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2025年8月3日日曜日

涼しげで幻想的な舞踏会ハイライト 小林紀子バレエシアターミックス・プロク 「レ・ランデヴー』『シンデレラ・スウィート』7月20日(日)







7月20日(日)、小林紀子バレエシアターミックス・プログラム『レ・ランデヴー「シンデレラ・スウィート』を観て参りました。
https://www.nkbt-tokyo.com/performance/127mixedprogramme/


「レ・ランデヴー』
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:ダニエル・オーベール
プリンシパル:真野琴絵 八幡顕光

女性は丸みあるリボンを頭のてっぺんにのせて白く長めのチュチュ、男性はシフォンのブラウスで白色で統一。
振付は細かくキュッと可愛らしい仕草が詰まり、ちょっとした駆け引きもチャーミングでお洒落な仕上がりです。
男性陣は賛助出演者も多いため難しい課題かもしれませんが整列して踊るときはもう少し揃うと尚よろしいかと。
装置の門はケンジントンガーデン彷彿との解説で、興味津々で見学に足を運べるかと思いきや先月は残念ながら行けず。



「シンデレラ・スウィート』
振付:アルフレッド・ロドリゲス
改訂振付・演出:小林紀子
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
シンデレラ:廣田有紀
王子:望月一真
道化:八幡顕光
背の高い義姉:廣瀬陽
背の低い義姉:川合+夢
春:濱口千歩
夏:武田彩希
秋:三浦舞
冬:中村悠里


2021年の改訂版上演にて初めて鑑賞し、好きになった作品。元々は1990年頃に制作され、
稲村真実さんのシンデレラが重厚な襷付き衣装を着けていた写真があったかと記憶。恐らく衣装も2021年に一新だったかと思います。
舞踏会に四季の精たちのソロも織り込んだ凝縮版で、そこへシンデレラの到着を皆で迎え入れる場面へ。
パステルカラーのベールに包まれるような幻想的な涼やかさ覆い、夏空の初台にて納涼気分でございます。

シンデレラの廣田さんは指先脚先までコントロールが行き届き、艶っぽさも香る美しいヒロイン。
オフホワイトなチュチュに繊細な装飾たっぷりな衣装負けしない踊りの麗しさにもうっとりです。
王子の望月さんは技術が大安定ではなかったものの、プロポーションは良く軍服風な衣装も似合い、存在感やサポートの安定感は備えていらっしゃいました。
四季の精達が皆さんレベルが高く。全幕(例えばアシュトン版)と違って背景も変わらず、お小姓もおらず、
宮廷の中でそれぞれの季節を踊りのみで表現しなければならない制約がある中で見事なこなしっぷり。
とりわけ秋の三浦さんの捻りの効いた身体の使い方、冬の中村さんの決して派手ではない旋律の中で音楽の強弱を自在に身体で表していく職人な見せ方が素敵。
7人構成のスターズ達の淡い水色チュチュが織りなすキラリと涼やかな空気や、
四季の最中やシンデレ今到着時の照明の落ち着いた色合いやファンタジックな雰囲気も気分を高めてくださいました。

八幡さんの道化は髪が雄鶏のような真っ赤な色味でびっくりするも、絵本の挿絵に出てきそうな格好に思えてきて違和感も薄れ、楽しい宴を盛り上げる活躍。
12時が近づき、シンデレラがガラスの靴を落として走り去っていったところで終了ですが、
舞踏会の中に四季やスターズ、そしてシンデレラと王子のパ・ド・ドゥが盛り込まれているため見応えはしっかりとある演出です。
再三申し上げてしまいますが、とにかく落ち着いた且つファンタジックな照明や四季、スターズ達が綴る涼しげな雰囲気が
35度超え続きの時節柄たいそう身に沁みて、幸せな納涼気分を味わえました。




英国関連の文字多きプログラム。いつもなら英国の流れを汲んでいる
小林シアターならば当然と思いながら目を通しておりますがこの時期は諸事情によりそうもいかず。



プログラム



夏空!窓ガラスにも青空!



バースデーサービスパンケーキを食べて参りました。 サービスとはいえこの華やかなボリューム、嬉しうございます。 ところでシンデレラ・スウィートとカタカナ表記されていますがスイートではないのかと少々疑問。しかしパンケーキがめでたく甘く美味しかったので良いか笑。



ケンジントンガーデンへは行けずでしたが、(近距離にあるV&A博物館へは行ったのだが)バッキンガム宮殿へは足を運んで参りました。
7/23お昼頃に当方撮影。

2024年9月15日日曜日

2年5ヶ月を経て叶った舞台上のアクティオン 修子バレエアカデミーThe 2nd Study Gala 8月25日(日)《葛飾区》


8月25日(日)、葛飾区のリリオ亀有にて修子バレエアカデミーThe 2nd Study Galaを観て参りました。
今年2度目の亀有、修子バレエさんの舞台は昨年の1st Study  Galaに続き2度目の鑑賞です。
https://shukoballetacademy.com/


ゲストと講師陣によるフィナーレ映像。ビゼーの交響曲ハ長調にのせて、めくるめく展開です。振付は高羽英美さん。
曲を聴くとどうしたってバランシンの『シンフォニー・イン・C』が思い浮かんでしまい
アクティオン(渡邊峻郁さん)やアリ(菊岡優舞さん)、ランゲデム(森本亮介さん)といった新国裸体系野性味トリオが勇壮に踊っていると不思議な味わいでございます。




主宰はNBAバレエ団や谷桃子バレエ団で活躍され、その前にはエジプト、近年は米国でも活動の場を広げていらっしゃる田山修子さん。
来年で5周年を迎えるスタジオで、幼児さんと小学生くらいの生徒さん達、そして大人の方々も熱心に通われ舞台出演にも情熱を注がれているようです。
クラシックのパ・ド・ドゥからアンサンブルの創作まで多岐に渡り、また生徒さんのみならず
講師の方々の出番もバランス良く混ぜていて、生徒も講師も皆で舞台でステップアップを図る方針があるもよう。

前半に子供の生徒さん達による『海賊』より花園が上演され、一部終盤にてフェッテがブンブンと含まれ、まだお子さん達には早い気もいたしましたが
殆どの生徒さんがバレエシューズで、舞台で踊るポワントを急がせていなかった点や全体も綺麗に整っていたのは好印象でした。
小学校2、3年生頃の年齢のお子さんもゲストとのグラン・パ・ド・ドゥやパ・ド・トロワ、
プロ顔負けなゴージャスなチュチュでのヴァリエーション等なかなか他の教室の発表会では見かけぬ演出もあり、驚きを覚えましたが
生徒さん達がとても楽しそうにうきうきとした表情で踊る姿に、晴れ舞台を今か今かと待ち望んでいた嬉しさが伝わり、子供の純粋な心に癒された私でございます。

大人の生徒さんはグラン・パ・ド・ドゥ、パ・ド・ドゥもある他、『白鳥の湖』3幕パ・ド・フィアンセは個々の特性を生かしたソロに加え纏まりあるアンサンブルを披露され
そのあとの加地暢文さん振付connectでは照明の切り替わりも工夫に富んでいて、光の陰影の中で入れ替わり立ち替わり踊りが紡がれて行く展開も見応えがありました。
また講師の片平成美さん振付『シンデレラ』よりシンデレラと妖精たちのハイライト集においても
大人の生徒さんで結成された四季の精達が基本のシンプルなテクニックを大切にしながら端正に息を合わせて踊っていらっしゃり、
片平さん三船元維さんによるパ・ド・ドゥもぱっと華やいで素敵な流れに仕上がっていた印象です。

さて、この日最大のお目当てが田山さんと渡邊峻郁さんによるディアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ。
田山さんのご投稿の紹介文によれば渡邊さんは人生初のアクティオンだそうです。
実は私の夢の1つが渡邊さんアクティオンを「客席」から観ることで、2022年3月の渡邊さんがアーキタンツのレッスン初登場時
センターの最後のグランジャンプ時にこのパ・ド・ドゥのコーダ曲が伴奏され、おおよそは作品に沿った振りでダイナミックなアクティオンジャーンプ!を間近で拝見していたのです。
ただ私がそのとき初アーキ受講で、受講するレベルのクラスは怖い空間と噂に聞いていたため(この初回時だけは耳にしていた噂は概ね合っていたが)
前半終了あたりまではガチガチに緊張してしまっていたのが今も悔やまれると同時に
新国立劇場にレパートリーにも未だなく、以来アクティオン役の舞台姿にもお目にかかりたいと願って早2年5ヶ月経ち、ようやく実現。
原作を題材にした絵を前日に上野の国立西洋美術館常設展で鑑賞するほどに楽しみに待っておりましたがようやく叶ったのでした。
元々好きなパ・ド・ドゥであるため序曲のズンチャチャンチャンズンチャチャンチャンの曲調を聴くだけでも胸が沸き立つ思いに駆られ
そうこうするうちに田山さんが大拍手に迎えられてご登場。真っ赤な短いスカートで色っぽくもきりっと気高い女神なディアナでございます。
背丈も腰位置も高いため、脚を交互に上下させながらの前進も枠に収まらない華やかさで魅了。
そして渡邊さんアクティオン出現。俊敏で線が太めな豪快ジャンプの斬り込み登場で、ギラッとした眼光といい
その瞬間から獲物たくさん仕留めていそうな逞しいワイルドな狩人そのもの。
岩山や森を駆け抜けて狩の名手として人々から慕われていそうとも想像いたしました。(もののけ姫のアシタカかいな)
ヴァリエーションでは弓を射る仕草も随所に含ませてくださり時折慌ただしく映ったときもあれど、
品格は終始維持。こーれーが観たかった!と何度叫びたくなったことか分かりません。

そうでした、アダージョのときディアナから受け取った弓を袖へ滑らせて投入するときにまさかの弓が大破する事故が発生。
しかしアクティオンは道具投入の名手でもあるのでしょう。割れても欠片は殆ど飛び散ることなく、ビリヤードのように割れつつも袖へイン!
リハーサル映像では弓を壊さないためにも滑らせ投入はせず、随分と離れた棚に大急ぎで丁寧に置いては再び立ち位置に全速力で戻る、
そんなご様子が告知されていましたから、本番での破損は予想もしなかった事態だったことでしょう。袖にボウリングした弓の運命はいかに笑⁈⁈
それはそうと頭飾り等は無しで、できればヘアバンド?(渡邊さんですと鉢巻との呼び名のほうが相応しい!?)はあった方が
鋭く凛然とした眼差しが引き立って良かったとも思えたものの、衣装は原住民風紐パンツではなくしっかりとした茶色い素材のデザインで一安心。
凛として気高い女神な田山さんディアナともお似合いで、サポートなさる姿も美しや。
度々目でも語りかけて安心感を与えていらっしゃるご様子も、パ・ド・ドゥにおける男性プリンシパルの鑑と再度見て取れました。
田山さん、アダージョのときのほうが顔の強張りがほぼ皆無で、組むパートナーの大切さを再確認です。
そんなわけで管理人の夢も2月に続き叶い、王子貴公子から野性味系まで魂丸ごと生まれ変わるように舞台で生きる、振り幅広い魅力に再度心奪われました。

前回お2人が大トリで披露され、今回はポスターやプログラム表紙に掲載されたグラン・パ・クラシックがそれはそれは揃って格調高い上に
全生徒出演者の見守りを4時間に渡って終えた直後の田山女王を渡邊騎士が恭しくにこやかにお仕えするようなやり取もがインパクトにありましたが
今回は趣変わってより開放的で勢いのある、しかもグランパに続き全幕ではなかなか上演されぬガラならではのパ・ド・ドゥを選んでくださり、嬉しい珍しい新鮮な視点で拝見。
映像化の元祖な存在ルジマトフや、ヴァルナ入賞時にも踊られ同年の大阪での凱旋舞台やその後も度々外部でも鑑賞している
福岡雄大さんの印象が余りに強く刷り込まれておりましたが、この度初披露された渡邊さんの弓事件含め色々な意味での笑、いつもとは打って変わっての豪快な狩人の上書き決定です。

大人のパ・ド・ドゥは今や教室の垣根を越えた多種の舞台が設けられて(所謂ジョイント)、
主催者がしっかり目を行き届かせている舞台もあれば無法地帯(失礼)もあり、ピンからキリまで存在。
一度とある舞台の鑑賞時には、本当にポワントの基本的な立ち方すら危うい方々によるパ・ド・ドゥの連続で、
作品によってはこっそり録画してでも振付家の財団に映像を送ろうかと脳裏を過ったときもございます。
これといった努力もできていない踊れないぼってりズンドコ醜いドラム缶な私があれこれ綴る資格もありませんからこの辺にしておきまして
修子バレエさんではパ・ド・ドゥクラスが頻繁に開催され、男性ゲストを大々的に写した画像入りの告知や
ある程度のレベル要であっても一応は誰でも参加可能?なオープン式の募集内容から、大人のバレエ事情の変わりように目を丸くしております。
ただ発表会やスタディガラにしても、田山さんが目を光らせながら責任を持って練習には立ち会っていらっしゃるでしょうし
ご投稿においても、何でもかんでもありなパ・ド・ドゥ舞台に懸念を示す内容も書いていらしたので使命感を持って指導に臨まれていると窺えました。

フィナーレは生徒さんのみ構成が『ラ・バヤデール』影の王国のコーダ。ソロルが入る箇所に男性の生徒さんがジャンプをしながら登場してしっくり。
終盤は色とりどりの衣装で整列して一斉に踊りますが、きちっと纏まっていて見事。
ゲストと講師は冒頭で紹介した通りビゼーの交響曲ハ長調。一部の女性講師の方々がクラシックチュチュに着替えて登場なさるため
あたかもガラでグラン・パ・ド・ドゥ踊った出演者達全員と思いがちな構成ですが、ハイレベルな後味が残るので良き演出なのでしょう。
子供と大人の両生徒さん達と組まれた元NBAの高橋真之さんがあり得ぬ軸の強さ回転のコントロール力で率いていて恐ろしや。

兎にも角にも、2年5ヶ月を経て渡邊さんの舞台姿のアクティオン拝見でき、鶴亀以上におめでたいひとときを過ごした夏の亀有の夕刻でした。




The 2nd Study Gala前日、上野の国立西洋美術館にて開催されていた内藤コレクション いとも優雅なる中世の小宇宙へ、の展覧会へ行きました。
牧阿佐美さんがライモンダ新制作時に衣装や美術装置のイメージとして写本の色彩感を参考になさっていたことも、より興味を持つきっかけに。
金や青の品ある色彩や緻密な模様文様に昔から魅せられ、最終日前日にようやく鑑賞できました。
企画展チケットでそのまま常設展も鑑賞可能のため、2022年5月の上野での佐多達枝さん版『カルミナ・ブラーナ』鑑賞前の立ち寄り以来に
『アクタイオンに驚くディアナ』の前へ。(常設展と今回の企画展共にほぼ全作品撮影可能)
翌日にいよいよ亀有でお目にかかれると思うと、本来は鹿に変身させられる経緯をバレエでは描かれていないと把握していても心浮き立つ気分が止みませんでした。



鹿!!



亀有駅ホームから、夏空!



開演前、会場が入る店舗の1階にてやっと亀むらで買い物。マドレーヌを購入いたしました。亀の絵が入れ物に描かれています。



ぶれてしまいましたが、パーン!と弾ける勢いで、帰りはジムビームで乾杯です。



鹿次郎の夏。先日25日の余韻からもまだ抜けられず。ギリシャ神話の通りにバレエでは鹿に変身する場面は描かれずとも
亀有のお菓子を手に、狩人アクティオンに想いを馳せる我が家の宮島の鹿さんです。里帰りで初バレエ鑑賞した、福山市のアルブレヒトも忘れられない様子。
狩人といえば名曲あずさ2号の世界観を再現したくて、しかしするなら憧れのダンサー鑑賞へ出かけるときが望ましいと待っていたら、2019年9月23日に実現。子ども白鳥長野県岡谷市公演!
2号ではありませんが、8時ちょうどのあずさ(5号)に乗って旅立ちました。
友人達からは公演感想や、前々日の急遽の主役変更大阪公演に続くすぐさまの旅公演鑑賞よりも
あずさ2号の曲再現を行動に移したことに驚かれ笑われ、よく知る世代ではないはずが!?と人生において度々抱かれる年齢疑惑です。


2022年9月19日月曜日

珍しい英国作品紹介し続けて半世紀 小林紀子バレエシアター アシュトン・マクミランプログラム9月3日(土)





 9月3日(土)、小林紀子バレエシアター『アシュトン・マクミラン』プログラムを観て参りました。
https://www.nkbt-tokyo.com/performance/アシュトン・マクミランプログラム/#tickets-section


『レ・パティヌール』
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:ジャコモ:マイヤベール
編曲:コンスタント・ランバート
美術:ウィリアム・チャペル


アーチが複数設置されたヴィクトリア朝時代のスケート場が現れ、スケートを自然に舞踊化。
腰を落とした滑り方や転倒も含めて実にリアルな分、強靭な足腰が求められるであろう振付が散りばめられています。
衣装も色とりどりで、急須(英国作品らしくティーポットと言わんかい笑)の蓋を思わす形状の帽子もお人形さんのような可愛らしさです。
八幡顕光さんのブルーボーイがお茶目な上に足腰にきそうな回転も次々に決め、
島添亮子さん望月一真さんのホワイトカップルの上体がすっと流れる優雅さ、粉雪を愛でるような指先の繊細さにも見入りました。
作品は2017年のKバレエカンパニー公演以来の鑑賞ですが、ペアで腕を交差させて組んでの滑りやユニゾンで円を描くようないかにもスケートらしい動きの移動も
バレエらしい突如の跳躍も合わせてスケートを滑る喜びへと繋がり、紳士淑女達の愉しい冬の遊びが沸々と表れた作品です。


『ザ・フォーシーズンズ』
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュゼッペ・ヴェルディ
美術:シャーロット・マクミラン

ヴェルディ作曲、祝祭感の文言から絢爛クラシカル作品かと思いきや予想に反してモダンな衣装、中でも冬の模様はジンベエザメがすぐさま浮かぶ斑点描画でびっくり。
女性はタイトで短い丈のワンピース、男性はノースリーブレオタードで役どころに四季の名称がつき、最後は全員集合で規律正しい縦横整列で終幕です。
背景は四季ごとに模様や色味も変化し、顕微鏡で覗く細胞の世界を彷彿。真っ先に登場する冬に抜擢された中村悠里さんの
特に前後の向きが頻繁に変わるポーズの運びが職人肌な気質で目に留まりました。

近年は『マノン』や『アナスタシア』『眠れる森の美女』(マクミラン版)といった大掛かりな作品上演からは遠ざかっていると思われますが
アシュトンやマクミラン振付の1幕物の作品を定期的に上演し、国内ではなかなかお目にかかる機会がない
渋めの英国作品をも紹介する方向性は創立から半世紀を超える今後も貫いて欲しいと願っております。
マクミラン版『春の祭典』は衝撃のある野性味で是非また再演を望みたい作品で
金と白の重厚な色彩美に溢れた『ライモンダ』3幕やカーテンを模した背景も衣装も妙にゴージャスであった『パキータ』、
舞踏会の神秘的な空間に四季の精達も登場させハイライトとして纏めた『シンデレラ・スウィート』、
そしてこのご時世、陰鬱な作品上演は困難かもしれませんがThe Invitationやザ・レイクス・プログレスもまた観たい作品です。




帰り、当ブログレギュラー後輩と共に乾杯。ロンドンの名所が描かれた口当たり軽やかなビールでございます。ロンドンは今、厳粛な空気に包まれている頃でしょうか。
後輩は季節の紅茶のカクテルだったか、店員さんが紹介してくれたお洒落なものを選択したようです。
プログラムと一緒に配布されたシアター50年の歴史を振り返る冊子が内容充実でほぼカラー。
今のシアターも好きで勿論今後も通いますが、私が特に魅せられた80年代後半から90年代後半あたりにかけて活躍された
柳瀬真澄さん、加藤久美子さん、志村昌宏さんらの舞台写真、リハーサル写真も掲載してくださり胸躍らせながら頁を捲っておりました。
何度か触れておりますが、私が最初に観たアシュトン振付『二羽の鳩』は1993年、シアターにとって1度目の再演時で加藤さん志村さん主演で
勝ち気な加藤さん少女と爽やか志村さん少年、パリのアトリエにすんなりと溶け込む素敵ペアでございました。



ローストビーフとサラダが花のように盛られたプレート。



そして王道のビールです。英国旅行に行ったら、毎日パブでビール生活になりそうでございます。



懐かしい、20周年の頃のチラシ。チェックメイトもまた観たい。ライモンダは昔は赤系の衣装でした。

2021年10月10日日曜日

1幕仕立ての幻想的なロイヤルボール   小林紀子バレエシアター バレエ・ダブルビル2021『バレエの情景』『シンデレラ・スウィート』 9月26日(日)





9月26日、小林紀子バレエシアター バレエ・ダブルビル2021『バレエの情景』『シンデレラ・スウィート』を観て参りました。
http://www.nkbt-tokyo.com/perform.html


バレエの情景

振付:フレデリック・アシュトン
ステイジド・バイ:小林紀子
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
美術:アンドレ・ボールペール

真野琴絵   八幡顕光
荒井成也   上月佑馬  冨川直樹  望月一真
廣田有紀  澁可奈子  宮澤芽実  松居聖子
松山美月  濱口千歩  武田麗香  島沙緒梨
長村紗良  中村悠里  武田彩希  飯田穂香


4年前に新国立劇場オペラパレスで開催された公演でも鑑賞。今回は中劇場開催のため、2階席からもコール・ドも1人1人がくっきりとよく見え堪能できた気がいたします。
ストラヴィンスキーによる展開と終わりが見えぬ不思議な曲調のパズルにスポーティーなTシャツ姿の男性陣、クラシック・チュチュの女性陣が嵌め込まれた感あり。
音楽はともかくなぜこうも不協和音な衣装にしたかは謎が深まりますが、ただ観ていくうちに妙な違和感が消え失せていったのは
出演者特に女性コール・ド陣が音楽を自在に全身で表現できていたからこそ。またプリンシパルの真野さんがアシュトン作品にて
特に『シンデレラ』でよく見られる、片腕を腰より下に伸ばし顔は上を向いた決めポーズなアラベスクがクリアな軌跡を描き
腰の捻りや上体を柔軟に操る技術もお手の物。背景装置のヴェネツィアのリアルト橋風のデザインもなかなかユニークで、場面によってはアーチを潜っての登場もあり。
その昔、でもないが英国ロイヤル・バレエ団が1992年の来日公演にて上演していますが、管理人、その時はバヤデールしか観ておらず
アシュトン振付の摩訶不思議なこのクラシック作品への評価はいかほどであったか気になるところです。



シンデレラ・スウィート

振付:アルフレッド・ロドリゲス
改訂振付・演出:小林紀子
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
美術:テレンス・エメリー

シンデレラ:島添亮子
王子と:冨川直樹
道化:上月佑馬
背の高い義姉:澤田展生
背の低い義姉:佐々木淳史
春:濱口千歩
夏:廣田有紀
秋:真野琴絵
冬:澁可奈子
王子の友人:荒井成也  吉瀬智弘  望月一真  小山憲
侍従長:村山亮  杜海
侍従たち:五十嵐耕司  川合十夢  竹下虎志  廣瀬陽  情野詠太  髙野大希
招待客:
宮澤芽実  松居聖子  松山美月  武田麗香  中村悠里  吉原慶子  武田彩希  須田莉那
飯田穂香  中嶋咲妃  横山紗耶
スターズ:島沙緒梨  長村紗良  三浦舞  福島さや香  沖本悠衣   轟木寧々


『シンデレラ』の見せ場を舞踏会に凝縮した1幕仕立ての作品。幕開けから宮殿の大広間が現れ
道化や貴族達が溌剌としたマズルカを披露し、舞踏会の始まりです。今回一部に小林紀子さんが改訂振付演出を行ったとのこと。
上月さんの道化がニコニコとした表情で、軽快な楽しさ増幅の闊達な踊りも場を盛り上げてくださいました。
暫くすると、通常ではシンデレラの眼前に出現する仙女のテーマ曲が流れ、四季の精達のヴァリエーションの開始。(仙女は不在)
つまり、王子や道化、貴族達が見守る宮中での披露となるわけですが、大広間が幻想的な雰囲気に包まれ、また人々が四季のそれぞれの妖精達に対して
驚きも見せればぽわんと見惚れてしまう人もいて宮殿全体の高鳴りが強まって行く流れが見て取れ、違和感皆無でした。
四季の精達が精鋭軍団であったのか全員が職人気質な踊りで示し、濱口さんはふわふわとした浮遊感や春の訪れの喜びを体現され
廣田さんが冗長になりがちな曲調であっても誠に艶めかしく且つ芯の通った風格で魅せる夏は
仮に帰り、体温が37.5度以上に達しても納得してしまうほど火照る心持ちとなったほどです。
『バレエの情景』でプリンシパルを務めた真野さんの秋は、瞬時のポーズの切り替えが巧みで忙しさを感じさせぬどころか全身から楽しさが伝わる余裕っぷり。
澁さんの滑らかで枝木から雪が舞い落ちるような手の語りは銀世界の広がりを思い起こさせる冬で
淡く抑えた紫系の色を合わせたシックな色味チュチュもたいそうお似合いでした。
四季の精達はオペラ型の膝丈衣装で、動く度に包み込むように揺れるさまも宮殿に柔らかく色彩美を添えていた印象です。

シンデレラの登場寸前にスターズ(星の精)達も登場し、水色のすっきりとしたクラシックチュチュ着用で6人の少数構成であっても1人1人から光が零れ、物足りなさは無く
中でも三浦さんが目を惹く華の持ち主で度々観察。実は三浦さん、一昨年千葉県浦安市での発表会にて『くるみ割り人形』2幕金平糖の精で拝見し
巨大なケーキを模した背景にも埋没せぬオーラがあったのは今も覚えており、その後シアター入団と教室のホームページにて掲載されていたため
今回出演していらしたら嬉しいと思いつつ足を運んだところプログラムでお名前そして舞台でもお姿を発見でき喜ばしいばかりです。

そしていよいよシンデレラの登場。小舟或いは動く長椅子?らしき乗り物に乗った島添さんが後方に現れ
ゆったりと歩み出していく姿から全体が細かな金粉が漂う空気と化し、丹念な足運びについ見入ってしまいました。
尚頭飾りはティアラだけで十分であり、頭を覆うネットのような布は不要かとも思いましたが(姫らしさが薄れてしまう気がいたします)
王子と出会い、徐々に打ち解けていく過程や12時の鐘ではっと我に返り帰宅を急ぐ幕切れまで終始丁寧に表現して束の間の舞踏会凝縮場面を見せてくださり
受け取ったオレンジを義姉に渡す(確か渡していたはず、記憶違いでしたら失礼)優しい仕草もいじらしく映りました。

描き方で好印象であったのは義理の姉達。第1幕の家での騒動場面がカットされていますから意地悪な印象は薄れる条件は揃うにしても、とにかく上品な造形。
舞踏会でもハチャメチャな行為はせず、きらきらとした空間や王子の存在に静かにときめいたり
シンデレラの登場では何処かで見覚えありな人物と考えつつも招待客達とそっと見守りに徹したりとエレガントな姉妹。
薄紫のドレスを纏っていた澤田さんはすらりとした容姿で、そのままパラソルさして別荘地を散策していても何らおかしくない優雅な立ち姿。
佐々木さんは赤いドレスが似合う活発な姉で、澤田さん義姉に素直にくっついていく様子が可愛らしい妹でした。
12時の鐘の鳴り響き場面のほか招待客と同時に踊る箇所も豊富ながら舞踏会の和に溶け込む技術、調整力も目を見張る品性のある姉妹でございます。

過去のプログラムからの抜粋によれば、1950年代にスカラ座から依頼を受けたロドリゲスがヒロインに相応しい人材を主役級から探したものの見つからず
しかしコール・ドの中にぴったりなダンサーを見つけ、ファーストキャストにはなれなかったものの2日目に主演し大成功。
ロドリゲスに見出されてまさにシンデレラの物語そのものな抜擢をされたダンサーこそ、のちの大スターで今年逝去したカルラ・フラッチだったそうです。
フラッチがコール・ド経験者であったとは初耳で、こんな逸話があったとは驚きを隠せぬ思いでおります。

小林紀子シアターでの初演の頃の記事も頭の奥に記憶されており、稲村真実さんと中島伸欣さんだったか、パ・ド・ドゥの場面の写真が載っていたかと記憶。
当時から片仮名表記がスイートではなくスウィートである点だけは疑問ではございますが、シンデレラが見た甘い夢、と解釈すればまあ良いか。
ロシアの2人の巨匠の音楽と共に1本はシックな、もう1本は幻想的なクラシック・バレエを味わえたダブルビルでした。




オレンジと星が描かれた甘いお酒で乾杯。この手の缶飲料、これまで購入機会が殆ど無かったが
各社工夫しての綺麗なデザインが並び、眺めるのもまた楽しい。ウォーターの文字通り、色は透明なお酒でございます。