2022年10月13日木曜日

柴田実樹さんのオーロラ姫   バレエシャンブルウエスト『眠れる森の美女』10月9日(日)《東京都八王子市》





10月9日(日)、バレエシャンブルウエスト『眠れる森の美女』を観て参りました。
http://www.chambreouest.com/performance_info/眠れる森の美女(全幕)

オーロラ姫:柴田実樹
デジレ王子:芳賀望
カラボス:伊藤可南
リラの精:石原朱莉
水晶の泉の精:神谷麻依
魅惑の庭の精:荒川紗玖良
森林の空地の精:石川怜奈
歌い鳥の精:坂本菜々
黄金の葡萄の精:村井鼓古蕗
宝石:斉藤菜々美  窪田希菜  早川侑希  古郡士英生
フロリナ王女:川口まり
青い鳥:藤島光太


柴田さんのオーロラ姫は登場の壇上アラベスクから堂々お目見え。ただでさえ豪奢なプロローグを終えてからの登場なだけあって、
また登場後にはローズ・アダージオまで待ち受けている幕ですから心臓破りな振付にも思えたものの
ぴたりと静止して格の高さを明示していました。異次元な美しいオーラの強い印象から16歳の姫君は似合うか実のところ少々心配もありましたが
両親のもとへ走り寄る後ろ姿がたいそう可憐。4人の王子達には恥じらいを見せつつもポーズは1つ1つ安定し、すくすくと育って大輪の花を咲かせる姫君そのものでした。
幻影の俯いた表情や細かなステップから醸す物寂しさも上階席まで伝わり、冗長になりがちな場面であってもオーロラ姫の時間軸や感情をしっかりと体現し
赤ずきんちゃんらを冒頭でお出迎えせず、結婚式の最後の最後で登場するグラン・パ・ド・ドゥにおいても空気をがらっと変える威厳と品位が備わりたいそうお見事。
清里フィールドバレエでは組まれたことがあるのか、芳賀さんの王子とも相性が良さそうで、きっちりと古典の美を作り上げつつ華々しい幸福に溢れる結婚式でした。

石原さんのリラの精は明朗な包容力でオーロラを導き人々を安心させていて、全身から放つにこやかさにカラボスが弱ってしまいそうになるのも頷けます。
あとにも述べますが、色違いカヴァリエも6名つく大掛かり部隊からなるプロローグでも張りのある強さで統率。左右の移動少なめの英国系振付と思われる
ヴァリエーションにおける、1点からスケールを一気に開花させるダイナミックな、されど母性もしっとりと伝う踊りも目に留まりました。
カラボスはマイム中心で長いゴージャスなドレス姿であっても1人歩きせず、お城を瞬く間に
黒くさせてしまうかのような立ち居振る舞いで魅せた伊藤さんの表現に引き寄せられました。

演出でユニークと感じさせたのは針仕事の現場が見つかり処刑されそうになった3人組を許すよう王様に求める人々の中にいつのまにか4人の王子達も加わっていて、
来賓までもが城の関係者や花のワルツ陣と一致団結し、結束感が生まれた面白い光景が広がりました。
ローズアダージオの最中も含め王子達は何語で会話を交わしていたのか、立候補の条件に仏語必須が記載されているのか毎度気になりますが真相は分かりかねます。

また『シンデレラ』四季の精達の場面でも似た演出がありましたが、プロローグ妖精達のソロでは、リラの精達も周りにて
各々の妖精達になぞらえた振付を見せてソロと連動し、盛り立てる役目も果たしていました。

基盤はウエストモーランド版と思われ、プロローグからして構成や衣装がこんもり豪華絢爛。
パ・ド・シス妖精達の衣装が非常に凝った模様で色のみならずデザインも様々、丸みのある線模様もあればオレンジ地に光沢のある大きな葡萄を彩ったデザインもあり
されど全体を眺めると不思議と調和。カヴァリエ達のお仕えする妖精に合わせた色違いの羽頭飾りや白を基調に色味が入った服装も華やぎを与え
王宮戦隊ロクレンジャーに見えたのはさておき、始まり早々から目にも豪奢な世界が出現していたのは明らかでした。
シャンブルは戦隊、某国立は青色でお揃いのブルーインパルス、都内においてもバレエ団によって
こうも異なる趣きに、古典バレエの最高峰と呼ばれる作品とはいえ衣装の閃きの違いに再度驚かされます。

昨年『シンデレラ』主演を鑑賞した川口さん藤島さんがフロリナ王女と青い鳥で登場され、
機敏でパワーもあり、互いに遠方から飛び込んでからささっと組んでの展開も呼吸がぴったり。2人して、歌うように楽しそうに踊る姿も好感を持ちました。
順番前後して、水晶の泉の精(ロシア系では優しさの精と呼称が多いか)の神谷さんが、曲も振付もこれといったメリハリが欠ける
しかも短時間ヴァリエーションながらポジションをくっきりと見せながらの踊り方で好印象。
また逸見智彦さんがリラのカヴァリエ、4人の王子の中軸、(恐らくお国はフランスか)、結婚式はポロネーズ、とあちこちで舞台の品を一段と加えるご活躍。
男性陣の中では誰よりも王侯貴族な気品に覆われ、端正な容姿も健在でこれからも長く舞台に出演し続けて欲しいダンサーです。

美術は水色がかった、爽やか清らかな趣きが映える色調でオーロラ姫の登場では澄んだ泉が湧いてきそうな風景を更に想像。
衣装とのバランスも宜しく(これ大切)、終始快き優美な宮廷世界で満たされました。早くも再演が楽しみな、新制作作品です。






帰り、京王八王子駅近くにて昨年のシャンブル公演『シンデレラ』公演後に立ち寄ったBASELへ。
JCOMホール催し物一覧。池上彰さんの講演会、気になるところ。



淡いピンクが可愛らしいピンクグレープフルーツケーキとスパークリングワインで乾杯。さっぱりして爽やかな甘さのケーキでございました。
容姿と選ぶメニューがいたく不釣り合いな珍客であろうと思いましたが好きなものは好きなのだ。

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