

2月27日(金)、東京バレエ団レジェンズ・ガラを観て参りました。
https://thetokyoballet.com/performance/tbgala2026/
「月に寄せる七つの俳句」
振付・装置・照明コンセプト:ジョン・ノイマイヤー
音楽:アルヴォ・ペルト、ヨハン・セバスティアン・バッハ
月:生方隆之介
月を見る人:平木菜子-柄本 弾
工 桃子、足立真里亜、三雲友里加、涌田美紀、加藤くるみ、橋谷美香
池本祥真、岡崎隼也、鳥海 創、本岡直也、陶山 湘
水面に映る夜空:瓜生遥花、鈴木香厘、富田紗永、相澤 圭、富田翔子、居川愛梨、山下寿理
樋口祐輝、安村圭太、岡﨑 司、南江祐生、宮村啓斗、髙橋隼世、小泉樹聖
17年前に観て以来の再演だそうで、長年お待ちしておりました。斎藤友佳理さんや高岸直樹さんらが出演なさっていた初演の頃の記事が載った冊子も今も大事に保管しております。
前回鑑賞時は青みがかった光に照らされた月夜の静謐な世界観が最も印象に残っておりましたが、
落ち着いた青色の衣装を纏ったダンサー達がそっとポーズを掲げながら変化を丹念に紡いでいく光景が実に神秘的。
衣装も背景も同系色ながら、踊りでくっきりと描画していくためか同化せず立体感も十二分に映りました。
一転して赤色が織りなす賑やかな展開も鮮烈。叫びながら走って次々と登場してくる表現は唐突な気もいたしましたが、
その後はキビキビと刻むようなカラッとした踊りが続いてなかなか楽しく、月に対する太陽が照らす燦々とした雰囲気の変化も良き。
(子どもバレエや、台詞付きとはっきり掲げた演出等、余程のことがない限りバレエに声は不要派でございます)
それから何より、全編通して主役を踊られた平木さんの存在感たるや。
優美で儚そうに見えてされど語りかける力が雄弁で、手脚の差し出し方や描き出すポーズの一連のゆったりした動きが饒舌。月夜の香しさを引き起こす美しさに感嘆するばかりでした。
柄本さんの不思議そうにそっと足を踏み入れては何かを探し求める青年ぶりや、髪型は昭和のスター感はあれど生方さんの綺麗なラインも目を惹きました。
俳句は要所要所で日本語で読み上げられ、違和感はさほどなく耳に入ってきた上に、
結局のところ結論は分かりづらい作品ながらしんみりと沁み入る作品の世界観を満喫です。
カーテンコールにはノイマイヤーさん、そして現在はバレエ団の指導者スタッフとして活躍なさっている
斎藤さん、高岸さん、木村和夫さんら初演時の出演者も登場。振付家ご本人がご存命でしかも元気に来日しての指導は初挑戦の出演者が大半であろう中で
細やかなエッセンスをダンサー達が吸い取って舞台で表すことに大いに繋がったと窺え、
観客としても居合わせて大変幸せなことでございます。
「小さな死」
振付:イリ・キリアン
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
沖香菜子-鳥海 創
安西くるみ-岡崎隼也
秋山 瑛-大塚 卓
三雲友里加/橋谷美香*-宮川新大 *パ・ド・ドゥ以外
政本絵美-安村圭太
三雲友里加-南江祐生
モーツァルトの曲にのせてしっとりと音楽と呼応しながら踊られ、毎回思うが瞬く間に終わってしまう印象があり、
もう少し観たいと思わせるがそれくらいが丁度良いのかもしれません。
全員素足で男性は最低限の着用物、女性はベージュ模様のレオタード。音楽無しの序盤にて、男性陣がビュンビュンと剣を振る音が風を斬るような危うい音に聞こえ、
舞台一杯に広がる大きな布を皆で持ちながら後方へ移動しては隠れながら人が出てくる登場も、何度観てもビクッとさせられる振付です。
各ペア静かめの音楽にそっと触れるようなパ・ド・ドゥのムーヴメントが滑らかでぶつ切り感も皆無で、パとパの間の部分も含めて流れるように辿っていく軌跡にも注目しておりました。
ドレス型のトルソー滑車をあたかも身に着けているようにくっつけながら一斉にすうっと持ってきてはさらりと離れて行く箇所も、物哀しくも摩訶不思議な気分を募らせます。
「春の祭典」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
生贄:樋口祐輝
2人のリーダー:岡﨑 司、本岡直也
2人の若者:池本祥真、後藤健太朗
生贄:伝田陽美
若い娘:二瓶加奈子、政本絵美、加藤くるみ、中島映理子
抜粋では2013年にNHKバレエの饗宴で観ましたが、ベジャール版を全編観るのは約四半世紀ぶり。とにかく久々の鑑賞です。
前半は男性群舞がずっと舞台上で踊りっぱなしで、序盤からして全員が斜め前を向きながら
一斉に四つん這いで前を見据えながら飛び跳ねる野性味溢れるおどろおどろしいエネルギーの凄まじいこと。
生贄の樋口さんの、押し殺した発がそのまま踊りに乗り移ったようなはち切れんばかりのエネルギー、
心身の全てを捧げるが如き空中での斜め跳躍のぶっ飛びぶりも目を見張るものがありました。
伝田さん生贄の削ぎ落とされた、場を司る佇まいや潔い覚悟や艶かしさすら滲む踊りも印象に刻まれております。
よく写真で目にする円形群舞の作り上げ方まで、肉体躍動のエネルギー昇華から目が離せず心臓も鼓動の激しさ止まらず。
音楽は難解で何度聴いてもなかなか覚えられぬが、早くもまた観たいと思わせる作品です。
公演1週間前になって販促チラシが届き、ミックスプログラムの動員苦戦はどの団体も共通かと頭抱えつつも、
いざ観れば和の趣あるしっとり系から野生味ある生命力の爆発まで、しかも公演名にもある通り、3人の巨匠達の作品を一挙上演。大変満足度高い企画でした。
殊に春の祭典はイタリア公演でも上演重ねていたためか熟練度の強い仕上がりと見て取れた次第です。
次に東京バレエ団を観に行くのはかぐや姫の予定で、東京文化会館改修前最後の公演。
どうかその頃には、文化会館改修完了に向けての諸々目処がはっきりしていますように。
キャスト表。
乗り換えの駅構内にて、しばしば通り過ぎていたお蕎麦屋さん。
夕食をまだ済ませていなかったためちょうど良き、入店。
卵を落とすと月見そばにも見える、お蕎麦とビール。気分だけは、月を見てそばを食べる人、です。
かき揚げは玉ねぎ食感もザクザクしっかり。美味しうございました。

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