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2025年8月26日火曜日

珍しいペアゲスト出演 Iwaki Ballet Company&井脇幸江バレエスタジオ合同公演『ドン・キホー テ』 8月17日(日)




8月17日(日)文京シビックホールにてIwaki Ballet Company&井脇幸江バレエスタジオ合同公演『ドン・キホーテ』を観て参りました。
IBC関連の公演は2021年の『トスカ』初演『サタネラ』「Mozartiana」以来の鑑賞です。
『サタネラ」グラン・パ・ド・ドゥにて今回のキトリ役の奥田さんと新国立の渡邊さんが組まれ、艶やかなお姉様と恋に盲目な初心な青年なる構図は今も忘れられずにおります。


キトリ:奥田花純(新国立劇場バレエ団ファーストソリスト)
バジル:井澤駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
ドン・キホーテ:梶谷拓郎
サンチョ・パンサ:藤島光太(バレエシャンブルウエスト)
ガマーシュ:梅澤紘貴
ロレンツオ:高橋竜太
エスパーダ:芳賀望
街の踊り子:瓜生遥花(東京バレエ団ファーストアーティスト)
メルセデス:原田舞子(新国立劇場バレエ団ファーストアーティスト)
ジプシーの女:井脇幸江


奥田さんのキトリはふわっと花々が香るような上品な愛らしさと盤石な職人芸が光るテクニック両方を兼備。
実に軽やかで、かといって妖精ではなく活発でチャーミングな女性として芯がしっかりと通った美しい踊りで魅了です。
奥田さんによる古典全幕主演を目にするのは初かもしれず、(全幕物としては11年前に新国立パゴダの王子での主演はあったが)
品格ある舞台姿や周りとコミュニケーション取るときの楽しみぶり、統率力もあって再び主演舞台を初台においても鑑賞できたらと思います。
ABTを思わす薄い朱色の襞状の衣装もたいそうお似合いで、夢の場の淡いピンク色のチュチュでのドルシネアも息を呑む端正な柔らかさ。

井澤さんは想像はしていたが床屋にしてはお洒落なバジルで、お店の待合室には猫脚のソファー、
窓辺にはレースのカーテンが揺らめき金縁の花瓶に薔薇の花が生けられてるであろう内装が目に浮かびました。
ただお茶目な魅力も光り、ロレンツオとの掛け合いのオロオロぶりや、そうかと思えばキトリ友人達との仲をキトリに見せつけるお調子者ぶりも憎めず笑。
テクニックも勢いと安定感ともに万全で、ぐいっと思い切りの良さも爽快。野営地場面では大概ジプシー達が踊る曲でのバジルのパートもあり
キトリを守るための踊り合戦に挑む形で描かれていて、これまた豪快な踊りっぷりで、キトリも隅っこで惚れ直していたとでしょう。
狂言自殺ではちゃっかり大急ぎで倒れ込んでからサンチョに耳打ち、作戦実行と口裏の合わせ方も面白く映りました。
奥田さん井澤さんのペアは外部公演では福岡にて組まれていますが新国立の公演ではそんなにはお目にかかっておらず、(何回か前のアラジン宝石であったかどうか)
しっかり者で美しくも強気なキトリとモテ男な床屋バジルの並びもしっくり。是非また観たいペアです。

IBC公演で馴染み深い東京バレエ団OB達もご活躍で、高橋さんのロレンツォは見かけはそこまでおっかなくなさそうだが怒ると怖い怖い笑。
ただどこかまろやかさもあり、娘の幸せを一番に考えている根は優しいお父さんと推察。
昔何処かの団体で星一徹(お若い世代の方々、ご自身でお調べください)並みのど迫力メイクな亭主関白ロレンツオを観たことがございまして迫力はあったが、
キトリの継父か?血筋違いもあろうか?等と考えが巡ってややこしい事態となり笑、バランスも大事です。
その点、品ある高橋さんロレンツォと奥田さんキトリは納得いく親子ビジュアルでした。

梅澤さんはプロポーション綺麗なガマーシュで、異質ではあっても目で追ってしまう魅力あり。
結婚式ではロレンツォと、特にバジルのヴァリエーションではちょこっと嫉妬や厳しさも光らせながらしかし優しい眼差しで見守る様子も微笑ましいもので
またゴロンとした体型である設定ながら実は高度な身体能力の持ち主であるサンチョの藤島さんとの回転対決も会場を沸かせました。

主宰者・団長の井脇さんはジプシーの女でご登場。東京バレエ団時代キャラクターダンスの名手としても名高かった井脇さんのスペインものは
今観ても肌がざわつくような感覚がもたらされ、吸い寄せるパワーと哀愁の混ざり具合も絶妙でございました。
思い返せば東京バレエ団のブルメイステル版白鳥の湖以前の衣装が、いくら恐らくは昭和の頃からのプロダクションとはいえども
どうしたらこうにも垢抜けないデザインの連なりになるのかと仰天した記憶あり。ロットバルトのアップリケなど名物(迷物?)も語り継がれていましたが、
そんな中で井脇さんスペインの背中の柔らかさや颯爽、洗練された引き締めにどれだけ救われたことか忘れもいたしません。

今回バレエスタジオも合同公演にあたり様々な年代の生徒さん達が登場。とても幼い生徒さんは街の賑わいに親子として登場したり、
子供と大人の生徒さん達それぞれの見せ場を作って溶け込ませたりと工夫も盛りだくさん。
IBCのダンサーの見せ場と上手くバランスを図りながらの演出でした。夢の場は小さなキューピットさん達も可愛く活躍です。

全体通してコンパクトにまとめつつ見応えある仕上がりで、面白い工夫と思わせた演出の1つがバルセロナの街並みから野営地への舞台転換。
当然一瞬では転換できず、しかし休憩入れず観客の集中維持のまま実行するために舞台転換の最中にキトリとバジルのアダージョを追加。
暗闇な雰囲気のため転換にもちょうど良く、キトリとバジルがいよいよ大人ムーディーな空気へとまっしぐらな濃密感も時間軸として描写するうちに
野営地へ到着そして転換終了。とてもスムーズな工夫でした。
結婚式はキトリもバジルも白地に赤や金色が入ったABT風な衣装で、爽やかな華やぎが麗しいばかり。
最後は台の上に2人が乗り、子供達にも囲まれて紙吹雪がたくさん撒かれての楽しいおめでたいお祝いで締め括られました。

カーテンコールはまず代表の井脇さんが登場して中央に立たれ、以降は順々に敬意を払いながら出演者達を呼び寄せて立ち並ぶ光景が壮観。
カラフルな衣装の雲海がよく見渡せ、色鮮やかさを目に焼きつけながらの終演となりました。
ゲスト、IBCダンサー、幅広い年代の生徒さん達それぞれが楽しく活躍できる場面を盛り込んで一体感のある公演で、予想以上に満喫。気持ちよくシビックをあとにいたしました。




文京区のキャラクターです。目がキリッとしています。



終演後はキトリやバジルと同様に酒場へ。しかしスペインから英国へ!?両国の気分で、もしキトリ達が登場したらお馴染みの手拍子を取りながら迎えつつ飲みましょう!!



各劇場での遭遇率が高く、そして英国通なお三方と。うち、お2人は先月末に新国立ロンドン公演へ出向かれ、私もお世話になりました。
事前にパブ文化の魅力については話をお聞かせいただき、さぞ私も好むであろうとは想像しておりましたが期待以上。
とにかくパブでの過ごし方が性に合い、1人でも複数人数でもとでも居心地が良いと思えた次第。
ロンドンにて1人で2度も行ってしまうほど好きになったホルボーン駅近くのシェイクスピアヘッドについても語ってしまった。
アナザースカイに出演時は紹介したいくらい。いや、放送の影響で混み合ったらどうしようか。ご安心を、出演する機会なんて巡ってきません笑笑。
8/23にちょうど千と千尋の神隠しに関連してロンドン特集が放送されていました。



辛口な溶けるチーズ入りチップスを見せてくださった。味わってみるとワイン止まらなくなります。ドンキ並みに盛り上がる酒場であった。


2023年6月8日木曜日

月と地球の往復ファンタジー  バレエシャンブルウエスト「ルナ」ー月の物語かぐや姫 5月28日(日)




5月28日(日)、バレエシャンブルウエスト「ルナ」ー月の物語かぐや姫を観て参りました。
https://www.hachiojibunka.or.jp/archives/eventinfo/0528balletruna/


KAGUYA:柴田実樹
時の帝:逸見智彦
銀百合のしずくの精神:伊藤可南
長耳:土方一生
赤目:吉本真由美
月の帝:佐藤崇有貴
龍の頭:藤島光太
竹取の翁:西川古柳


序奏が始まるとまだ幕が開く前の段階から満天の星空が会場に投影され、宇宙に身を置いた気分。
やがて幕が開くと月の世界へ。王族や住民達の生活が描かれ、原作ではむかしむかし竹取の、と始まる以前の
心が廃れていたが故に栄養摂取のために地球へ送り込まれるかぐや姫の生い立ちの設定に興味津々に見入りました。

柴田さんのKAGUYAは何処かミステリアスで美しく、月の帝に対してもきっぱり意思表示をする姫。
地球へと行くように命じられたときは少し戸惑うも、いざ地球に降り立つと人々の中に溶け込みつつも、着物衣装がよく映え
頭1つ抜けた美もまた貴い身分をよく表していたと思えます。芯の通った踊り方も目に響き
昨年の『眠れる森の美女』に続き主演舞台を鑑賞でき幸せを感じた八王子の夕べでございます。
月世界からのお供としてうさぎさんも活躍。耳から頭にかけての頭飾りの形が
ボリショイ『ライモンダ』ジャン・ド・ブリエンヌの兜に似通っている気がしてならない私でしたが(銀色の丸い頭型の帽子にラディッシュが生えたような形ですが)
長耳の土方さんがぴょんぴょんと弾け跳びながら恭しく仕える頼もしいうさぎさんで、KAGUYAにとって心強い相棒であったことでしょう。
赤目の吉本さんの愛嬌と厚みの加わる踊りも味わいがあり、思えば長耳も赤目もうさぎの特徴をそのまま役名にしたのであろうと想像いたします。

KAGUYAと惹かれ合う時の帝の逸見さんは平安貴族の装束が絵になり、このまま百人一首の絵柄になっていても違和感皆無な雅やかさでしょう。
終盤にはパ・ド・ドゥであったか、跳躍も多々ある振付も軽やかな身のこなしで、衰えぬ身体能力に驚きを覚えた次第です。
KAGUYAとの別れはそれはそれは切なさが突き刺さり、最後の最後まで愛おしむように視線を向け
ついのKAGUYAが月へ帰ってしまうと佇んで光を静かに浴びる姿がいつまでも引き摺る余韻として刻まれております。

かぐや姫のバレエは国内外問わずバレエ化はされていて、その昔レニングラード国立バレエが来日公演で持ってきたときはびっくりしたものです。
また2021年に第1幕から披露し、今春に第2幕、そして今秋に全幕版としての上演が予定されている東京バレエ団の公演も注目度が高まっているかと思います。
シャンブルのルナでは衣装に着物デザインも取り入れてはいても押し出し過ぎず、全体がカラフルでファンタジックな路線。
婚礼の場なんぞ平安宮廷に洋物が混ざった華麗なる絵巻物で、ヴァリエーションもふんだんに用意され、
ディヴェルティスマンやかっちりとした様式美が連なっていた印象です。
KAGUYAのもとを求婚者が訪れる場も見どころで、4人の皇子がやってくるとのあらすじを読み
ローズならぬタルトならぬ「バンブーアダージョ」がお披露目かと脳内を駆け巡ったのは私くらいかもしれませんが
アダージョではなく持ち前のテクニック合戦。皇子達の名前も、槍、剣、弓、力、といった特徴をそのまま明記していて、
火花を散らし合いながら手にそれぞれの商売道具を持っているため分かりやすい。力の皇子の場合は岩を持ち歩いていましたがアピール効果はあったのか笑。

音楽は東洋を特別意識せず、華やか勇壮なクラシック音楽が目立ち、中でも婚礼の場におけるグラズノフの四季の使用は
幻想的に香り立つ華麗な宮廷との溶け合いがしっくり。和物とグラズノフがこうも好相性とは鮮烈でございました。
音楽構成は福田一雄さん、選曲は江藤勝己さんだそうです。

地球にやってきて生まれ変わった幼年のKAGUYA、竹取の翁と翁の妻は西川古柳座の人形遣いが操る八王子車人形が演じ、
人形遣いが1人1体ずつ持ち、車輪のついた踏み台のような椅子に座り小回りも自由自在に移動しながら人形芝居を展開。
写真で見たときは人間よりも随分小さいため果たして客席からどう見えるか少々心配もありましたが
竹の精のアンサンブルを背景にしたり囲まれたりしていると高く細長い竹林の中に身を置いている状態が実に自然で、これまた意外性に驚かされました。
バレエと伝統芸能、和と洋を掛け合わせた月と地球の往復ファンタジーの世界を満喫できた作品でした。

 


※実は鑑賞にあたり最初にあらすじをざっと目を通したところ、月から地球に降り立ち転生するKAGUYAの生い立ちにすぐさま浮かんだのは
漫画やアニメでも一斉を風靡した『美少女戦士セーラームーン』。漫画やアニメ通ではないため私も詳細までは把握しておりませんが
確か月と地球が戦争を起こし、月の王国の姫であるプリンセスセレニティが地球へと送り込まれて月野うさぎとなり
東京都港区の中学生兼セーラー戦士として生きていくのが始まりであったかと思われ、しかもお供には日本語堪能な猫のルナの存在もあり。
勿論関係性はないのでしょうが、7年前にまさにうさぎたちが生活していた辺りの地域での開催であった
六本木ヒルズで開催の展覧会に行ったせいか、重なる部分があると思えてならずでした。
尚管理人は愛野美奈子派であったため、うさぎちゃんの詳細知識はございません。気になる方はご自身でお調べください。




JCOMホールが入っている建物の中に八王子の郷土史料館があり、八王子車人形も展示。撮影自由とのことです。



帰りは八王子でシャンブルを鑑賞したときは大概立ち寄るお店へ。スパークリングワインで乾杯。



毎度ここでケーキを食すのも楽しみの1つ。今回は柑橘使った甘酸っぱいものを選択、名前は「初恋」とのこと。さっぱりと淡い甘さで美味しい。
お茶はジャスミン茶にいたしました。どこか中国の悠久な雰囲気なるポスターやプログラムに通ずる色彩です。
それはそうと、会場前のルナのポスター隣に掲示されていたのは舟木一夫さんのコンサート。
一度で良いので、『高校三年生』を生で耳にしてみたい。名曲です。
そういえば管理人がその年齢当時は日本の歴史に残るであろう大きなスポーツの祭典がございました。
東洋の魔女の頃か否かはご想像にお任せいたします。