2025年8月13日水曜日

いざ鎌倉!横浜バレエフェスティバル2025 8月3日(日)《神奈川県鎌倉市》







8月3日(日)、鎌倉芸術館にて横浜バレエフェスティバル2025を観て参りました。今年は神奈川県民ホールが閉館してしまったため、鎌倉での開催です。
芸術監督を遠藤康行さんが務められ、もう何度も開催されている伝統ガラながら横浜バレエフェスティバル自体は初鑑賞。
毎回アステラスか何かと重なっていて行けず、今回はキャストの面においても楽しみに参りました。
https://shiver.jp/yokohamaballetfes2025/


第1部は冒頭はガラの出演者達全員が代わる代わる登場しては見せ場の一部を披露。
薄明かりの中で踊られていた為、本舞台の第2部、第3部への期待感を膨らませる効果大です。
そのあとだったか(順番や記憶自信なく失礼)、コンクール上位入賞者や有望な若手で組まれたジュンヌ・バレエの皆様が登場。
ヴァリエーション数本と『眠れる森の美女』パ・ド・シスが披露され、特に眠りは癖なく素直な踊りを皆さんなさっていて、今後が楽しみな方々ばかりでした。

第2部第3部はプロによるガラ・コンサート。トップバッターは元アクラム・カーン・カンパニーの高瀬譜希子さん「Last and First Man」より抜粋。
手に長い筒状な手袋を嵌めていらして随分と不思議な印象が前面に出た作品でしたが解説によれば英国の哲学者で作家のステーブルトンによるSF小説が原作とのこと。
壮大な大地を思わす映像を用いたりと演出も工夫され、また小柄ながらそれらに負けぬ身体能力で魅せて行く高瀬さんのセンスにも見入りました。

「サタネラ」のヴァリエーションは7月の新国立劇場バレエ・アステラス2025で
同作品のグラン・パ・ド・ドゥを踊られたドレスデン国立歌劇場ゼンパー・オーパー・バレエの中島耀さん。
顔立ちも衣装も踊りも麗しさ一杯で、コンクールど定番のヴァリエーションをそれはそれは悪戯っぽい表情や華やぎを添えて披露してくださいました。

クリストファー・ウィールドン振付『シンデレラ』よりパ・ド・ドゥはイングリッシュ・ナショナル・バレエの加瀬栞さんとロレンツオ・ロセッロさん。
流れ行くようなパートナーリングでスライディングや大なリフトも万全。
しかも音楽と優雅に溶け合うような踊りで満たし、決して華やかな衣装ではなくても2人の呼吸の合い方に満足度大です。

「リトルブライアーローズ』よりパ・ド・ドゥは新国立劇場バレエ団の木村優里さん渡邊峻郁さん。2021年に日本バレエ協会公演にて全1幕版を初演。
以後他のダンサーも踊ってはいらっしゃいますが木村さん渡邊さんは今回2021年以来久々のお披露目です。
音楽は前半は2幕オーロラ姫の曲、後半はローズ・アダージョの曲使用の構成でとりわけ後半の完成度の高いこと。
デジレ王子がゴロゴロと床を寝そべり回転しながら登場し久々に観ると何と複雑なパートナーリングの宝庫でしょう。
しかも抜粋で久々上演で、先月まではロンドンでジゼル主演、つい前日までは国際バレエアカデミアのシェヘラザードに2日間出演なさった直後であっても
瞬時にオーロラと王子が織りなす不思議な世界へといざなってくださいました。
しかも疾走感も抜群、よほどの信頼感や盤石な技術が備わっていないと不可能な振付満載でしょうにどうやったらあんなに完成度高い舞台に仕上げられるのか、頭が下がり続けました。
ローズアダージョの曲は本来大人数の貴族や国王夫妻、4人の王子、オーロラの友人達や宮殿美術装置に囲まれてオーロラが踊る世にも華々しいバレエ場面でありながら
たった2人で、しかも初見者には摩訶不思議な衣装であっても笑、壮大な音楽に負けぬどころか超越するほどに世界観を踊りで表現していく技量にあっぱれです!
快活なオーロラがメキメキと王子に恋してリードし、王子はそんなじっとしていられないオーロラをガッチリ受け止めて一段と2人の情感が沸き上がる光景の迫力よ。
衣装はオーロラ姫はテカテカのかぼちゃパンツなスカート、デジレ王子はいつの時代のアイドルコンサートかと見紛う上下銀色スーツで、
髪型こそ2021年と違って木村さんはウィッグは付けず三つ編み1本、渡邊さんは髪を銀狼怪奇ファイル(お若い世代の方はご自身でお調べください)状態にせず
お2人とも黒髪のままではあったものの、衣装が奇抜この上ない笑。
渡邊さん、前日前々日はシェヘラザードでキンキラキン、この日はリトルブライアーローズでギンギラギンでございます。
全1幕版は男性が踊るカラボスやセーラームーン並みに正義の味方な強い妖精達も登場し、筒状の装置が降下したりと
謎めいた沈黙や振付も散りばめられていた記憶はあれど、是非このお2人での再演を待ち望んでおります

プレルジョカージュ振付の『ロミオとジュリエット』は津川友利江さん(元バレエ・プレルジョカージュ)とローラン・ル・ガルさん組(バレエ・プレルジョカージュ)。
解説によればジュリエットは上身分、ロミオは支配される身分の設定らしい。ロミオの格好がみすぼらしいのはホームレスだからとのこと。
衣装にはまずギョッとしてしまいましたが、踊り出すと歓喜と不安のジェットコースターな変化を全身でぶつかり合いながら歌い上げるお2人でした。

小池ミモザさんはソロでマイヨー振付の「Opus40」を踊られ、黄色い鮮やかな短いスカート衣装で、
切れ味良くダンスの幸福感を体現。スパッと拓いて行く空間支配力もパワフルなこと。
影山茉以さん奥村康祐さんは『眠れる森の美女』第3幕より。この日唯一の古典のグラン・パ・ド・ドゥで
儀式に臨むに相応しい威厳ある姫君と朗らかエレガントに支え踊る王子であった印象。 オーストリアの農村を舞台に繰り広げられる『騎兵隊の休息』はもしかしたら私は初見。(来週あたりにも鑑賞予定)
東京バレエ団の秋山瑛さん二山治雄さんが素早いテクニックが盛り込まれた振付を純朴さはそのままに達者に披露されました。

フィナーレはみんなで踊ろうテーマとヴァリエーションな振付で大団円。横一列に並んで手を繋ぎながらテーマ歩きで前方へ行進してくる光景は
本来のテーマ、、、とはかけ離れた衣装が大半のため、ユニーク且つ壮観で、高瀬さんは確か筒状の手袋をなさったまま、
シンデレラも村娘もギンギラギンスーツ王子も、皆さん衣装はバラバラであっても足並みは揃えて行進なさっていました!

上演時間も若手やエキシビション含めてそれぞれの部も長過ぎず、古典からコンテンポラリーまでバランス良く組まれた構成で大変面白く見応えある公演でした。




いざ鎌倉!小田急線で藤沢駅まで行き、始発で江ノ電へ。高校生以来の乗車です。 眩しい陽差しを背に走り出す街の中を想像しながらいざ乗車。



車窓から江ノ島が見えます。車内は意外と空いていると思いきや、鎌倉高校前で一気に大増加。
『不思議の国のアリス』新国立初演時にて現代ジャックのスニーカー音があまりによく響いていたがためにすぐさま脳内を巡った
湘南地域を舞台にしたバスケットボール漫画は私が想像する以上に世界規模で人気が高いと知った江ノ電車内でございます。
世界が終わるまでは、バレエ鑑賞から離れることはないであるうと、あれこれ思考が旋回です。



ロンドンと大阪以降、更に旅を愛するようになったしらかわん。鎌倉にも行きたがり、大仏さんと記念撮影。



大船駅前にて、大船海鮮食堂。



マグロ丼、いただきます!身がしっかり、食べ応えあります。暑日のためビールもいただきます。
アラ汁も量多めで癒される味わいです。ビール含めて1300円程度だったかと思います。並びますがお勧めです。



鎌倉芸術館玄関。青空が広がる1日でした。



冒頭で申し上げた通り横浜バレエフェスは今回初鑑賞ながら、派生のシリーズ公演はこのあと立て続けに2本観て参りました。
2本のうち1本は海を越えております。(ロンドンではありません)遅くならぬうちに更新投稿の予定。久々に「バリカタ」と発音した用事も合わせて紹介して参ります。

2025年8月11日月曜日

再演歓喜・金の黒奴再び!国際バレエアカデミア『シェヘラザード』『新世界II」 「白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ 8月1日(金)2日(土)




順番前後いたしますが(暫く続きます、、、)8月1日(金)2日(土)、新国立劇場中劇場にて国際バレエアカデミアバレエ団『シェヘラザード』
「新世界1」「白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを観て参りました。






『シェヘラザード』リハーサルや舞台写真多数掲載されています。リハーサルの金の黒奴、
黄緑色の鉢巻きをなさっていても訴えかけてくる押し殺した感情に心揺さぶられます。







「新世界II』
下校の音楽で馴染み深い第2楽章に森山直美さんが振り付けられ、3組の男女で踊られる作品。元々は小牧正英さん振付とのこと。
ゆったりたゆたうような旋律に落ち着いたオレンジ色を帯びた照明、3組が描き出す 軌跡が調和し染み込んでくる作品でした。


「白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ
東アジア文化交流プレゼンツとして、モンゴル国立オペラバレエ劇場のマラル・バットニヤムさんとバットボロル・アナンダさんがご出演。
パットラヤムさんオディールは強数な軸から繰り出すテクニックで魅せ、タメの効いた少々演歌調な踊り方も違和感ない仕上がり。
アナンダさんは技術と筋力がやや不安定な印象を受けましたが、恵まれたすらりと したラインは目を惹きました。




『シェヘラザード』
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
原振付:ミハイル・フォーキン
ニコライ・ミハイロヴィチ・ソコルフスキー
小牧正英
演出・振付:森山直美
補佐:ビャンバ・バッドボルド

ソベイダ:木村優里
金の黒奴:渡邊峻郁
サルタン・リアール:原田秀彦
サルタン・ゼーマン:観月ゆうじ
臣官長:ビャンバ・バッドボルド
シェヘラザード:刀祢平美咲
アラビアの老人:積圭祐


昨年2月に鑑賞し、同じ主演者による待望の再演です。木村さんのゾベイダは前回以上に女王ぶりが圧巻。
群舞を従えるときのオーラといい、練り上げられた踊りといいカラフルな群舞や舞台装置に囲まれていても埋もれぬどころか頂点に君臨する誇り高さをこれでもかと発揮されていました。
ただ身体ををくねらせるのではない、美しいメリハリの効かせ方も巧みで全身から音楽聴こえてきそうな妖艶さにも終始引き込まれっぱなしに。

渡邊さんの金の黒奴は登場の抑圧された苦しみを訴える、上身分の者達に対しても躊躇なく刃向かい、今にも噛み殺しそうな獰猛で鋭い表情がたまりません。
ゾベイダとの出会い、そして禁断の宴の牽引からのサルタン達に見つかって立ち向かう絶命する最期まで、パッション溢れる濃密な物語の余韻からなかなか抜け出せず。
更に張りのあるテクニックで場を浚うパワー、オーラにも圧倒され、後方に佇むときや歩き姿も含めて危うい色気を放ち、骨抜きにされました。
他の版に比較すると金の黒奴が踊る場や技巧の見せ場が非常に多い振付で、下手すれば派手に跳び回るだけの技術見せびらかし屋にとどまる恐れもあるわけですが
渡邊さんの場合役柄や物語をしっかり掘り下げていらっしゃるからこそでしょう。
ゾベイダへの低姿勢なお仕えからの心身を許し始めて解放させていく流れや、いよいよ狂おしく高揚する宴を 鼓舞しながら跳び回り、
縦横無尽に駆け回る王者感の双方の描写が綿密なのです。加えて周囲を歩く、移動する姿も役を生きたままでテクニックの僅かな繋ぎ目も滑らかで粗がない。
金閣寺も霞むであろう、足利義満もびっくりなキンキラキンな簾付き衣装もさまになっていたのも再度驚きでございます。
最期、サルタンに斬りかかろうと立ち向かう様子はリハーサル写真からするとちょいと弱そうとのご意見も聞こえましたが笑、決してそうは思わず。
目からギラリとした刃の如き炎を宿した気迫でぶつかっていっていた印象です。

前回公演時にも綴りましたが私は渡邊さんの虜になったきっかけが王子様貴公子系の役ではなく
トゥールーズ時代のベジャール版「火の鳥』リハーサル映像における貫禄や渋みを帯びた表現力と品格ある踊りや
「海賊』の暴君なスルタン、『美女と野獣』の屈折した心を露わに吐き出す野獣で野性味三部作と勝手に呼んでおります。
ですから、王子系ではない役柄は大歓迎で、ましてや金の黒奴はテクニックもさることながら物語描写や人物造形、掘り下げにも長けている上に
徹底した怖さや闇部分の吐露、狂おしく深みある表現もお得意な渡邊さんで観たいと願ってきた役柄でした。
昨年の出演配役発表や今年の早期の再演も万歳三唱で迎えたのです。
鑑賞前日の7/31、東大阪市の佐々木バレエロミジュリ会場にて携帯電話の待ち受け画面を気にしてくださった方がいて、
トゥールーズ時代の野獣について意気揚々と語ったばかりのタイミングでございます。
『ジゼル』ロンドン公演直後の日程ですから『シェヘラザード』ご出演は困難かと心配もありましたが配役発表時には大安堵。
今回も目に心に焼き付けて劇場を後にした次第です。

木村さん渡邊さんが紡ぎ上げる濃密な関係性も見どころで、視線の交わしで宿命を予期させる、誰も止められない近寄れない磁力での引き寄せ合いや
宴に興じる人々の後方にて目を逸らすことなく続く杯の酌み交わし、ガラでもよく披露されるパ・ド・ドゥも、単体で観るとさほど面白みを感じませんが(失礼)
出会いからの流れを汲んでやがて2人が吸い付くように踊り出す過程も緻密に描き出していらっしゃるため、俄然ドラマ性が濃く深いものに感じさせてくださいました。

バッドボルドさんの宦官長も忘れられず、身体に詰め物をしてほっくりと動き回る愛嬌と賑やかな場面展開を繋いでは締める双方の役割で大活躍。
サルタン達へ忠誠を誓いながらも彼らが出掛けると途端に顔が綻んで、ゾベイダ達からの宝石に目が眩んで遂に奴隷達の部屋の鍵を渡してしまうやりとりも
短時間の中に細やかな仕草でくっきりと立体的に会話を見せて、見ているこちらまでがそわそわと目が離せずにおりました。
更には芝居中心ではなく宴の最中にはバタンと両手をついて転倒したり、片脚でぐるぐると回転し続ける振付もあり
基礎技術や体幹が相当しっかり備わっていないとできぬ役柄でしょう。
主役を邪魔せず、されど舞台が何倍にも面白くなるよう舞台の縁を常に味わい深い表現で彩ってくださいました。
ゾベイダと金の黒奴の艶かしい禁断の絡みの最中にも後方で音楽に乗って杯を手に心躍らせる様子を示し、主役2人を一層引き立てるお姿に拍手でございます。
腕を掲げたり剣を一振りするだけでも緊迫感ある空気に変えていらした原田さんの存在も欠かせず、
寵愛するゾベイダと接するも、不機嫌なためによそよそしい雰囲気でゾベイダを制する様子も威厳あり。
その後、騒がしい宴と化すハーレム前の儀式的な光景を締まり良く描いてくださっていた印象です。
前回と同様にバッドボルドさんや原田さん始め、脇をベテランな方々の存在が作品の格を押し上げてより厚みある作品として成立していました。

群舞の踊りも衣装も色彩豊か。音楽のうねりと連動するも、流れされることなく強弱もしっかり付けられた踊りの連続で
殊に終盤は狂おしい渦に飲まれそうになるほど大迫力。観れば観るほど面白いスペクタクル作品と再確認です。
前回の鑑賞時にマリインスキー版をちらっと観てみたら、踊りの見せ場の少なさや唐突に登場する金の奴隷、
濃密な絡み多き振付の割にはドラマ性が薄い云々と物足りなさを感じてしまいましたが、国際バレエアカデミアさんでの上演版は鎖に繋がれた金の黒奴の抑圧された状況の訴えに始まり
ゾベイダと金の黒奴の出会いや宴の後方で始まる繰り広げる狂おしい禁断の愛の昇華、そして主役2人も群舞も華々しいテクニックの連鎖でダレる箇所が皆無。
隙がなく、全編通して瞬きが惜しい場面展開と唸らせました。

そうでした、今回初めて知ったのは冒頭に登場した奴隷達は金銀それぞれ違う色味の扉の中に入って行くこと。
金の部屋、銀の部屋、銅の部屋、と間取りされていて、金の黒奴は個室らしい。特異な位置づけの奴隷なのでしょう。
渡邊さん金の黒奴の顔つきを観るたびに、虐げられた奴隷であっても隠せぬ高貴な美しさから、
一族奇襲を受けた名家の生き残りで宮殿へと連行され、ただやられっぱなしで弱々しい印象はなく、復讐や脱出の機会を窺っている野心が覗き見えると
前回に続き勝手な想像が巡ったわけですが、それはそうとあれこれ想像を膨らませる人物の奥行き描画の巧さや表現の深さにはこの度も脱帽です。

リムスキー・コルサコフの音楽の魅力もたっぷり体感。魂を揺さぶる、神秘的な哀愁が大海原を駆け抜けるような壮大さに聴き惚れております。
バレエの中では海や船は出てこずとも、航海や難破も描いた旋律がこうもバレエの場面1つ1つにぴたりと嵌っていて今も不思議な感激が募るばかりです。

私にとっては7/24から7/27まで新国立『ジゼル」ロンドン公演5回鑑賞し、7/31には東大阪市で佐々木 美智子バレエ団『ロミオとジュリエット』を鑑賞した翌日からの連続鑑賞日程ながら
パッション溢れる作品を西と東で3日連続で鑑賞した興奮と歓喜が今もわき上がってくるほど。
そして渡邊さんの変わり種な役をもっと観たくなる欲が益々強まった2025年8月月初でした。
偶然ですが同版の金の黒奴は、7/31の佐々木美智子バレエロミジュリ振付演出を手がけられた、数々の舞踊界の大きな賞を受賞なさっている篠原聖一さんも嘗て踊っていらっしゃり
東と西の離れた地域での3連続鑑賞の不思議な嬉しい繋がりに喜びを抱いております。

歓喜に沸いた早期の再演でしたが早くも次の再演を待ち焦がれております。
小牧正英さんがご覧になっていたらどんな感想をお持ちになったか、聞いてみたいものです。



※昨年時の感想から再紹介。昨年の公演期間中に小牧さん及び日本バレエ黎明期の話題になったとき、
小牧さんの金の奴隷映像は残っていないであろう云々口走っていた私ですが、映像を見ておりました。
2016年に夏に世田谷区の貝谷バレエのスタジオで開催された『白鳥の湖』全幕日本初演を振り返るシンポジウムにて、見ていたのです。
重厚で豪胆、オーラに呑まれそうになった、等とメモを残しております。
黎明期当時を知る方々がパネリストとして集結してぶっ飛びエピソードを次々と語られ、(失礼ながら小牧さんの弱点には笑ってしまったが)
しかも会場は実際に稽古が行われていた世田谷区の貝谷バレエスタジオ。
小牧さんや島田廣さん、松尾明美さんや服部智恵子さんらの情熱を感じ、息遣いが聞こえてきそうな大変実りあるシンポジウムでした。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-ea00.html





写真は2016年に貝谷バレエ団スタジオで開催シンポジウム参加時配布資料です。
日本バレエ界黎明期に昔から関心持つ者として白鳥の湖全幕日本初演当時のお話を伺えたり、
小牧正英さん主演シェヘラザード映像(炎の如し情熱の塊なテクニシャンな印象)も鑑賞できたりと大充実内容でした。錚々たる顔ぶれが集結です。




8/1は丸亀製麺の日とのこと。オペラシティに通い詰めていながら初めて知り、一部メニューは半額です。



金グッズで気分を高めていきましょう。



椿屋珈琲にて、この度もいただきました金のチーズケーキ。表面がキラッと見えてきました。



拡大




8/2ハブの日とのこと。ビールでキンキラキン。
小牧正英さんの炎の如き情熱の凄まじさ、篠原聖ーさんの端正な中の不思議な魔力宿る金の黒奴の写真にも引き込まれ、同じ役を渡邊さんが踊られたこと、再び嬉しさ込み上げます。



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2025年8月5日火曜日

灼熱のダブル・ビル 佐々木美智子バレエ団『ロミオとジュリエット』「ESPRIT de corps」7月31日《東大阪市》




順番が前後いたしますが7月31日(木)、東大阪市にて佐々木美智子バレエ団 篠原聖ーさん版「ロミオとジュリエット」「ESPRIT de corps」を観て参りました。
篠原さん版ロミジュリ全幕は2006年に東京にて下村由理恵さん山本隆之さん主演で初鑑賞。
パ・ド・ドゥのみ抜粋では下村さん山本さんペアで2008年に高松市と渋谷区で行われたガラにて拝見。
その後2016年に佐々木美智子バレエ団公演にて全幕を下村さん、佐々木大さん主演で鑑賞し、全幕としては今回が3度目の鑑賞でございます。
https://sasaki-michiko-ballet.cloud-line.com/_m/


https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12920121480.html


インスタグラムにも関連写真多数。どうぞご覧ください!



ロミオ:今井智也
ジュリエット:佐々木夢奈
運命:佐々木大
ティボルト:北井僚太
マキューシオ:佐々木嶺
ベンヴォーリオ:小森慶介
キャピュレット公:山本隆之
キャピュレット夫人:杉原小麻里
乳母:河森睦生
モンタギュー公:奥田慎也
モンタギュー夫人:堤本麻起子
パリス:今井大輔
ベローナの大公:アンドレイ・クードリャ
僧ロレンス:丸山陽司



夢奈さんのジュリエットはあどけない少女の殻を破って恋を貫く過程を大胆に美しく表現。
実のところ、キトリのような溌溂とした町娘或いは純クラシックのお姫様なら馴染みもあり想像しやすく感じておりましたが
究極のドラマティック作品のジュリエットはどうだろうかと、なかなか想像できずにおりました。
しかし、篠原さん版の特色でもある冒頭プロローグにて光を浴びて暗闇にぽっかりと現る姿からして恋する喜びを胸にしなやかに踊るジュリエットそのもの。
乳母と戯れるときの悪戯っ子な笑みも可愛らしく、そうかと思えば結婚を言い渡されパリスと出会ったときの戸惑いや
ロミオとの出会いで不思議そうにじっと見つめ合い恋焦がれていく様子も手に取るように伝わってきました。
両親からの結婚命令に背こうと奮闘するときも、倒れ込んでも決して強さを絶やさぬ意思が見え、
1人ベッドに縋りながら命がけの行動を取ろうと決意と覚悟を滲ませる姿は身体の奥底から叫びが静かにされど熱く響いてくるひと幕でした。

今井さんは2017年に篠原さん版ロミジュリでロミオ役を経験されているそうで、最近お見かけしたのは東京文化会館での上野の森バレエホリデイにおける
ジゼルになりきって花占い企画のアルブレヒト役でしたが(別イベントへ行く道中に開催していて野次馬の如く見物しておりました)
更に青年らしくなっている気すら覚えるほどに若々しく、上品で少しおっとりしたロミオとして出現。
マキューシオ、ベンヴォーリオと並んでいると賑やか仲良しトリオであっても何処か別世界にいるような温和な雰囲気もあり、
だからこそ敵対する家の令嬢との恋に突っ走ってしまうという周囲からは到底予期できぬ行動への飛び込みも観る者に一段と衝撃を与えたと捉えております。

見せ場の1つ、バルコニーのパ・ド・ドゥは息が少し合わなかった箇所もあったか、僅かにぎこちなさが目に残ってしまったものの
思えば篠原さん版ロミジュリにおけるジュリエット役を下村さん以外のダンサーが務めるのは夢奈さんが初と思われ、その重圧は計り知れなかったことでしょう。
また全幕とパ・ド・ドゥ抜粋を鑑賞したのはたった4回とはいえ、また当時は今のように動画も活発に残されていない時代ながら
下村さんジュリエットの水を得た魚のような、ごく自然にお喋りするように柔らかさも鋼のような強さも自在にメリハリの効いた踊りや表現から繰り出す
ポーズ1つ1つが未だ刷りに刷り込まれており、この記憶を跳ね返すのは容易でないはず。
更には今回気づいたのだがバルコニーの振付は疾走感もありつつ適度にクラシカルでカチッとしたポーズが盛り込まれ、
そのバランスを図りながら恋するときめきを保ちつつ息ぴったりに踊りこなすのは非常に高難度なテクニック、空間使いのセンスを要すること。
そんな恐ろしい重圧を一切感じさせず、夢奈さんと今井さんが臆することなくスピード感たっぷりに
恋の歓喜を丁寧に歌い上げていらしたパ・ド・ドゥに心からの拍手を送りたい思いでおります。

舞台を司り、或いは脇を固める重鎮やベテランな方々の存在も忘れられず。
全編通して舞台の行方の鍵を握るように操っていらした大さんの運命の、
時に支配感を前面に出して観客を不気味で不思議な世界への引き込むかと思えば
登場人物達に忍び寄り、次の展開を示唆する役目も担当。しかも出過ぎずに存在感を示して舞台を取り纏めるお力が何ともずば抜けていらっしゃること!
また終始半裸ながら、ジャクソンで入賞なさった頃に掲載されたダンスマガジンでのアクティオンのカラーグラビア彷彿な若々しい肉体にも驚愕です。

そして山本さんキャピュレット公はグローブ座やイタリアの歴史大河ドラマに登場なさっても違和感無き美しさと重厚感!
ちょっとした仕草や歩き方1つで空気の色が変わり、杉原さんのキャピュレット夫人の艶やかなオーラ、
しきたりと娘への愛情の板挟みに苦しんでいるであろう3幕の嘆きも脳裏に焼き付いております。
後にも紹介して参りますがつい先日までロンドンのシェイクスピアなパブに入り浸っていたため、感じ入るものがありました。

意外性に驚かされたのは嶺さんのマキューシオ。端正爽やかなイメージが先行しておりましたが、
お茶目な面から鋭い強面ティボルトをサラッとあしらう危なっかしさやカッとなりやすい噴火体質な面まで多彩に軽やかに表現されていて、一癖ある役柄の似合いっぷりに拍手。
そんな一癖も二癖もあるマキューシオやティボルトに常にきっちり対応しようと奔走する小森さんベンボーリオも目に留まり、
この人がいなければマキューシオは無茶が行き過ぎてもっと早期に命を落としていたのではと思います。

先月東京でのバレエアステラスでは近現代イタリアに舞台を置き換えたロミジュリパ・ド・ドゥを踊られた北井さんのティボルトの俊速に刺さる恐怖感もお手のもの。
登場し目を見据えるだけでも冷ややかな空気が増し、身体のラインも踊りも綺麗なため見映えも十分にあり目を惹きました。
賑やかな広場をぐっと引き締めていらしたのは杉前玲美さんのジプシー。何かと隊長ポジションにいらっしゃるイメージがありますが今回も頼もしいリーダーとして君臨し
上階の後方から双眼鏡無しでもぐいぐいと迫り来る踊りにこの度も魅了されるばかりでした。

それから挙げずにいられない要素が照明や装置。篠原さん作品は照明工夫秀逸で、今回はあえて3階から鑑賞したほど。
両脇に黒階段があるだけのシンプル装置ながら可動させてスケールある舞台転換に貢献し
舞踏会では燭台蝋燭を階段に並べて動かして貴族のコールドが蝋燭達と連なるような光景の麗しさも見事でした。
お屋敷の縦長な窓の格子のシルエットが縦に伸びた床照明や、冒頭のロミオとジュリエットそれぞれを暗闇の中で照らす見せ方も効果をより体感。これからも再演重ねて欲しい版です。

同時上演の「ESPRIT de corps」タンゴをテーマに黒い衣装姿のダンサー達の次々と変わりゆくパートから目が離せず。
プリンシパル役は佐々木須弥奈さん北井さん。スリット入りの赤いドレスで颯爽と現れた須弥奈さんの色気、切り換え巧みな踊り方も洗練されていて感激。
英国ロイヤルでの躍進も嬉しい限りです。北井さんとのペアは息も合い、主軸に相応しい統率力でした。
タンゴに大作文学、ともに灼熱なエネルギーを感じさせる佐々木バレエらしい魅力満開なダブル・ビルで暑い熱い7月最終日を彩る公演でした。


※マキューシオを好演された嶺さんが明日8/6に福岡市で開催されるSHIVERガラにご出演。福岡市民ホール中ホールです。
訳あって私も観に参ります。公開センターレッスンもあるとか??
少人数ガラのためバレエ団の公開クラスレッスンよりも一層くっきり観察できそうか。出演者は女性4名、「男性2名」。共演楽しみでございます!
https://nanatsu-dougu.jp/ybc/shiver2025_fukuoka_sp.html



午後半休を取り、昼下がりに東京駅到着。暑い日でしたので、昼からビールで酒盛りです笑。
新幹線は利用するとしたら大概は早朝出発便のためお店の多くは営業開始前。
しかし今回は昼頃でしたので通りかかった東京駅構内のパン屋さんにてビールに合いそうなチェダーチーズ、ハラペーニョ入りのピリ辛ツナサンドイッチを購入。ビールが進みました!
先月末に新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演へ一緒に行き仲良くなったミャクミャクさんとしらかわんも今回も同行。
ミャクミャクさんは親族が大阪万博にて購入、今回はちょこっと里帰り。
大阪訪問は初となるしらかわんは福島県白河市のキャラクターで私が2022年に新白河駅にて購入。



新大阪には16時頃到着。昼の東京より夕方の大阪の方が遥かに暑く、新大阪下車時には蒸し風呂に思えたほど。しらかわんもびっくりしているようです。



なんばで近鉄線に乗り換えのため、ちらっと道頓堀へ。しらかわん、派手な看板に衝撃を受けているようです。
白河市にはこういった街並みはないとのこと。ミャクミャクさんは久々の里帰りに興奮。
それにしても尋常でない暑さのせいか観光客も減少気味に思えました。



反対側、観覧車!



会場



会場内のライブラリーカフェにてティラミス。うさぎさんが本を抱えている可愛らしい絵です。ひょっとしてシェイクスピア文学に夢中なのかな?



ティラミス上から。



ロビー。広々としています。



帰り、余韻にどっぷり赤ワイン。



ロンドンの大英博物館近くにて。文学の絵が色々。ロミジュリのあらすじ紹介な絵もあります。



今年7月末の新国ジゼル鑑賞ロンドン滞在にあたり、佐々木バレエ団関係者のロンドン通なお方より事前に細かく助言をいただき大変お世話になりました。

ロンドンのロイヤルオペラハウスから徒歩7分くらいの場所にある地下鉄ホルボーン駅そばのパブ、シェイクスピアヘッド。
シェイクスピアなパブを探していたらホームページを発見。しかしガイドブックやネット上でもあまり見掛けず知名度は控えめかもしれませんが
地元の方々で程よく賑わっていて奥に長く広々とした空間が広がり、居心地の良いお店でした。
店内はシェイクスピアの絵や関連作品の絵がたくさん!
新国立ジゼル初日前日に舞台版「となりのトトロ』を観劇後に宿への帰り道にて利用し、夜の1人利用でも安心感があったため気に入って帰国日の朝には朝食利用いたしました。
朝食メニューも豊富で、トーストのみメニューもあり。この界隈ではお手頃価格かと思います。
尚、似た名称の店舗がオックスフォードサーカスにもありましたが、繁華街ど真ん中に近いせいか観光客で大盛況でした。



舞台版となりのトトロ鑑賞帰りにて。



ビールサーバー近くにもシェイクスピアの絵。



帰国日の朝、次の鑑賞は大阪でシェイクスピア作品やねん、と脳内を過ぎりながら味わった朝食です。


2025年8月3日日曜日

涼しげで幻想的な舞踏会ハイライト 小林紀子バレエシアターミックス・プロク 「レ・ランデヴー』『シンデレラ・スウィート』7月20日(日)







7月20日(日)、小林紀子バレエシアターミックス・プログラム『レ・ランデヴー「シンデレラ・スウィート』を観て参りました。
https://www.nkbt-tokyo.com/performance/127mixedprogramme/


「レ・ランデヴー』
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:ダニエル・オーベール
プリンシパル:真野琴絵 八幡顕光

女性は丸みあるリボンを頭のてっぺんにのせて白く長めのチュチュ、男性はシフォンのブラウスで白色で統一。
振付は細かくキュッと可愛らしい仕草が詰まり、ちょっとした駆け引きもチャーミングでお洒落な仕上がりです。
男性陣は賛助出演者も多いため難しい課題かもしれませんが整列して踊るときはもう少し揃うと尚よろしいかと。
装置の門はケンジントンガーデン彷彿との解説で、興味津々で見学に足を運べるかと思いきや先月は残念ながら行けず。



「シンデレラ・スウィート』
振付:アルフレッド・ロドリゲス
改訂振付・演出:小林紀子
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
シンデレラ:廣田有紀
王子:望月一真
道化:八幡顕光
背の高い義姉:廣瀬陽
背の低い義姉:川合+夢
春:濱口千歩
夏:武田彩希
秋:三浦舞
冬:中村悠里


2021年の改訂版上演にて初めて鑑賞し、好きになった作品。元々は1990年頃に制作され、
稲村真実さんのシンデレラが重厚な襷付き衣装を着けていた写真があったかと記憶。恐らく衣装も2021年に一新だったかと思います。
舞踏会に四季の精たちのソロも織り込んだ凝縮版で、そこへシンデレラの到着を皆で迎え入れる場面へ。
パステルカラーのベールに包まれるような幻想的な涼やかさ覆い、夏空の初台にて納涼気分でございます。

シンデレラの廣田さんは指先脚先までコントロールが行き届き、艶っぽさも香る美しいヒロイン。
オフホワイトなチュチュに繊細な装飾たっぷりな衣装負けしない踊りの麗しさにもうっとりです。
王子の望月さんは技術が大安定ではなかったものの、プロポーションは良く軍服風な衣装も似合い、存在感やサポートの安定感は備えていらっしゃいました。
四季の精達が皆さんレベルが高く。全幕(例えばアシュトン版)と違って背景も変わらず、お小姓もおらず、
宮廷の中でそれぞれの季節を踊りのみで表現しなければならない制約がある中で見事なこなしっぷり。
とりわけ秋の三浦さんの捻りの効いた身体の使い方、冬の中村さんの決して派手ではない旋律の中で音楽の強弱を自在に身体で表していく職人な見せ方が素敵。
7人構成のスターズ達の淡い水色チュチュが織りなすキラリと涼やかな空気や、
四季の最中やシンデレ今到着時の照明の落ち着いた色合いやファンタジックな雰囲気も気分を高めてくださいました。

八幡さんの道化は髪が雄鶏のような真っ赤な色味でびっくりするも、絵本の挿絵に出てきそうな格好に思えてきて違和感も薄れ、楽しい宴を盛り上げる活躍。
12時が近づき、シンデレラがガラスの靴を落として走り去っていったところで終了ですが、
舞踏会の中に四季やスターズ、そしてシンデレラと王子のパ・ド・ドゥが盛り込まれているため見応えはしっかりとある演出です。
再三申し上げてしまいますが、とにかく落ち着いた且つファンタジックな照明や四季、スターズ達が綴る涼しげな雰囲気が
35度超え続きの時節柄たいそう身に沁みて、幸せな納涼気分を味わえました。




英国関連の文字多きプログラム。いつもなら英国の流れを汲んでいる
小林シアターならば当然と思いながら目を通しておりますがこの時期は諸事情によりそうもいかず。



プログラム



夏空!窓ガラスにも青空!



バースデーサービスパンケーキを食べて参りました。 サービスとはいえこの華やかなボリューム、嬉しうございます。 ところでシンデレラ・スウィートとカタカナ表記されていますがスイートではないのかと少々疑問。しかしパンケーキがめでたく甘く美味しかったので良いか笑。



ケンジントンガーデンへは行けずでしたが、(近距離にあるV&A博物館へは行ったのだが)バッキンガム宮殿へは足を運んで参りました。
7/23お昼頃に当方撮影。

2025年8月1日金曜日

所属団体ならではの作品の嬉しいお披露目 バレエ・アステラス2025 7月19日(土)






7月19日、バレエ・アステラス2025を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/asteras2025/

※プログラム等はホームページより


第1部
『トリプティーク~青春三章~』
振付:牧 阿佐美
音楽:芥川也寸志
出演:新国立劇場バレエ研修所

新国立劇場バレエ研修所研修生達による上演。これまで何度も上演を重ねている牧阿佐美さん振付の伝統作品です。
歯切れ良くも風変わりな哀愁感が刺激を誘い、生演奏で聴けることも上演のたびに楽しみでおります。
研修生達の癖のない伸びやかさや清々しさが前面に出る作品で、中でも小寺夏鼓さんの強弱をしっかりつけつつ空間使いやアピールの上手さも目を惹きました。


『サタネラ』よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:チェーザレ・プーニ
出演:中島 耀 (ドレスデン国立歌劇場バレエ)、モイセス・カラーダ・パルメロス (ドレスデン国立歌劇場バレエ)

今回数少ないクラシック作品の1本。中島さんは安定した技術の持ち主で、発表会でも頻繁に踊られる王道パ・ド・ドゥながら華やぎある見せ方で魅了。
パルメロスさんは少し踊り慣れていない様子にも見て取れましたが、晴れ晴れした姿で中島さんを支えていらっしゃいました。


『アンナ・カレーニナ』よりパ・ド・ドゥ
振付:ユーリ・ポソコフ
音楽:イリヤ・デミューツキー
出演:金澤優美 (ジョフリー・バレエ)、清沢飛雄馬 (ジョフリー・バレエ)

プログラム解説によれば、キティとリョーヴィンを描いたパ・ド・ドゥとのこと。
2人とも質素な身なりながら(キティは可愛らしいピンクのワンピースだったかも)
豊かなときめきが舞い上がる感情が踊りに現れ、カーテンの降下だったか、空間が力強く動き出しそうな演出も目を奪われました。


『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル
出演:ジェシー・ドーティー (ヒューストン・バレエ)、アクリ士門 (ヒューストン・バレエ)

良くもそうでなくてもアメリカンなパ・ド・ドゥに。ドーティーさんは浮遊感は今ひとつで妖精には見えづらかったが、音楽にはよく乗っていて、
アクリさんの瞬発力は見事。全体通して大味に見えてしまったが、健やかな風味はそれはそれで魅力に映ったかもしれません。


『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:クシシュトフ・パストール
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:チョン・ジェウン (ポーランド国立歌劇場バレエ団)、北井僚太 (ポーランド国立歌劇場バレエ団)

プログラムによれば、舞台を20世紀のイタリアに移し、1幕はムッソリーニのファシズム台頭期、2幕は50年代の政治テロ、
終幕は90年代ベルルスコーニの社会分断を描いているとのこと。全編で観たくなります。
所謂バルコニーのパ・ド・ドゥのため恐らくはファシズ台頭期の若者の叫びを描写していると思われ
白い現代風のシンプルな格好をした2人のユニゾンの疾走感や密度の濃さ、
ただ恋い焦がれるだけでなく自由か何かを追い求めるように訴えかけるパワーも強し。今回のアステラスの白眉の1本です。


『Within the Golden Hour』よりパ・ド・ドゥ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ヴァイオリン演奏:城戸かれん(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ゲスト・コンサートマスター)

高田さん、平野さんの舞台はそう多くは観ておりませんが古典よりもネオクラシックな作品のほうが抜群の身体能力といい良さが出ていそうと想像。
内側から沸き上がる香りを指先脚先から放ち、キンキラキンとした衣装(と記憶している)とは相反するしっとりした動きや
平野さんの磐石の支えで高田さんの脚がスラリと伸びてこを描いて行く面白い変化球なパートナーリング振付にも注目が止まらずでした。



~休憩~

第2部
『ゼンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校

『ナポリ』よりパ・ド・シス
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校

世界のバレエ学校枠として独自の創作だったり、次世代の星といった人材を一足早<目にできる楽しみが毎回あっただけに今回は今ひとつ印象なし。
(パリ・オペラ座好きな方、すみません)
ただゼンツァーノもナポリも、清々しく初々しい魅力がしっかり出る作品であるとは思っております。
ゼンツァーノのコーダにて、男性ソロの前半における鉄琴部分が鐘の音の如くしっかり鳴っていたのは嬉しい。


『Take Me With You』よりデュエット
振付:ロベルト・ボンダラ
音楽:レディオヘッド
出演:野黒美茉夢 (西オーストラリアバレエ)、フリオ・ブラネス (西オーストラリアバレエ)

これといったストーリーはなさそうであったが、野黒美さんとブラネスさんの身体の躍動がみるみると加速したり、
ゆったりと絡み合ったりと変化に富んだ振付をつい目で追ってしまう作品。あっという間に終わってしまった感があるほど。


『コッペリア』第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:アルテュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:升本果歩 (ノーザンバレエ)、石井 潤 (ノーザンバレエ)

升本さん石井さんともにしっかり美しい技術を備えていただけに、演目が王道過ぎたか印象に残りづらかったかもしれません。
ノーザンならでhの作品も観たかった気がいたしますが端正で微笑ましい祝福感いっぱいな雰囲気は宜しく、全幕を観た気分に。


『シンデレラ』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:スタントン・ウェルチ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:藤原青依 (ヒューストン・バレエ)、チャン・ウェイ・チャン (ニューヨーク・シティ・バレエ)

藤原さんの往年の女優彷彿なヒロインでシンデレラの新しい像なのか艶めかしく魅了。2人で舞台を縁側のようにして腰掛けたりと珍しい光景の連続でした。
チャンさんの王子はみえない秘書らしいのだがサポートは超絶に冴え渡り、片手で斜め回転させる腕前に驚愕。
満天の星空の広がりもロマンチックな雰囲気を後押しです。


『アスフォデルの花畑』よりパ・ド・ドゥ
振付:リアム・スカーレット
音楽:フランシス・プーランク
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ピアノ演奏:巨瀬励起、滝澤志野

背中の動きからして遠目に観ていても音楽と溶け合って感情が伝わってくる序盤から釘付け。
2人で繊細に紡ぎ上げながらクラシックから少し枠を出たユニークな動きもこなしつつ大らかに花を開かせるように舞台を満たしていく美しいパ・ド・ドゥでした。


〈フィナーレ〉出演者全員


夏場はガラが多々ある中でバクランさん指揮でのオーケストラ演奏付きはいたく嬉しく、しかもチケット代金もお手頃。
フィナーレはグラズノフのバレエの情景よりポロネーズで、格調高く華々しい旋律に毎回聴き惚れております。 時々曲が変わることもありますが、このポロネーズの高揚感は格別です。
また所属団体ならではの特性ある作品を目にできるのも強みなガラであると思っております。
しかしこの手の帰国系ガラが乱立し、アステラスが始動した頃の2009年に比較すると大増加。
今年も不安は的中し、上階はガラガラでエリアによっては1列にぽつんと一軒家状態での鑑賞でした。
来年も2日間構成でしかも夏の競争率最たる日程であろう8月最初の土日とのこと。宣伝方法は工夫必須です。




2019年アステラスポスター。テクニック炸裂バジル懐かしい。



2022年アステラスポスター。忠臣なアリ、懐かしい。



真夏日でしたので冷やし豆乳担々麺!レモンも搾り爽やかに。



都庁と、ゆずもびっくりな夏空。初台を本拠地するダンサーの方々がロンドン公演に向けて渡航し始めた頃。初台の夏空が熱く応援しています。



帰りは毎度のところにて、大阪から出張とタイミング合い鑑賞なさった方と。
(ヤングガラ宇宙作品振付者と同じスタジオに子供の頃から社会人になった今も通っていらっしゃいます)
渡英経験2度おありで、知識豊富!



2杯目!



ゲストのお2人、高田さん平野さんの本拠地ロンドンの英国ロイヤルオペラハウス。
現地時間7/22の20時頃当方撮影。夜の時間帯でも青空が覗いていて不思議な天気でした。

2025年7月29日火曜日

ベテランの力を借りてコンテや新作も上演し才能発掘新国立劇場バレエ団 Young NBJGALA 2025 7月12日(土)昼夜13日(日)




不思議の国のアリスの舞台国へ行っていたため更新が遅くなりましたが、
7月12日(土)昼夜13日(日)、新国立劇場バレエ団 Young NBJGALA 2025を3回観て参りました。
投稿終える頃には都内にいる予定でおりますが、今この記事の続きを帰国便にて書いており汗、表示されている時刻にギョッとしております。
(ただでさえボケが多い管理人に時差ボケが加わる事態に汗)
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/young-nbj-gala/


海賊よりグラン・パ・ド・ドゥではメドーラの堀之内咲希さんが初回から堂々とした度胸でお披露目。トップバッターでまだ会場も温まっていない、
しかも普段は主役級ダンサーが踊る作品であり本公演でもそこまでまだ役が付いていないながら溌剌と涼やか、美しいクリアな踊りで魅了です。
清らかな品もあり、ニューイヤーやアステラスでお馴染みの水色のキラッとした衣装もとてもお似合いでした。後方には海が見えた気すらいたします。
森本晃介さんはアリスでは芝居中心の陪審員のみに出演なさっていたため怪我明けかと思われ、
途中で体力が切れてしまったのか回転にてバランスが崩れかけてしまったりとご本人も少々悔しい心残りがあったかもしれません。
しかし恵まれた体で伸びやかなラインの持ち主で本来は端正な味があるはず。次は魅せてくださることでしょう。
森本さんといえば、昨年だったかWeb上でのアーティストダンサーインタビュー連載にてご当地くまのぬいぐるみ集めがお好きとのご発言に驚くも、
余りに幸せそうに鮭を持つくまさんとアイヌ衣装のくまさん(どちらも北海道版)を紹介なさっていた様子の印象が今もあり、
きっとパディントンかテディベアをロンドンでお買い求めになっていたのでしょうか。


「ラ・シルフィード』は東真帆さんと李明賢さん。シルフィードの東さんは人間ぼさが完全に消えた、かといって冷たいのではなく愛らしい魅力いっぱいのふわりと舞う妖精。
仕草も表情の付け方も細かく丁寧で、初回だけ中盤辺りのソロでやや息切れ気味な印象はあったものの捻りある回転を始め
難度の高いテクニックも盛り込まれていながら2回目3回目は終始キュートに飛び交う妖精さんでした。
ジェームズの李さんは笑顔と跳躍に身体でにっこりと語りかける力が強く、ジェームズも妖精だったっけ?と疑問が過るほど滞空時間長く脚捌きも鮮やか。
2人が紡ぐ繊細で初々しく愛らしい恋物語、たった数分のパ・ド・ドゥ抜粋であっても満喫でございました。

「白鳥の湖」黒鳥は、本公演では着実に役が付き華々しいテクニックで毎回沸かせてくださっている花形さんが大緊張だったのか調子が今ひとつ出ず。
これまでのいつも磐石安心感なイメージから、フェッテでヒヤリとさせられてしまうとは意外でしたが3度目は肩の力も抜けて決めどころもよく決めました。
3本の中では時間も長く技術もパートナーリングも最も難しい振付でしたがもっと本領を発揮できると思っており、次に繋げていただけたらと思っております。
仲村さんは公爵夫人から王子様に変身。きっちりマナー良き、そしてお人好しそうな王子様。
オディールが黒い光をガンガン放っていてもピュアな笑みで応え続けるほど、一途さが伝わるパ・ド・ドゥでした。アダージ当部分のサポートはもうひと頑張り!


O Solitude
中村恩恵さん振付のソロ作品。以前に宝満直也さんと五月遥さんが踊っていらっしゃり久々の再演です。
中島瑞生さんは儚く白い夢を描くようなしっとり感。対する大木満里奈さんは静けさの中で雄弁に饒舌に語り尽くす踊りやポーズの繰り出しに驚嘆。
手や脚を掲げる差し出すその先を更にぐっと深く入るように空間を描画なさっていて、身体から歌声を奏でて引き込む姿に舌を巻きました。
本公演にて大人な役柄やキャラクター系の踊りにおいても是非配役されて欲しいダンサーです。


Theory of Reality<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>

2024年のアラジンを最後に退団され、今年はアリスのマッドハッターで再び登場された福田圭吾さん振付の世界初演作品。
宇宙をテーマに星空や幕の降下も用いたり、最初から暗闇で何組もの男女ペアの群舞が舞台を所狭しと踊る迫力も面白く、
途中に山本涼杏さんと思わしき女性ソロにおける股関節もダイナミックに生かした身体能力の高さも驚嘆。

主役はダブルキャスト。大木満里奈さんのLUNAはクールにされど大きく四肢を操りながら近寄り難い威厳ある存在感を造形。
Roverの渡邊拓朗さんは豪快に斬り込むパワーで魅せ、そうかと思えばThe Science に追い詰められていく様子も色濃く描写されていた印象です。
もう1キャスト、吉田さんのLUNAはしっとり柔らかな透明感な輝きが全身から放たれる存在で、森本亮介さんRoverのシャープ入り込むテクニックの切り出しもお手のもの。

そしてヤングではない(失礼)ベテランが華を添えたのがThe Science。渡邊峻郁さんは歪んだ、謎めいたいかれ具合と狂おしい征服欲を吐き出すが如く身体を俊敏に且つ捻りの効いた動きもスピーディーに自在に披露。
真っ黒ではない僅かに透ける茶色のサングラスをおかけになっていたせいか、もうラピュタのムスカにしか見えず
容赦なく拓朗さんRoverを追い詰め背後から手を握らせる様子なんぞ、シータの幽閉と引き換えにパズーに金貨を持たせるムスカの場面に思えてなりませんでした笑。 (ラピュタネタ、オタクな内容が続き申し訳ございません)
もう1人のキャスト、米沢さんは正反対で、女学校の学長の如し厳格で少しの規律の乱れも許さなそうな人物。軽やかに易々と踊り切る身体能力にもあっぱれです。
渡邊さんも米沢さんも、短時間のソロで場の空気をガラリと変えて引き締める力量はさすがのベテランプリンシパル。出番こそ少ないながら印象を強烈に残すお2人でした。

ぶつ切り感があるなど賛否両論分かれた作品でしたが、私としては浦安市の夢の国にかつてあったアトラクションのスターツアーズや、
大阪の映画の楽園におけるこれまたもうなくなってしまったE.T.といった宇宙を描いた世界観が好きであるため
しかもバレエ団で長年活躍されてきた福田圭吾さんの作品ですから、初台での宇宙な作品誕生を心から祝福したい思いでおります。

若手ダンサーが前面に出る企画としてはまだまだ誕生間もないヤングガラですが、今回はパ・ド・ドゥ集ではなく大掛かりな新作品にも挑戦。
全幕では先日のアトレであったか、シンデレラで新キャストを出したかったが指導者の意向で叶わずといったお話も掲載され、
監督の意向はあっても新人主演発掘がなかなか難しい事情を推察。
その分、若手の発掘絶好の機会であるヤングガラにて、きっとこの先も面白い上演を盛り込みながら継続されていくと思っております。

日曜日午前中には公開クラスレッスンもあり、若手に負けじと鉢巻締めて(鉢巻は違うか笑)目をメラメラさせて挑む渡邊(峻)さんのお姿が熱く映ると同時に、
後輩達からすれば素敵手本でしょう。全体を眺めつつもつい渡邊さんを見ようとして双眼鏡を覗き込んで、天体ではなく定点観測満喫いたしました。




ハイボールで乾杯。インタビューで福田圭吾さんはハイボールは欠かせないと愛着を語っていらした記憶。



月の絵柄を眺めながらよなよなエール。



毎度の場所ではブラックアンドムーン。



新作らしき、チキンサラダ。ハラペーニョの辛さが効いていて夏場にぴったり。



トマトジュース入りのレッドアイ。目が〜目が〜。



レッドアイを飲んだ翌週、テムズ川に聳え立つロンドン・アイ。(現地時間7/28朝に当方撮影)