2024年5月17日金曜日

世界バレエ名作物語『海賊』『ラ・バヤデール』『ライモンダ』





汐文社から出版されている、子供向けに書かれた世界バレエ名作物語『海賊』『ラ・バヤデール』『ライモンダ』を読んでみました。
異国情緒系3本立てで、現代において上演するには東洋を描く演出の工夫が強く求められる3本かと思います。
直近で観た全幕が2本入っているため、大きな関心を持ちながら手に取りました。

全作品が小説風に綴られていて、原典とは違うかもしれませんが実際には舞台で描かれていない行間も丁寧に描写。
人物達の内面もよりくっきり浮かび上がってきて心を掻き立てられました。
例えばラ・バヤデールのソロル。村人達に慕われ勇者ソロルよ、と讃えられながら呼びかけられる場面や、
彼らが恐れる虎(子供を連れ去るらしい)を退治できる戦士の中の戦士である旨が冒頭に綴られています。
ガムザッティとの婚約は、村人達も大納得な出世であったに違いありません。
また鑑賞時の謎である、ラジャーの屋敷でガムザッティに命じられアイヤが呼びに行くとすぐニキヤがやってくる時間軸。
鑑賞していると舞姫達の待合室が隣部屋にあるとしか思えず笑、ガムザッティ医師の診察を待つ患者のニキヤ、に見えてなりません。
しかし本では、アイヤが屋外まで出向きニキヤと一緒に宮殿の裏口から入ってくるくだりも描写。

ガムザッティが父親のラジャーからソロルの肖像画を見せられると心から喜び、勝気な顔つきが綻ぶ変化も描かれ、この辺りを読み進めていると
また先日の新国立劇場バレエ団公演で鑑賞した直塚美穂さん、木村優里さん2人のガムザッティの造形を観ていても
ガムザッティが意地悪で我儘な女性だなんて一切感じられず。政略結婚ではあれど
父親が正式に決めた結婚を喜び受け入れる様子からしてもむしろ最も真っ当な生き方をしている人物といえるでしょう。
ニキヤはソロルと結婚できるなら寺院から出られる希望を秘めていた内面が前半には綴られていましたが
万一叶ったならば最初はよかれど、やがてソロルがガムザッティとの結婚を命じられたらソロルは承諾するしかないでしょうし、
離婚したニキヤの生活は立ち行かなくなるでしょう。一級戦士と第一舞姫な立場を捨て無職になった2人が果たして運命を共にできるのかと聞かれたら首を縦には振れません。

殊に『ライモンダ』ではヨーロッパ優位な視点で捉えた東洋描写の疑問点や現代における上演工夫についても触れています。
胸の中はジャン一色なライモンダをからかう友人達の微笑ましさや、突然のサラセン人達の到来にも毅然と対処する
ドリ伯爵夫人の凛とした立ち居振る舞いも絵としてぱっと浮かび立ちました。
絵は漫画風ですが子供のみならず大人もしっかり楽しめる学びたくさんな書籍です。
そうでした、帰還した時のジャンの台詞が演劇の決め台詞並にいたく格式高い言葉が並んでいましたが、
婚約者が戦地での敵にあたる人物に強引に連れ去られそうになっている緊急事態に口から出るか?
兼業脚本家な騎士でもない限り、もっと荒くれた口調になりそうな気もしてちょいと疑問も笑。
あくまで子供達、青少年に向けた、きちんとした言葉遣いが連なる点もこの書籍の魅力なのでしょう。

表紙の絵が目に入ると手に取るときは一瞬躊躇うかもしれませんが、是非一度お読みになってみてください。
登場人物達の背景や感情について、新たな発見がきっとあるかと思います。

2024年5月14日火曜日

Dance Marché  池上直子さんによる新作振付作品『Eden』の公開リハーサル 5月11日(土)








順番が前後いたしますが、5月23日(木)に本番を控えたDance Marché  池上直子さんによる新作振付作品『Eden』の公開リハーサルを
田町駅の港区立男女平等参画センターリーブラホールにて見学して参りました。
アーキタンツのすぐ隣、図書館も備わった建物内にある綺麗で大変立派なホールです。
https://spice.eplus.jp/articles/328560

ダンサーズサポートさんによる詳細レポート。
https://www.dancersweb.net/post/5-23(木)開幕!池上直子の新作『eden』公開リハーサル行われる


先月池尻大橋で開催された第1回 BAJ 2023'最優秀ダンサー・振付家受賞式イベントにおけるオルガンワークスの平原慎太郎さんとの振付家対談にて
作品振付やダンサーを見るときの重視事項、コンテンポラリー界の課題等を熱量充満させながら、
コンテをそこまで多くは観ていない者にも理解しやすいように丁寧に語ってくださった池上さんのお話は記憶に新しいところ。
学園を舞台にタイムリープが展開する池上さんオリジナル台本による作品で、
オリジナルのコンテンポラリーで1人1人に役名がある、しかもSFな学園物語は珍しいかもしれません。
新作にも益々興味津々になった私の中では最良のタイミングでの公開リハーサル開催となりました。

受付時間になり客席に入ると既にリハーサルは始まっていて、これといって形式的な挨拶もなし。
すぐさま普段の練習風景や創作過程が眼前に現れたのは嬉しい驚きでした。そして座席もリハーサルスペースをすぐ目の前に見渡せる距離で非常に近く
リハーサルスペースの床にリノリウムを敷いた状態。客席は最初から段差ありで、恐らく可動式。高さのある位置に設置された構造でした。
ただ至近距離度でいえば忘れもしない、2017年11月の東京タワー隣スタジオ事件のほうが衝撃は強し、です笑。

創作過程を目にしていると、池上さんが池尻大橋での対談やインタビュー記事でも仰っていたように、
まずダンサーに声をかけて伝えつつ返ってくる反応から更に何かを引き出しながら振り写しをなさっている印象。
身体のみならず言葉のやりとりも活発に同時進行していて、意図を即時理解し体現するダンサー達の対応力にも感嘆するばかりでした。
また作品作りにおいて池上さんが池尻大橋対談で強調なさっていた、物語を大事にされながらの感情の紡ぎ上げやダンサーに対して考えを聞くスタイルも目撃でき
壁を作らずフラットな関係性の中で出来上がって行く清々しい空気に包まれていたように捉えております。
コンテンポラリーも振付家によって指導は様々でしょうし、中には軍隊のような厳格な指導で心身を追い詰めて
限界を超えさせながら精度を上げていく教え方をなさる先生もいらしたとの話は耳に入ってきたことがありますが(令和だったら完全アウトです多分)
池上さんはあくまで穏やかに朗らかに、そっと掬い上げるような指導を通してリハーサルを展開していく方針のようです。

ダンサー間でも意見交換や確認作業が次々となされていき、特に八幡顕光さんの声が度々よく響いていて積極的に声かけしながらリードしていらしたかと思います。
劇中では先生役を務められますが、リハーサルにおいても安心感ある存在感を示していらっしゃいました。そしてお声がよく通る!

そしてどうしても主人公タイキ役の渡邊峻郁さんに釘付けになったわけですが(最大の目当てでございます)
新国立劇場での公演ではコンテンポラリーの上演が少なくなった現在、リハーサル風景を眼前で拝見できるとはまたと無い貴重な機会。
池上さんが描く意図が吹き込まれて身体が生き生きと躍動していく姿や、上下左右に至るまで
しなやかで立体的な動きを自在に繰り出していく様子に瞬き厳禁な観察をしておりました。
全員で走る場面が多々あり、これがどのようにタイムリープとして舞台上で表現されるのか、注目したいと思っております。

後半は池上さんと出演者全員が並んでのトークタイムもあり。1人1人が務める役柄の紹介をされ、
寄せられた質問にも簡潔に回答してくださり、出演者同士のマイクの受け渡しも実にスムーズ。皆様の賢さ、気配りの細やかさや知性の豊かさに恐れ入った次第です。
そしてどうやらキーワードは「テイ!!」らしい笑。
それから、何か話そうとするも暫く黙り込んだ直後に何だっけ??と1発ふわりと笑わせてくださった渡邊さん笑笑。
それはそうとタイムリープの展開について、繰り返されるためどう変化していくかも見所のようで渡邊さんの説明がとても分かりやすく
個性豊かな生徒達が織りなすエデン学園を舞台に、優等生な主人公タイキが壊れていく変貌も含め、本番が一層待ち遠しくなりました。
ダンスマルシェの皆様、楽しい企画をありがとうございました!



※撮影タイムがあり、集合写真撮影いたしました。しかし我が撮影技術があまりに劣っており失礼。実際には皆様は写真の何倍も素敵な方々です。



ダンスマルシェさんのインスタグラムに、登場人物紹介として写真と説明が掲載されています。
タイキの渡邊さん、現在の朝ドラに出演なさっていても違和感が無いであろう古式ゆかしい雰囲気や知的な顔つき、翳りを湛えた容貌が美しうございます。




Edenのチラシを読んでいて、タイムリープとの解説から随分前に図書館で借りて読んだ、高校生が時空を冒険する小説を思い出し、久々に借りてみました。
新国立劇場開場の年に佐藤藍子さん主演で映画化もされ、映画では分かりかねますが小説内には私と同じ名字の人物が登場するのも嬉しい。
以前は新書版であったはずだが、最近文庫版も出版されたらしい。
読み進めていくと、公立の進学高校に通う主人公の翔香が何度も曜日を飛ばしたり記憶が丸々抜けてしまい大混乱に陥っていると
クラスメイトの男子生徒が冷静に理路整然に向き合い状況を解明してくれる場面が度々あり
読んでいてもカレンダー眺めながらでないと管理人、全く整理ができず。
ダンスにおいては果たしていかにしてタイムリープを表現していくか、タイキがどんな時空冒険へと繰り出すのか、更に楽しみな今日この頃です。



田町駅。アーキタンツ以外の用事での下車は初。レッスン関連荷物なくこの駅へ来るとは、不思議な気分です。



帰り、田町にて乾杯!嬉しい公開リハーサル企画に感謝でございます!毎度のアーキ帰りのオアシス鮮魚バルが入っているビルは点検のため早々に閉館し、北側まで行ってみた。



乾杯はビールです!



面白いさつま揚げや、カナッペのような大葉の天ぷら盛り合わせにびっくり。じっくり味わいました。

2024年5月10日金曜日

4年3カ月ぶり 東大阪のガレージアートスペースでレッスン








 4月30日(火)、山本隆之さんが主宰なさっている東大阪市のガレージアートスペースさんへレッスンを受講して参りました。講師は勿論山本さんです。
レッスン自体は1月半ばの東京のアーキタンツさん以来3ヶ月半ぶりで今年に入ってからは2回目。
ガレージさんでの受講はコロナ禍以前の4年3ヶ月ぶりです。ズンドコドッスン!!

ガレージさんにて2013年以降2020年1月まで、年に1、2回受講していた初級クラスは現在開催されていないため
前日に姫路での山本さんの舞台鑑賞に合わせて1泊し、初めて初中級中級を受講。平日にガレージさんの受講も初でございます。
12歳の初夏以降はあくまで鑑賞専門としてきた私にふと転機が訪れ、大人になっての再開時の2013年秋にまず訪れたのがガレージさんでした。
例えば東京住まいの場合、大概の方であれば大阪での年1、2回の受講するならば自宅から通いやすい場所でもレッスンしつつ大阪へ出向くのが常識なのかもしれませんが
私の場合鑑賞専門から中心になっただけで、あくまで山本さんのレッスンしか心身が欲せず、ガレージさんのみピンポイントで受講。
つまり大人になってからのレッスンイコール指導も周囲の会話も大阪弁が当たり前となり1人標準語捲し立てておりました。
コロナ渦前の最後に2020年に受講した休日の初級クラスがやがて開講されなくなって平日の初中級クラスのみの開講となるとレッスンから更に遠ざかり
2年2ヶ月が経った2022年3月以降は訳あって東京でも年に5回程度受講するようになり
(東京でもピンポイントで心身が欲する特定の先生のときのみ受講。あくまで鑑賞中心です笑)現在に至っております。

さて初のガレージさん初中級中級クラスは教室の主宰者や全国規模のコンクール入賞者、都内の主要バレエ団の元団員といった実質上級者ばかりで進みは速く、
細かく素早い方向転換も多々あったりと難度の高い複雑な内容たっぷりでしたが、雰囲気は和やかで山本さんがお手本も見せながら優しく説明してくださっていたので
初級未満レベルのズンドコな私も安心して受講できました。また、じっくりゆっくり基礎を見直しながら進む初級に対して初中級中級は進みが速い分
より多彩なことにチャレンジできる面白さもあり、それぞれのクラスに魅力があると感じた90分でした。

山本規子さんのピアノ伴奏付きである点もガレージさんの魅力で、前日の姫路の影響か!?『ライモンダ』の曲が多数。
1幕貴族達(版によってはジャン達)の踊りやワルツ、2幕のアブさんとのアダージオに3幕の序曲、と耳は祝宴です。
あっ、アンシェヌマンの私の覚えについては聞かんといてください汗。鑑賞とレッスンの回数の比率が90:4くらいになると
どうしたってバレエ音楽を聴くと作品の光景ばかり、作品によっては複数の版が思い浮かんでしまい、案外鑑賞をそこまでなさっていない方のほうが
レッスンの振りはすぐさま素直に頭に入るんちゃうかと大阪でも東京でも思うわけですが笑、しかしバレエ音楽が伴奏されるとやはり嬉しいものです。
他に『もののけ姫』もあり、映画も好きで昨年米良美一さんのコンサートで聴く機会を得た記憶も過って感激いたしました。
(即座に映画のハイライト集が脳内再生されてしまいましたが笑、ラピュタやナウシカですともっと危ない私でございます)

知り合ってから10年以上経ちながらレッスンご一緒は初めましてな方もいらっしゃり、また初対面の方も皆様明るく優しく、ピリピリな空気は皆無。
山本さん規子さんが醸す雰囲気がそうさせてくださっているのかと思います。
スタジオに入った瞬間から優しく迎えてくださるお2人のあたたかいお人柄にどれだけ緊張や不安が和らいだことか。本当にありがとうございます。
当方ただでさえ身体がふっくら重たいため、嵩増し及び重量増加回避のためクラスで1人、最初から最後までまだ中学生(もう中学生、という芸人さんいますが笑)な
袖なしレオタードにピンクタイツ、黒いショートパンツしか身に着けない至極シンプルな必要最小限な格好で受講しておりましたが
皆さんお洒落なパーカーや腰巻きなど大人なセンス抜群。踊るお姿とともに勉強になりました。(しかし私はこの先も中学生路線でいくだろうが笑)
疲れは一切無しで、可能ならすぐにでももう1度同じ内容を丸々90分受講したかったほど。
これといった運動習慣もない私ですので30分以上継続する有酸素運動自体も今年2度目でしたが、日が経過しても筋肉痛無し。講師マジックでございます。
東京のアーキタンツさんの01スタジオと同じくらいの広大な面積、天井の高さ、そして新国立と同じリノリウムらしく、心身共に開放感たっぷりになるスタジオです。

山本さんは初級時と変わらぬ穏やかな光に包まれるような教え方をなさり、対する時折スリルと刺激に満ちた教え方をなさる
熱血鉢巻姿な東側の先生の教え方それぞれ魅力があり、楽しくそして私は恵まれていると心底感じております。
3年前の一昨日は管理人にとって人生最大の幸福日であったお2方の共演日。配信でも喜ばしかったが
しかしあのとき有観客公演ができていたなら2023年の二・二三事件は起きなかった、と毎年5月8日に募ってしまいそうです。

スタジオ最寄り駅の高井田駅周辺は4年3ヶ月前と殆ど変わりなく、猫のお菓子屋さんや我がオアシスで大人になってからのレッスンとセットと捉えてきた魚輝水産も健在。
そしてスタジオへ行く通り道の自販機に描かれていた虎が甲冑を着用していて強そう。東京では今年『ラ・バヤデール』が相次いで上演ですが、
阪神タイガースがあります関西、特に兵庫や大阪で虎退治なんて禁句です笑。虎は強くて当たり前な地域でございます。
以上、ガレージさんでの心身が気持ちよくなれるレッスン、出来たか否かは別として、たっぷり楽しみました。現在は基本平日のみ開催のため、しかも大阪ですから
なかなか受講に行き着くのは容易ではありませんが、また受講したい欲が早くも沸いております。




上本町のホテルを出発!祝日から平日の1泊であったためか、そこまで混雑はせず。私が泊まるホテルらしくない⁈シャンデリアに見送られながら行って参ります!



地下鉄中央線。JRではない。(JR中央線は帰京後に乗る路線)



スタジオ近くの猫のお菓子屋さん。3Dな猫さんが見守ってくれています。



虎は強くて当たり前な地域。分厚く強固な甲冑を着けている虎さんをソロルは倒せるのだろうか。
28日夜と4日昼ソロルは一見豪胆ではないが、獅子奮迅 な気迫と巧みな戦術で退治しそうやなあと脳内で想像。あかん、今日は西日本で有酸素運動でっせ。



スタジオへの道中に位置する魚輝水産。記憶が正しければ2014年にオープンした海鮮レストランです。



お寿司と串揚げのセット。お刺身が大きめ、そしてとにかく美味しいのです。レッスン後のビールは欠かせません笑。
ガレージさんに行き始めた頃は帰りの新幹線で1人で乾杯しておりましたが、
2年目つまりは魚輝水産がオープンした頃からこちらを訪問しての乾杯が習慣づいております。(年数回ですが。今回4年3ヶ月ぶりでしたが)
赤出汁を呑んでいたら、日本酒に見えると言われた私でございます。
ご一緒したお2人とはかれこれ知り合って約10年。昨年2月には新国立劇場にお越しになり、私が歓迎すべきところどうしても不可能だった心境をずっと慰めてくださっていた方々です。
加えて変わり種なレッスン習慣(鑑賞中心で受講は年数回)な性格にも理解を示してくださっている優しいお2人です。
東京での年数回されど毎回が人生大行事なレッスン事情の話も親身に聞いてくださいました。



帰りの新幹線、姫路と東大阪の余韻に浸りながら帰京です。

2024年5月8日水曜日

近年では貴重 幕物作品のみの構成 グラッシオバレエスクール第43回発表会 『ライモンダ』 『アラジン』 『キャンディの国』4月29日(月祝)《兵庫県姫路市》




4月29日(月祝)、兵庫県姫路市にてグラッシオバレエスクール第43回発表会を観て参りました。
今回で6回目の鑑賞で、グラッシオさんのおかげで姫路を堪能する機会をいただいております。
http://www.grazio.jp/news/

基本バレエコンサート形式がなく、オリジナル創作のクラシックや全幕作品を毎回上演していて纏まりがあると観るたびに感じさせてくださっているスタジオです。
最初は子供達による『キャンディの国』。2019年以来の鑑賞で10本くらいのパートで構成され、
可愛らしいチュチュや衣装の生徒さん達が次々と登場して楽しませてくださいました。
背景の美術はお菓子柄の甘美な色彩ながら曲は『くるみ割り人形』より様々な場面からの抜粋で、1幕のクリスマスパーティー場面の曲を抜粋式で聴くととても新鮮。
少子社会の現在、これだけたくさんのお子さんが集まり大きな作品の上演が可能なスタジオも今や珍しいかと思います。

次は『アラジン』全幕。振付は赤松優さんで、2019年にグラッシオさんで観ておりますが
偶然なのか前回も今回も東京の新国立劇場バレエ団の『アラジン』上演と同年に鑑賞。不思議なご縁です。
音楽はディズニーもあれば、『ラ・バヤデール』パ・ダクシオンやジャンペもあり、
インドではないはずが妙にしっくり。これまた偶然でちょうど新国立劇場でバヤデール上演真っ最中で、この日29日も上演していて
既に3回鑑賞してからのグラッシオさん鑑賞のため、東京でも姫路でもバヤデール三昧。
国は違えど大まかに捉えれば同じ東洋圏の物語であるせいかアラジンであっても違和感なく、面白味ある嬉しさでした。
また東京でお世話になっている方が、新国立での演目がバヤデールの次がアラジンで衣装にあまり変化が無いと話していらした旨も脳裏を通過したのでございます。
子供達も総出演で、市場での賑わいや宮廷での宴を順々に彩ったりと大活躍。ジャスミンは生徒さんの交代制でしたがぶつ切りにならぬようバトンの受け渡しがなされ
アラジン役の地主薫バレエ団の石神航一さんはディズニー映画からそのまま出てきた感のある姿で市場でいたずらしてばかりかと思えば
何人ものジャスミンとのパ・ド・ドゥもスムーズに映りました。。
ジーニーは全身タイツな衣装で登場。ここ最近訳あって6月に上演を控えている新国立劇場バレエ団デヴィッド・ビントレーさん版『アラジン』における、
地肌を青く塗って眼光はギラリ、腹筋がバキバキに割れているランプの精ジーン(ジーニー)が大々的に写されたチラシやポスターを穴が空きそうなほどに眺めているせいか
赤松さん版のジーニーはまろやかに思え、また子供達にも優しいためほのぼのとした雰囲気があると感じさせました。
1時間弱に纏められていながら装置転換も巧みになされ、工夫が散りばめられた演出です。

3作品目は『ライモンダ』全幕。グラッシオさん初鑑賞の2017年に鑑賞して以来の再演の高岸直樹さん振付版で(土台はグリゴローヴィヂ版と思われる)
夢の場面は全てカットされているため正確に申すと「ほぼ」全幕な構成ながら、満遍なく網羅されている印象を受けております。
発表会はもとより全幕版はプロの公演でも上演機会が少なく、ましてや昨今の世界情勢を鑑みると19世紀末のロシアやヨーロッパの視点で描いた
イスラム側を倒した十字軍の正義と勝利万歳なあらすじが問題視され、特に近年はヨーロッパや周辺地域での上演は非常に難しい状況。
殊にガザ地区の痛ましい報道を目にするたびに、デンマークロイヤルやイングリッシュナショナル、オランダ国立が新制作したような
時代設定の変更や決闘で絶命ではなく和解の演出にするなど、大改訂版でないと上演不可能と感じます。
先述の通りちょうど新国立劇場バレエ団が上演真っ最中である『ラ・バヤデール』も脳裏を過ぎり、インドの描写が問題になりがちですが
いくら19世紀末に完成した作品とはいえヨーロッパ側の優位を誇張しているとも受け止められかねない『ライモンダ』のほうが上演の壁が高い気がいたします。
しかしグラズノフの音楽が繊細且つ格調高く、中世のフランスやハンガリーとイスラム圏の交差を描いた舞踊展開もあって
作品そのものは面白い味わいがありますから「ほぼ全幕」であっても上演は大変嬉しく、再演を待ち侘びておりました。

ライモンダは前回と同じく主宰の先生のお1人で、登場から清楚で優美なオーラを纏う貴族の令嬢。
ジャンとの暫し(実際は10年くらいか?)の別れが待っている、決して夢いっぱい花いっぱいではない切なさも帯びた踊り方も印象深く残っております。
(私がもし容姿端麗ならこの登場シーン、いつかやってみたい笑。そんな日は来ないと思うが汗)
ジャンは山本隆之さんで、この演出では最初からたくさん登場なさるため、凛とした眉目秀麗なお姿に喜ばしい限りです。

アブデラフマンも前回と同じく地主バレエの金兌潤さん。パワフルに縦横無尽に、特にスペインでも見せ場たっぷりに踊りながらも
悪人にはならず品を崩していなかったのが好印象。(これ大事)ライモンダに求愛する
危うい香り漂うアダージオもカットであったため、スペインやソロでの濃縮求愛も見応えがありました。
1幕ワルツやサラセン達の踊り、結婚式でのハンガリーは大人数構成で、呼吸合わせて大勢で踊る生徒さん達の協調性から学びが多々あり。
子供の頃の私なら、対応困難であるのは間違いない。

衣装、特に貴族や伝令が時代数百年先取りなデザインであったのは気になりましたが、例えば実在したジャンが活躍した第五回十字軍の時代である1200年代を現す衣装なんぞ
メジャーなバレエ団の公演でない限り確保は難しいはずで、そこは『眠れる森の美女』な趣になっても仕方ない。
まずは発表会のレパートリーとして全幕を持っているだけでも貴重であり、感激でございます。
決闘でのジャンの剣が記憶が正しければ前回は護拳付きで、これまた随分と近代開発な種類の出現と思ったものですが
今回はより当時の時代に寄せた平たく大きな形状の叩き割る系なデザインでしたので、より好印象。
(小姑のように煩くてすみません。史実を題材にした作品であるため時代考証の面も気になるのです)
決闘は臨場感と迫力があり、20年前に東京の初台で興醒めしてしまった、これぞ会議室ではない現場での「打ち合わせ」状態にならず。
マントでジャン!な帰還姿も目にでき、大満足でございます。

グラン・パ・クラシックは通常は別場面で披露されるヴァリエーションも挿入され、ヒュルヒュルと流星のような旋律が耳に残る夢の場の第2と、
それから2幕にライモンダが踊る帰還のヴァリエーションもあり。特に後者は発表会でお披露目される機会は滅多になく、もしかしたら初めてお目にかかったかもしれません。
吹奏楽器による主旋律が次々と変わり、私の中では世界一好きなヴァリエーションなのですがこれといって派手な技巧もなく披露されることが殆どないため、
今回は笑みが何度も零れました。昨年『ラ・バヤデール』影の王国のニキヤを務めた講師の方が踊られ、
ポジションの切り替えやメリハリも美しく、鮮やかな軌跡を残していくお姿をじっくり観察した次第です。

さてフィナーレの後に少しの時間が空き、ゲストのお1人酒井直希さんが観客に対してもう少々待つよう合図してくださってきっと何か始まるのであろうと眺めていると
出演者が続々と可愛らしい包みを客席に投げ入れるサービス。一生懸命投げても近くに落下してしまうのも微笑ましく
一方で野球経験者か、或いは阪神戦の見過ぎなのかアクリエ姫路ではなく六甲おろしが流れる甲子園球場と思い込んでいらっしゃるのか笑、
遠方まで投げてくださる方もいて、皆さん様々。私も1包みいただきました。キャンディ(兵庫でも飴ちゃんと言うんやろか笑?)が何種類か入っていて職場で重宝しております。

ヴァリエーションやグラン・パ・ド・ドゥ中心では全くない、大人数作品の毎回の上演に
先生方の指導、何より生徒さん達の協調性の強さに毎回頭が下がっております。
アラジンだったか、ずっと泣いてしまっていた小さな子供の生徒さんをそこまで年齢も変わらないであろう隣の生徒さんが手を繋いであげたり、
音楽や振付に遅れないようにささっと誘導してあげたりと大人顔負けの細やかな気配りをしていて、見習いたいと思いました。

今年は例年の4月半ばよりも1週間後のゴールデンウィーク真っ只中の開催で、姫路に行くようになって6度目にして初めて快晴に当たらず
午後からは雨に見舞われましたが、気持ちは晴れ晴れとしてアクリエを後にいたしました。





相変わらずオタク気質である。しばしば出向いている図書館の方にもそう思われているかも。
古代インドの戦闘の歴史本が見つからなかった分、こちらの時代に走ってしまった。



『ラ・バヤデール』の音楽が脳内旋回する中で東京の新宿から夜行バスにて三宮到着、そして姫路駅へ。



姫路駅を出ると姫路城が見える構図な駅前。バスの上にお城が乗っているようにも見えます。



朝風呂後、まずはみゆき通りを歩いてはまもと珈琲へ。



姫路へ行くと必ずアーモンドトーストを食べますが、これまで4店舗訪れた中で、スライスアーモンドをたっぷり使用したはまもとさんのトーストが好み。
保存ができぬため、アーモンドバターのお土産や通信販売は不可能らしい。食べたくなったら直接店舗へ。



ライモンダの時代よりだいぶ先の頃の時代の甲冑。お店の守護神とのこと。



今年も来ました姫路城!



毎度のアングル。しかし藤の花が今回は咲いていない。いつもは4月半ばに来ていたためか。



姫路へ来たら必ず立ち寄っているはりかい。今回で6回目で、いつも席も同じ。姫路城を目の前に眺められるテラスの立て看板前の席に毎回座っております。
播州の日本酒で乾杯。私が文豪ならば、毎年座っていた席として語り継がれていくのでしょうか。



毎回同じメニューを注文、蒸し牡蠣。ふっくらむっちり大きく、貝汁もたっぷり。姫路の昼の食は6回とも不変。



自転車、徒歩ともに整備された道を歩きながら姫路駅方面へ。
姫路は駅近くもお城周辺もオーバーツーリズム状態にはなく、交通混乱や渋滞もなく、程よい賑わい。




しろまるひめにご挨拶。



アクリエ姫路へ。



アクリエから眺めるロンドンな景色、タワーブリッジ。来年夏は本家のタワーブリッジを目にできますように。



帰りは2022年の終演後に訪れた郷土料理のお店へ再び。ビールが爽やかきめ細かな味わい。姫路では不思議と私も口にできる、焼き穴子も。



銘酒、白鷺の城。



姫路おでんと。生姜醤油が品良きぴりりとした辛さ。



白ワインに締めの鯛茶漬け。穏やかに締め括りです。 さて宿泊先は姫路駅周辺ではなく訳あって大阪府内。
翌日は4年半ぶりのある大行事へ行って参りました。その話は次回。

2024年5月5日日曜日

上野の森バレエホリデイ2024




色々ございましたゴールデンウィーク、未だ古代インドの森やラジャの宮殿にいる心持ちですが、時系列に振り返って参ります。
午後に池袋でKバレエオプト『シンデレラの家』を鑑賞した4月27日(土)、午前中にゴールデンウィーク恒例の上野の森バレエホリデイに行って参りました。
https://balletholiday.com/

https://balletholiday.com/2024/news/


時間の関係で東京バレエ団公演ブルメイステル版『白鳥の湖』は観ず(すみません汗)、ただイベント企画をいくつか楽しんで参りました。

東京バレエ団クラスレッスン見学は当日券を購入して見学。500円以上の価値ありです。
何しろ3日後に年間数回の有酸素運動、しかも4年3ヶ月ぶりに受講するスタジオでのレッスンを控えておりましたので、
プロと趣味人間のレベル差は語るまでもありませんが行う内容は概ね変わらぬかと思い、シミュレーションも兼ねて見学に臨んだ次第です。
2022年クランコ版ロミオとジュリエットのバレエ団初演時以来2度目の見学で、前回の教師は佐野志織さんでしたが今回は木村和夫さん。
教え方や進め方が全く異なり、歯切れ良い声で観客前であっても名指しで次々と注意を飛ばし、
思わず観ている側も背筋を伸ばさねばと身が締まる進行をなさっていた佐野さんに対し
木村さんは柔らかで落ち着いた口調で教え方で進められ、例えるならばベルベットの上で玉露を味わっているような気分。
時折「おじさん、たいへ〜ん」と笑わせてくださりつつもセンターのお手本時に素明かりな空間でただお一人でポーズを切り替えていくお姿の美しいこと。
突如天井にシャンデリア、背景は宮廷の美術が目に見えた気すらいたします。
プリンシパルからコール・ドまでほぼ全員参加でバーの並びが横向きのため、上階から観ていたとはいえより観やすい配置であった印象。
飲み物含め荷物は一切持ち込まず至ってシンプルで(タオルがあったくらいか)、最初からほどよい緊張感のある雰囲気に包まれていました。

開始時のダンサー達は女性男性ともに黒系で整えた方が大半で、指定がではないでしょうが、統一感あり。センター開始頃にはTシャツやレオタード様々でした。
私がレッスン時にしております年齢不相応な「まだ中学生」なる格好をなさっている方をつい今回も探してしまいましたがいらっしゃいました、秋山さん。
ノースリーブだったか袖の短いレオタードにピンクタイツ、ショートパンツ、以上!の格好で、
私がこういったウェアを着用しているとズンドコドッスンぼってりドラム缶状態なわけですが
秋山さんの研ぎ澄まされた美しさ可愛らしさ、そして基礎の動きであっても粗なくクリアな踊りに釘付けでした。
最初から最後まで、木村さんの柔らか口調とエレガントなお手本の数々に東京バレエ団のダンサー達の集中力漲るレッスン姿を見学でき、非常に実りある時間でした。




次回公演ロミジュリ衣装。



そして物販で買い物。3年連続で立ち寄った大阪府堺市のアンディオールさん。何だか親しみのある店名ですが、知名度は堺の店舗のほうが遥かに上でございます。
バレエのキャラクターをイメージしたコンフィチュールが多種揃っていて、ラベルを眺めているだけでも心浮き立つ気分。
今回は初台での旬にちなんでガムザッティを購入いたしました。とろりとした生姜味で甘過ぎず、いくらでも口に入りそうです。
そうでした、こちらの店舗に立ち寄っているとこのときは特に約束していなかった当ブログレギュラーの大学の後輩とタイミング良く落ち合い、
後輩もアンディオールさんの商品ファンとのこと。店主の西辻さんに嬉しそうに声をかけていて、西辻さんも嬉しそうで微笑ましい光景でした。
すると西辻さんに挨拶にいらした方がいて、何と以前に私が入社試験を受けた衣装会社の方でした。
また後輩は昨年も発表会でその会社の衣装を着用しており、たいそう気に入っていた様子でしたから偶然のご縁の集まりに一同びっくり。
当時の面接が今も宝物のように心に残っている旨や、ちょうどチケット一般発売日が4日後に迫った
9月1日の大阪府吹田市の舞台始め深川秀夫さんと大きな繋がりがおありな方で、深川さんとの思い出についてお聞かせいただき
9月に観に行く旨を話したりと会話が弾んだひとときとなりました。世間は狭い!!



3年連続で武蔵野ルネさんによる似顔絵。今年も実物の1京倍以上に綺麗に描いてくださいました。3年かけて、グラズノフ某大作全幕分完成です!
(2022年に3幕、2023年に2幕、2024年に1幕)
偶然なのか、3幕になるにつれて大人びていっている描画です。 私の顔を知る方々は実物と全くの別人とお思いになるでしょうが、中学1年生の頃なんぞ生徒手帳の写真が
警察署や交番に掲示された交番指名手配犯の写真よりも人相が宜しくないと言われ続けていた私ですので、本物そっくり写実的に描いたら醜さしか残りません涙。
客商売の面からしても素材が駄目過ぎる人物を描くのはさぞ大変な作業でしょうが、武蔵野さん、本当にありがとうございました。
そういえば2021年に初台で12年ぶりに全幕上演された6月、公演期間中の金曜日の夜、その日の昼公演の余韻に浸ろうとベッド横の椅子にバスタオルをかけて就寝するも、騎士の夢ではなく遭ったのは金縛り。人生そんなモンダ!

2024年5月2日木曜日

【速報でもないが】新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』28日昼夜





4月28日(日)、新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』を昼夜観て参りました。明日から後半日程が始まります。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/labayadere/





バレエ団のインスタグラムより。4人のソロルのリハーサル。



米沢唯さんニキヤ、渡邊峻郁さんソロル、木村優里さんガムザッティ組。



詳細な感想につきましては全日程終えたあとに綴る予定でおり、今回はさらっと参ります。
28日昼は廣川みくりさんがニキヤデビュー。まだ全幕主演は2度目ながら終始度胸のある堂々とした舞台で、
ひたむきにソロルを愛するヒロインとして生き、大きく語りかける役デビューでした。
井澤駿さんは、情感溢れる廣川さんニキヤを大きな器で受け止め優しさで返すソロルで、想像以上にバランスが良きペアに思えた次第。
また2人の女性の板挟み状態がとても似合い笑、しかしカーテンコールは廣川さん直塚さんそれぞれに
ちょこっとハプニングあれど、井澤さんの見守りやリードが実にスマートに映りました。
直塚美穂さんは磐石で高度なテクニックを駆使して行く男前な女王感あるガムザッティ。
ただ決して意地悪で怖いのではなく、パワーと立体感のある踊りであっと唸らせながら誇り高い姿を示す、魅力ある姫でした。
今まで観た直塚さんのクラシックの役では一番好感を持ったかもしれません。

夜の米沢唯さんニキヤは身体から涙が零れてきそうな繊細な踊りが印象深く、静かに哀しみを奏でる姿が
胸に迫る舞姫。心が締め付けられるような奉納も焼き付いております。
渡邊峻郁さんソロルは登場時の厳格で勇猛そうな戦士から任務中の隙にニキヤに恋する青年への瞬時の変貌、
そしてガムザッティにすぐ心変わりしたと見て取れた駄目男への没落まで描写が非常に細かく、
テクニック見せ場もスケール大。2人の間に挟まれ修羅場にて戸惑う場面における、
過剰な表現をせずに静けさの中で感情の揺れ動きがはっきりと見える、自然且つ見せ方を心得た芝居も目を惹きました。
3幕のパ・ド・ドゥは誤魔化しが効かぬクラシックの規範や白い静寂の中で膨らみを帯びていく息呑むドラマ展開に磁力で引き寄せられっぱなしに。
1幕羽根つき鉢巻(世間ではヘアバンドと呼ぶのでしょうか?キャストによっては鉢巻と口にしたくなる笑)と深緑とブーツの戦士衣装はどの版のソロルよりも好きなのですが
目眉がきりっと凛としたお顔立ちな渡邊さんが身に付けたお姿にはたいそう惚れ惚れいたしまして、写実的に描いた肖像画があれば飾りたいくらい。4日昼も楽しみでございます。
ひょっとしたら大僧正よりも威厳がありそうな渡邊拓朗さんのソロルの友人トロラグヴァ(上官にしか見えぬが笑)も要所で目に留まりました。
木村優里さんが前回よりも遥かに高貴で気高い姫君としてガムザッティを造形され、
ただソロルが好きなだけではなく国の繁栄のために覚悟を決めて宴に臨んでいると思わす風格すら漂い、好印象です。

幾何学模様が出来上がるように統制の取れた2幕の婚約式の振付や、影の王国の大掛かり3段ジグザグ坂を下りてくる32人の影たちの幻想美も圧巻で、客席の集中度も強し。
ヴァリエーションでは、張りとポーズの正確さがくっきりと出ていた花形悠月さんが脳裏に刻まれております。
明日からは後半日程、どうぞ足をお運びください。






ポスターもチラシもプログラムも表紙を飾りました!そしてキングフィッシャービールとマエストロ特製タンドリーチキンサンド、相性抜群です。
私の中ではこれまでの食事系ホワイエフードの中では一番のお気に入りかもしれません。
サンドイッチに挟まれたカレークリーム風ソースがあとをひきまして、味は違えど昨秋の『ドン・キホーテ』名古屋公演にて味わった
喫茶店コンパルの海老フライサンドイッチを思い出します。



マエストロも訪問。3人分のサイン入りメニューです。



帆立がゴロゴロ入ったパスタ。白ワインも進みました。



このあとは新宿バスタへ。いくら作品の余韻に浸っているからといって虎退治と口走ったら
毒蛇混入騒ぎどころではないお仕置きが待っていそうな地域へ向かうため約460キロの移動です。現地では虎は誰よりも強いと言い聞かせましょう。
距離も時代も大きく変わり、古代インドから中世フランスへ大移動。翌日の出来事についてはまた後日紹介して参ります。

2024年4月29日月曜日

ヤングケアラーのテーマは良き  K-BALLET Opto  (Kバレエオプト)『シンデレラの家』4月27日(土)








K-BALLET Opto  (Kバレエオプト)『シンデレラの家』を観て参りました。
https://www.k-ballet.co.jp/performance/kballetopto3.html








シンデレラ:小林美奈
母:酒井はな
祖父:森優貴
伯母:白石あゆ美
義妹:岩井優花
青年医師:杉野慧

演奏:エレクトロニコス・ファンタスティコス!
(和田永  山本颯之助  田中啓介  辻祐)
演出振付舞台美術:ジョゼッペ・スポッタ
作曲編曲:クリストフ・ヒットマン/和田永  (S.プロコフィエフ「シンデレラ」)
企画構成:高野泰寿
原案・詩:最果タヒ「シンデレラにはなれない」


予習一切無しで鑑賞に臨みましたが、私の脳味噌、感性に欠陥があり過ぎたのか8割は理解に至らず失礼。
プロコフィエフ作曲の『シンデレラ』音楽やバレエのあらすじの土台を崩さずに現代に置き換えて展開していくかと思いきやだいぶ斜めから突っ切る演出。
ヤングケアラーに焦点を当てた視点に大きな関心を持っておりましたがシンデレラ本来の話と
ヤングケアラーの実態をリンクさせた部分が見え辛く、疑問符が脳内延々と通過する中で終演してしまった印象でおります。
使い古した家電を楽器に再生して演奏活動をしているエレクトロニコス・ファンタスティコス!が奏でる音楽も私には刺激を超えて攻撃性が強く思えてしまい
プロコフィエフの音楽ももっと生かして欲しかったのが正直なところでございます。
ただ、酒井はなさん母による精神を蝕まれそうになる錯乱の踊りが強烈で、胸が締め付けられそうに何度なったことか。
小林美奈さんが複雑な親族関係のど真ん中で日々虚しく過ぎていく生活を送るシンデレラの胸中を物哀しくもパワフルな描写で披露。
認知症で身勝手な行動をとってしまいシンデレラを更に困らせる祖父(見た目は祖父には見えないのだが)を森優貴さんが怪しく絡まるように踊る姿も驚きの連続でした。
群舞は大人数構成で、学校での舞踏会シーンもありましたが、今ひとつ響かず。

ただ先にも述べたようにヤングケアラーに光を当てた案は興味を持たせる要素で、高野泰寿さんのプロダクションノートにも書かれていたように
経済の低迷や貧困といった現代の日本で再び起こり始めている、若者が未来への希望を失いかけている問題を
おとぎ話をヒントにして舞踊作品で語るのはとても意義深いことと思っております。
また過去2回のOptoのトリプル・ビル企画がどれもユニークで舞台機構を駆使しての演出振付や選曲にも惹きつけられましたので、企画継続は願っております。
今回ばかりは、私の脳味噌では理解咀嚼に殆んど至らず、申し訳ございません。




帰りは池袋にて食事。当ブログレギュラーの我が後輩と後輩を通して知り合ったお方と3人で乾杯。作品について、難しいと感じたのは3人共通だったもよう。
お2人とも酒井はなさんの長年の弟子。そして2人のおすすめのお店らしい。池袋の達人!



回しながら氷で冷やすサラダ。そしてドレッシングの種類豊富。こちらのお店、福岡市の天神が本店らしい。つい最近行った地域ですので親しみ沸きました。



薄い生地の隅までチーズたっぷりなマルゲリータ。



海老のオーブン焼き。カリッとしていて、ワインに合います。



名前に惹かれた、絶望のスパゲティ。絶望の最中であっても美味しく味わえるからだとか。
鰯の旨味がペペロンチーノとよく馴染んで食が進みました!
そういえば、池袋も上野も初台も、結末は様々であれどヒロインが絶望の淵に立たされる運命は共通。



デザート。私には似合わぬがブリュレチーズケーキを注文。ほろっと香ばしく美味しい。
そしてバレエハイレベル者なお2人から、変わり者にもほどがある私のレッスン習慣を否定せず受け入れ励ましの言葉を貰い、4月末日の件に関しても救われた私であった。