2022年10月6日木曜日

機構を生かした大掛かりな気鋭の3作  Kバレエ  オプト  プティ・コレクション  K-BALLET OPTO  Petit Petit Petit  10月1日(土)夜





10月1日(土)、KAAT神奈川芸術劇場にてKバレエ  オプト  プティ・コレクション  K-BALLET OPTO  Petit Petit Petit夜公演を観て参りました。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2022opto


Petite Ceremonie(プティ・セレモニー)"小さな儀式"
振付:メディ・ワレルスキー
音楽:A.ヴィヴァルディ「四季」ほか

序盤は無音或いは無音に近い静けさに包まれ、もしやこのまま無音続きな我が苦手路線作品かと暫くは不安が過ったものの
ランシエさんのジャグリングや語り、直方体な装置を各々手に移動しながら形を作っていく過程もなかなか面白い。
詰め込まれていたものが一気に飛び出して繰り広げるような展開でした。四季の曲はコンテンポラリーでも馴染み深いながら
終盤においてはフォーマルな格好をした男女が大勢で踊り狂う光景が斬新に見て取れ、ぞわぞわとした緊迫が体内を巡回いたしました。


Petit Barroco(プティ・バロッコ)"小さな真珠(ゆがんだ真珠)" 振付:渡辺レイ
音楽:D.スカルラッティ=チャールズ・エイヴィンソン「合奏協奏曲第5番 ニ短調」ほか

今年1月公演にて渡辺レイさん振付FLOW ROUTEのダレる瞬間が微塵もない躍動感の連鎖や照明にも凝った演出に虜となり、今回最大のお目当て作品。
実のところコラボレーションを前面に打ち出していたSaluteの下着の衣装はさほど気にならず
腰が隠れる程度の短い丈のスカートに見えたくらいでしたが(失礼、座席の事情もあるかと思われます)
前半、ハイヒールを履いて繰り出す鋭い脚線にて自由に歌うような颯爽とした歩みや、身体を歪ませても美が宿る不自然さの連なりにも驚嘆いたしました。
主軸を務めた飯島望未さんの綿の如く軽やかで急速なテンポの真っ只中であっても気づけば次のポーズやステップに移っている
つまりは助走の踏ん張りを感じさせずコントロールしてしまう身体能力にも目を見張るばかり。
袴のような黒い衣装に身を包んだ男性4人の斬り込む存在感もアクセントとなり、振付と厳粛な曲調のバロック音楽との組み合わせのアンバランス感が
歪みが作り出す一風変わった危うい作風にもしっくり。官能的であっても痛烈な刺激が身体を伝い、痺れました。
後半においては舞台の奥側に置かれたハイヒール達のオブジェのような装置もインパクト大でした。


Petite Maison(プティ・メゾン)"小さな家"
振付:森優貴
音楽:S.ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」ほか

黒側の悪魔、白側の天使にグループ分けされた構成で、それぞれの持ち場に黒と白の丸められた紙らしき物体が散らかっている状態で開始。
上から観ると、白側は一昔前の作家が失敗した原稿を投げ捨て執筆滞り真っ盛りな部屋、
黒側は書道家が失敗した半紙を投げ捨て続けている部屋に思えてならずいかにしてダンスが展開するのか見届けていたわけですが
序盤から私が好むショスタコーヴィチの哀愁感が巡るワルツが流れたり(ボリショイの明るい小川や
宝満直也さん美女と野獣等ありとあらゆる作品で使用されているかと思います)
日髙世菜さんの瞬発力のある身体の使い方や杉野慧さんの作品をがっしりと纏め上げる力強さも目に留まったりと開始間もなくして気に入りそうと期待。
そしてこれまた幾多の作品で使用されているであろう、私としては不動産の宣伝映像曲の印象も強いパガニーニの主題による狂詩曲の中に潜む
悲しみや希望、大らかさやスケール感といった次々と変化していく曲の構造に、希望を抱くように舞う天使達の姿や
毒々しく時には這うように場を突き動かしていく悪魔達の持ち味がパズルのようにぴたりと嵌り、曲の魅力に一段と心惹かれた次第です。
天使の中では世利万葉さんの小柄な華奢な身体から想像がつかぬパワーの宿りに魅せられ、音楽負けしない機敏でダイナミックな踊りにも驚かされました。

座席はチケット代金もお手頃な点に惹かれて椅子付き立見席でしたが、見切れはあるものの
舞台からの距離は遠くはなく後方までを駆使した演出もよく観察でき、気に入りました。
椅子付きであったのは大変助かり、幕が開く寸前までは着席して足腰を休ませ整えておけますので、
また各作品30分程度の上演時間。疲労もなく、何しろ全作品飽きぬ面白さ全開でしたからこれといった支障は感じずに終演を迎えました。
立ち見席は2014年のオーチャード25周年ガラ以来で、そのときは椅子は無しでベランダのような場所に3人ほど入り
(集合住宅のベランダから家族で広場の祭りを眺めるようなイメージです笑)
何しろ通常座席が非常にお高い価格の公演でしたのでお得感はありましたが、休憩1回は挟むものの第1部と第2部それぞれ通して立ちっぱなしでしたから
演目と演目の間の暗転時には屈伸しながら鑑賞に臨んでいたものです。ただ同じベランダに入った者同士、
次第に仲間意識が芽生えたのか初対面ながら打ち解けたのは良き思い出で、終演後も足の疲労を心配し合ったりとこれはこれで楽しき珍しい体験でございました。

渡辺さん振付のコンテンポラリーが再び鑑賞できるならと横浜まで足を運びましたがどの作品も予想以上に大掛かりでKAATの舞台機構を存分に生かした演出も見応えあり。
そしてKバレエカンパニーのダンサー達が現代作品を踊る姿をまだ多くは目にしていなかったためか斬新に感じたと同時に質の高さにも仰天。
古典とのミックスプログラムやガラではなく、アジア初演1本に世界初演2本からなるトリプル・ビルで
こうにも満たされた気分になるとは予想外でした。継続して欲しい企画公演です。




せっかく最寄駅の1つが日本大通り駅である地域に来たのですから帰りは横浜中華街へ。
今年は1972年の日中国交正常化から50年。1972年といえば、熊川さん始め日本の男性ダンサー黄金世代に多き生まれ年であったはず。



錦里へ



まずは紹興酒で乾杯。ティーポットのような容器がお洒落です。しかし中身はお茶ではありませんから、慌てずゆっくり呑みましょう。
配布されたプログラムは小型であってもリハーサル写真や振付家による作品解説、対談、と読み応え十分。



麻婆豆花炒飯。管理人、麻婆豆腐と炒飯が好物の上位にあり、両方同時にいただける料理を調べたところ見つけました。
セットメニューならともかく、夜の単品メニューでそれぞれを1つずつ注文したら
いくら胃袋はまだ中学生な身であっても1人分には多かろう、一皿にのった料理があればと思っていたわけです。
山椒の味があとから誘い、すっと抜けるような気持ち良い辛さでございました。豆花が炒飯の四方を固めている
メニュー写真と異なり上から大胆にのっかっていて、これはこれで嬉しい盛り方です。
お店は変面ショーが名物らしく、開催の時間帯は混雑していそうですが訪問時は終了後で1人客も入り易い雰囲気、広々とした空間でした。
私が退店する頃、横浜スタジアムでのベイスターズとジャイアンツの試合が終了した時間帯であったようで、
駅や駐車場方面の道はホームのベイスターズファンの皆様の装いの青尽くし。



壁には素敵な絵がたくさん。お店の方からも撮影どうぞと言ってくださり、壁画を撮影。
随分とモダンな自転車で麻雀に来た客のようです。私も自転車は好きですし日々の生活でも場合によっては旅先でも利用いたしますが
現在は様変わりしているかもしれませんが報道映像に映る天安門広場等の北京の街中における自転車通行量の多さには
たまげており、あの場所を走る自信はございません。環状八号線の交差点が限界です。



この近くのザ・ホール・ヨコハマも何度かいっており、昨年5月は鑑賞後そのまま羽田空港に直行して札幌に飛び、
翌日には熊川さんのご出身スタジオである久富淑子バレエ研究所の記念公演に足を運んだ日も懐かしく思い起こされます。

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