2023年4月16日日曜日

今年で受講10年 清泉女子大学ラファエラアカデミア  2023年度春期バレエへの招待




バレエ評論家の守山実花先生が講師を務める清泉女子大学ラファエラアカデミア2023年度春期バレエへの招待初回を受講して参りました。
早いもので今年で受講10年!前期はあと2回あります。
https://www.seisen-u.ac.jp/rafaela/

https://rafaela.seisen-u.ac.jp/lecture/detail.php?lecturecd=20232001,20232003


今年度のテーマはプロコフィエフのバレエで、前期はロミオとジュリエット。初回の昨日はプロコフィエフの生い立ちや
政府から翻弄されてきた作曲活動、作曲したバレエ音楽等の基礎知識について学びました。
バレエ作品として誕生するも今や上演されず初めて耳にする作品もあり、その中の1本『鋼鉄の歩み』。
工場労働及び生産向上賛美な曲調でカンカンと打ち鳴らす部分もあって、鉄打ちのコール・ドもあったのか等
いったいどんな振付が繰り広げられたのか、政府の意向がどの程度反映されていたのか気になった作品でした。

振り返ると生では未だ観ていない『放蕩息子』の今観てもそう古さを思わせぬ男性総踊りの場のダイナミックな展開にも驚き、
今更ながらいつか生で全編観る機会を待ちたいところです。(Kバレエで観たかと思ったら若者と死であった。あてにならぬ我が記憶力)

それから『ロミオとジュリエット』はまずラヴロフスキー版から映像鑑賞。1960年代頃?のボリショイ映像でナターリア・ベスメルトノワのジュリエットでございます。
ベスメルトノワのジュリエットはグリゴローヴィヂ版でのムハメドフのロミオとの映像は何度も観ておりますが(恐らくはソ連崩壊寸前の頃の映像です)
ラヴロフスキー版で観るのは初。手首の逸らしや身体の使い方が妙に大きい持ち味は昔から変わらずであったようですが(名プリマに対して失礼発言お許しを)
詰め込みが少ない振付でゆったりと時間をかけて紡いでいくパドドゥや、周囲の人々が驚愕する表現を大袈裟に見せる場もなかなか面白く
全編観てみたいと思わせました。全面白黒の市松模様である床デザインにも目が行きます。
ベスメルトノワは1990年10月のボリショイ来日公演にてヴァシュチェンコと組む『ジゼル』を鑑賞予定が私が体調を崩してしまい、チケットを親族に譲渡。
以来鑑賞時の体調の危機管理力だけは伸びたのか!?体調不良によるチケット手放しは現在のところございません汗。勿論コロナ関連もありますし無理は禁物ですが。

思い起こせば2021年の世界バレエフェスティバルにおいて
現在も同版を上演しているマリインスキーのシクリャローフと、当時はボリショイ在籍でのちにオランダ国立に移籍したミルノワがこのパ・ド・ドゥを披露し
古風で品ある踊りで互いが惹かれあっていく様子を体現していて好印象を持ったのでした。現在の情勢を考えると貴重な共演であった。

ふと思い立ち、日本での最初に上演されたのはラヴロフスキー版に似た舞台衣装や装置であった気がして
2014年に日本大学芸術学部で行われた貝谷八百子さんの衣装展のプログラムを開いてみると、
『ロミオとジュリエット』をキーロフで上演していると知った貝谷さんが楽譜から取り寄せ、ウラノワの資料を読み解きながら
1956年つまりは世界初演から20年も経たぬうちに日本初演に漕ぎ着けたとのこと。ロミオの仮面に近づこうと試みる好奇心の塊なジュリエットの表情といい
スカートが翻った瞬間も写真に残されていてはやる気持ちを抑えられず素早い行動に走ってしまったジュリエットの高揚ぶりが小さなモノクロ写真からも伝わり
この日本初演が行われた当時の大阪産経会館の観客の反応に興味が再度沸き、時空旅行ができるなら居合わせてみたいものです。

話があちこちに飛びましたが、あと2回、作品の魅力解剖に迫るお話がとても楽しみです。
英国ロイヤルバレエが今夏来日公演でも上演しますがセレブレーションは鑑賞決定していながらロミジュリはまだ観る日程決めておらず、
何処かの機会には観に行こうかと考えております、




今期も初回から訪れて食しました、地下の清泉カフェ。ベイクドマーブルチーズケーキと、
ちょうどコーヒー豆が空になっていたのか開封仕立ての豆を挽いてくださりこれまで以上に香り立つコクのあるホットコーヒーをいただきました。
スコーンは大きめサイズで、購入した方から半分いただきました。ほっくりした食感で美味しうございます。


2023年4月12日水曜日

国境のない芸術団 The 9th BALLET TRADITION『ジゼル』  4月7日(金)





4月7日(金)、The 9th BALLET TRADITION『ジゼル』を観て参りました。
http://www.shinobutakita.com/ballettradition/bt9.html


ジゼル:田北志のぶ
アルブレヒト:アレクサンドル・ヴォルチコフ
ヒラリオン:イーゴリ・コルプ
ミルタ:根岸祐衣


田北さんのジゼルは儚げで長い腕が優しく語るジゼル。流れるようでいて流されぬステップ、ポーズ1つ1つが美しく
脚先から手先まで、細部に至るまで神経を行き届かせたきめ細かな余韻が残る踊りに度々はっとさせられました。
椅子から立ち上がったりアルブレヒトやベルタにぎゅっと身を寄せるときも体勢の美しさはそのままに、育ちの良い上品な少女を造形されていた印象です。
狂乱の場も表情で走るのではなく徐々に崩れていく身体で苦しみを体現され、ウィリになってもひんやりとした冷たさよりも
腕で包む優しい空気をそっと広げているようで
精霊達が場を支配し更に悲劇へと進む2幕であっても、踊りを観れば観るほど田北さんのジゼルからは救いを与えられている心持ちとなりました。
アルブレヒトも同様であったことでしょう。

ボリショイ好きと言いながらもここにきてようやく主演全幕鑑賞が叶ったヴォルチコフは、
ご年齢からしても古典全幕踊り切れるか当初は心配募らせておりましたがとんだ失礼でございました。
全盛期のようなパワフルなテクニックは抑え目ではあったとはいえ、変わらぬ身体の綺麗な線から繰り出す品が宿る踊り方や
ジゼルの反応を大らか穏やかに受け止める温もりといい、明らかに村人ではないのは外見からしてバレバレでもジゼルが心惹かれていくのは納得。
本気か遊びかは表情が見えにくく、恐らくは本気が8割強であろうと想像いたしましたが、どっちつかずな挙句に悲劇を招いてしまう、ユルブレヒトでございました。
昨秋の初台での新版にて一挙に個性様々な5ブレヒト鑑賞に恵まれ、良いブレヒトやらダメブレヒト、ワルブレヒト等
つい勝手に印象を名前に当て嵌める習慣が付いてしまった点、悪しからず。

先述の通りヴォルチコフの全幕主演公演は今回初でしたが過去に観たのは田北さんプロデュースの東日本大震災チャリティーガラにて
マリーヤ・アラシュと『ライモンダ』と『スパルタクス』を抜粋で披露。後者においてはいわゆるガラ形式なパ・ド・ドゥではなく
全幕の中から選りすぐりの見せ場を集約した、しかも主役スパルタクスとフリーギアではなくクラッススとエギナの濃密狂宴メドレーな構成。
これぞボリショイの真髄、魂なる舞台で、会場は大盛り上がりでございました。
そんなわけでヴォルチコフの貴公子は初見で、あのクラッススが新宿でアルブレヒトかと当初はさほど期待感もなく幕開けを待っていたのも束の間
エレガントな踊りで田北さんとのパートナーシップも優しく打ち解けるような雰囲気で、熟練者なお2人による主演をこの機会で目にできたのは大きな収穫でした。

そして作品をびしっと引き締めていたのはコルプのヒラリオン。身体も踊りも切れ味があり、
常日頃から全身を研ぎ澄ませながら村の番人として村を守ってきた使命感に満ちていた印象です。
アルブレヒト住まいの家宅捜索ではドアが開かず、確か窓から侵入。大胆な手法での不法突入でございましたが
手がかりを掴んだときの勝利確信の眼差しの鋭さに、物語の展開は分かっていても身が痙攣しそうな転換地点を示し繋げていました。
圧巻であったのは2幕での根岸さんミルタとの対決。俊敏に跳び上がって許しを訴えるかと思えば床を這って命乞いをする叫び声の如き姿と威厳沸々な根岸祐衣さんミルタが向き合う光景は大迫力で
凄みが尋常でないコルプと対峙しても動じず岩壁のように頑強に君臨する根岸さんの女王っぷりなことよ。復活を待ち侘びておりました。

それから高評価に値すると唸らせたのはコール・ドの仕上がり。皆様所属もばらばらな上に、バレエを職としてはいない方もいらっしゃり生活基盤も様々。
しかし基礎の高さが窺え、例えばアラベスクの交差場面の肩位置の正確さや走り去りながらのフォーメーション移動でも脚の角度やチュチュの揺れ方も揃うほど。
1幕2幕ともにこれ見よがしに派手な振る舞いは一切せず、されどきちんとした美しさを追求する意識の方向性が一致していて
ポーズの角度やメリハリの付け方の統一感始め実に統制のとれた纏まりのあるコール・ドでした。全員に拍手を送りたいばかりです。

昨夏のオープンクラス発表会における田北さんのプログラム挨拶はさっぱりとした中にも響く言葉が多々ありましたが今回も同様。
特にこの情勢下におけるロシア人のビザ取得が困難ながら助けてくれたのはポーランドに避難中のウクライナ人であったことや
助けてくれた理由がその人は戦争に関係ないからと潔く言い切るご友人の姿勢に、国境や国籍にとらわれず芸術を深め合う者達への優しい視線が感じ取れる思いがいたします。
キエフ、ボリショイ、マリインスキーでそれぞれトップを張ってきた芸術家達の競演と
しっかりと纏まったコール・ドが丁寧に織り成す、愛おしい舞台を堪能いたしました。




帰り、東新宿駅近くにて久々のご登場ムンタ先輩(ワディム・ムンタギロフがお好きな素敵な人生の先輩)と食事へ。
ジゼルですから管理人、まずはワインで乾杯。お互いトラディション初鑑賞で、ヴォルチコフ目当てにいらした先輩も全体に大満足。
基礎レベルの高さが窺えるコール・ドの整った仕上がりやこれ見よがしな派手さを求めず
きちんとした美しさを追求する姿勢が全体に行き渡っていた点にも好感を持った等、話が良い方向へ弾みました。



タコのガリシア風だったか。タコのお出汁がたっぷり。



2杯目は赤ワイン。ピザに備え付けの蜂蜜は一切残さず、多めと思えても全部かける主義な管理人。
蜂蜜やジャム、ピーナッツバターやスプレッドクリーム等、瓶に入った甘いものは好物な分野でございます。
毎春播州にてアーモンドバター購入も毎度検討するも、塗り過ぎ警報が発令されていると思えてならず笑。
さてムンタ先輩、2月の件もよくよく耳を傾けてくださり、当ブログをお読みになりながら随分と心配してくださっていたようでした。
2月下旬から3月末までのジェットコースターのような1ヶ月間と言い表してくださったりと、ありがとうございます涙。

2023年4月9日日曜日

日向の国で平和なコッペリアにチャイコフスキー M.art's ballet studio 第3回発表会 4月2日(日)《宮崎市》





4月2日(日)、宮崎市のメディキット県民文化センターにて、M.art's ballet studio エムアーツバレエスタジオ第3回発表会を観て参りました。人生初の宮崎上陸です。
https://martsballetstudio.wixsite.com/maeda

新国立劇場から渡邊峻郁さんがご出演。九州でのバレエ鑑賞は福岡、鹿児島、佐賀に続き4県目でございます。
大概は生徒さんのみ出演のケースが多いオープニングは一旦生徒さん達が一斉に袖へ捌けた後にゲスト紹介も兼ねてかお1人で登場され
(発表会で様々なオープニングを観ているがこの手の演出は初鑑賞かもしれません)
無背景のところへいきなりのご登場でしかも上は水色と下は白の色目でしたので一気に涼やかなオーラで満たされ、
清く正しい立ち居振る舞いの美しさといい1人大きな男子生徒と思わせず、更に良質な空気を注入してくださった気がいたします。
再び生徒さん達が全員登場し渡邊さんが上手側隅に移動され出迎えるようにしてオープニングセレモニーは終了でございました。なかなか粋な演出です。
ちなみに音楽は第3部で上演される『コッペリア』3幕に合わせたのでしょう、同作品の幕開けのマズルカ。
この作品の中ではめでたい賑やかな曲調から長らく最も好きであった曲のはずが今年の2月23日を境にバレエ音楽全般の中でも大の苦手曲への急降下いたしましたが
次々と舞台に現れる生徒さん達の幸せそうな表情に自然と和み、少し解消されたかと思います。

全3部構成でお子さんが多く、全体が楽しく明るい雰囲気に包まれていた上にプログラムの組み方がお上手なのか一見演目数が多そうな第一部も瞬く間に終了。
古典の抜粋やヴァリエーション等短めのものを多彩に取り入れ、変化が引き立つようになされていたからでしょう。
渡邊さんは2部と3部の2本に出演され、1本目がチャイコフスキーの馴染み深い組曲作品。
本来の振付にアレンジはなされていながら、ポジションや角度の決め方、きびきびと音楽に乗っている踊り方が
隅々まで行き届き、アンサンブルがきちんとまとまっていてお見事。正直かなり驚かされました。この作品、5年前の夏に都内の発表会で上演したスタジオもあり観ておりますが
両スタジオ大変良い仕上がりで、アレンジ版とは言えども振付の1点1点を厳守しつつ作品を心から好んで踊る喜びが表れていたのは共通点であったと思えます。
さて宮崎では男性陣が一斉に行う部分は渡邊さんが1人で頑張る、名物のアンサンブルそぞろ歩きも一緒にやる等随所に工夫が散りばめられ
軽やかで着地に至るまでふわりと品のある跳躍や、主役の生徒さんとのパ・ド・ドゥでも
目線の交わしや離れた場所であっても向き合う度に身体同士での語らいが聞こえてきそうな踊りに視界は常夏の日南海岸以上の陽射しを彷彿とさせる燦然とした輝きに覆われ
晴れやかさからの哀愁感帯びた曲調、そして煌びやかなフィナーレと音楽の変わりようをも
2人揃って鮮やかに体現されていた点もこれまた嬉しい驚きをもたらしました。
主役の生徒さんにとっては大チャレンジな作品であったでしょうに、物怖じしない堂々たる姿にも拍手です。
渡邊さんの衣装はカチッとした形で洗練され、水色に輝く騎士でございました。(私が前日に青島見物したから飛び出す表現でもなく、言い過ぎでもないと思います)

第3部がオーソドックスな『コッペリア』3幕で、序盤からスワニルダとフランツも登場。コッペリウスに2人で許しを乞い、市長がなだめて説得させ
そして曙や仕事や、新郎新婦白い衣装で整えられたパ・ド・ドゥに続き、2人の見せ場のみならず全てにおいて「平和」に無事終了。(これ大事!!)
しかも渡邊さんフランツはコーダのとき、周りで立っている出演者の生徒さん達に対してもにっこり視線を送られ、
この場面を太古の昔の小学生の頃にやりました私からすると、あり得ぬ羨ましさ笑。
当時、仕事の衣装を着るも仏頂面で電柱の如く突っ立っていた無愛想無機質であった11歳の私に落ち度や非があるのだが汗
男性ダンサーが高度なテクニック披露しての一方通行になりがちな箇所であっても、周囲への目配せを怠らぬお姿に好感は一段と増した次第です。
ゲストに相応しい品格や華やぎを与えつつ、生徒さん達から幸福感を引き出して皆で舞台を作り上げている一体感、纏まりが一層強くなった場の1つでした。
年末ジャンボ宝くじの1等賞金を積まれても小学生時代には戻りたくない私だが、
渡邊さんフランツでこの場面が再現できるなら戻りたい気持ちに駆られ、電柱ではなく結婚式を祝う一員として立つ自信もあります笑。
そうでした、DTFでの気合いの刈り上げな髪型は落ち着き、一見強面そうなお姿はから脱却して一安心。

最後の挨拶で主宰の前田美里先生がご登場。ご自身は出演はなさらず舞台は生徒に任せ、
スタジオTシャツに動きやすそうなパンツスタイルでささっと結った髪型でいらっしゃり、裏方専念が窺えるご様子。
個性様々な大人数の教え子の取り纏めはさぞ大変でしょうに、楽しい雰囲気な会でございました。
尚、プログラム裏表紙を見るとスタッフ欄の指導者の箇所に渡邊さんのお名前も明記。
前回までゲスト出演されていた速水渉悟さんとも行っていたワークショップやパ・ド・ドゥ練習の様子はスタジオのSNS投稿による発信でも目にして
いたく丁寧に教えていそうなお姿でいらっしゃり、生徒さんたちも自ずと慕い、晴れ晴れとした発表会に繋がったとも捉えております。
挨拶や花束贈呈セレモニー時、小さなお子さん達を見守るご様子もほのぼのしてこれまた平和な空気感。
今年1月に渡邊さん速水さんが講師を務めるワークショップが開催された日、偶然にも都内にて米良美一さんのコンサートへ1人で出向き
幕間に友人らとも二重に宮崎の話に連絡取り合いながら花が咲き、プログラム合間のお話時間には宮崎の音楽祭の話題やご出身の宮崎弁が飛び出すひと幕に触れ
東京にいながら宮崎気分を味わっていた管理人。遂に初上陸の宮崎、満喫いたしました!



※以下写真多数です。辛抱強さに自信のある方はどうぞご覧ください。



晴天の空、いざ搭乗!機内では旅のクラシックシリーズからメンデルスゾーンの交響曲を聴きながら爽快気分で離陸です。



富士山がくっきり。航空写真の企業に履歴書を送付したこともある私です。自称高所好意症。
展望台、屋上ヘリポート、ガラス張り観覧車、絶叫系乗り物、山頂、上空、何でも歓迎です。
いずれは吊り橋渡りやバンジーもやってみたい。



宮崎空港に到着。早速神話の世界でお出迎えです。



バスが来るまでスタンプラリー体験。東京都の田町駅でも、宮崎の空港でも、時間が空いたらスタンプラリー。
ブーゲンビリアの名称、これまでに利用した空港名で3番目にインパクトがあります。
1位は高知龍馬空港、2位は徳島阿波おどり空港。最近放映開始された朝の連続テレビ小説らんまんを視聴していると、土佐の言葉が懐かしく聞こえます。



空港からバスで青島へ。車内は3、4人程度であったか、30分程度で到着です。バス停を降りたところにある植物園を抜けて青島へ。



ここに来てみたかった、青島ビーチパーク。まだ人もまばらでほぼ貸切でのんびり。
宮崎は初訪問の旨をお店の方に伝えたところとても喜んでくださり、明るい笑顔と穏やかな海辺に癒されたひとときです。
1週間前の予報が外れ、晴れ間も見える空に出会えました。青と白をベースにした景色に包まれ居心地抜群でしたが
翌日にはこの風景の更に上を行く、ブルーと白系の2本立てなる涼やか爽やかなお方がお目見えする舞台にお目にかかるとは。



テクテクと約1.5kmの青島を1周。どこへ行っても椰子の木がある。



青島駅は小さな駅で駅員さんおらず、車内で整理券受け取って宮崎駅にて精算。
駅員さん達はソフトバンクホークスのユニフォームをお召しでした。駅前には日向夏のポスト。



徒歩で繁華街方面へ、名店へ。駅からの通りの街路樹や自転車道路の整備の様子は兵庫県の姫路駅前に似ている気がいたします。今年も参ります。



チキン南蛮。写真で見た印象よりだいぶ大きく、タルタルソースも多し。されどキュウリたっぷり目なのか
するすると胃に入っていきました。ただ大食漢な私でもかなりお腹いっぱいに。
歴代遠征食の中では2007年9月に味わった名古屋の味噌カツと並ぶボリューム食でございました。
今年は16年ぶりに名古屋での鑑賞を予定しており(出演者にもよるが)、小ぶりな味噌カツをいただきたい。
そしてちょうど昨日アド街ック天国で放送されていた長久手のジブリパークにも足を延ばして行きたい。湯婆婆に会えますように。
チケットもし購入できなければ、無料エリアのメイちゃんのトウモロコシやパズーの鞄だけでも見に行きます。



ホテルにはウエルカムバーとしてアルコール多種、特に焼酎が充実。飲み方のコツの案内付きです。
特に都城のSUZUKIRISHIMAが気に入り、ふわっと味が飛び込んでくる感覚が忘れられず。ストレートでいただきました。



ソフトドリンクや、アルコールが苦手の方用にノンアルコールカクテルグッズもあり、ソーダ水やシロップでお洒落に作っていらっしゃる方も。



ブルーシロップとソーダ水、白ワインも混ぜて青島をイメージしたカクテルを作ってみた。
ちょいとシロップ入れ過ぎたかもしれぬが爽やかさとほろ酔いの味わいが溶け合い伝ってくるカクテルでございます。
そしてこのホテル、大浴場つき!青島の温泉水らしく、麿みのある肌触り。ゆっくり浸かって極楽極楽。



繁華街から少し入った四季通り。様々なお店が軒を連ねています。向かいのお店の人同士で朝の挨拶をし合っている関係性にほっこり。



宮崎県在住の方と久々に再会し、通りすがりで入店したピザ店。ここが大当たり!
こちら側にはルイ・アームストロング、反対側にはジョン・レノンが描かれた建物です。
ジョン・レノンといえば、今回の宮崎での舞台を発見するきっかけとなた昨秋のワールドバレエデー時期に
クラスレッスンにて渡邊さんがお召しになっていたビートルズTシャツが咄嗟に目に浮かぶ私です。



内装はシンプルでゆったり。ワインは白赤あり。きちんと保管されているのか美味しい味で提供され好印象です。



ピザは1切れが大きめですが、生地がとにかく美味しく、耳の部分はそれだけでもワインが進む香ばしさ。厚過ぎず薄過ぎない、ちょうど良い厚みです。
近所のパン屋さんと提携していると確か仰っていたかと思います。
チーズや具も多過ぎず、バランスが取れたピザでした。ネットやガイドブックでも見かけずふらりと入店でしたが素敵なお店に出会いました。
友人とはコロナ前以来の再会で、食事する時間を持てて良かった!新国立の状況や今年2月のこと、昨年3月以降のズンドコレッスン等近況も色々聞いてくださいました。



宮崎県庁。堅固な建築です。



発表会の会場、メディキット県民文化センター。美術館のような重厚且つモダンな建築です。



メディキット周辺、宮崎神宮方面。



帰り、ブーゲンビリア空港へ。ステンドグラス?が艶やか!定時出発率小規模空港部門世界一らしい。
餃子は日本一⁈宇都宮や浜松を超えたようです。結局どの地域が1位なんだ?この勢いですといずれは餃子サミットも開催される日が来るかもしれない。



空港内で宮崎グルメ締め括り。JALの飛行機を眺めながら冷汁にチキン南蛮、
そして芋焼酎入りの宮崎ハイボールで乾杯!グラスの文字が太字でインパクトあり。



青島も、発表会も、青と白に彩られた幸福は共通。爽やかな気分に浸れました。生徒の皆さんの朗らかな魅力にも癒され、機内でも余韻に。
さらば宮崎また会う日まで!!!

2023年4月5日水曜日

中学校の先輩 坂本龍一さん





音楽家の坂本龍一さんが3月28日に逝去されたニュースが連日報道され、著名人からも追悼する声が多数寄せられていることや
音楽活動にとどまらず、身を捧げていらした社会活動についても報じられているのは皆様もご存じかと思います。

当ブログで何度か触れていたかもしれませんが、坂本さんは私が通っていた中学校の先輩でいらっしゃいます。
勿論面識はございませんが中学が誇る卒業生の1人であり、創立の節目の記念誌に寄稿してくださり
音楽のみならずバスケットボールにも夢中な、運動好き少年でもあった思い出を綴ってくださっていたかと思います。
偉大な先輩でありながらどこか親しい存在にも思える方でした。

私が坂本さんを知ったのは実に遅く、YMOを聴いていたわけでもなく、確か映画『天空の城ラピュタ』が地上波初登場のときのテレビCMにて
ソニーのビデオカメラを手にした姿がきっかけでした。映画『戦場のメリークリスマス』も観ていなければのちの『ラストエンペラー』も未だ観ておらず
こういった場所で語る資格なんぞないかもしれません。しかし、テーマ曲は世代を超えて耳に届いているであろう『戦場のメリークリスマス』や
テレビCMでも使用された『エナジーフロー』、ドラマはストーカーを題材にした恐ろしい内容で視聴できなかったものの
悲しくしっとりと伝う雫が思い浮かぶ主題歌The Other Side of Loveは特に好きで
耳に心にすっと入っては徐々に澄んだ潤いに触れた思いに駆られる曲調に今も聴き惚れております。
親族の中には中学校そして高校も結果として坂本さんの後輩になった者もおり、特別坂本さんの虜ではなくても入学が決まったときはいたく喜んでおりました。
高校は都立の普通科進学校のご出身で、そこから芸大へ。学業に音楽に坂本さんはいかにして両立なさっていたのか、
そして世界中が注目する作曲家へとなられたのか。今となって益々知りたい心持ちになっております。

本当に偶然ですが、この3月はバレエを通して坂本さんについて考える機会が何度かありました。まずハンブルク・バレエ団『シルヴィア』。
2幕であったか、日本語で記された森を守ろうの立て看板を持ったキャラクターが唐突に登場し、思わず目を疑いましたが
ちょうど都内では神宮外苑再開発の件の報道が飛び交い、また神宮球場神宮第2球場ともに縁がある私としても考えが脳内を巡って止まらず。
公演後日に感想を書いていた頃、東京都知事に対して再開発見直しを訴える手紙をしたためられたのが坂本さんでした。
今思えば病床にてとても苦しい状態であったでしょうに、それでも訴えたいお気持ちの強さは胸を打ちました。
そして『シルヴィア』公演の翌日、我が5ヶ月ぶりのレッスンにて、バーの最中にピアニストの工藤さんが弾いてくださった中の1曲が『戦場のメリークリスマス』。
坂本さんの曲でのレッスンは初めてでしたから、偉大な先輩の曲がアーキタンツの広いスタジオに響き渡っていた様子が妙に嬉しく感じたものです。

それから下旬にて、新国立劇場バレエ団のDANCE to the Future2023。最後に上演された遠藤康行さん振付の招待作品『3 in Passacaglia』の音楽欄に
坂本さんのお名前がヘンデルと並んでプログラムに明記。しかし耳を懸命に傾けても坂本さんがどう絡んだか、我が体格と違って肥えていない耳では聴き取れず終い。
何しろバレエ団ファンでありながらこの公演自体行くか否かも分からず鑑賞した初日の昼のキャストがABどちらであるかも
往路の電車で会った友人に教えてもらう事態でしたので、曲の予備知識はまさに皆無で向かっていたわけです。
結局千秋楽になっても分からず、しかしお名前は確かに掲載されていますから何かしら関わりはあるはず。
坂本さんの逝去のニュースは4月に入ってから報じられましたが、息を引き取られたのはDTF千秋楽翌々日の3月28日であったとのこと。
パッサカリアの謎、いつかは知りたいと思っております。

決して話題に便乗したのではなく、偶々ではあってもこの3月にバレエにおいて坂本さんについて考える機会が度々あり、この場で綴った次第です。


※だいぶ話は逸れますが、通っていた中学校の先輩方の中には芸能界で活躍されている方がいらっしゃり、しかもバレエが絡むご活躍もあり。
木梨憲武さんは一時テレビ番組の企画で憲武バレエ団を結成し、追い越せ熊川目指せロンドンだったか、
随分大胆な目標を掲げて大滝愛子さんのご指導を受けていらした光景は覚えております。
バラエティ番組でのバレエの扱いに当初は首を傾げた私でしたが、 当時はネスカフェCMの放映時期の最中か直後の頃であった熊川哲也さん(80年代後半のダンスマガジンでとんねるず好きとご発言)や下村由理恵さんも登場されたり、
『パリのアメリカ人』を上演したりと本格志向な活動であったかと思います。
木梨さんはバレエは全くの初挑戦とはいえ、中学高校時代はサッカー部で活躍され身体能力も抜群であったようで
家電量販店での勤務で関わりがあった営業の方と同じ中学出身と意気投合したとき、サッカー部でいらしたと伺い
世代からしたらもしやと思ったら木梨さんと在籍時期が重なっていたとのこと。当時から一目置かれる上手さであったようです。

もう1人、辺見えみりさんは子供の頃から松山バレエ学校で学ばれ、15年は前であろう関口宏の東京フレンドパークに出演されたとき
ルームランナーで仲間たちが走りながらだったかご自身の所縁ある分野についてのクイズ回答で
森下洋子さんが出演された作品を4本か5本(曖昧で失礼)答えよとの問題が出題。古典作品をすぐさま回答なさっていたと記憶しております。
9年ほど前の『アド街ック天国』に出演されたときは、千歳烏山の特集にてすぐさま母校を紹介され、山田五郎さん達から誰も分からないよと言われながらも
美術部での活動を語り始めたりと(確か)、在籍時期は重ならずであっても同じ部活出身者として幽霊部員に近い出席率であったとはいえ汗、嬉しくなったものです。

2023年3月29日水曜日

興奮作用注入の年度末  新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2023  3月25日(土)〜26日(日)




※2023年3月29日をもって、当ブログは開設からちょうど10年を迎えました。
テレビ番組で例えるならば視聴率下降が止まらず打ち切りになってもおかしくないブログに日頃よりお越しいただき、誠にありがとうございます。
10年を振り返る華々しい計画もいたしましたが先月の二・二三事件の影響もまだございまして、来月どこかの機会に小規模にでも行いたいとは思っております。
20周年はもう気持ち大規模にできるか、それ以前に管理人の生存状況も分からずですのでそのときに考えます。
開設後の初回記事は新国立劇場バレエ団DANCE to the Future 2013で公演名で一目瞭然。奇しくも開設10年の今回と同じバレエ団、企画シリーズ公演です。
更には、(ここから大事です)最大のお目当ての出演者は10年前と今回とは異なれど、衣装の系統が全く同じではありませんか!!!
10年前につきましては、こちらの公演記録をご覧ください。
単なる偶然でしょうかこの節目なタイミングでの共通項。まあそれは良いとして、写真付の短文投稿全盛期において私自身と同様に余計な脂肪分多めの
時代錯誤なブログではございますが、今後とも皆様どうぞ宜しくお願い申し上げます。




新国立劇場バレエ団DANCE to the Future 2023を3回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/


※珍しく作品紹介映像も制作されました。




※千秋楽、福田紘也さんの退団公演。晴れやかに別れを告げる紘也さん、彼を立てる団員達に観客の喝采。とてもほっこりするカーテンコールでした。



福田圭吾さん振付Resonance





新国立劇場バレエ団 Choreographic Group 作品より

『Ray of light』
【振付】池田理沙子
【音楽】イルマ
【演奏(pf)】蛭崎あゆみ
【出演】五月女遥 池田理沙子


白い衣装の五月女さんと黒い衣装の池田さんが対比を浮かび上がらせながら描いていた作品。最初観たときは失礼ながらあまりピンと来ずでしたが
2回目に2階席から観たときに万華鏡のような優しい赤色を帯びた円形の照明の動きと同化した光景が視界に入り、
光との連動やピアノの音色との溶け合いがしっとりとした感触を覚える印象を残しました。



『echo』
【振付】福田紘也
【音楽】トム・ティクヴァ
【出演】小野寺雄 川口 藍 上中佑樹 横山柊子 渡邊拓朗 福田紘也

全員白い衣装で統一され、ゆったりしたシャツとパンツで涼やかでピュアな色彩が広がり
デュエットもあれば全員で一斉に円を描きながら放射状に散ったりと滑らかに紡がれて膨らんでいく展開から目が離せず。
横山さんと拓朗さんはダイナミックな趣きで魅せ、小野寺さんと上中さんだったか、
背中に乗せてくるっと回してからの流れもスムーズでボテッとならず、今更ながらお2人の体幹の強さもびっくりです。
川口さんのSFに登場する地球防衛団の女性隊員の如く近寄り難い美しさから繰り出す
四肢のしなやかな動きも益々魅せられ、年齢を重ねる毎に味わいが一層増していると感じます。
対角線に突き進んでくる紘也さんのソロを眺めているとまだまだ踊れる気がして退団は寂しく感じますが
新国立劇場の舞台に本番中のコーラ飲み干しや落語を取り入れたバレエを誕生させ、DTFの振付家の顔としての貢献度は非常に大きいと再確認。
また新作旧作問わず作品を上演して欲しいですし、バレエ団とのご縁は繋がったままでありますように。



『L'isle Joyeuse 喜びの島』
【振付】柴山紗帆
【音楽】クロード・ドビュッシー
【出演】赤井綾乃 徳永比奈子

赤井さんの無邪気に弾ける身体と徳永さんの冷静ぶりが嵌まり、仲良く戯れたりときには仲違いしたり、
起伏に富んだ行動と心理の描写も、ピアノの鍵盤上でビー玉の転がり落ちを彷彿させる急速な曲調とぴったり。
舞台を目一杯使い、カウントが実に取りづらそうな曲であっても次々と噴水のようにステップが刻まれていく光景に、
まずは振付者の柴山さんのセンスに天晴れでした。赤井さんは以前からコンテンポラリーでもスルリと自在に操る身体能力を披露されていましたが
徳永さんの何の前触れもなく突如ひっくり返ってはすぐさま起き上がって表情はクールなお姉様な様子のまま踊り続ける技術にも驚かされ
続編も観てみたくなった作品です。



『After the show』
【振付】福田圭吾
【音楽】ルイ・アームストロング 他
【出演】石山 蓮 福田圭吾

石山さんと圭吾さんは昨年板橋区でのDAIFUKUにおいてもデュエットを組まれましたが、瑞々しい石山さんと渋味が一層出てきた圭吾さんが更に好相性な揺らめきを披露。
黒いジャケットに黒パンツでシンプルな姿であってもクールビズ推進運動ポスター状態にはならず笑
2人揃って音楽の中を気持ち良さそうに遊泳しているかのように見せる舞踊センスがあるからこそでしょう。
途中からは平本正宏さんによるオリジナルの音楽が流れ、ゆったり快楽に身を任せるようなアームストロングの曲から一変。
不穏やひずみが生じ始め、世の中うまく行くこと思い通りになることの方が困難であるとのメッセージとも受け取れました。




『Resonance』
【振付】福田圭吾
【音楽】ミカエル・カールソン
【出演】渡邊峻郁 池田理沙子 柴山紗帆 五月女遥 宇賀大将 中島瑞生 奥田花純(25、26日) 上中佑樹


2019年と2016年であったか、圭吾さん振付の「beyond the limits of ...」と同様に音楽が脳内を延々再生。家でも度々聴いております。
良い意味で中毒症状になるほど耳に残る選曲で、ピアノの音色が網の目の如く絡み競い合っては突っ走る感のある曲調。ピアノを5台使って演奏される曲のようです。
衣装は女性が黒と一部にベージュが入ったボディに黒一色のチュチュ風スカート(ワイヤーが入っている平たい布?)、男性は黒く長いパンツに上半身は裸体(わお)。
暗がりに赤色の太陽を思わす照明が映されて1組ずつペアによる見せ場から始まり、
クラシックをベースに捻りも効かせた箇所や素早いリフトにすり抜けるようなパートナーリングも多数で
最初は池田さん宇賀さんが佇むシルエットで始まり、スパスパと駆け抜けていく2人が爽快。
その後は順番の記憶があやふやだが、奥田さん渡邊さんがダーク&アダルトな翳を纏い、そのペアから引き継いで五月女さんがパドブレで出てくると中島さんと組み、
柴山さんと上中さんが珍しい顔合わせながら抜群な呼吸の合い方で急速にポーズを切り替えながら踊り繋いでいく姿も目に残り
柴山さんのポーズやラインが崩れぬ安定性にしっかりと備わった基礎が再度見て取れました。
終盤は向かって左側に女性4人、右側に男性4人で(逆かも)一斉に機敏に踊り出し、畳み掛けの連鎖は鳥肌もの。
やがて音圧が弱まり、1ペアが残って小刻みな足運びで幕、であったかと記憶。

今回何が嬉しいかって、短き我が首を(私に会われたことがある方は頷くと思いますが本当に短い汗)麒麟並みに長くして待っていた渡邊さんの舞台姿をようやく拝見!
仰け反るほどに攻めセクシー且つ複雑な振りも吸い寄せられるように滑らかでシャープ、ただお1人にだけ当てられたソロでのご登場で
上手側から身体ごと斬り込むように出現。そして急遽の代役奥田さんとの翳りを帯びた色気の火花を交わすパ・ド・ドゥも刺激が充満し、
所謂ドラマティック・バレエでは全然ないはずがクラシックを捻り上げた緻密に盛り込まれた振付を盤石に踊りこなしつつ
危うさが香り立つ駆け引きが2人で出来てしまうとは、感激を超越し恐れ入るしかありませんでした。
復帰記念に久々に行います髪型観察。気合いの表れか耳の上部分がくっきり刈り上げで目元がよく見えるような前髪のまとめ方でただでさえ鋭い眼力が一層力強し。
更には背中や肩から腕にかけて身体つきが随分と逞しくなられ、バルコニー席から観ると
山脈と海辺の距離が近い、高低差が目に見える精巧な地形図を眺める気分でございました。

奥田さんと渡邊さんといえば、バレエ団公演ではそこまでペアを組まれたことがなく、
すぐさま浮かぶのは2021年6月に開催された井脇幸江さんリサイタルでの『サタネラ』グラン・パ・ド・ドゥ。
妖艶なお姉様と、健気に追いかける初心な青年といった趣きでこれはこれで何度緩んだか分からぬ微笑ましいパ・ド・ドゥだったわけですが
あれから約2年。急遽の組み合わせではあっても先述の通り余裕綽々と踊りこなす上にダークでアダルトな世界観を描出し、思いがけず鑑賞が叶い喜びに浸りました。
尚、当初の予定は廣田奈々さんで初日は踊られたようで、渡邊さんとの珍しい組み合わせだっただけに興味は尽きず。(写真レポートには掲載されています)
それにしても、2月の件から約1ヶ月。目も身体も、全身ギラついて燃え盛っていたとしか思えぬ渡邊さんの自信漲る、
しかも美しく逞しい方向へ肉体改造もなされたお姿も目にでき、即効性興奮作用が今も駆け巡ります。



3 in Passacaglia(招待作品)

【振付】遠藤康行
【音楽】ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
【出演】
米沢 唯 仲村 啓 渡邊拓朗(25日18:00)
小野絢子 石山 蓮 山田悠貴(25日13:00,26日)

過去に小池ミモザさん、柳本雅寛さん、遠藤さんご自本人が出演され踊られた作品とのことですが私は初見です。
プログラムの音楽欄には坂本龍一さんのお名前もあり、どの部分を手掛けられたかは私の耳では理解に至らず失礼。
前半に我が大の苦手な無音部分が多めであるのは想定範囲で、お腹が鳴らぬ対策していったのは大正解でしたが
ただ無音であっても米沢さん、小野さんが日替わりで女王として君臨しポーズを決めるまでの床を摩る音もが尊く感じたのは
お2人のスター性及び違った味の仕上がりであったからこそ。米沢さんは弾けるように伸びやか、小野さんは秘めた中で凛と立ち上がるような強さを思わせました。
米沢さん組の仲村さん、拓朗さんはやや身体を持て余してしまったか圧倒的女王についていくのに必死な様子が目立っていた気がいたしましたが、
踊り込めば精度がぐっと増しそうな予感。小野さん組は石山さん、山田さんともに絶対的女王に食らいつくどころか同志として密に調和する2人で
運命共同体なトライアングルを描画。石山さんは身体の動かし方が深々と自由自在、山田さんは吸い込むようにパワフルで
小野さんのスターぶりにも臆せぬ大胆さも持ち合わせた2人です。『夏の夜の夢』ではダブルキャストでパックを務める山山コンビ、楽しみでございます。
衣装がなかなか不思議なもので、女性はターコイズブルーのノースリーブ肩出しゆったりめのカットソーに紺色のベロア生地らしきショートパンツ。
男性は下手したら部屋着にも見えかねない、グレーの長袖長ズボン。着用者、限られてきそうなデザインです。

今回苦手な曲の使用予定等もあり、即日完売でもありましたので全日程鑑賞見合わせ或いは鑑賞するにしても1回行ければ良いかと考えておりました。
しかし初日観ずに帰宅していると買い足し推奨の連絡が続々。本当にその通りで、結局3回鑑賞。
圭吾さん、シャープで大人なシックな作品振付をありがとうございました。何より、今回は渡邊さんが予定通りにご出演。興奮作用が止まらぬ年度末になりました。
来期のDTFは新国立劇場バレエ団 Choreographic Group 作品の披露は無いようで残念。久々のナチョ・ドゥアト振付作品『ドゥエンデ』上演は喜ばしいが。
代わりに若手パ・ド・ドゥ集を上演するそうで、主役キャストの固定化が不安視される昨今、
また年明けせっかく競合他社とも手を取り合う行動への歩み出しがありましたから
こうなったら世界バレエフェスティバル並の長さでも、王道パ・ド・ドゥ何でも取り入れてプーニ、ドリゴ、ミンクス三昧でも歓迎でございます。
オープニングはマイヤベーアの戴冠式行進曲で出演者紹介もどうぞ。(それはいかんか)




※既にお読みになった方が大多数かと存じますが、小説家の恩田陸さんと渡邊さんの対談が実現。前編後編の2部構成で大変読み応えがあります。
中でもコンテンポラリーの踊り方の深淵まで迫ったお話が面白く、恩田さんの鑑賞眼の鋭さや渡邊さんの知性も掛け合いの膨らみから
益々一気に読み進めてしまう箇所でした。それから振付家のエピソードにて、トゥールーズ時代の『美女と野獣』についてを挙げていらっしゃいます。
これまで入団してすぐの頃の新国立劇場会報誌アトレやウェブメディアのスパイスイープラス、
ダンサーズウェブマガジン等いくつかの媒体でも語ってくださっているお話ですが
厳しく大変であったリハーサルについて毎回異なる表現で語られ、プレッシャーがあった、精神的に鍛えられた、根性が付いた、
確かダンサーズウェブマガジンであったかと思いますがどうしたら良いか戸惑い叫ぶように口語的な描写を載せた記事もあり。
そして今回は振付者であり監督であったベラルビさんをドSと表現!落ち込み続けた日々の様子も詳しく綴られています。
同じリハーサルについて語るにしても表現する言葉が多彩で、それが舞踊の幅にも表れていると想像いたします。

ベラルビさんといえば、2019年秋頃にNHKフランス語会話にて登場され、キャピトル・バレエ団を訪れていた
東京バレエ団の柄本弾さんを出迎え指導する姿が放送されましたが、過去の渡邊さんのインタビューを読んだ上で視聴すると
お茶の間用とは言えベラルビさんが別人のように優しく愛想が良く笑、若手であった渡邊さんの素質に惚れ込んでの厳しい指導であったのでしょうが
ご本人からすればさぞ辛い毎日であったであろうと察するばかりです涙。よくぞ耐えて乗り越え、頭が上がりません。
舞台映像はDVD化もされていて、歪んだ心がじわりじわりと滲み出て不気味な雰囲気を醸しながらも不思議と惹きつけられてしまう野獣でございます。
衣裳は前半はスーツのようなスタイリッシュな格好ですが後半は殆んど上半身裸で、大掛かりなバレエをここまで簡素な姿で主役が踊り続ける作品は
恐らくは他にそうないと思いますが、叫び声が聞こえそうなダイナミックな表現と研ぎ澄まされた集中力を持続させながら
自在に動く身体に圧倒され、身震いいたしました。恐らくは現在も購入可能かと思いますのでご興味持たれましたら是非ご覧ください。
『海賊』『死せる女王』とのベラルビ振付3本セットもまだ販売中かもしれません。
ダンソマニDVD紹介には写真も多数掲載されています。衝撃度、強しです。








休憩が2回



渡邊さんの舞台復活に乾杯!プログラム変更に伴いチケットを手放した方から買い取った土曜日昼のみの鑑賞予定が、結局夜そして翌日も鑑賞。
赤のスパークリングワインはメニューによればジラモンドという名称と思われ、
解説によればヴェネト州やその周辺でしか栽培されていない品種マルツェミーノで作られた唯一無二のワインとのこと。
唯一無二と言えば、渡邊さんが愛する拓朗さんと中島瑞生さんに振り付けながらも
観客前での披露が中止になってしまった作品のテーマのはず。お蔵入りは厳禁です涙。御披露目の機会が訪れますように!!



2月は4回訪れたもののひたすら慰めてもらってばかりであったこのお店、
今回は外は暗雲であっても心には陽光が差し込む中での1杯。
年度末この公演で締め括れて幸せこの上なく、黒ビールが一段と美味しい千秋楽でした。

2023年3月24日金曜日

阿波の星、所沢へ! NBAバレエ団スタジオカンパニーアトリエ公演『ドン・キホーテ』3月21日(火祝)





3月21日(火祝)、NBAバレエ団スタジオカンパニーアトリエ公演『ドン・キホーテ』を観て参りました。
NBAのアトリエ公演は2017年に練馬区で開催された『ドン・キホーテ』以来約5年半ぶりの鑑賞です。
https://nbaballet.org/atelier/atelier-donquixote/


キトリ(1・2幕):寺尾はづき
キトリ(3幕):荘野千尋
バジル:北爪弘史
ドン・キホーテ:安中勝勇
サンチョ・パンサ:石井滉太
ロレンツォ:佐藤史哉
ガマーシュ:髙橋真之
エスパーダ:刑部星矢
メルセデス:三橋紗也子
キトリの友人:佐藤真瑚/松田みなみ
ドルシネア:本谷光里
夢の女王:松下清香
キューピッド:新井ひな子
ファンダンゴソリスト:久保田麻友  刑部星矢


正団員を目指すスタジオカンパニーであるとはいえレベルは高く、危なっかしさや萎縮ぶりは皆無で主役からコール・ドまで舞台度胸が据わっている姿勢にまず感心。
加えて真っ直ぐで若さいっぱい、トラブルをも勢い良く楽しく収拾して面白い方向へと持っていく切り替え力にも拍手。清々しい余韻を残す舞台でした。

中でも注目し、期待以上に魅せてくださったのが3幕キトリの荘野さん。 「3幕」の文字からすると一見結婚式のグラン・パ・ド・ドゥのみかと思いきや
NBA版は1、2幕が街の広場とジプシー野営地で3幕が酒場と結婚式構成であるため、
思わず手拍子したくなる賑やかな、溜めに溜めてお待ったさんでしたと言わんばかりの曲にのせていきなり酒場への初登場になるわけです。
このとき既にキトリは街の広場において浮気性なバジルに辟易しつつも熱々な関係を示し、そして駆け落ちしてのジプシー野営地で過ごした夜を経ていますから
一歩大人な女性に近づいた感が備わった状態での登場が求められることでしょう。
バジルは変わらず北爪さんですから、1幕・2幕で初々しく可愛らしい、(拗ねても可愛らしい笑)そしてテクニックも鮮やかであった
寺尾さんキトリを引き継いでいく役目も求められ、非常に難易度の高い、緊張強いられる途中出場なキトリであったと思います。
ところがそんな心配をよそに、荘野さんは堂々スケールのある登場で姿を見せてこのときが初登場とは信じ難く、1、2秒で酒場の座長な風格もあり。
恐らくはABTのデザインを参考にしたであろう白提灯袖に濃いブルー系の衣装もよく似合い
投げたカップがやや元気良く放物線を描いて飛んでしまったか酒場の客人が取りこぼしてしまうも
この日の昼前を思い起こさせる初球サヨナラヒットのキトリ、愛嬌はホームラン級です笑。

芝居においても細かな工夫もたっぷりで、来店したロレンツォ達に見つからぬよう仲間達の壁に隠れているとき、
ちょうど下手側の端よりであったため隠れている様子はごく一部の客にしか見えない位置であっても
視線を交わしてはロレンツォ達の姿を眺めたりと恐れを知らずにスリルを堪能する熱々カップルぶりが私の席位置からしっかり覗けて観察楽し。
舞台に近い下手側端よりの席に腰掛けた自分を褒めてあげたいと思います。
狂言自殺はバジルのマントがちょいと短いのは気になったものの(夜行バス等で貸し出されるブランケットかと思ったが汗)
バジルが倒れ込んでからキトリが状況を察知して機転を効かせていく演出で
バジルの生存を把握し意図を汲んで大泣きヒロインから一変し、ドン・キホーテも巻き込み仕切り役を担うキトリの頼もしいこと。
白系に少し赤が入った衣装で臨むグラン・パ・ド・ドゥも一歩一歩が大きくダイナミックである上に
音楽に気持ち良さそうに乗っていて、今も幸せな結婚式に臨席した心持ちでおります。

実は荘野さんのことはかれこれ15年前からご出身の清水洋子バレエスクールさんでの舞台を徳島県で観ており、
中学生高校生くらいの年頃となると山本隆之さんや福岡雄大さんら新国立劇場からのゲストダンサーとグラン・パ・ド・ドゥを踊られるようになって
認識していったかと思います。つまり私の中では阿波の星!ですから昨冬の『眠れる森の美女』にてコール・ドの配役欄にお名前を見つけたときには驚き喜び
山本さんのご出演舞台鑑賞全国行脚がきっかけで知った方がこうしてプロへの道を歩み始めたこと、誠に幸せで勝手に東京の親戚気分となってしまったほどです。
ちなみに同様のきっかけで知り、のちにNBAの舞台で目にするようになったのは大阪出身の岩田さん、高知出身の髙橋さんに続いて3人目。
浪速、土佐、阿波、と喜ばしうございます。

そして脇を固める団員男性陣も充実し、全員がパッション放って研究生達を支えて大活躍。
ガマーシュ髙橋さんのミリ単位な芝居は場を笑わせるだけでなく締める効果も抜群で、恋にやぶれるとすっかりキトリとバジルの味方となって
結婚式のグラン・パ・ド・ドゥ最中もテーブル席からハンカチ持って大応援。
ロレンツォ佐藤さんの心配性な父親ぶりも笑い誘い、結婚式臨席中は笑顔で落ち着いて見守るお父さんが多い中、
特にフェッテのときはずっと胸に手を当て心臓が口から出そうなほどのハラハラぶり笑。
しかし思えば、愛娘が式の最中に超絶技巧な大パフォーマンスを披露するわけですからお父さんは喜びよりも不安のほうがまさってしまうのが自然と思え
フェッテを見届けるとガマーシュと抱き合いそうな勢いで喜び合う、根は本当に優しいお父さんです。

本公演のドンキとは衣装は概ね同じで背景が海ではなく黒い線で描かれた家並みであったのは2017年のアトリエ公演と同様で
闘牛士が2人しかいない分、女子が所々に加わってはメルセデスの教習所風ジグザグ踊りの準備を行ったりと補強もスムーズ。
メルセデスの三橋さんが肩の使い方にも色気があり大人な芳醇さも十二分で、
夢の場のドルシネア本谷さんの軽やかな愛くるしさや夢の女王松下さんの長い手脚が描き出す美しい伸びやかなフォルム、
小柄で達者で、女王とであったか、プロムナードもお手の物な新井さんも印象に刻まれております。

ガマーシュがキトリと挨拶する絡みでの帽子落下や、メルセデス教習所風ジグザグ踊りの準備にて並べたカップが倒れるなど小道具トラブルも何度かあれど
フレッシュ且つ自然に紛れさせて乗り切る対処力に脱帽。舞台の中央のみならず隅々からも全員でドン・キホーテの物語を楽しみ伝える力が発揮されていた印象です。
所沢よりも以前に観たスタジオカンパニー公演会場の練馬のほうが我が家からの交通の便は良いもののホールが狭く、
当時1幕キトリを務め現在はソリストの岩田雅女さんが持ち前の高い身体能力が有り余ったか笑、会場を飛び出して駅前の西友まで跳んでいきそうなパワーでしたから
所沢のホールのほうが全幕バレエには向いており、研究生達のはち切れんばかりの魅力を満喫できました。



※3月に開催されたバレエ団公演バレエリュス・ガラにおける『ダッタン人の踊り』をダンサー達が振り返る映像。
男性が頭飾りでピン2箱使用やしんどいときの笑顔事件など、お腹が捩れる裏話が次々飛び出してきます。是非ご覧ください。






帰りは乗り換え駅の新宿近く、徳島ラーメンはるまへ。西武新宿駅を出て、西口大ガードを西方向へ直進です。
会場にて荘野さんの出身のスタジオである阿波の応援団こと徳島の清水洋子バレエスクールさんの懐かしい方々のお顔も目にでき、嬉しい再会でした。



徳島ラーメンは一度お土産にいただき、なかなかこってり濃厚なお味な印象でしたが
はるまさんのスープは不思議とれんげを持つ回数が多くなり、難なく飲み干してしまいました。
こってりではなくコクがある美味しさでございます。バレエ鑑賞を通して、ラーメンを食する機会も増えております。



徳島といえば、すだちくん。荘野さんが徳島にて眠り3幕のオーロラ姫を踊られた(デジレ王子は山本隆之さん!)2016年10月、
会場の鳴門市文化会館へ移動する前に、徳島駅クレメント前にてゆるキャライベントの光景が横断歩道越しにびざんの湯の出入口から見え、すぐさま飛んでいきました。
鳴門市文化会館は東京都港区に位置するオープンクラススタジオのアーキタンツ代表でいらした
福田友一さんのご実家の味噌蔵にもまずまず近距離と思われます。
(ローカルな話ですが、皆様ついて来てくださいませ。各々の詳細な立地はご自身でお調べください)
これまで各地で様々なご当地キャラクターに会っておりますが、一緒に撮影した唯一のキャラクターがすだちくんでした。お洋服に巨大なSの字でわかりやすい。
隣にいる私をばっさり切り取り、縦長な写真で失礼。満面の笑みのすだちくん、今は阿波の地から荘野さんの活躍を喜んでいてくれていることでしょう。

2023年3月20日月曜日

プティさんに聞きたい  新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』  2月23日(木祝)〜26日(日)




今更ですが、一応全日鑑賞いたしましたので忘備録。2月23日(木祝)から26日(日)まで新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』を計6回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coppelia/


※全6公演客席にはおりましたが雨の中をワイパーが破損した車が走行する状態で度々視界が滲んでは曇りがけ、舞台が見えていたのは実質半分程度の時間です。
アテにならない非常に簡素淡々とした感想であり、また渡邊峻郁さんファンの方はプティ版コッペリアの文字を見るだけでも
今も寒気がすることと存じます。もうコッペリアは忘れたい方も少なからずいらっしゃると察します。無理に読もうとはなさらないでください。



2023年2月23日(木・祝)
スワニルダ:小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之

2023年2月24日(金)
スワニルダ:米沢 唯
フランツ:井澤 駿
コッペリウス:山本隆之

2023年2月25日(土) 13:00
スワニルダ:柴山紗帆
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:中島駿野

2023年2月25日(土) 18:00
スワニルダ:小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之

2023年2月26日(日) 13:00
スワニルダ:池田理沙子
フランツ:奥村康祐
コッペリウス:中島駿野

2023年2月26日(日) 18:00
スワニルダ:米沢 唯
フランツ:速水渉悟
コッペリウス:山本隆之



小野さんのスワニルダは壁にもたれての登場から魔性も宿る魅力で香りを放ち、脚の色気にゾクゾクさせるステップでも魅了。
福岡さんとは2017年にこの作品でも共演経験はあり、急な変更ではあっても盤石なパートナーシップは健在でした。
福岡さんは結果として小野さんスワニルダ2回、初役且つ代役の柴山さんスワニルダとの計3回フランツ役で出演となり、25日は昼夜連投。
ベテランプリンシパルにバレエ団は頼り過ぎている(それどころか甘え過ぎている?)気すら感じてなりませんが
緊急事態においても見事に務め上げ、テクニックは若返りの兆しすらまたもや見え、2幕のシャンパンの垂直鯨吹きは後世に伝わる名芸でしょう。
柴山さんとはほっこりされどちょこっと恋模様に波のある危うさを体現され、
小野さんとは1出せば5返ってくる、みるみると膨らむやりとりで楽しませてくださいました。
柴山さんは木村優里さんの代役でスワニルダ役初挑戦。色っぽさや魔力は物足りませんでしたが、
コッペリウスの家では清楚なイメージからは想像つかぬ暴れん坊ぶりで驚かせ、持ち前の基礎しっかり備わった美しい踊りでボレロやジグも披露。
ただ見るからに艶かしい姿を求めるのは理想が高過ぎるとは思うものの、ぴたりと合う役ではなかった気がしてならず。
柴山さんのシンデレラやライモンダ、ミリオンやインCは好きなのですが。

米沢さんは2人のフランツと組んでの出演。井澤さんには恋する少女っぷりが可愛らしく、速水さんには勝気でガシガシ迫る少女。
前回配信時は健全な女の子風味が残っていましたが今回は色気、しかも魔力も踊りから弾けていらした気がいたします。
井澤さんはプレイボーイ度が増し、スターな輝き強まったフランツ。米沢さんスワニルダから猛烈に恋い焦がれるもさらっと交わす様子が
前回配信時よりもくっきり伝わってきた印象です。
フランツ役初挑戦の速水さんは髪撫で仕草ががちびまる子ちゃんのはなわくんに見えかけたときもあったものの
お調子者っぽさは全フランツの中でダントツであったかもしれません。米沢スワニルダに怒られても平然と他の女子たちと語らう姿も嵌っていました。

恋の高まりやすれ違いの描画においてより質が向上していたのは池田さんスワニルダと奥村さんフランツ。
テヘヘと笑い声が聞こえてきそうなフランツに、顔をしかめるもやはり恋心を止められないスワニルダのやりとりが
配信時は実のところそんなに惹かれなかったのが嘘のように感じられ、全日程中、最も舞台が見え辛い座席であったはずが、今もぱっと思い出すお2人です。


フランツ、もう1人いたはずなのに。


そして大救世主であったのは山本さんのコッペリウス。初日登場時は冒頭での吉田都監督による声が震え上がっている挨拶に動揺がおさまらぬ客席に対し、
助け舟を出すかのようにご登場。おかえりなさい、待っていました!と割れんばかりの拍手が起きたのは言うまでもなく
スワニルダ登場を観客に示す仕草、そして2幕におけるコッペリア人形とのワルツの華麗なる凄みに驚嘆。
だだっ広いオペラパレスにて1人と人形のみであってもいよいよコッペリアへの恋心が盛り立つ感情が熱くお洒落に伝わってきたのでした。
中島さんは段取りのカウントが聞こえそうな日もあった配信時より大進化して、人形との接し方も滑らかでコッペリアから体温が届いてきそうに思えたほど。

ただお2人に全く非はありませんが、顔の白塗りメイクや踊り方や仕草のどれもが滑稽さを誇張する方向に行ってしまったのは残念で、
指導監修担当のルイジ・ボニーノさんがコッペリウスを踊られたときの喜劇俳優風なコピーを作りたかったのかとも思うくらいに違和感もあり。
映像でしか鑑賞は叶っておりませんがプティさんのコッペリウスはよりお洒落でダンディな魅力があり、お顔もナチュラルメイク。
ボニーノさんが監修指導にあたると、プティさんが大切にされてきたであろう洗練や粋の要素がみるみると薄れ、
かわりに大衆芸能な要素が色濃くなっているとしか思えず。ボニーノさん色に染まって行くご自身の作品をプティさんはどう感じていらっしゃるか、聞いてみたい。

今月上旬での記事では山本さん渡邊さんの共演の生鑑賞が叶わなかった無念ばかりを綴ってしまいましたが
小野さん渡邊さんの全幕共演を生で観るのも大きな夢でした。渡邊さんがこれまで主役同士として共演している米沢さんや木村さん、柴山さんとはまた違った
良い意味で少し健全路線からは外れる、危うさをも秘めた色気の掛け合いを観たくて仕方なかったのです。
しかもプティ版コッペリアはポーランドの村ではなくフランス、マルセイユで都会が舞台設定。
終わってしまった後ではもう何と言おうと取り返すことも不可能ではあっても、お洒落で粋な掛け合いを想像すると
このコッペリアにおいては配信にはなってしまった2021年の発表時から私の中ではファーストペアは小野さん渡邊さん、
小野さんスワニルダには渡邊さんフランツ、渡邊さんフランツには小野さんスワニルダしか考えられず。
そこへ山本さんコッペリウスが入ってくるのですから、しかも主要役は3人のみの作品でこのトリオに終始スポットが当たると思うと
そりゃ発表の夜なんぞ興奮して寝付けなかった2年前の3月半ばだったわけです。

連日幕間や終演後はまだしも客席に座り上演が始まると鬱々としてしまい、目当ての人が不在でも舞台に立つ人達に敬意を払い全編集中して観るようお叱りを受けるのは重々承知ですが
眼前が大量の降雨状態になってしまい、中身がスカスカな感想となってしまったことをお詫びいたします。
山本さんに対しても、心晴れやかにして大拍手を送りたかったのは山々ですが、5日の記事からの繰り返しにはなりますが
隣に立つファーストキャストフランツは渡邊さんで観たかった気持ちが消え失せず。
今回の件は神経図太い私もそう容易には切り替えができず、器の小ささ心の狭さに再び嫌気が差してはくるものの生涯引き摺っていくと思います。
スワニルダ友人のABそれぞれキャストの比較はする余裕もなく、1回だけサザエさん風なカーテンコールで楽しませてくださったのは
以前からサザエさんのエンディングに似ていると強調していた私からすると思いがけぬ笑みを引き起こしてくださいました。
衛兵さん達もなかなか観察できず、木下嘉人さんお目覚め隊長や福田圭吾さんのフランツソロ最中の仰け反りは印象に刻まれております。

二・二三事件の悲しみを生涯背負うと思うとここ最近は長寿願望も更に弱まり、考えてばかりおりますといよいよ寿命が縮みそうですのでこの辺りで。
23日と25日に着用しようと購入した2着のワンピース、(初日はピンク、土曜日は黒)見ると思い出してしまうので、要望があればどなたかに差し上げるか。
それは横に置き、山本さんが初台のオペラパレスに戻ってきてくださったお姿を目にできたのは誠に幸せでした。今回の大救世主です。



※ダンスマガジン2021年6月号最旬リハーサルスケッチの記事にて、配信になってしまった『コッペリア』2021年公演の
渡邊さんのインタビューとリハーサル写真が掲載されています。
聞き手に対し、コッペリアを振り向かせようとする首の振り方をお見せになっていたりと
子供の頃からお好きであったと語るこの作品のフランツ役に選ばれた喜びや
小野さんスワニルダとの恋のすれ違いを描くパ・ド・ドゥのポーズも、写真のみでもマスク装着姿でも恋模様が伝わります。
小野さんとの全幕初共演やバレエ界の"レジェンド"山本さんがコッペリウス役で共演についてもしっかり書かれていて、(執筆ご担当者様、ありがとうございます)
もしお手元や図書館等で見つけましたら是非お手にとってご覧ください。






25日夜公演を大阪から観に来た友人と。大阪フェスティバルホールでのこども白鳥の湖にて渡邊さん緊急代役出演のとき、
観たいねん!!と出先から駆けつけてくれた友人です。2021年コッペリアでもチケットは購入され、来場予定でした。今回が初台デビューです。
せっかくだからといつものテラスへ案内。山本さん渡邊さんが並んでいるのを生で観たらどんなんやったかなあとしみじみ。



最終日に大阪から来た女子大生と。彼女のお母様にもお世話になりっぱなしで後ほど会場で合流。
私のオアシスだからと店舗に案内し、着席した途端に渡邊さんの踊りの好きなところを延々スピーチ。
単なる気遣いか励ましか!?と思いきやそうではなく、大阪フェスティバルホールにて急な代役出演された
こども白鳥の湖王子や配信コッペリアフランツの魅力をずっと語ってくれました。
中継で流し大勢の方々に聞いてもらいたかったくらい涙。
米沢さんや速水さんともレッスン一緒に受講されたり、米沢さんや福岡さん、井澤さんら新国立始め著名なダンサーとも舞台共演経験があり
そのときの舞台の話題は後回しにしてとにかく渡邊さん語り。
お母様とは合流後、随分と心配してくださいました。本当に多数の方から慰めに励ましに、ありがとうございました。



連日ずっと励ましてくださったお世話になりっぱなしのお方と。泡を呑みながら、山本さんに初台復帰を祝しました。
本日も再度関西の方角に向けて祝杯を上げたいと思います。山本隆之さんは偉大だ!

2023年3月19日日曜日

【人生4度目】アーキタンツにてレッスン受講





スタンプ 3月12日(日)、アーキタンツにて酒井はなさんの初級クラスを受講して参りました。レッスン自体5ヶ月ぶり、はなさんに習うのは2016年以来2回目でございます。
管理人にとっては今年初のズンドコドッスン有酸素運動でございます。 http://a-tanz.com/ballet/2023/03/11131814


※基本日本のダンサーについては極力名字にさん付けで呼ぶ、綴るポリシーでおりますが
酒井はなさんのことは昔からはなさんと呼んでおり、ここでも同様に書いて参ります。


先述の通り、はなさんのクラスは2回目で、以前チャコット宮益坂にて受講しております。
ただ当時から7年が経過。7年も経てば我が年齢も体型も変わり、年月の流れは早いものです。
そうはいってもはなさんの指導については当ブログレギュラーな我が愛する後輩から度々聞いており、とにかく優しい、ゆっくり、穏やかと定評。
幸いにして指導法は不変で終始癒しの空気が醸され、人間空気清浄機かと思うほどで
マイナスイオンを降り注いでくださる存在関東代表と勝手に思っております。(関西代表は私の中で山本隆之さんです)
ほんの少しの配慮意識の積み重ねで変わる見せ方や立ち方、呼吸をの仕方を学び、
個人への注意や指摘のときですら優しい笑みを絶やさず、安心して心身共に伸び伸びと受講できました。
ワルツのときのつむじに軸が入るように保っていくと美しくなる助言は自身が地球儀になった気持ちとなり、確かにスムーズに動けそうと納得。
他にも書ききれないほど、たくさんの指摘や注意助言の全てにおいてお手本、言葉の双方から光り輝くような空気で満たされました。

あるセンターのとき、気分が乗ったらオーロラ姫な手つきでやってみて、と胸の前に片手ずつ交互に手を添えるお手本見せてくださったはなさん。
オーロラっぽくなんてこの先機会も無いであろう私ですから、思い切りやってみました。
結果、鏡に映ったのはオーロラには程遠い無惨な管理人の姿でしたが汗、楽しめましたので良しといたしましょう。
思い起こせば7年前には第1幕オーロラの気持ちでと、スタジオを旋回しながら披露してくださったり、白鳥の腕使い、
そして背に両手を付けてラ・シルフィードもあり。特にシルフィードは当時2016年2月に新国立劇場にて2003年以来13年ぶりの全幕上演がなされた時期でしたので
まさにはなさんが2003年に踊られたシルフィードを想像しつつ、脳内だけは羽を素早く羽ばたかせていた管理人です。
我が手脚は非常に短くずんぐりむっくり体型のため、実際に踊ってみるとバタつく鳩状態になっていた点はお許しください。

今回のピアノ伴奏は工藤祐史さん。初めて聴きましたが、ビートルズのイエローサブマリンや坂本龍一さんの戦場のメリークリスマスなど奏でて心身を乗せてくださり幸せ気分。
特に坂本さんは面識は勿論ございませんが同じ中学校(都内の公立中)の出身であり、この曲でレッスンできて身体も喜ぶばかりでした。
坂本さんは決して子供の頃から音楽一辺倒ではなく中学ではバスケットボール部で活躍され、高校も公立で都立普通科の進学校。
そこから芸大に合格された経緯が不思議ですが、今も中学が誇る卒業生のお1人です。
芸能界で活躍されている卒業生は他にも何名かいらっしゃり、
うちお1人はそういえば四半世紀前にテレビ番組の企画で期間限定のバレエ団を結成され熊川哲也さんや下村由理恵さんにも対面されていました。

話を戻します。はなさんはレッスン中、試しに工藤さんがさらっと弾いてくださると、Good!と満面の笑顔で喜びの声を発したり、素敵な伴奏!と仰ったりと工藤さんを立てる姿勢を示され
工藤さんもそして受講者にも一段と笑みの輪が広がって行ったのは明らか。プロ並みの上級者も、底辺住民な私も、レベル関係なく
はなさんの優しい癒しのオーラに浄化された、皆で幸せを共有するリラックスして楽しめるクラスでございました。
今回も大人になってからの再開レッスン全てと共通して疲れは一切無く、すくにでももう一回丸々90分受講したかったほどです。

これを書いている今からちょうど1年前のアーキタンツ初訪問初受講時とは打って変わって緊張も殆どせず、
寧ろチャコットでのはなさんの弟子歴が長い後輩のほうが少し緊張している様子で
(幼い頃からブランクなく継続しグラン・パ・ド・ドゥ経験もある誰が見ても上級者なのですが、アーキでの受講となるとドキドキであったようです)
レッスンは年数回、昨年ようやく5回に達しても増えたほうであるレベルは毎度クラス最下層民である私なんぞ田町駅での待ち合わせ中に
呑気にJRスタンプラリーに参加しており、往路の電車内では車両に映されたモニターにて、縁深い「タニシ」の漢字クイズを視聴。
緊張のあまり何度途中下車を試みたか分からぬ1年前とは大違いでございました。
どうやら私は、はなさんや山本隆之さん、篠原聖一さんや下村由理恵さんら紫綬褒章や芸術祭大賞等受章(受賞)された大御所なお方の指導ほど、緊張しないらしい。
何故だ⁈

そうでした、飛距離計算できずセンター時にバーに衝突しかけ受付まで跳んでいきそうになった上に
(アーキさんより広い一般人でも受講できるスタジオは都内にないはず。気をつけねば)、
身長は3センチ高いくらいのはずが腰位置は私より15センチは高い、麗しい姫な容姿でスタイル抜群な上級者であるだけでなく
照明器具で言うならばシャンデリアの如く華やかな存在の後輩をレッスン終了後に大衆酒場へ連れて行ったことはお許しください汗。
壊れかけた豆電球な光具合のズンドコな私ですが、またはなさんクラス、受講したいと思っています。
私は元々肥えやすく膨れやすい体質でここ1年半くらいは日課としていた1回5分もかからぬ脂肪燃焼及び肥満防止体操を
例の2月の件でつい休みがちになってしまった。今も十分丸々しているが現在より2桁重かった学生時代の体型に戻らぬよう
鑑賞中心且つ飲食制限したくないならば尚のこと、油断したら即刻ドラム缶と再度身体にも言い聞かせて過ごして参りたいと思っております。




田町駅にて日曜日も営業している酒場を発見。ビールで乾杯。後輩はサワー。実は彼女と一緒に受講するのも7年ぶり。
相変わらず美しさと可愛らしさの両方を備えていて、言動も接し方も心優しさの塊。毎度脱帽です。



お刺身盛り合わせ、厚みがある!鮮度も万全!



そして日本酒も飲みたくなった笑。白と金色のおめでたいラベルでございます。本当にレッスン帰りかと疑われそうですが。




唐揚げ。レッスン後はビール、お刺身、唐揚げを口に入れたくなるのです。



グラタンに塩辛ポテト。値段は手頃ながら味はきちんと良い質!グラタンも大きめです。



オムそばに焼き鳥。後輩は、焼き鳥は塩が好みらしい。塩顔ソース顔と勝手に話題を展開させ、結局は醤油顔が好みと行き着いた私の話にもまたまた耳を傾けてくれました。