席として語り継がれていくのでしょうか。
毎回同じメニューを注文、蒸し牡蠣。ふっくらむっちり大きく、貝汁もたっぷり。姫路の昼の食は6回とも不変。
自転車、徒歩ともに整備された道を歩きながら姫路駅方面へ。
姫路は駅近くもお城周辺もオーバーツーリズム状態にはなく、交通混乱や渋滞もなく、程よい賑わい。
しろまるひめにご挨拶。
アクリエ姫路へ。
アクリエから眺めるロンドンな景色、タワーブリッジ。来年夏は本家のタワーブリッジを目にできますように。
帰りは2022年の終演後に訪れた郷土料理のお店へ再び。ビールが爽やかきめ細かな味わい。姫路では不思議と私も口にできる、焼き穴子も。
銘酒、白鷺の城。
姫路おでんと。生姜醤油が品良きぴりりとした辛さ。
白ワインに締めの鯛茶漬け。穏やかに締め括りです。 さて宿泊先は姫路駅周辺ではなく訳あって大阪府内。
翌日は4年半ぶりのある大行事へ行って参りました。その話は次回。
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