2025年5月15日木曜日

新国立劇場オペラ  『蝶々夫人』








順番前後いたしますが、新国立劇場にてオペラ『蝶々夫人』を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/madamabutterfly/


オペラは滅多に鑑賞いたしませんが、初心者にもおすすめであると教わり、またバレエでも全幕版や抜粋、
スピンオフ風のコンテンポラリーで鑑賞した作品でもあるため久々に足を運んでみました。
新国立劇場でのオペラ鑑賞は2023年の『ラ・ボエーム』以来、『蝶々夫人』は2007年3月の新国立劇場以来18年ぶりの鑑賞でございます。

精通者によれば2007年と演出は変わっていないそうですが、いかんせん記憶の彼方にあり、装置がシンプルであった点だけはうっすら記憶にある程度です。
まず、字幕が英語表記も追加され、近年の海外からのお客様の需要を思うと自然な流れでしょうか。
日本にオペラをご覧に来日される方や、観光に合わせて劇場にいらっしゃる方も増えているのかもしれません。

以下、普段から頻繁にオペラをご覧になっている方からすると首を傾げる感想でしょうが悪しからず。
まず驚いたのは、全幕通して装置が全く同じで転換がないこと。終盤になって少し装置抜き出し転換はあれど、ずっと同じなのです。
精通者によれば、歌で聴かせるから装置はこれくらいでもちょうど良いらしく、
蝶々さんのお部屋が開演から終演までずっとそのままであるのは目を疑いましたが
終わってみれば歌で上手いこと纏め上げていて、3時間弱不動のお部屋装置であってもそう違和感は感じなかったように思えます。
しかし話も音楽も甘美でドラマティックである構成に対して装置の場面転換が一切ないのもううむ。
オペラ愛好者からすれば、歌でしっかり聴かせることが最重要なのかもしません。
バレエ版ではKバレエで初演と2023年の再演で観ており、船着場から遊郭、結婚式、結婚生活、と
めくるめく展開で今思えばかなりよく出来た構成だったのだろうかと回想。
オペラにはそうスピーディーな展開は求めませんが、身体表現で訴えるバレエとなるといかに変化に富んだ進行であるかを再確認です。

オペラで気づかされたのはピンカートンの狡さや無責任ぶりもとことん描いていて、もしやアルブレヒトよりクズではと思いました笑。
蝶々さんにとっては自身はあくまで現地妻だなんて知る由も無いとはいえ、3年待ち侘びた挙句に母国の妻を連れて夫が帰国です。
シャープレスの存在がせめてもの救いと思えました。板挟みのスズキはお辛いであろうと心境を察します。

Kバレエの熊川さん版はそこまで重たい悲しみに浸らぬような結末で、蝶々さんは最後まで儚くも美しかった印象で終わっていたと記憶。
再演時に私が観た日は飯島さんマッケイ主演で、ジュリアン・マッケイのピカピカピンカートンだから許された、そんなことではありません笑。
昨年鑑賞したプッチーニの生涯を描いた朗読歌舞踊合体劇では、少しだけ蝶々夫人もピンカートンも登場するも
さくらさくらにのせて春爛漫な美を奏でながらのパ・ド・ドゥがあったりと、両作品ともに澄んだ部分を掬い上げた路線で描いていたと捉えております。
水色軍服でメルヘンアイドル風衣装にも驚愕したピンカートンはそのまま『星は光りぬ』の曲にものせて踊っていらした、なかなか謎演出な企画でしたが。

それはそうと、偶にはオペラも良き、そしてバレエとは客層もだいぶ違って出勤の如く通い詰めている劇場であってもアウェイな気分になったのも妙に新鮮でございました。
そうでした、高所から迫り出した、登場人物達が度々行き交う大きな曲線描いた階段。
落下防止柵も何もついていないが、皆様高所は平気な方ばかりとは限らないでしょうに。しかし柵があると歩く姿が見え辛くなる、うう難しい装置です。




来期オペララインアップを眺めていると、オルフェオとエヴリディーチェ再演があるようで、バレエダンサー出演も話題になりました。
しかしオルフェオ、、、といえばエメラルドプロジェクトで誕生したドミニク・ウォルシュさん振付版が
バレエ団オリジナル作品として2007年に初演以来再演なし。18年以上も衣装装置を眠らせているのは勿体ない。どうか再演お待ち申し上げます。
特にオルフェオはコンテンポラリー踊りながら物語伝える能力が不可欠!妻に先立たれ、苦悩する中で冥界へ行くも
目を合わせてはならず、もがき苦しむ20分超えのパドドゥはそれはそれは抉るような迸りがありました。今、適任者いますー!!






















ブラックジャックの病院が初台に⁈テラスから見えました。来月はハートのジャック、初日から楽しみです。

2025年5月13日火曜日

コンテも光る遠藤さん版全幕くるみ エンドウ・バレエ発表会  4月29日(火祝)《東京都杉並区》





4月29日(火祝)、セシオン杉並でエンドウ・バレエ発表会を観て参りました。主宰は遠藤康行さん、須永リエさん。2022年、2024年に続き足を運ぶ発表会です。
http://endoballet.com/

横浜バレエフェスティバルや新国立劇場バレエ団Dance to the Futureの監修を手がけられるなど
全国各地で幅広く活動なさっている遠藤さん演出振付の『くるみ割り人形』全幕の他、
バレエコンサートでは古典とコンテンポラリー両方を構成に入れていたりと特色がよく出た発表会でした。
ゲストに新国渡邊さん、岡本壮太さん、南條健吾さんを迎えての開催です。

バレエコンサートでは子供の生徒さん達によるデフィレで始まり、以前より生徒数が増えた印象。
音楽にのせて歩いてポーズ取って袖に入って行く一連の流れをきちんとこなしていて、協調性の備わりに拍手。(子供の頃の私、恐らく乱すと思います汗)
複数あったコンテンポラリー作品の中では12人で踊られたL'Éternité-アルチュール・ランボーの永遠より-の静かに湧き出る身体能力の高さや
光と闇のコントラストやバーを用いての立体感ある見せ方も面白く感じました。
男子生徒さんも何人もいて、生徒同士でパ・ド・ドゥができるのもとても魅力的。瑞々しいセンツァーノの花祭りのお披露目に心和みました。

『くるみ割り人形』全幕は小さなお子さん達も大勢出演して可愛らしい舞台が繰り広げられ、ドロッセルマイヤーは遠藤康行さんご本人。
多種のマジックを披露され、少々ひやりとした箇所はあれど笑、話の展開は分かっていても
次はどんな世界に連れて行ってくださるかクララと同じ気分で夢中になりながら鑑賞です。

パーティーは大人客人無しで全部子供達が踊る演出でしたが、クララの友達、女の子達、男の子達に分担して出入りの整理もしっかりとなされていて
大人の客人無しでもパーティー場面をしっかりと見せていた生徒さん達に今一度拍手を送りたい思いでおります。
クララ役の生徒さんの素直さや心の変化もよく伝わってくるフレッシュな表現力も魅力満開で、
フリッツとそのまま戦闘シーンのくるみ割り人形役も務められた男の子の生徒さんの、俊敏で軽快に駆け抜けていく踊りも目に残っております。

真夜中の場面は幼児さん達も大活躍な小ネズミさん達がとにかく可愛らしく、
チュチュでネズミ耳をして駆け回っているだけでも頬緩みっぱなし。癒しの時間に感謝でございます。
おもちゃの兵隊はハレルキン、コロンビーヌ、ムーア人が引き続き登場して機敏に動きながら担当し、
クリスマスパーティー場面からの繋がりが見える上に、ラッパ吹く姿勢の良さも褒めたい要素の1つと思う元吹奏楽部員の私です笑。

魔法が解けたくるみ割り人形とクララの出会いで出演者が入れ替わり、ここで渡邊さんと遠藤ゆまさんがご登場。
クララは短いユニークなデザインのチュチュ、くるみ割り人形は魔法が解ける前と同じと思われる詰襟白シャツ黒タイツとブーツで、ニジンスカの『結婚』を何処か彷彿。
この場はとことんコンテンポラリーな振付で、2人で紡ぐしなやかでユーモアにとんだ動きの連なりに見入りました。
ゆまさんと渡邊さんは昨年横浜で開催された中田恵子さん演奏のオルガンとバレエのコラボレーション公演にて披露された牧神の午後が今も忘れられず。
ゆまさんのあどけなくも大胆さを醸す魅力と、情熱を秘めながら包容する渡邊さんのワイルド且つ穏やかな力が絡まってのパ・ド・ドゥから目が離せない
予測不可能な身体能力での造形美なる競演でした。ゆったりした曲調の中で芽生える刺激の張り合いにも釘付けになった記憶がございます。
ですからお2人によるコンテンポラリーなパ・ド・ドゥは待ち望んでおり、
少し大人びたクララが美しく変身したくるみ割り人形に導かれたかと思えば大らかに心を寄せ合うように身体が解き放たれたりと、惹きつける要素満載でした。

雪達もコンテンポラリー振付で、シンプルなレオタードっぽい衣装で雪の女王、王、雪の精達が
自在に身体を操りながら、少人数構成であってもそう感じさせぬパワフルに繋いでいく雪景色も面白く新鮮です。

2幕は各国の踊りからグラン・パ・ド・ドゥまでスタンダードな展開で、幕が上がるとシュガーピンクのお菓子の国が出現。
細い線でお城が精緻に、レリーフに至るまで丁寧に描かれていてまさに甘い香りが花咲くような空間で
これまでにも色々な発表会で目にしている背景ですが(8年前に渡邊さんが板橋区で客演されたときと同じと分かって一段と喜び募りました)
夢見心地たっぷりなお菓子の国を演出してくれるデザインです。
1箇所珍しい演出と見受けたのがネズミ王と王子の対決。ネズミ王の再襲来でお菓子の国が危機に瀕していると、
王子、剣も何も持たずに颯爽と光沢あるピンク衣装でご登場。誰かが剣を手渡す様子もなく、まさか素手で立ち向かうのかと観察していると、
前半はリラの精のように腕を掲げ突きつけて追いやっていたかと思いますが、最後は静かで華麗な投げ技でネズミ王を撃退して決着でした。
この王子様、間違いなく合気道の達人です。ピンク衣装が白い道着と黒い袴に見えたのは、
お菓子の国が道場に見えかけたのは気のせいではないはず笑。お城の一角に道場を備えていて毎日鍛練にに励んでいてもおかしくありません。
それはそうと、花のワルツがソリスト男女ペア1組と生徒さん4人で踊り切っていたのも驚かされ、
結構長めの曲ながら舞台移動も巧みに行いながら披露していました。

バレエコンサートにもクラシックとコンテンポラリー両方が組み込まれ、古典全幕もユニークな箇所を持ってきて楽しませてくださり、
またパーティーにおいても子供の生徒さん中心の出演者の配置も工夫がなされ、見応えある楽しい遠藤さん版くるみでした。
もしかしたら、衣装からすると2年前に上演された、振付構成演出を遠藤さんが手がけられた
『チャイコフスキーの旅』でのくるみ部分も取り入れていらしたのかもしれません。
春うららかな季節に上演の、クラシックとコンテンポラリーが交差するくるみも良いものです。

ところで、プログラムやポスターデザインはYumaと記載があるため、もしかして出演者、金平糖と夢の中クララを踊られた方が手がけられたのでしょうか。違っていたらすみません。
プレゼントを開けたがっていたり、コーヒーを飲みたがっていたり、クララの下にはネズミ王、とチャーミングなネズミさん達や丁寧なタッチのお菓子達、
美しい眠り姿のクララに怪しげなドロッセルさん、となんてお洒落なセンスでしょう。ネズミさん達も本当はクリスマスパーティーに参加したかったのかな。
チケットはそのままお財布に入れたままにいたします!開けるたびに目にしたい絵柄です。





行きは代田橋駅から徒歩で会場へ。以前にバナナマンの日村さんの散歩番組にて代田橋から方南町へ歩く内容を放送していてやってみたくなりました。
また前回2024年も同じ会場でしたが代田橋駅からバスで向かったところひたすら直進で、
道は分かりやすいと判明。花粉が大量飛散の時期でしたのでバス利用で正解でしたが
今回は4月下旬、しかも当日は晴天。実行に移しました。



駅を出たら甲州街道方面へ、歩道橋渡ります。どちらにしてもバス停までは距離あります。



バス停付近へ来ると杉並区に。



前回はこのバス停から乗車。今回は徒歩で参ります。



方南町ビールですと!!



都庁が見えます。



更に直進、突然セシオンが出現。代田橋駅から約45分で到着!定期的な運動習慣なし、運動部での活躍経験もない私であっても
楽しくこなせましたので宜しければ散歩がてらなさってみてください。



開放感ある中庭。



まだ時間もありますので、おやつの時間。近年思うが、都内や東京近郊の会場に行ったときですら鑑賞前におのぼり気分で散策している気がいたします。
前回行った、杉並車庫近くのneigeさんがご予約お客様限定営業でしたので、引き返して歩いていたところ発見。ドイツっぽいお店でしょうか。



ほっくりしたジャーマンチーズケーキ。アイスはさっぱり、さくっと溶ける舌触りです。彩りも綺麗。
コーヒーカップには花柄とハッピーフラワーの文字も。



拡大



近くには公園。新緑が豊かに光っています。



噴水もございます。地元の方々の憩いの場のようです。



セシオン中庭の像。



杉並区のキャラクターがお出迎え



帰り、春らしいパスタとワインで乾杯です。4月の鑑賞はこれにて終了! 5月の一発目は海を渡っての鑑賞からでございます。
次回更新をお待ちください。但し写真が60枚超えそうな予感笑。GW明けでご多忙な方が大多数でしょう、お時間のない方は本文のみお読みください。



帰り道、なかなか余韻から覚めないため、ピンクなアイスクリーム購入。
王子、ピンク色衣装での華麗なる投げ技、まさかの演出でしたので今回一番印象に残った場面かもしれません笑。

2025年5月9日金曜日

幼少期の失態の地・調布にバジルの友人現る!   藍るり子バレエスタジオ25周年記念発表会  4月27日(日)《東京都調布市》






4月27日(日)、東京都調布市の調布グリーンホールにて藍るり子バレエスタジオ25周年記念発表会を観て参りました。



友人



以前から新国立のダンサーが多数出演している旨は存じておりましたが、記念の今回はより豪華な構成で、また訳あってこの度鑑賞に至りました。
発表会名物の1つが公開レッスンで、生徒のみならずゲストも出演。ウェアも自由で、女性はレオタードと巻きスカート或いは長いチュチュで統一させていたかと記憶。
これだけでも60分弱を割く大構成で、生徒の大半を占める大人の方々も基礎がきっちり備わっている人ばかり。
各クラスのレベルに即した内容を展開して行き、出入りも多々あってもよく練られていて、
生徒さん達の今の実力を最大限に発揮できる振付且つ整理整頓された印象を受けました。

ゲスト陣は小野さんの惚れ惚れするソロもあれば、レッスンから火花散らし合う(勝手に片方側の目から火が出ているだけかもですが笑)プリンシパル約2名もいれば
グラン・パ・クラシックのアダージョ曲にのせた、男女ペアになっての パ・ド・ドゥレッスンもあり。
男性達からの超絶技巧サービスもございました。
選曲も興味を惹き、クラシック音楽もあれば2000年前後に流行した曲も多数。福山雅治さんの『桜坂』や
桑田佳祐さんの『白い恋人たち』、久石譲さんの『Summer』等あったかと思います。聴き間違いありましたら失礼。
四半世紀前のこの時代の流行曲ならばぎりぎり私も耳に馴染みがあるため、選曲者に拍手送りたい思いでおります。
実際に青春時代に流行ったのは青い山脈等、最も心躍った紅白歌合戦映像は尾崎紀世彦さんらが出演の1972年ですのでもう少し遡るでしょうか。
先日福岡からの帰りの飛行機内で備え付けオーディオで意気揚々と聴いていたのは和田アキ子さんの『あの鐘をならすのはあなた』でございました。
それはさておき、もしも更にCHEMISTRY(レッスン曲には向かないか?)、宇多田ヒカルさん(First Loveはゆったりタンデュに適していそう)、
浜崎あゆみさん(ジュッテにBoys&Girlsはどうでしょう?)あたりも含まれていたら、いよいよ選曲者知りたい私でございます。
それはそうと、渡邊さんの真っ赤Tシャツ効果もあったのか、藍バレエ初出演で一層やる気満々でいらしたのか、負けず嫌いな闘志が出てしまうのか笑、
爽やかにこなしているゲスト陣の中で誰よりもパッションが抜きん出て見え
調布市内に松岡修造さんがGWイベントか何かでお越しになっていたかと錯覚するほど、目にするたびに体感温度が上昇でございました。
返す返すも、井澤さん渡邊さん速水さんが並んで踊る光景なんて公開レッスン含めても、初台でもまずお目にかかれません。面白貴重な並びを目にできました。

バレエコンサートでは海賊パ・ド・トロワもあり、小野さんメドーラ、井澤さんコンラッド、渡邊さんアリによる黄金プリンシパルトリオが君臨。
良いのでしょうか調布限定で。初台でもやりましょうよ案件です笑!!今からでもヤングガラ特別出演オーバー30枠、空けてくださいませ。
威厳ある女王然としたメドーラと、派手な頭領ぶりに加えお人好しそうでうっかり罠に嵌ってしまいそうなコンラッド、ひたすらお仕えアリ、とバランスも黄金比。
とりわけアリ、トロワ形式のためサポート待つ箇所が増えるわけですが、サポート待機中も1ミリも隙がない奴隷でお辞儀がぐっと深々、
そして肩の奥の部分から身体を使っていらっしゃるからでしょう。
全ての動きに立体感があり、後方を向いたときも背中が語りかけてくるのです。
恭しくお仕えしつつも高貴な魅力も宿す、時折ギラリと野心覗く視線にも射抜かれました。
Vaはトゥールーズと同じ(ホームズ版もだったか)、屈み込む体勢付きで、一気に深いところまで身体を落としてからの立ち上がりのメリハリにもうっとり。
肉体美も堪能し、抑えていても滲む、雄々しい野性味と色気ブレンドな香りにも骨抜きにされました。

『ラ・バヤデール』より婚約式は速水さんがソロル。衣装が西洋の王子様風のデザインな上に鉢巻もターバンもないため一見ソロルに見え辛かったものの、
すっと伸び切る跳躍や回転はお手の物。ワルツは大人の生徒さん達の多層構成な振付で出入りの切り替わりもよく考えられ、纏まりある展開となっていました。

メインは『ドン・キホーテ』ハイライト。休憩なし80分弱に濃縮したほぼ全幕網羅な構成で見応えたっぷりでした。
街の広場や酒場も大人の生徒さんもたくさん配され、バヤデールでも感じましたが大人の群舞の作り方や見せ方がとても上手いと思わせます。
酒場は子供がやるより大人の方が賑わいの演出も自然。仮に子供が演じる酒盛り場面にて、あまりにナチュラルではそれはそれで困るか笑。
本物らしきワインボトルもあちこちに置かれていて、会場すぐ隣のスペイン料理店PEPさん(何度か行っておりますがお洒落美味しいお店です)もびっくりでしょう。

キトリは小野さんで、お茶目な色香とお転婆娘な明るさ満開なチャキチャキとチャーミングな女性。
外部の教室発表会における全幕作品の主役は久々に目にしますが、(記憶の限り拝見した発表会全幕舞台は
2018年の徳島県の清水洋子バレエスクール白鳥の湖オデット/オディールや東京都での佐藤朱実バレエスクールくるみ割り人形金平糖が直近かもしれません)
生徒さんたちを引っ張りつつ周りをも引き立てる統率力といい、愛される可愛らしさ、
指先脚先からも花が零れるような色っぽさといい惹きつけて止まないヒロインでした。
そんな小野さんキトリを愛するのは速水さんのバジル。もう十八番な役柄でしょう。登場時からにこやかなラテン気質あり過ぎです。
かっ飛ばす勢いを持たせていても回転での余裕ある締め括り余韻でも沸かせていたほどです。
小野さんと速水さんは外部では時々組まれる機会があり、3月の群馬県前橋市でのブリスバレエ発表会や
昨年1月の山口県防府市で開催されたバレエ!バレエ!!バレエ!!!ガラにて古典のグラン・パ・ド・ドゥを観ておりますが、相性は実に良く毎回しっくり。
今回も1幕片手リフトも安定していて長めに維持して小野さんキトリのいたずらっぽい笑みが更に咲いていた印象です。

小柴さんのロレンツォは独特のまろみがあっておっかな過ぎぬユーモアな魅力あり。菅野さんガマーシュは人が良さそうである上に水色タイツで差し出す爪先の美しいこと!
趙さんドン・キホーテの大らか悠然とした佇まいや、強烈新国立陣に負けじとサンチョを踊られた男子生徒さんの度胸や見せ場の踊りの達者ぶりにも拍手です。
井澤さんエスパーダも、今回は髭なしであっても前回初台でのフレディ・マーキュリーか?と見紛う濃さを引き継ぐ派手っぷり。
踊りも斬れ味良く、先月の初台アルブレヒトといいテクニックの充実ぶりに驚かされる2025年でございます。

そして、描き方が最も気になっていた藍バレエ版ドンキオリジナルキャラクターであるバジルの友人。
投稿記事のイメージ衣装画を見ると、変わった鉢巻付きのお衣装で、渡邊さんがお召しになったお姿を想像しては半分笑い堪えながら(失礼)待ち侘びておりました。
結果、幕が上がると既に群衆の中にいらして、ひたすらお囃子隊長もこなす何でも屋の友人。
立ち位置も頻繁に変わっていてあちこちに立ち寄るも、それぞれの場所で朗らかな会話が聞こえてくるようで
様々な生徒さん達に語りかけては笑みを楽しそうに引き出す作業を行っていらして、心を開かせての解きほぐし名手なバルセロナ巡回警備員でございました。
時にはキトリが投げた薔薇をキャッチする係、エスパーダ登場までの前座を盛り立てる闘牛士達の身代わり8人分踊り回る係、
宿屋の屋外食堂にてドン・キホーテ達へのワイン給仕係までこなされ、給仕中にはワインボトルのラベルを見せての説明も
事前に数時間隣のスペイン料理店でインターン勤務されたかと思うほど丁寧で知識も豊かそう。
酒場ではギター侍、ではなくちょっと小さめギター持ってのお囃子隊長。1人で何役も任されていました。
最重要任務はバジルを見守る係であったかと思われ、1幕から目を合わせては2人でニマニマ。
センス無き下手な人がなさったら、ただの雑務係及びこの日も上野で上演されていた
某団の不自然な鬘と同様に必要性の有無を疑問視するに終わってしまうであろう役柄でしょう。
しかし、渡邊さんがなさると隅々から物語に楽しい膨らみを与えてくださり、手拍子がいかにも陽光降り注ぐスペイン!なる腕を高く上に掲げながらの叩き方とは
演歌まではいかずとも少々異なる、妙に哀愁ある味わいであったのはご愛嬌笑。
きちんと踊る見せ場ある役としてはボレロを担当され、今はもう初台では配されない役ですから、
熱々パッション振り撒くお姿も目一杯視界に飛び込んで嬉しうございました。

3幕は所謂キトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥは無しであっさり閉幕かと思ったら
生徒さん達のアンコール呼び声で再び幕が上がり、コーダの部分をボレロ、バジル、ロレンツォ、ガマーシュが分担でご披露。
菅野さんガマーシュによる美しいアチチュードフェッテ、笑いも拍手も大喝采で、ロレンツォもブンブン踊っての特別版な振付。
冒頭部分は渡邊さんボレロが担い、勢い余ったかバランス失いかけたのもまた盛り上げを拡張させていた気がいたします笑。

今年の発表会まではホームページもSNSもないスタジオながら、以前から新国立ダンサー多数出演で大人の生徒さんも大勢在籍していて発表会のたびにグリーンホール前は大行列であるとの旨は聞いておりましたが、
25周年記念の今回のプリンシパル4名も集結はなかなか実現し得ない布陣でしょう。
藍先生の繋がりや、長年大人の生徒さん達も大事にされ、大きな教室に発展させてこられた指導力の賜物と思います。
新国立好きとしても、初台からそう遠くない沿線の駅にてこうにも豪華で珍しい見せ場満載な演出を目にでき、大満喫いたしました。

それから調布グリーンホールはつい色々思い出してしまう場所で、昔は何度も来ておりましたが正面入口から入ったことは殆どなく、
楽屋口ばかりに行っておりました。なぜなら発表会や調布市洋舞祭にて自身が出演する側であったためです。
行きは発表会洋舞祭回想シリーズとして、今回は観客側であり衣装等は持っていないが最寄りバス停からバスで調布駅南口へ。
昔は楽屋口前に停まった記憶がありますが、今は正面入口階段すぐそばに停車。観客としては便利になった笑。
ただ近年郊外の発表会に足を運ぶと、皆様ご自宅から自家用車での送迎が大半と知る日々です。

開場前や帰り、古きプログラムを開きながらグリーンホールでの出来事を振り返ってみました。
ゼンツァーノの恥祭りやらメリーウィドウの悪痛(ワルツ)等やらかしトラウマは多々あれど、
グリーンホールではない会場での開催になった最後の発表会での大トラウマには及ばぬレベルであったのは救いでした。
されど習い始めたときから鑑賞の方が好きで、8歳の発表会時にはいくら趣味習い事でもバレエにはある程度のビジュアルは必要と痛感して
美しい世界観を毎回台無しにしてきた醜い自身は習う資格なしとの結論に至っていたため
心底楽しめずやる気もなく続けていたのは周囲にも失礼であったと反省するばかりです。呆気ない退会であったと思います。
そんな中で一番楽しく心に残っているのは『ライモンダ』3幕のハンガリアン。名前を読み上げてくださる間は仰々しいくらいに壮大な前奏曲で舞台上に待機して
格調高い音楽が続き、フィナーレギャロップでは前半は大人1人のソリストと子供8人程度であちこち移動しながら場を持たせて
終盤に差し掛かるとなだれ込んでくる主役やグランパチームと合流して潔く終了。良き思い出です。

長くなりましたが、2025年4月27日の調布市グリーンホールに現れた赤Tシャツレッスンお姿、アリ、バジルの摩訶不思議鉢巻友人のおかげで
苦い記憶をだいぶ上書きでき、存在の偉大さに再度感謝申し上げます。客席が緑色であるのは今回初めて知ったかもしれません。
タイムリープして、浮かない顔してグリーンホールから帰途につく子供の頃の私に会えたなら
平成の次の時代になってから、素敵なヒーローが現れてグリーンホールを幸福の象徴に変えてくだかるときがやってくる、と予言してあげたい令和の私です。

尚、この日2025年4月27日は昨年から延期になっていた深川秀夫さんのガラが大阪で開催。
当初は行く予定でしたが延期による出演者変更しかも同日に都内でのご出演で、先に決まっていたのは調布でしょうからこればかりは仕方ない。
ただまさか、私の思い出深い、6歳の頃には『シンデレラ』全幕で人数少ないために子供も出番多き作品でしたので
舞台裏の廊下を小さな身体で早歩きしながらの下手から上手への移動も脳裏に焼き付いている会場でのご出演は感慨深い嬉しさがありました。
しかしグラズノフの煌びやかな星空を彷彿させる旋律にのせた深川秀夫さん振付ソワレ・ドゥ・バレエのソリストペアを踊られる渡邊さんも拝見したかったとの欲は残ります。
うう、ファンは我儘だ!




吉田都監督も嘗てグリーンホールにご登場。新国立開場と同年の1997年に、バレエ連盟TAMA主催コッペリアに現英国ロイヤル監督のケヴィン・オヘアさんと共に招かれました。
吉田監督が東京都国立市ご出身とはいえよく実現したと今も思う公演です。
まさかこの23年後に、グリーンホールコッペリア同年開場の新国立の監督に就任なさるなんて誰が想像できたでしょう。



往路はバス。グリーンホール目の前で停まる調布駅南口行きの終点です。



グリーンホール斜め向かい、たづくりの展望ロビーから。



たづくりにて、花市!



グリーンホールの思い出プログラム。やらかした記憶が大半で、私のような舞台では明らかに邪魔な存在であり、やる気あるとは言い難い
いくら観客が親族友人関係者ばかりとはいえ私がいるが故にみんな綺麗な生徒さん〜といった褒め言葉が生じなかったであろう、
技術もビジュアル平均値も下げてばかりの醜い人間を退会させずにいてくださった先生は寛大です。



バー代わりに使用したこともあるロビー手すり。



夜の調布。グリーンホールから見る景色、だいぶ変わりました。



ゲスト陣。調布が別の街に見えた笑。



舟盛拡大!そういえば、2019年に浦安市で海賊観た帰りも1人用舟盛味わいました。房総半島からの直送海鮮酒場でした。



振り返る、ライモンダ3幕は子供ながらに良い記憶です。

2025年5月6日火曜日

クラシカルとレトロの境界線  東京バレエ団『眠れる森の美女』4月25日(金)





4月25日(金)、東京バレエ団『眠れる森の美女』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/sleeping/






※キャスト等はNBSホームページより

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
原振付:マリウス・プティパ
新演出・振付:斎藤友佳理
ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ
舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ
照明デザイン:喜多村貴

国王フロレスタン14世  安村圭太
王妃          大坪優花
オーロラ姫       秋山 瑛
デジレ王子       大塚 卓
カタラビュット、式典長 鳥海 創
悪の精カラボス     伝田陽美
リラの精        中島映理子

- プロローグ -
妖精たち:
カンディード(優しさ)           長谷川琴音
フルール・ド・ファリーヌ(やんちゃ)  中沢恵理子
パンくずを落とす精(寛大)       加藤くるみ
歌うカナリヤ(遊び心)         工 桃子
ヴィオラント(勇気)          平木菜子

- 第1幕 -
4人の王子:
フォルチュネ王子     陶山 湘
シャルマン王子      樋口祐輝
シェリ王子        南江祐生
フルール・ド・ポワ王子  本岡直也

- 第2幕 -
公爵令嬢             三雲友里加
ガリフロン、デジレ王子の家庭教師 後藤健太朗

- 第3幕 -
宝石の精:
ダイヤモンドの精       涌田美紀
サファイヤの精        中川美雪
金の精            工 桃子
銀の精            中沢恵理子
プラチナの精         井福俊太郎、二山治雄、加古貴也、山下湧吾
長靴をはいた猫と白い猫    加藤くるみ-岡崎隼也
青い鳥とフロリナ王女     長谷川琴音-池本祥真
赤ずきんと狼         瓜生遥花-山田眞央
親指小僧とその兄弟と人食い鬼 中嶋智哉
野本紗世、植村まお、川村いろは、那須井遥、林凛々花、深澤夏乃香、松岡由記

指揮: ベンジャミン・ポープ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校



オーロラ姫は今回是非とも観てみたいと思っていた秋山さん。登場時から人間離れした格式高さ、お人形のような麗しい可愛らしさが異次元級に煌々していて
淡くもきらりとした装飾が細かく彩られたピンク色のチュチュも、不要と思うクルクルヘアな鬘も、往年の少女漫画から飛び出したかのようにしっくり。
(あとに述べるが不要と思えてならぬ鬘が多数)
お恥ずかしい話、目に星が宿っているような絵が苦手で『アラベスク』や『SWAN』といった
所謂名作バレエ漫画を読まずに現在に至っておりますが(そうかといって目に炎な運動競技漫画も読んでおらず笑)
ちらっと目にした限り、少女漫画の巻頭ページを大々的に飾っていそうな近寄り難いほどにインパクトある姫っぷり。

登場、ヴァリエーション含めて薔薇の香りを散りばめながらの軽快なジャンプやポーズの描き方も、何処を切り取っても職人プリンセスでした。
2幕でのしっとりした風情にも魅せられ、伏し目がちであっても優雅な透明感を帯びた踊りで森の妖精達の中をするりと出入りしながら舞台をリード。
3幕はメルヘンなお祝いの空気を一変させる、国を挙げての厳粛な結婚式に相応しい威厳ある姫君。
身体使い方も大きく、されど大味にならずコントロールをきっちり行いながらの踊りで、小柄な体型と思わせぬ見せ方でした。

デジレ王子初役の大塚さんは2幕森の狩猟の場面に登場したあたりは少々埋もれ気味で、歩き方や立ち居振る舞いで惹きつける難しさを再確認。
3幕も視線の合わせ方がまだぎこちなかったりと、人気実力ともに十二分なプリンシパルの秋山さんのスター性に圧倒されて緊張も走っていたように思えます。
サポートもそつなくでしたがサポートするご自身もしっかりと見せるまではもう一歩でした。
ただ私が観た日は初回日でしたので2回目はより堂々と振る舞っていらしたことでしょう。
2幕でのリラに導かれてオーロラに恋い焦がれる様子や、終盤オーロラの目覚めでの、戸惑うオーロラを徐々に心を開かせていく過程の描き方が丁寧で
3幕ヴァリエーションのノーブル且つ勇ましい踊り方は好印象でした。容姿はとても恵まれていますから、ご活躍に期待です。

怪我で長らく舞台から離れていらした中島さんのリラの精を目にできたのも嬉しく、表情が硬めであった点だけ気にかかりましたが
伸びやかな手脚を生かした統率力、カラボスにも屈しなさそうな強い上体での語りが印象的。
リラの見せ所を増やした2幕のソロも、身体がすっと高らかに舞い、舞台の支配力が更にあれば尚良かったかと思います。

思い切り笑わせてもらったのは伝田さんのカラボス。メイク効果か清水ミチコさんに似て見えるときもあり(褒め言葉です)
身体をぐっと屈めて歪んだ歩き方をなさっていても、やること成すこと何でも楽しそうで、
姫の16歳に起きる悲劇の予言も客席上階の隅々にまで恐怖を巻き起こしているように妙に生き生き。
プロローグが終わり、1幕が始まるまでの間に手下達とせっせと糸車製作もシメシメとの会話が聞こえてきそうな熱中ぶりでした。
王子との対決がほぼないに等しい演出で、いつのまにか退散してしまうのが勿体無いものの、
カーテンコールにおいても共演者も観客もあっと楽しませてくださる愛すべきカラボスでした。
ソリスト陣で目に色濃く残ったのは平木さんのヴィオラント。ビシッとした芯からエレガントな味も指先から放っていて強弱の付け方の豊かさに脱帽です。
ひょっとして、伝田さん2号でしょうか!?平木さん、次はリラの精もみてみたいダンサーです。

衣装は色々ご意見を耳にしており、女性宝石達のそれぞれの特徴を盛り込んで全員チュチュデザインも頭飾りも大きく異なるクラシカルなチュチュは魅力に感じた次第。
男性陣は皆同一と思われ、宝石ならばもう少し光沢あるデザインも取り入れて欲しかったと思えます。
プロローグ妖精達はだいぶメルヘン路線なデザインかと思うものの、色分けしているのは初台の民からすると羨ましく、丸!
6人集まると七色の虹に見えて明るく華やかです。カヴァリエ達はなかなかの力は入った紫衣装でライラックよりもラベンダーズといったところ。しかし紫を取り入れたのは丸。
初台の民からすれば、ブルーインパルスよりはセンス良き色味でしょう笑。
親指小僧とその兄弟と人食い鬼は、子供達の衣装がクレヨンセットの如く濃いカラフルな並びで、宮廷でのお祝いに似つかわしいかと聞かれたら答えに詰まりそうです。
時間も妙に長く、失礼ながら少しダレてしまう箇所でした。子供達のみの出番が多過ぎる気はいたします。
貴族達やポロネーズ衣装は上質感、重厚感に欠け、花のワルツ衣装もペラっとした印象を拭えず。

衣装以上に突っ込みどころが多くあったのは鬘。衣装や鬘を見ていると恐らくは斎藤さんはロシア特にボリショイ眠りの伝統ある香りを大事にしたいと
制作指揮に当たられたと思われますが、日本バレエ団に取り入れての装着時の違和感は前回2023年初演時と同様に相当厳しいものに見えてしまったのは事実。
オーロラ姫は今回の秋山さん、前回観た沖香菜子さんともに持ち前の麗しい華に助けられていましたが(それでも3幕の白鬘はびっくりポンだったが)
貴族男性陣の長髪鬘は西洋史のコントに思えるときもあり、或いはサッカーの北澤豪さんを思い出したりと、
令和の新制作にしては必要性に疑問符が浮かぶ不自然な鬘がずらりと並んでいました。

王子が試練なく剣も手にせず(本当は色々乗り越えているのかもしれないが振付観る限りは伝わりにくい)
オーロラ姫と結ばれるのもどうもめでたさが半減する気もいたしますが、ただまずはゆったりとしたヴァイオリンソロでの目覚めで姫と王子がじっくりと歩み合い、
そこからけたたましい目覚まし時計風なファンファーレも入り、どちらの曲も好む私としては、あらゆる版の中で一番好きな目覚めの音楽構成です。
目覚めのパ・ド・ドゥだけではしっとりし過ぎて、しかしパンパカパーン!と賑やかなだけでは
起床と同時に婚約の流れが今ひとつに思えるため、双方の取り入れは喜ばしいと捉えております。

美術は1幕での緻密な花模様がたっぷり描かれた背景はまさに薔薇の花園で、オーロラ姫の16歳の誕生祝いのめでたい香り満載。
だいぶレトロと思える箇所もあって好みに合わぬ部分もあれど、古典の芳醇さ、古き良き味わいを堪能できるプロダクションです。




ロビーにて、装置の外観は東京バレエ団スタジオ外観。



プロローグ。



1幕。花模様が緻密。



バレエホリデイの記事で載せましたが、鑑賞の翌日に訪れた上野駅近くのレトロな喫茶店その名も王城にて。



古めかしい看板。



1幕オーロラのピンク色のチュチュを思わすイチゴミルク。
滑らかで食感はしっかり。1幕オーロラは淡いピンク色が理想であると羨望の眼差しを送ってしまう初台の民です笑。



鑑賞の帰り、ロイヤルハイボール。べらぼうのパンダさん達も呑みたがっていそうです。


2025年5月4日日曜日

ロンドンデビューへ向けて   新国立劇場バレエ団『ジゼル』4月10日(木)〜4月20日(日)




4月10日(木)〜4月20日(日)、新国立劇場バレエ団『ジゼル』を8回観て参りました。
2022年に新制作された吉田都監督の演出、アラスター・マリオットによる改訂振付版の再演です。
7月にはバレエ団にとって2009年ボリショイ劇場公演『牧阿佐美の椿姫』以来16年ぶりの海外公演となる
ロンドンのロイヤルオペラハウスでの上演が決定しています。つい先日ロンドン公演キャストも発表されました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/giselle/






※13枚目の写真。例え遊びでもクズ男でも、怯える対象から守ってくれるこの状況は憧れます。相手を地面に叩きつけて倒せそうな眼力です。きぁっ!



ジゼル:小野絢子(10日18日)   木村優里(11日20日)  柴山紗帆(12日昼19日昼)  池田理沙子(13日)  米沢唯(19日夜)

アルブレヒト:福岡雄大(10日18日)   渡邊峻郁(11日20日)  速水渉悟(12日昼19日昼)  奥村康祐(13日)  井澤駿(19日夜)

ヒラリオン:木下嘉人(10日13日18日)   小柴富久修(11日20日)  渡邊拓朗(12日昼19日昼)  中家正博(19日夜)

ミルタ:吉田朱里(10日18日19日夜)   根岸祐衣(11日20日)  山本涼杏(12日昼13日19日昼)

ウィルフリード:小柴富久修(10日12日昼13日18日19日昼)   中島瑞生(11日19日夜20日)

ベルタ:楠元郁子(10日18日20日)  中田実里(11日19日夜)  関優奈(12日昼13日19日昼)

クールランド公:中家正博(10日12日昼13日18日19日昼)  趙載範(11日19日夜20日)

バチルド:益田裕子(10日13日18日)  内田美聡(11日20日)  関晶帆(12日昼19日昼19日夜)

ペザント・パ・ド・ドゥ
奥田花純   水井駿介  (10日18日)
花形悠月  李明賢  (11日)
五月女遥  森本亮介  (12日昼19日昼) 東真帆  石山蓮(13日)
飯野萌子  山田悠貴(19日夜) 直塚美穂  上中佑樹(20日)

モイナ:花形悠月(10日18日19日夜)  東真帆(11日12日昼13日19日昼20日)   
ズルマ:金城帆香(10日18日19日夜)  直塚美穂(11日20日)  飯野萌子(12日昼13日19日昼)



小野さんは扉を開けたときから溌剌可憐なジゼルで満面の笑みで弾む恋心を観客にも示し、村一番光り輝く娘であるのは明らかです。
花占いや踊りも積極的にアルブレヒトを誘っていて意思がはっきりと見えるしっかり者。
狂乱では魂が抜け落ちたかのように目がぽっかりと浮き立った表情が焼き付き、
2幕では一気に無の境地に達したかのように静謐で抑えつつ、アルブレヒトに対してはすり抜けるようでいて何処か心の跡を残していく踊りが胸に響きました。
音楽と溶け入る柔らかな浮遊感もうっとり。

福岡さんアルブレヒトはにこやかな眼差しが多めで遊び人には見えず、どっちつかずかと思ったものの茶目っ気もあるチャメブレヒト。
村人扮装をすると村に馴染みかけてしまい、いかにも王宮に住まうやんごとなき貴公子には見えないのだが(失礼)、
王者な風格から位が上であるのはよく分かり、ジゼルに愛情を注ぐからこそ庶民に溶け込む努力をした健気な王子とも見て取れました。
1幕こそジゼルとの戯れ時の踊りが少々重たい印象がありましたが、2幕はミルタもびっくりな跳躍力の連続。
何処を切り取ってもほんの僅かな動きも2人の息が優しく歩み寄るようにぴたりと合っていた、とりわけ天覧公演日の2幕パ・ド・ドゥも印象深い場面です。

柴山さんは小花を散りばめたような楚々とした少女。落ち着いた心持ちでアルブレヒトの愛を受け止めている様子が
窮屈な生活を強いられていたであろうアルブレヒトの心を癒していたに違いありません。
狂乱は誰よりも静かな壊れ方で、アルブレヒトと過ごした1分1秒全てを愛おしむように回想していくうちに頭を抱えて悲しみに暮れる姿が痛々しく哀れに映りました。
所々硬さもあって1幕ヴァリエーションでポーズを決め切れなかった箇所はあれど
ウィリーになっての透けていくように細やかな足運びは秀逸。鐘が鳴ったときの安堵の表情からアルブレヒトを包む腕の大らかさも清らかな余韻を残しました。

速水さんは楽天的お坊っちゃまで、今日もいい天気~と言わんばかりに登場され
事件発覚してヒラリオンに指差されても自らが原因と把握していなさそうなアホブレヒト(褒め言葉です)。
しかしただアホなのではなく(失礼)、花占い結果に落ち込むジゼルに対して何とか励ましたいと懸命な心が伝わり、花びらもう1枚こっそりちぎる行為もズル行動に思えず。
結果としてジゼルは元気を取り戻すわけですが、恋のやりとりに甘酸っぱさ香る2人でした。
思えばジゼルは病弱であるがゆえに日常生活も禁止事項や制約が多く、ベルタお母さんは農園経営で忙しく、
大切に育てられてきたとはいえあまり構ってもらえていなかったとも考えられます。大好きな踊りもベルタに見つかれば怒りの対象です。
踊るにしても何をしてもにっこりと受け止めてくれる速水さんアルブレヒトに惹かれたのは頷けると考察いたします。
2幕は暗闇の墓地に1人になってもバヤデールのときのように後ろ向くと存在感が薄まることもなくなり、苦し紛れであっても張りあるテクニックも炸裂。

池田さんは1幕では繊細さや恋する明るさが両方よく出て、狂乱してもまだまだ恋したい幸せになりたいと愛らしく語りかけているようないじらしさが胸を突きました。
2幕は前半のリフトのタイミング合わず以降動きが少々硬くなってしまったように見えましたが
前回より精霊らしいふんわり感も増した印象。ミルタヘのアルブレヒト許しの訴えのポーズも見せ方が優美に伸びやかになっていたと思います。

奥村さんアルブレヒトはジゼル想う優しさと軽薄さが混在の品良きホワブレヒト。
綺麗な若様で上品優しげに見え、山で狩りよりも屋内で読書や音楽を嗜んでいそうな貴公子です。
2幕のリフトが惜しかったとはいえ、他の作品では度々組んでいるお2人が『ジゼル』で組むのは初。
あらゆる解釈が生じる作品にてどう構築していくか興味津々でしたので、1幕にて奥村さんが池田さんをきらりと包み込んでリードされ、
年上の気品ある朗らかな若様にみるみると惹かれて恋心で胸いっぱいになる村娘の微笑ましいやりとりが目にできて喜ばしうございました。

今回が全幕主役復帰の米沢さんはゲネプロでは観ておりましたが本番2回目も無事踊り切られて安堵。
きっと主役復帰までの道のりもダンスマガジン連載にて紹介されるでしょうか。楽しみにしております。
純朴でおとなしい村娘がアルブレヒトと一緒に過ごす時間が幸せでたまらない喜びをそっと表しているのがまた可愛らしく
花占いのお花を見つけて(ヒラリオンの置き配なのだが涙)片手で高く持ってゆったりと弧を描き出しながら
そっとベンチに腰掛ける姿も繊細さがこぼれる姿。ヒラリオンから手首掴まれると本当に折れてしまいそうでした。
狂乱の場は声にならぬ生々しい苦しみ、耐えても叫びが聞こえてきそうで心臓の痛みが刺すように伝わる恐ろしさ。
序盤から抜け殻状態になっていて、いつ倒れてもおかしくないほどに微かな生命力でどうにか歩く様子が
こちらが観ていても辛いのですからベルタの気持ちはどれほどだったか。
ウィリーになってからの体重感じさせぬ研ぎ澄まされた浮遊感から繰り出す踊りも美しい上にアルブレヒトを守ろうと懸命に、
されどミルタに対しても敵対心ではなく優しさを込めて訴える浄化力も心に沁み入りました。

井澤さんのアルブレヒトは一途に情熱捧げるアツブレヒト。ひょっとしたら今まで最もパッションが出た井澤さんかと思うほど、
またテクニックも隅々まで冴え渡り心身の充実が窺えました。2幕苦しみの跳躍のキレにもびっくり。
花占いで不吉な結果が出ると本当に心配そうに花びらをもう1枚こっそりちぎる仕草から、ピュアな心配りが見て取れます。
対してヒラリオンにプライドをズタズタにされたときの目の見開きは悍ましい迫力で、一気の修羅場へ突き進むサイン。
カーテンコールはそっと抱擁しあう2人で再度パ・ド・ドゥを見せていただいた気分です。
米沢さん井澤さんが『ジゼル』で組むのはセルゲイエフ版以来で、当時はリードするお姉さんジゼルと初心なアルブレヒトであった関係から
今回は全幕復帰の儚い繊細なジゼルと、万全に支える頼もしいアルブレヒト。当たり前ではあっても、8年経つと
版は変わったとはいえ同じ作品であってもペアの雰囲気も変わりゆくと観察いたしました。

木村さんきらきら恋する喜びに浸るジゼルで単なる恋する女の子だけにとどまらぬ、
やや屈折していそうな(笑)アルブレヒトをも愛らしさで包み込み輝きを与える不思議な魅力あり。
ただきらきらとは言っても大輪の花のような煌々としたものではなくしっとり落ち着いた美しさがあり、慎ましくも愛されて育った村娘な雰囲気も十二分でした。
千秋楽での1幕ヴァリエーションにおける片脚ケンケンの箇所での転倒は心配になりましたが物語に上手く溶け込ませて対処していたのは流石。
慌てずに立ち上がり、あくまでおっとり可愛らしい村娘のままで継続なさっていました。
観客の多くも、そしてきっと木村さんご本人も2023年お正月くるみの転倒が過ってしまったかと思いますが、冷静に考えての継続だったはずです。
脚の具合が心配になりましたが、2幕はロマンティックバレエの風情たっぷりに魅せ
首の角度や腕の掲げ方、肩の見せ方がロマンティックバレエ最盛期のバレリーナの絵を想起。
加えて5アルブレヒトの中で最たる悪さ放出であろう笑、アルブレヒトを守ろうと
お仕置き最高潮なミルタに訴える強さ、大懺悔のどん底にいるアルブレヒトを深い慈愛で包み込み助け出そうとする一途な思いが溢れる踊りに心洗われるばかりでした。

以下長くなります。小休止をどうぞ。

渡邊さんは翳ある危険な匂いが漂い悪事に手を染める行為に躊躇一切ない色男なクロブレヒト。
2017年のセルゲイエフ版では純愛路線、2022年初演の吉田監督版では遊び路線で吉田監督版再演の今回はどうくるか
できれば悪い遊び人で観たいと願っていただけに万歳でございました。
ジゼルに対しては愛想の良さは控えめながらみるみると手の内におさめていく様子が手慣れた手段に思え、
余計な動きがなく傲慢ぶりを静かにヒリヒリとする造形で複雑な襞を捲るような表現で魅了。
熱い自信と傲慢を秘めて静かにいつのまにかジゼルを支配下に置き、駆け寄ってくると
すぐさま恋愛成就の罠の穴に落として弄ぶ、背筋弄るような魔力でジゼルを引き寄せる色悪ぶり。
一見静かな人物だがジゼルの動向よく見ていて近寄ってくると絶妙な加減で迎え入れて更に虜にさせ
ワンクッションや隙もなく顎クイも腕組みも強引に押し進めるも、どうすれば相手が一層ときめくか
知り尽くしていそうな男性でした。過去に何人もの少女を落としていそうでございます。
(もしやウィリーの中には過去にこのアルブレヒトから騙された少女もいたのではなかろうか??)
無理にあれこれ動かなくても視線や佇まい、ちょっとした仕草で十分に絵になり、ジゼルを磁力の如く引き寄せてしまい
ひと呼吸置いてからじっくりと次へ視線を送っていて、この速度の積み重ねが物語をぶつ切りにさせない上に
余裕ぶりや高貴な身分、謎めいた神秘性も増して厚みも舞台全体に加えていたと捉えております。
序盤にヒラリオンと対峙したときの剣を持たずであっても、目で殺りそうなギラっとした眼力と相手が刃物持っていようが動じない度胸で追い詰め
去るよう命じる仕草は傲慢ぶりが益々濃くなって村人ではない疑惑を一層抱かれそうですが、
それでもこの場ではヒラリオン退散させ、怯えるジゼルから引き離したわけですから、ジゼルの心のピンク色の染まりは止まらなかったはず。
プライドが邪魔するのか顔には出さずとも、ジゼルに踊りに誘われても半分嫌々応じて見下しているも笑、
じっと目を見据えて踊る姿を観察している表情からするとジゼルの愛らしさには惹かれていそうでした。
傲慢な性格はウィルフリードへの指図にもよく表れ、されど顎で指示していても美しさにドキリ。

2幕は命尽き果てそうな懺悔で苦しみと美が共存の命乞いな踊り。全身から涙零れるほどに改心。
マントして百合の花持っての坂下り歩きも美しい佇まいに悲しみに暮れているだけでなく心にぽっかりと穴が空いて魂が抜け落ちたような憔悴ぶり。
ミルタから踊らされる連続アントルシャはテクニックの見せ所ながら苦しみの中での踊りですからバランス図るのが難しい場であろうと思われますが
高さは十分ありつつ跳ぶごとに許しを求める様子もみるみると絶命に近づいていて身体が徐々にぐったりと形が歪んでいくのが見て取れ、
同時進行で高さある跳躍と力が尽きかけて歪んでいくさまを体現してしまう術にも驚愕でございます。
命が助かり、お墓前で泣き腫らして倒れ込む姿はジゼルへの詫びと、命拾いはしてもジゼルを失った悲しみと
許し助けてくれた寛大さがかえって身に重くのし掛かって自身が生きていく力はもうないと悟っていたようにも思えます。
パ・ド・ドゥは音楽と呼吸してすべてが調和した他、サポートの手の置き方が遠く離すように添えていて
木村さんの身体も最大限に伸びて2人の四隅点を線で結ぶと平行四辺形なフォルムに。
昨年に広島県福山市で鑑賞した佐久間奈緒さんとの『ジゼル』パ・ド・ドゥが思い起こされ、
スッと伸びて行くような角度の決め方で遠くへと飛んでいってしまいそうなこの世のものではない感がより強まっていた佐久間さんジゼルと
構図をさらりと組み立てて工夫した見せ方を実践する渡邊さんアルブレヒトの力量にたまげた次第です。

前回2022年と今回は純愛ではないのは共通であっても、前回の米沢さんは純朴でそれはそれは儚い少女だったからか愛想笑いもまずまず豊富にあり
(会報にアトレにてジゼルでの全幕復帰を語る米沢さんインタビューページに花占い写真あります)
対して恋する喜びを積極的に示す少女の木村さんジゼルにはクールで成熟味ある男として魔の手を翳すように、
静かな中に絶妙なタイミングで企みの色気スパイスが香る男性。アプローチの違いの面白さを存分に味わえました。

物静かで危うい要素をこれ見よがしではなく造形して醸し、美しい絵として魅せるのは並の人ではできず。
容姿だけでなく、仕草や振る舞いを徹底分析して計算し尽くしつつも自然に見せる手腕に長けていないと成立しないでしょう。
お得意分野であろうとは想像しておりましたが、11日夕刻に襲った帰りの雷以上に再度衝撃に打ちのめされたアルブレヒトでした。

ヒラリオンも四者四様。木下さんはピリッと締まりのある男前で、ジゼルの腕を握るときにそっとポンポンと触れていた前回よりも強引さや粗暴ぶりといった野性味が増強。
しかし、乱暴にしてしまったと悔やみながらのフォローは優しく、細やかな心配りもあってお見事。
マイムの抑揚の付け方もお手の物で、特に収穫祭終盤、ジゼルにアルブレヒトの正体暴きを示すときの、
本当にアルブレヒトが好きなのかよく考えて回答するよう促すやりとりの緊迫感ある空気の描画は身震いいたしました。
2幕は苦しみの中でもキレキレな踊りっぷりで全身から鋭い雄叫びが聞こえてくるかのよう。

初役の小柴さんは見かけはもっさりとしていながらも素朴でむさ苦しい(褒め言葉です)中に不器用な優しさが覗くヒラリオン。
獣っぽい無精な見た目から、村で生まれ育って地道に森のあらゆる業務を担って村のために身を捧げてきた自負も感じられました。
中家さんはどっしり構えるリーダーらしさがあり、森の警備も含めて頼りになりそうな兄貴分。
全ヒラリオンの中では最も腕っ節強そうでありながらドゥ・ウィリー達に連れられていく坂登りの様子は絶叫が聞こえてきそうな恐怖感が前回以上に伝わり
苦しみ悶えながらの跳躍も張りがある上に許し懇願の切なさ迸る祈り姿も目に残っております。
ジゼルの腕を握るとき、米沢ジゼルの手首がいたく華奢で、痛めつけてしまった詫びを切々と語りかける様子は健気な青年に映りました。

拓朗さんは村人に中にいると1人ずば抜けて背が高く、他所からヘッドハンティングされた感すら漂う異質な存在ぶり。
3月『火の鳥』でも感じましたがたった1人で舞台にいる時間も空間を持て余さず、小道具使用を始めやること盛りだくさんな役柄であっても慌てぶりはなく威風堂々。
物語転換をがっしり支える村のリーダーな風格でございました。風貌が遠目で観ると若くした役所広司さんに少し似ていたかもしれません。
(友人曰く阿部寛さん似のことで、言われてみればテルマエロマエに出演できそうです!)
初回時は角笛と剣の紋章の照合一致を示す場が少々弱く、2幕幕開けは丘からすぐに下山してしまい
月光浴びる佇まいはもっと長めに立っていて欲しいため惜しい部分もあれど
2回目は照合一致もインパクトを与えていよいよ修羅場への突入をしっかりと示していて、2幕幕開けも長めに立っての月光浴。
沼への落下は泣き叫ぶような不格好なフォルムがリアリティを増強させ、
2幕幕開けにジゼルのために作ったリースを手に丘の上で佇む月光浴ヒラリオンはこの版におけるヒラリオンを男前な役どころとして描く真骨頂な場面でもあり
是非とも4人全員分の写真を販売を希望。あっ、決してヒラリーズ達のどなたかの贔屓ではないのですが笑、新国立2022新制作版の見どころですから、どうか実現を。
冒頭にて、ジゼルへの恋心を摘んできた、しかもジゼルのイメージに合わせた清楚な色合いで整えた花束を持ってくるのは
どこか可愛げもあり、(まだ置き配は時代先取り過ぎたか涙。手渡ししないと気づいてもらえず)
墓地には手作りリースを持参。お花や植物が多彩に編み込まれており、ヒラリオン今ならフラワーアレンジメントの人気講師となるに違いありません。

ミルタも個性様々。前回大抜擢であった吉田さんは、より怖さ倍増で、長い手脚の靡かせがまさにおっかない精霊。
根岸さんは前回以上に支配感が強まり、ずっと宙に浮いているかと見紛う、且つ冷たくそよぐ音楽と一体化したパ・ド・ブレの精密さにも惚れ惚れ。
アルブレヒトへも容赦ない処罰をガンガン下しそうながら女王らしい威厳、品格も備わっているため嫌味に思えず。
決して大柄ではない身体を隙なくダイナミックに見せる術や高精度な踊り、ついていきたくなり姐さんぶりにも痺れました。
山本さんは私の中ではまだ可愛らしい印象がどうしても先行してしまい少々物足りなさはあったものの、シャープなパワーを繰り出す踊りで森を支配していた印象です。
アリスでのハートの女王、どんな感じになるでしょうか。

板挟みは辛かろうと常々思わせたのはウィルフリード。坊っちゃまの遊びを受け入れ、村人扮装お似合いですと褒めつつもうっかり剣持ち貴族な箇所を受けていた指摘しては
同時進行で貴族ご一行の狩猟マネジメントもしながら坊っちゃまの行為がバレぬように常にアンテナ張り巡らす必殺仕事人。
現代であったらもう無理と言わんばかりに即日退職代行利用したくなりそうな心身が削がれる板挟み業務でしょう汗。
小柴さんはきっちり仕えて坊っちゃまの遊びもまずまず優しく受け止め、村人達に対してはそう冷たくはなく、手堅く業務遂行しているウィルフリード。
まるっきり反対タイプであったのが中島さんで、村人達に対してはたいそう素っ気なく、
シッシッと手で追い払いながら道を開けるよう催促までしてかなり偉そうな振る舞いでした。
また『白鳥の湖』ベンノや『不思議の国のアリス』白ウサギでも感じましたが、主役引き立てながら
自身の出方の匙加減計算が上手く、中島さんが主役の近くにいると妙な安心感すら覚えるほど。
とりわけ『白鳥の湖』でのジークフリートとベンノ再びであった渡邊さんアルブレヒトとのコンビは
当時放送されていた朝の連続テレビ小説らんまんの万太郎と竹雄をこの度も彷彿させる名コンビでございました。
アルブレヒトのほうが偉そうに顎を使ってあれやこれや指示していて主従関係ははっきりと、
されど悪代官と越後屋ほどではないにしても何やら裏取引でもしていそうな密接な関係性も窺え、
グルになってジゼルとの戯れを実践していたとも思える怪しさもあり。 きっとウィルフリードは村の住宅地図や土地建物管理状況も把握していたので、
ジゼル家の目の前の納屋をすぐに仮住まいにできたのでしょう。中世ドイツに登記簿謄本があったなら、入手して坊っちゃまのために調べ上げていそうです。
だからこそ、二股及び結婚詐欺がバレたとき、ジゼルの死を目の当たりにして叫び狂う坊っちゃまの取り乱しや
城への連れ帰りを試みるも反抗してジゼルのもとに何度も近寄ろうとしても格闘技並みの押さえ込みで体当たり対応して、
それでも尚ジゼルのもとを離れたがらず揉みくちゃになりながらの抵抗がおさまらない坊っちゃまを
無理やり連れ帰る様子からも、日頃の密な関係性が伝わる壮絶なひと幕でした。

あたかも違う役かと思うほどに演者によって異なる大輪の花が咲き競っていたのはバチルド。
益田さんはたいそうきつめで、高慢ぶりやアルブレヒトへの追及も刺すような目つきがおお怖し。
内田さんは素直に育った、陶器の如く滑らかな美と愛らしさで魅了。狂乱するジゼルを不安げに見つめる様子は
貴族達との空間では孤独で隠してきたであろう優しさや心配が覗く令嬢でした。
関さんは近寄り難いクールビューティー。つんと澄ました表情、仕草でそう簡単には手に入れられそうにない高嶺の花です。
バチルドを従来の王侯貴族ではなく大富豪の娘に設定した意図が未だよく分からずですが、
貴族達からの軽蔑の視線に耐えるどころかはねのける強さや心を通わせる友人がいない、
軽蔑の対象であったドレスを純粋に褒めてくれた上に恋の話に花が咲くジゼルがもしかしたら初めての友人になったかもしれない
孤独な一面を始め、ただ裕福な令嬢ではない人間的魅力を一段と濃く描写したかったのかもしれません。

ペザント・パ・ド・ドゥもペアごとに楽しさが咲き乱れ、特に今も脳内で再生されるのが東さん石山さん組。
東さんの伸びのあるクリアな踊りや、石山さんの空間を大きく隅々まで使う闊達な姿が実に爽快でまさにお祭り隊長。
3月の前橋市におけるブリスバレエスタジオにて『グラン・パ・クラシック』で組まれた姿を観てフレッシュで爽やかな踊りが合って素敵なペアと感じたばかりでした。
舞台上のダンサー達も視線があたたかで、石山さんのヴァリエーションをクールランド公も賛辞を送りつつ、足捌きを真似ながらバチルドにアピール笑。

ジゼルの母ベルタは関さんが実に印象深く、ウィリー伝説の説明場面にてマイムの強弱の付け方や間の取り方、ウィリーを真似る姿の恐ろしいこと。
吹き荒ぶ風音やウィリー達の嘆きや怒り、不気味な曲調を関さんの身体の奥底から発しているかの如くゾクゾクとおどろおどろしい感覚に襲われるほど
舞台全体の空気を瞬時に変えていく姿に、往年の大女優な演技力に感嘆いたしました。余りの恐ろしい支配力に、ミルタ役も観てみたいダンサーです。

村人達の群舞の一斉交差や移動も更に何段階もクリアな捌きに変化していた点も目を惹き、
上体の捻らせ方や使い方もぐっと豊かになって収穫祭のめでたさを後押し。
収穫祭のフィナーレでのペザント・パ・ド・ドゥのペアが率いる三角形群舞も、切れ味抜群の包丁で野菜を切っているかのように(通販番組をご想像ください)
シャキシャキ機敏な動きに思わず注目。
幕開け、シルバニアファミリーも驚くであろう細部に至るまで立体的で緻密な装置や美術の凝りよう、
飾り付けをしたり、葡萄を運搬したりと収穫祭準備に忙しくも生き生きとした村人達の生活感がぱっと目に飛び込んで
ジゼルのお家では何かパンでも焼いているのか煮込み料理でも作っているのか煙突から煙がモクモク。そうだ、煙が消える瞬間を今期も見逃してしまった。

大きな変化はもう1つ、貴族達の怖さ。プライドの壁が高く、庶民とは生きる世界が違うざますと言わんばかりに村人達に身分の高さや財力を見せつけるようにそぞろ歩き
村人と貴族の身分差の溝の深さを強めに描写。ペアごとに登場して女性達だけが真ん中に集合しての奥様会、
その中でも序列がありそうでたいそうドロドロしていそうです。 会長はきっと玉井貴族でしょう。
また貴族ではなく成金大富豪の娘バチルドを軽蔑する貴族陣の仕草が前回より濃いめで
派手ピンクドレスのデザインや村娘ジゼルと距離を縮めて打ち解けるバチルドにそれはそれは冷たく痛烈な視線を送っていました。
そう考えると、バチルドメンタルの強靭さ恐るべし。同時に自身に飾り気のない無垢な笑みを向けて
ドレスを褒めてくれたジゼルに好印象を抱くのも、ネックレスを贈りたくなるのも頷ける展開です。
日によっては貴族隊長の中家さんがペザント・パ・ド・ドゥ最中に男性ヴァリエーションの真似事や、アダージョ終盤に2人で腕を組む高難度技に憧れたのか
隣に女性貴族を誘って再現を試みたりと何だか楽しそうに見物。
或いは建築探訪のようにアルブレヒトの納屋を観察、覗きも笑。(既にヒラリオン、侵入しているのでは?)
中家さんの隣にいたがために笑、ペザント腕組みポーズのお誘いやヴァリエーションアピールを受けてもきっぱり反応なさっていたのが大木さん。
対等に渡り合っていて頼もしく映りました。そうだ、中家さんは葡萄をつまみ食いしそうになっていたが
村人女子にお断りを受けていたのでした。村の訪問を最も満喫していた貴族かもしれません。
貴族の衣装は男女とも重厚で装飾もごってり付いたデザインながら誰一人衣装負けしている人がいなかったのも感心。
背丈だけでなく立ち居振る舞いや身体の保ち方(相当重量感ある衣装のはず)がしっかりとしていたからこそ貴族達の怖いほどのプライドの高さも、村人達との身分差、
狂乱でのジゼルに対してみるみると冷たさが強まる反応もさまになり、アルブレヒトへの追い詰めや呆れの視線もいたく恐ろしいものと感じさせてくださったのでしょう。

ウィリー達の群舞の柔らかさの中にある怖さ、冷たさ、しかしただおっかないだけでなく繊細で美しいと思わせるのは
恋人と失った悲しみが全員の身体からこぼれ落ちているからであろうと想像。
美と怒りの踊りわけもはっきりと描いていて、ヒラリオンを追い詰めるときの三角隊形攻撃や追いかけ、腕を針のように突き刺す鋭さは恐怖しかない一方で
ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥ最中における左右縦一列で並ぶ光景は、立って並んでいるだけではなく
ウィリー達がずっと敵視の対象としてきた村娘を裏切った男性を助け出そうと奔走するジゼルの行動に
それぞれ悲恋の過去を思い返したり、許そうとする行動を受け入れられぬ拒絶感もが複雑に交ざり合ってじっと堪えているとも見て取れました。

ところで、あらゆるバレエ作品の中で解釈や意見が多様に飛び交い、最も論争が起こっているであろうと思われます。
その中の1つがヒラリオンは善かそれとも責任はあるか。私はジゼルの作品自体好きになるまでに
バレエ鑑賞が趣味と自覚してから15年はかかってしまうほど、苦手意識を持つ期間が長くありました。
大きな要因に関わるのがヒラリオンで、なぜジゼルを騙したアルブレヒトが助かるのか、疑問ばかりが浮かんでおりました。
しかし近年は考えが変わり、正直一徹であっても、ジゼルの立場考えぬ求愛に走るヒラリオンの身勝手さも感じるようになった次第。
例えば、手を無理矢理握るのはまだしも、いくら振り向いてくれないからといってスカートへの顔うずめはアウト!!
ただでさえ異性との接触に慣れぬ年頃の村娘からすればヒラリオンへの嫌悪対象決定に繋がる行動だったと思いますし
そりゃジゼルからしたら、アルブレヒトが助けに駆けつけてくれた白馬の騎士に見えますわい。
ジゼルにとっては恋の盲目で純愛であれ遊びであれ、アルブレヒトの身分云々ではなく、身体が弱くおっとりした自身と歩調を合わせながら丁寧に接してくれて、身に危険が迫れば敵を撃退してくれる警護官にも思える存在であり
仮に時折意地悪で強引な部分があったとしてもすべてがときめく煌めく刺激として心身が吸い取っていたのでしょう。
ただ新国立吉田監督版においてはヒラリオンに同情できる部分もあり、置き配の先駆けで自分が贈ってジゼル家の前置いた花束を無惨にも花占いに使われ、
しかも1枚ちぎるたびにジゼルは笑みこぼれ、怒り心頭は当然のこと。そして結果が良いものでいからと
その花を使ってアルブレヒトがこっそりもう1枚ちぎる、人によっては毟り取るという違反行為に走る様子や
最後は放り投げてホームラン歩いは床の隅っこにストライク!を目撃。沸騰して嫉妬が募るのも無理はありません。そこは同情できます。
また収穫祭最高潮達したところでアルブレヒトの身分や二重婚約暴き出しをするも、ヒラリオンからすれば正論をぶつけることがジゼルのためと思ったでしょうが
命落とすほどの衝撃を与えるなんてヒラリオンは思ってもみなかったはず。
ジゼルの繊細な心情や男性との接触に慣れぬ性格を考慮しない求愛や暴露に走ったヒラリオンはある意味自己中心的でもあると捉えております。

それからジゼルはなぜ自身を騙した裏切ったアルブレヒトを助けて守り切った理由も長らく苦手意識真っ最中期間は理解に苦しみましたが
ジゼルからすれば、アルブレヒトは希望の光そのものだったのであろうと近年は考察。
例え一緒にいた時間は短くても想像を遥かに超える濃密な幸福時間と思われ、母親を除けば最も濃い時間を過ごした相手でしょう。
しかも身体が病弱な故に母親に大事に大事に育てられ、友人達ともあまり交流できず極力恐ろしいものから排除するように育ててきて心身ともに免疫も弱かったはず。
だからこそ、少しでも裏切りを感じたら人生真っ暗になってしまい、息絶える悲劇となってしまったのは残酷でなりません。
しかし裏切り1回で息絶えるほどにピュアな心の持ち主であるからこそ、命を落としても記憶にあるのはアルブレヒトの素敵な部分のみで、
記憶が脳内の茶漉しを通して澄んだ美しい思い出しか身体に滴っていないのでしょう。
時には自身を守り、閉ざされた世界にいた生活状態から暫し解き放たれて新しい景色を見せてくれて、遊びや嘲笑があったとしても
幸せをたっぷり与えてくれたアルブレヒトを守りたい助けたいと願って行動に踏み切るのは自然な流れと思っております。

以下いくつか疑問を連ねますが、花占い後にアルブレヒトがヒラリオンからジゼルを守るのは
ピュア系路線なら分かるが遊び人系ならばそこまでしなくても、と疑問残ります。
貴族としてヒラリオンに負けたくないプライドが強いからか、貴族の身分は知られたらまずいが
ヒラリオンより上の立場であるのはアピールしたかった、森番なんぞに負けるわけにはいかなかったか、
それとも遊びとはいえ、ジゼルに良いところ見せたい下心も募ったか、理由はいくつも考えられます。

それからプログラムによれば、単に裏切られての死ではなく「婚礼当日」に捨てられた乙女のウィリーと記されている点も気になり、
当日限定で捨てられ絶命した乙女が精霊になってから集団行動できるほどの人数に達する村なんぞ住みたいとは思いません汗。

アルブレヒトの村人扮装グッズ取り揃えも謎で、殊に吉田都さん版はただ庶民らしい服ではなく、他の村人達と線の色目も含めてそっくりデザイン。
王室のお抱えテーラーに注文したら王子がコスプレ趣味に目覚めたと思い込ませる手法以外は目的バレるでしょうし、もしや裏金、闇取引での注文命令かもしれません。
手が綺麗で労働者感がなく、畑仕事や薪割り、家の修繕といった大工仕事等をやってなさそうでも、
中世の封建社会の閉鎖的な村でよそ者としてやって来ても村の青年と仲良くしているのも謎でございます。
交渉術に長けた狡賢さも備えているアルブレヒトもいそうでしたが、見かけだけを繕っていた姿を皆気づかなかったのか不思議でならずです。
それか短期滞在ならば受け入れは時々していた?(今でいう農業インターンか)そうだとしても農園主の娘と恋愛はだめでしょう。
いや、農園主の美しい娘だから貴族まではいかずとも裕福そうな青年が近づいたのは許容範囲だったのかとも思えてきます。

またウィルフリードが貴族達の到来に気づいて、ウィルフリードが用意したマントにくるまれながら避難したアルブレヒト。
御一行滞在中やペザントパ・ド・ドゥ最中アルブレヒトは何をしていたのでしょうか。
まさかあんぱんと牛乳持って張り込み?あぶない刑事ですわい笑。あんぱん、現在朝の恒例ですがそれはそうとジゼルが収穫祭の女王に決定すると
何事もなかったかのようにさらりと登場するわけですから相当タイミング見計らっていたと思われます。

貴族陣の行動の時間軸は版問わずの疑問で、ヒラリオンが角笛吹いてから貴族達が再びやってくるところ、時間からして早過ぎる気がしておりむ。
山の中腹辺りにも行かず、随分近場で狩りしていたのでしょうか。奈良の鹿寄せホルンの如く素早い集結です笑。
仮に奈良公園フィールドバレエを開催してジゼルを上演したら、角笛場面では間違いなく鹿さん達がやってきて
自然風景をより後押しするエキストラとして活躍することでしょう。狂乱も親子で心配そうに見守るでしょうか。場所柄何をやっても鹿さん達はやって来るか笑。
それはそうと、時間軸そのままに待っていたらアルブレヒトの逃亡は成功してしまいます。

2幕冒頭、雲海を彷徨うような霧演出が幕開けから体感温度がすっと下がるくらいに肌を撫でるように包み込み、
一方で見方によってはきのこにも見え、灯りがついた十字架の細かな羅列も壮観。
月が消え入る瞬間もようやく目撃でき、パ・ド・ドゥも終わり、連続アントルシャもジゼルを横移動サポートも終わってからの
アルブレヒト最後の訴えな踊りの後に勢いを増して消えた気がいたします。しかし確認できたのは1回で、
もう少し複数回この目で確かめたかったがつい踊りに目がいってしまうのは仕方ない。

密かに名物と毎度感じている常に下手側奥にいる、ペサント・パ・ド・ドゥ男性が日替わりで演じるカールおじさん(プログラム未明記)も連日楽しませてもらい
石山カールおじさんは身元がばれて退散するアルブレヒトに対して杖を使って攻撃を試みる1人百姓一揆を実行していました。

いつの頃からか、私は『ジゼル』を観るときジゼルよりもアルブレヒトの造形に重きを置いて観察するようになり
毎度○○ブレヒトと勝手に考えて名付けておりますが、恩田陸さんの小説『Spring』のあるページにアルブレヒトの物語と記した箇所があり、おおいに納得。
版によって指定があるなら別として、純愛か遊びかだけで二分できぬ捉え方があり、それぞれ踊るダンサーによって掘り下げ方はいくらでもあると思った今回です。

ゲネプロ開演前に吉田監督から話があった通り、前回以上に表現の部分を重視しての取り組みは勿論、
踊りの部分も精度上げての語りかけが雄弁な仕上がりと見て取れました。
きっとロンドン公演でも、厳しい観客をあっと驚かせて魅了する舞台となることでしょう。
その前に次回は『不思議の国のアリス』やYoung Galaもあり。皆様怪我に気をつけて臨まれますように。




18日は天皇陛下ご来場のため荷物検査とX線検査もあり。空港のように金属探知機用いての厳密な検査でした。



灯りと調和するプログラム表紙。



夜は2回目のマエストロへ。まずはシャンパンで乾杯!



お米と魚介のサラダ仕立て紫蘇の香り。森の中の海、でしょうか。



シラスとキャベツのアーリオオーリオ。白ワインと合います。収穫祭です!



鶏もも肉のソテー  ソースリヨネーズ  ブルゴーニュの赤ワインが止まりません!村人達以上に葡萄消費中でございました笑。収穫祭!



ガトーショコラフルーツ添え  濃厚なチョコレートの味わいが赤ワインにもよく合います。



カーネーションとコルク。カーネーション、花占いには花びらが多過ぎるかもしれません。アルブレヒト、苛立ってしまうか笑。



前回の米沢さん渡邊さんペアもとっても好きでした。儚い純朴少女と、愛想よく話に付き合うも傲慢さ覗く悪男。



人生いろいろ   ブレヒトもいろいろ   チャラい系から情熱純愛、傲慢系まで。誰1人似たり寄ったりがいません。



HUBでビール!祭りはまだ続く。



白ワインで締め括り。ジゼルですから。ビールもワインも、もう1サイズ大きくしても良かったかと思う、心臓はともかく肝臓は丈夫な私でございます。



福島県白河市にある南湖森林公園の丘の上のベンチ。南湖を見渡せる絶景です。昨年とら食堂の帰りに自転車で立ち寄りました。
花占いベンチ完備!