2024年4月9日火曜日

杉並でめでたい年度末決算  エンドウ・バレエ発表会2024『ドン・キホーテの夢』ほか  3月27日(水)《東京都杉並区》





3月27日(水)、セシオン杉並でエンドウ・バレエ発表会2024を観て参りました。2022年夏に続き2度目の鑑賞です。
http://endoballet.com/

主宰は遠藤康行さん須永リエさん。スターダンサーズ・バレエ団で活躍されてきたお2人で、
遠藤さんは新国立劇場でのDance to the FutureのアドバイザーやJAPON dance project、横浜バレエフェスティバルを始め若手の発掘や振付家としても各地で活躍なさっていて
2月に神奈川県民ホールで行われた、中田恵子さん演奏のオルガンとバレエ公演も記憶に新しいところです。

第1部と第2部はバレエコンサート、生徒さんの数が前回より増えた印象もあって、古典からコンテンポラリーまで盛りだくさん。
小さい子供の生徒さん達もとびっきり可愛らしく、舞台上のハプニングさえも微笑ましく映り、
しかも最後はきちんとおさまってレヴェランスはできているのですから拍手です。
小学生くらいの生徒さん達が出演された作品の中には『ゼンツァーノの花祭り』の曲を用いての改訂版があったのも嬉しく
本来はグラン・パ・ド・ドゥ用の曲ながら、シンプルにアレンジされた振付を皆で丁寧に踊っていて、ほんわか春の訪れを感じさせ頬が緩みました。
実は私も太古の昔10歳の頃だったかほぼ同じ曲構成で女子5人くらいでやりまして汗、
しかし当時既にバレエ作品解説書籍を一通り読んでいた変わり者鑑賞偏重な子供であった私は
まだインターネット普及前で動画サイトもなく、デンマークロイヤルバレエの写真からは振付までは把握できなくても
グラン・パ・ド・ドゥとしてトップクラスの男女が踊る作品を先生が無理やり改変なさったと捉えて拒絶感が芽生えてやまず。
私が踊るこの箇所は本来は男性部分ではないか、元を辿れば私のような可愛らしさ皆無な子供が踊っては決してならず
ブルノンヴィルスタイルを体得した選ばれし者のみに許される崇高な作品であるはず云々捻くれた想像に気を取られ1人虚しくゼンツァーノの「恥」祭り状態で終了。
携帯電話やデジカメカメラ普及前の時代の出来事で写真映像が残っていない、拡散もされていないのがせめてもの救いと今も思っております。
今回発表会にて作品が描く世界観を素直にしっかり表現していたエンドウバレエの生徒さん達に敬意を持って鑑賞した次第です。
これを書いていたときは自宅の窓から眺める晴天の下に見頃を迎えた満開の桜が視界に入っておりましたが、
発表会当日はまだ五分咲きだった3月下旬であってもまさに花祭りであったと思い起こされる杉並の舞台です。

グラン・パ・ド・ドゥも増え、前回『海賊』を踊られた生徒さんが雰囲気をがらりと変わってのリーズに結婚にチャレンジされていて
キリッとした美しい品格にとても好印象を持ち、ふわっと軽やかで空間が広がるような踊り方も目に残っております。

メインは『ドン・キホーテの夢』。全幕をハイライト版に凝縮し(実質ほぼ全幕)、遠藤さんがご自身がドン・キホーテ役で
特に夢の場ではさりげなく小さなキューピッドさん達を見守る導き役として場を支え、
あくまで生徒さん達を前面に出しつつプロローグから物語を的確に動かしつつ脇に徹していらっしゃいました。
思えば遠藤さんが本番舞台の上に立つお姿は初見かもしれず(私がスタダンを観始めた頃は既に振付家として名を連ねていた)
マイムが大らか優雅で、優しく語りかけるご様子も妙に新鮮です。

キトリはちょうど前月に観た横浜でのオルガンとバレエ共演でコンテンポラリーを踊る姿が
とても瑞々しく鮮烈であった遠藤ゆまさんで、晴れ晴れとしたパワーのある街娘でとてもチャーミング。
バジルが新国立劇場の渡邊峻郁さん、衣装が床屋にしては随分お洒落で宮廷の執事か財務秘書あたりを務めていそうな提灯袖なブラウスをお召しで
或いは王室御用達の理容室責任者と勝手にあれこれ想像。(そういえば先日テレビ東京の出没アド街ック天国で麻布十番特集を視聴していたら
創業が幕末に遡る日本最古とされる理容室が紹介されていてアメリカ公使館のハリス公使が顧客の1人であったようで、
そういった由緒ある床屋の経営者とも想像いたしました)

話を令和に戻します。キトリとバジルの振付はやや手が込んでいて、2人で戯れる脚掴みの箇所もシンプルなリフトではなく持ち上げながらぐるっと回転させたり
さりげなく複雑な脚技が盛り込まれていたりとなかなかややこしい要素てんこ盛りでしたがお2人とも余裕綽々。
ゆまさんは機敏で、渡邊さんは高い腰から伸びた長い足元持て余さずさらりとやってのける技量もたっぷり目にできました。
2人の掛け合いからはそれはそれは熱々な愛情が発散され、わざと意地悪な表情も見せ合うなど面白カップルな様相の作り方も細やかです。

発表会ですから当然プロの本公演と同じ分量の配役は確保できずであっても人数に即しての改訂も上手く出来ていて
キトリの友人を増やしての街の賑わいや子供達とサンチョのひと騒ぎを大きく見せたり
闘牛士仲間は不在のためスターダンサーズ・バレエ団の林田翔平さんエスパーダが1人で約10人分頑張る等、随所に工夫が行き届いた構成でした。
そういえば9年前、徳島での発表会にて福岡雄大さんが同様の状況で、キレッキレ豪快に1人で20人超!?の存在感を示しながらエスパーダをなさって
観客はもう笑うしかないくらいに燃える男エスパーダ笑。懐かしうございます。

話を杉並区に戻します。従来キトリ友人2人とバジルが踊るトロワは友人が一瞬絡むものの
バジルが殆ど1人で頑張るバージョンで渡邊さん、1人で3人分のパッション放っていらっしゃいました。
この曲、3人で華々しく踊るのが刷り込まれ過ぎていざ1人で披露となるとかなり踊り辛い、見せる難度が高くなると思うものですが
(当方、子供の頃発表会でこの曲で女性用ではない衣装を着用して1人でやりまして、しかも無背景で自身以外誰も舞台上にいない状態で。
詳細綴ると重苦しくなる大トラウマな出来事のためこれ以上は割愛しますが)
規模も立場も器も小さい自身を例えに出すのは憚られますが、それはさて置き3人並んで当たり前な曲であっても、
いざとなればお1人でも違和感なく場面描画が可能である渡邊さんの凄腕ぶりを見せていただいた思いでおります。

結婚式はファンダンゴが斜めに斬り込んでくる展開を始めパリ・オペラ座のヌレエフ版に近いと思われる振付で、全員で要所要所を潔く決めていて爽快。
リーズを踊られた生徒さんのメルセデスと林田さんエスパーダによるリードもビシッと締めてくださっていよいよ結婚式へ繋がる良き流れです。
キトリとバジルは白系の衣装で整えられ、これまたお洒落。バジルが紫に近いピンクのサッシュ入りの金白キンキラ衣装で目を奪われ、しかも着こなしが自然。
2月の国際アカデミアでの人間金閣寺な衣装といい、ホフマン物語での高露出度な半魚人風衣装といい
一歩間違えれば寒気漂う失敗作のコント状態になりかねないキンキラキン系或いはギョッとするデザインの衣装でも
生来の端正な美しさと舞台姿のオーラ、双方とすんなり調和してしまうのでしょう。
お2人のテクニックが冴えてパ・ド・ドゥもめでたさ一杯でした。ヴァリエーションやコーダでは
勢いと高さ両方が上昇気流に乗り切っていた渡邊さん、危うく杉並車庫まで跳んでいくかと思ったほどです。
最後、皆で手を繋いで輪になっての大団円にて、背丈のある身体をちょこっと抑えながら子供達とも足並み揃えて真面目に頑張るバジル、かえってお茶目に映りました笑。

コンサートもドンキも生徒さん達が楽しそうで、ゲスト陣も特にドンキは物語の支え手としてガチッと纏めてくださるご活躍。
平日の杉並にて幸せな年度末決算となりました。帰宅後も暫くは夢が続いた発表会です。




新国立劇場方面、セシオン方面、両案内を兼ねた道路標示。銭湯の前を通りかかったら営業時間前から待つ方々で賑わっていて、
地域の憩いの場として栄えているようです。



バスで環状七号線直進の旅、約10分!晴天に恵まれ、京王線代田橋駅から頑張れば徒歩移動も可能だったと思いますが
強風且つ花粉大量飛散であったためおとなしくバスに頼って向かいます。



降車すると会場はすぐ。まさにドンキな青空!そして建物の内側が中庭のようになっていて、ドンキの舞台美術思わす造りでした。
雨天や肌寒い日が続いた時期でしたがこの日の午後は快晴。しかしこの青空以上に爽やかであろうバジルに夕方以降はお目にかかると思うとニンマリ。



早くに着いておりましたので、せっかくですので青梅街道沿いの杉並車庫近くのお菓子屋さんCafe neigeへ。食事メニューも用意しているらしく、夜も営業とのこと。
地元密着人気店で平日15時にはケーキはほぼ売り切れ、シュークリームはありました!



盛り付けがカラフルでお洒落。さっくり香ばしいシュー皮にコクのあるクリームがたっぷり。コーヒーは濃いめの挽き方。



セシオン杉並の中庭にある像。爪先強調!



帰り、お腹の声が店へと誘導。平日に嬉しい年度末祝いに乾杯です!

0 件のコメント: