2021年4月30日金曜日

踊れ、その身体がドラマになるまで~振付家・矢上恵子 作品上映会&メモリアルトーク~





神保町のブックハウスカフェ2階ひふみ座で開催されたバレエチャンネル主催の矢上恵子先生作品上映会トーク
「踊れ、その身体がドラマになるまで〜振付家・矢上恵子 作品上映会&メモリアルトーク〜 」に行って参りました。
https://balletchannel.jp/14798

※バレエチャンネルさんのサイト内のイベント紹介映像や、作品映像、佐々木大さんへのインタビュー編集全て福田紘也さんが手掛けてくださっています。センス抜群です。
※内容が実に濃く、何処から纏めるべきか分からずいつも以上に纏まり欠如な記事ですがお許しください。

ゲスト登壇者として愛弟子の山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さん、紘也さん、と全員同じスタジオで育ち
新国立劇場で活躍なさる4名が集結し解説は恵子先生とも長年所縁が深かった桜井多佳子さん。
恵子先生のお姉様でいらっしゃる矢上久留美先生のご挨拶や佐々木大さんインタビュー映像もあり、
山本さん達は愛弟子且つ踊り手側から見た恵子先生、作品の魅力など真摯にたくさん語ってくださいました。 多数の作品上映もあり、著作権が厳しく動画サイトにもまず載らなかった為東京で、また配信でもこんなに一気に鑑賞できるとは誠に喜ばしい限り。
関西、四国、山陰でも鑑賞しておりますがもっと東京での披露機会もあればと願ってきた為歓喜。大変嬉しく中身ずっしりな企画でした。

上映作品は全7本。初見作品もあれば鑑賞当時を懐かしく思い起こす作品まで、集中して見入った次第です。
まずは1999年2月の世界バレエ&モダンダンスコンクールで田中ルリさん、佐々木大さんが踊られ
田中さんが金賞、恵子先生が振付賞を受賞されたaccordanceから。(佐々木さんは田中さんのパートナーとして出場)
司会進行のバレエチャンネル編集長阿部さんも仰っていましたが、本当に20年以上前とは思えぬ洗練度に驚嘆。
特別派手なテクニックが繰り出されていく展開ではないながら、近未来を突き抜けていくような徐々に詰めて行く踊りの連なりを凝視せずにいられず。
桜井さんによる詳細なコンクールレポートが掲載された書籍が手元にあり読み返し思い出したところ
恵子先生のお名前や作品についてはまだ意識をせずにおり、田中さんの金賞受賞や田中さん佐々木さんによるグラン・パ・クラシックの伸びやかな写真、
エレーナ・フィリピエワ、デニス・マトヴィエンコ、サラ・ラム、アリーナ・コジョカル、遅沢佑介さん、そしてモダンダンス部門では平山素子さん、と
このままガラ公演開催が可能であろう強者揃いの出場者ばかりに気を取られてはおりましたが、恐らくは初めて目にした恵子先生作品であったかもしれません。

順序や過程が異なるかもしれませんが、accordanceは大人数構成でも上演され、翌年2000年あたりの開催であろうKバレエスタジオの公演での写真が
ダンスマガジンに掲載。上から銀色の渦巻きのような装飾が吊るされ、リフトされて天を仰ぐ恵子先生?や囲うダンサー達のスケール感ある場面が写っています。
また私の記憶違いでなければ、Kチェンバーカンパニーのダンサーが改訂し子供の生徒さんのみによるaccordance Ⅱも数年前に披露されていたかもしれません。
近年では振付は全く違う趣向で福田圭吾さんも同名の作品を発表されているかと思います。

2本目は『舞踏への勧誘』に振り付られたFrozen Eyesー凍りついた目ー。初演は田中さん佐々木さんが名古屋のコンクールで
もう1本の恵子先生振付コンテンポラリー作品として踊られたときですが 今回の映像は紘也さん。
恐らく昨年10月の恵子先生によるコンクール作品上演集にて披露されたKバレエスタジオの舞台映像でしょう。
既に恵子先生がお亡くなりになっていたため圭吾さんが教えていらしたそうで、心が壊れた少女に寄り添うストーリーや
注意すべき視線など、踊る上でのポイントを語ってくださいました。あらすじを頭に入れた上で観ると、少女の冷淡な壊れ具合が一層怖ろしいと感じさせます。

3本目はWitz long。圭吾さんが出場された2003年のローザンヌのコンクール映像によって最も知られている作品とのことですが
実は私はその映像はちらりとしか観ておらず、昨年のDAIFUKUにて福岡さんで初鑑賞。
今回の上映も福岡さんで、身体がバラバラになってもおかしくはなかろう激しい展開や随所に盛り込まれたギリギリのバランスもするすると踊りこなす姿に天晴れ。
漫画に疎い管理人、つい数日前に知りましたが近年は漫画でも取り上げられた作品だそうです。
4本目のSalutは初鑑賞で、2002年のジャクソン国際バレエコンクールにて初演。サンサーンスの『死の舞踏』で
椅子と長めのシャツを巧みに使いながら圭吾さんがおどろおどろしい空気を醸して踊り、圧巻でした。
福岡さん、圭吾さんによればシャツ問題椅子問題が生じたそうで、汗でシャツ貼りつき呼吸困難に陥ったときや
椅子を持ってそのまま床で回転して起き上がるなど無謀な要求もあったとか。(やるしかないそうです涙)

次がBourbier。福岡さんが2008年に出場されたヴァルナ国際バレエコンクールにて踊られ3位入賞、そして恵子先生は振付賞を受賞されました。
初演は恵子先生も出演された大編成上演で2007年と思われます。(改訂や構成変更などこの辺りの事情知らず失礼。
2009年にはバレエ協会公演における東京上演もそれはそれは嬉しいもので、ようやく東京の観客にもご覧いただく機会に嬉しうございました)
福岡さんにとってはとりわけ思い入れの強い作品とのことで、 作品のコンセプトやいつもとはピリピリとは少々違った雰囲気の中
先生と一緒に作り上げた、 魂を磨き天へ返す、と先生の教えをじっくり振り返りながら語ってくださいました。
カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲ソロ部分はKバレエスタジオの舞台では節目に踊られる機会が多い作品なのか、山本さんも何度か踊られていて
(2014年の恵子先生舞踊生活50周年小品集、2015年東京にて佐藤勇次さんスタジオ公演、2016年香織先生追悼公演)
福岡さん山本さんお2人が最後の魂天に返す振付をその場で順々に再現してくださいました。
福岡さんは舞台のときとほぼ同様に全身を大きく使って再現され、対する山本さんはだいぶ遠慮がちで笑
両手で包んで掲げる箇所では後輩達から「おむすびみたい」と笑われてしまったほど。
しかし、舞台を観た者から言わせてもらいますと、「神降臨」な心を震わせ浄化させる踊りでございました。うう、また拝見したい。

続いては出ました!大作『ノートルダム・ド・パリ』より圭吾さんのカジモドと山本さんのフロロ。
とにもかくにも山本さんの美しくも苦悩を押し殺すように熱を帯びていく姿が胸に迫り、一部分だけでも映像を通して再度鑑賞でき感激。
フロロ、このあとみるみると冷酷な面を露わにしていきますが、全編もう一度観たいものです。
2011年に大阪で1回上演したきりで、特に多くの方にご覧いただきたい作品でフェビュスは福岡さんでした。
桜井さんが演出の特徴として、バレエのノートルダムには珍しく山羊が登場する点をご説明。
登場するバレエ映画は1本あるくらいとのことでそういえば、他の版では観たことがなく
矢上版では恵谷彰さんが俊敏に踊っていらっしゃいました。そして佐々木大さんも群舞の中に入り、
太い線で描かれた巨大な鐘や骨組みの大掛かりな装置、と重厚且つスタイリッシュな作品です。
一方笑うに笑えぬ、山本さんが明かしてくださった布団逸話には恵子先生の無茶ぶりに再度触れた思いでございます。

最後はToi Toi。スピード感とユニークな魅力も光る、観ていて気持ちが前向きになってくる大人数構成作品で2003年に大阪で初演されました。
複数のグループに分かれて組まれ展開していくフォーメーションと言い、後方に設置された壁を用いて飛び出してきたり引っ込んだりと
面白い変化をもたらす振付と言い、一時も休む間もなくエネルギーが上昇していく振付に痺れるばかりです。
冒頭の男女のデュエットは恵子先生と福岡さん。実は恵子先生ご自身の作品でたくさん踊っていらっしゃるお姿は多くは拝見しておらず、5本の指で数えられる回数。
記憶のある限り初ケイスタ鑑賞での2007年Bourbier、青少年に贈る舞台鑑賞会でのâme、2008年MRBスーパーガラでの
眠れる森の美女パ・ド・シス音楽に振り付けられたFee×6、2009年のADOです。
Toi Toiでのしなやかさ、強靭なバランス感覚と挙げたらキリが無く、恐れ入りながら見入ってしまいました。
今回の映像は冒頭のデュエットは2003年、大人数で繰り広げる後半は出演者の顔ぶれからして恐らくは2014年公演かもしれません。2016年には出雲でも上演されています。

佐々木大さんのインタビューも大変面白く、恵子先生との出会いや踊った作品について。
そして恵子先生の名を広めたいと密かに地道に営業活動を1人でなさっていた逸話まで、それだけ恵子先生という人物、作品に惚れ込んでしまっていらしたと見受けます。
また同じ作品でもデュエットからソロに変えたものや、恵子先生の愛弟子達の追い込みを目にしたときの衝撃など、
温か且つ尊敬の眼差しで語ってくださっていました。お話の内容や言い回しも分かりやすく、インタビュアー紘也さんの質問も的確で素敵コンビな対談です。

それから桜井さんの解説も細かな箇所まで知り尽くした内容ばかりで、恵子先生作品を初めてご覧になる方にも何度も鑑賞している方にも分かりやすく
あっと驚かせるお話満載でした。20年以上も前から取材を重ねられ、恵子先生と愛弟子達双方との親交が
余程深くなければ知り得ないお話を溢れんばかりに伝えてくださり、感激でございます。

身内として同僚としてずっと過ごしてこられた久留美先生のお話もじっと聞き入り、不安になるほど生徒に対する厳しい教え方や
仕事をたくさん入れて猛烈な忙しさで過ごす恵子先生をずっと心配なさっていたようです。
また今は恵子先生の作品をいかにして残し踊り継いでいくか、日々模索し著作権などの知識をもっと得ていきたいともお話しになっていました。
最後福岡さんが、恵子先生作品はまだまだたくさんあり、踊りたい方はKバレエスタジオに連絡くださいと宣伝営業し呼び掛けていらしたこと、
久留美先生も嬉しがっていたことでしょう。昨年の舞台のプログラムには確か今年の9月中旬にKバレエスタジオの舞台開催予定で、私も観に参りたいと思っております。

最後に(まだ続きますが汗)、愛弟子の皆様。この方々が人前に一堂に会して話をしてくださる機会はこの先無いであろう貴重な時間で感謝してもしきれず。
バレエに真剣に誠実に向き合い、恵子先生の愛情と指導を一身に受けてこられたお話や
今も変わらぬ先生に対する尊敬の念など、数々のお話を真摯に丁寧に語ってくださいました。
山本さんは何処までも控えめな語り口でいらっしゃいましたが、恵子先生の最初の弟子として重圧もあり?
そして厚い信頼も得ていらしたと窺え、トークイベントにおいてもやはり別格なオーラが漂いました。そしてふと飛び出す一言が面白いのです笑。
恵子先生の格言や教えを最も詳しく話してくださったのが福岡さんで、背骨の歪みや贈り物のスニーカーの意味、魂を磨き続けることの大切さなど
1つ1つじっくりと回想するように伝えてくださいました。

濃い関係性のエピソードについて触れていらしたのは圭吾さんで、恵子先生作品を踊る他の教室の生徒さん達で苦手そうな子や時間がかかっている子がいると
すかさずアシスタントの圭吾さんに恵子先生の目の合図が走り、フォローに回っていらしたとのこと。
目での会話が可能になるほど濃い間柄であり、また絶対出来るようになると出演者のレベルを結果として引っ張り上げる指導であったとのこと。
そういえば、徳島や愛媛の教室の舞台で恵子先生作品も何度か観ておりますが、皆しっかりと踊りこなしていて練習方法が気になっておりました。

3人の愛弟子達とは少し異なる関係性を築いていらしたと打ち明けていらしたのは紘也さんで、弟子史上初!?正直に「無理です」と言ってしまったところ吹っ切れて
創作の話など正直に色々話せるようになったとのこと。追悼公演プログラムでの恵子先生へのメッセージ欄においても、
寂しいや悲しいといった言葉はなく中華をご馳走したときの先生の素っ気ない!?反応を記されたりと
何処までもユニークな感性は恵子先生からも大そう愛されていらしたと想像いたします。

それから恵子先生に、恵子先生作品に着目し東京にてイベントを企画され、更にはオンライン配信も実現に漕ぎ着けてくださった
バレエチャンネル編集長の阿部さんには感謝するばかりです。素晴らしい作品を多数生み出しながらも恵子先生は大阪を拠点とされていた為
公演の新聞記事は大阪や関西圏止まりであり、また著作権も厳しく世間に映像が出回ることはまずありませんでした。
立て続けに複数作品の上映を東京にて実現させオンラインで全国発信されるとは、アーカイブを通して自宅の大画面にて
Toi Toiを何度も眺める日が訪れるとは1週間が経った今も夢のようです。
佐々木さん、桜井さんも仰っていたように、恵子先生の作品を初めて観たときからすぐ募ったのは多くの方に知ってもらいたい衝動であったそうで
それだけ瞬時に観る者や踊り手も惹きつける恵子先生、作品の魅力を全国規模で発信してくださり、感激の一言では言い尽くせません。
バレエチャンネルさん、本当にありがとうございました。
恵子先生の作品を初めてご覧になった方も、もっとたくさん観てみたいと興味を持たれた方は大勢いらっしゃるに違いありません。

それにしても、バレエ音楽や作品史関連の講座で何度も足を運んでいる神保町ひふみ座に
山本さんがお越しになり登壇される日が到来するとは。ひたすら拝みながらお話に聞き入りました。




帰り、地元で1人静かにビールで乾杯。恵子先生、ビールが大好物でいらしたと聞いております。


※以下、今回のイベントに関連しているであろうKバレエスタジオのプログラムや記事掲載の書籍などを紹介しております。



恵子先生作品を初鑑賞した2007年Kバレエスタジオ舞台プログラム。チケット申し込み時、大阪に電話をかける行為も慣れずでまだまだ小心者であった私は
送付先住所を聞かれ郵便番号を申しかけたところで「東京から来はるんですか!?」と強烈な大阪弁にたじろぎかけましたが
恐らくは香織先生がとても優しく案内をしてくださったことは今も覚えております。その後も関西、四国、九州の団体の公演申し込みにて
遠方在住に電話口でびっくりされる事件は度々ありましたが笑、(追っかけあるある)
回数を重ねて行くうちに慣れてきたものです。そして年を重ねるごとに私の神経も図太くなったかもしれません。
2007年以降Kスタさんの舞台は、昨年2020年まではスタジオ移転のため舞台開催が無かった2017年を除いては毎年1、2回は大阪なり、山陰なりで鑑賞しております。



2007年夏、初めて恵子先生の作品鑑賞が叶い感激と興奮の坩堝であった管理人でしたが、振付の意図や中身に至るまで考えが及ばず余裕もなく
これといってじっと深く観てはおりませんでした。スタイリッシュでパワフルな大作をこんな単純な見方をして果たして良いのか
もっと緊張感を持って鑑賞するべきかと不安になっていたところ助けられたのが桜井さんの解説でした。
同年12月に大阪にて開催された大阪市主催の青少年のためのバレエ鑑賞公演にて『コッペリア』(山本さんが夜の部にフランツ役でご出演)
そして恵子先生振付のコンテンポラリーâmeの2本立て上演に、大阪市民でもなく青少年な年齢でもない身ながら足を運び鑑賞。プログラム解説を執筆なさっていたのが桜井さんでした。
恵子先生作品の鑑賞法についてはごくシンプルで、理屈ではなく、こころで受けとめてくださいとの文字。
心をぐっと持っていかれる、パワーを貰えた、これで良いのだ!と肩の力がだいぶ抜けた気がいたしました。
後年恵子先生と話をした際にも、先生の作品は宇宙まで導かれそうな力に溢れていて拝見すればするほど好きになりますと素人の訳の分からぬ感想に対して
「楽しんで観てくれるのが一番嬉しいねん!ありがとなー」と豪快に笑いながら語りかけてくださり、難しく考えずに観て欲しいと強調なさっていました。




抜粋上映された2011年の大作『ノートルダム・ド・パリ』プログラム。毎回プログラムデザインもスタイリッシュです。
ノートルダムも痺れる作品でしたが、2009年に鑑賞したカルメンも好きで、少女時代のカルメンから描き、人間の心の闇にも迫る大作でした。
山本さんのエスカミーリオ、色男過ぎました。



2016年出雲公演プログラム。Toi Toiの最後、全員で両手を掲げる場面、星空へと導かれそうな写真です。



今回のお話で、あからさまに仲良しな面は見せないながら、福田兄弟は実はとっても仲が良いとよく分かりました笑。
新国立劇場バレエ団には複数兄弟ダンサーがいて、福田兄弟と後輩兄弟との対談記事が2017年7月に発売されたダンススクエアVol.20に掲載されています。
発売日が我が節目であったことと諸々目的の事情があり、発売早々に購入し読みました。
福田兄弟、ちゃっかりお互いの良いところを褒めつつもここではそう仲の良さをアピールなさっていませんが
いかんせんおしどり夫婦の如く!?仲が良すぎる後輩兄弟の微笑ましい関係に衝撃を受けたり優しく話を引き出したり
立ててあげたりと気遣いと思いやりに溢れた先輩兄弟です。



音楽之友社1999年5月号に田中ルリさんが金賞受賞、恵子先生が振付賞を受賞された世界バレエ&モダンダンスコンクール取材記事と田中さんへの単独インタビューも
掲載されています。執筆者は勿論桜井さん。私服姿の出場者フィリピエワに圧倒されたり、心の持ち方を佐々木さんから学んだり
恵子先生を佐々木さんに紹介いただき『アコーダンス』と『凍りついた目』の2本を振り付けてくださったが両方とも難しく、
ファイナルにまで残れるかの不安や本番中のひやりとしたことも話してくださっています。



20年前に大特集された関西バレエ事情。Kバレエスタジオの紹介では前半でも少し触れたaccordanceの大人数構成版のカラー写真が掲載。
関西エリアのカンパニーの一挙紹介バレエガイドはこちらも桜井さんが案内なさっていて、
法村友井、貞松浜田、佐々木美智子バレエからKバレエスタジオ、地主、野間、ワクイバレエ団など数々の団体や特徴を紹介してくださっています。
山本さんへのインタビューもあり、恵子先生の指導については厳しいが愛情がこもっているから受け止められる、とのこと。
来シーズンより新国立劇場契約ソリストと紹介され、時の経過は早い。王子貴公子系の役以外も挑戦したいとも仰っていて、のちには古典、コンテンポラリー問わず主役の百貨店です。

そして時が流れ20年、ダンスマガジン2021年4月27日発売の最新号にてこのゴールデンウィークに無観客上演され4キャスト無料配信される
新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』最終日の8日に山本さんコッペリウスと共演するフランツ役ダンサーのリハーサルレポートでは
執筆者は「バレエ団のレジェンド」と山本さんを表現しています。4キャスト全て楽しみですが、中でも8日、楽しみでございます。



バレリーナへの道57号、表紙は新国立劇場バレエ団初演時の『ライモンダ』主演は現新国立バレエ監督の吉田都さん。
間もなく配信が始まる『コッペリア』の次公演演目であり、次こそは観客入れての上演が出来ますように。
また今年と同様コッペリア当たり年だったのか偶々なのかコッペリア公演記事が3本続き、スターダンサーズバレエ団(延期に次ぐ延期で6月開催予定。スエズ運河事故影響とは)、
貞松浜田バレエ(5月末開催)、塚本洋子バレエ団(間もなく始まる新国立コッペリア配信トップバッターの米沢さんらしき姿が友人?役で写っています)
話を戻します。Kバレエスタジオの設立について詳細に紹介されていて、取材は勿論桜井さん。矢上三姉妹の子供の頃の写真や貝谷バレエ時代の舞台写真もあり。
幼い頃から仲良しであったことや3人揃っての留学までの道程、恵子先生が遊園地の着ぐるみの仕事で自らも踊りショーの振付もなさり引っ張りだこであった時代や
恵子先生は当初指導の仕事が嫌で厳しくすれば生徒は辞めると思ったものの生徒達が必死についてきたため何時の間にか教えることに夢中になった、
「生徒は自分の鏡」とインタビューで答えていらっしゃいます。福岡さんも今指導もする立場になって恵子先生の格言としてご自身に言い聞かせていらっしゃるようです。

ところでKバレエスタジオ紹介の次ページには2005年1月開催のNBAバレエコンクールレポートがあり、
コンテンポラリーの部の入賞者1位から3位までの6名のうち、2名がKバレエスタジオ、
2名が恵子先生が指導に出向きスクール公演でもほぼ毎年恵子先生作品を上演していた徳島の清水洋子バレエスクールの生徒さん。
作品名のみで振付家名の明記はないもののケイスタの方は当然恵子先生の作品でしょうし
清水バレエの生徒さん達の2作品も恵子先生に特訓された作品であった旨を耳にした覚えのある作品で、
つまりは少なくとも入賞者4名分の指導を同時進行で先生は行っていらして多忙極まるスケジュールをこなしていらしたと思えます。
イベントにて久留美先生も挨拶にて、恵子先生が仕事をどんどん入れてストイックに邁進していく為心配で仕方なかった、
香織先生と2人して案じていたと話され、コンクール以外にも多岐に渡ってこなしていらしたと窺え、猛スピードで生き急いでしまったのかもしれません。



大阪、及び関西でのバレエ鑑賞が増え始め、関西と関東のバレエ文化の違いについての記事は時々見かけその度に熟読はしておりましたが
最も面白く何度も首を縦に振りながら読み進めてしまったのが、7年前に紹介した、上方芸能の書籍。執筆者は桜井さん。
大阪のバレエ記事は大阪版にしか載らず全国区にはなかなか伝わらないなど、頷いてしまう箇所多数。
フェッテにてほぼ100%の確率で発生する手拍子文化にも言及され、私の記憶の限り大阪での舞台でフェッテのときに拍手が起きなかったのは
2019年9月新国立劇場バレエ団こどものための『白鳥の湖』フェスティバルホール公演ぐらい。
当初の主演予定ペアが直前降板し、代役ペアを知ったのは前日。大急ぎでチケットを申し込み、知った24時間後には大阪に来ておりましたので
行きの新幹線車内ではどう過ごしていたか記憶は彼方ですが、ただ今回ばかりは手拍子無しを願っていたのは覚えあり。
主演がお2人も急遽の代役でご出身地やキャリアからしても関西では踊り慣れてなさそうでいらっしゃいましたから手拍子が起きず誠に安堵したものです。
話を戻します。上方芸能別ページの一般アンケートとして大阪に対するイメージランキングもお馴染みな要素ばかりで笑、
私が大阪を初訪問した太古の昔である高校の修学旅行時とたいして変わっていないようです。






そんなわけでせっかく掲載されたKバレエスタジオの大きな記事も東京では入手できず、取り寄せても良かったのですが幸い大阪には年10回程度通っていた頃は掲載を知った翌訪問時に
梅田近辺の販売所へ。午前中に突如やってきた、標準語をまくし立てて新聞購入希望を伝えてくる変わり者にも販売所の方、親切に対応してくださいました。
どちらも2013年の記事で、スタジオ設立30周年記念の夏公演恵子先生新作Logosリハーサルレポート(矢上三姉妹が並んでいらっしゃる)と夏公演の山本さんの写真付き記事です。
リハーサルレポートの方は公演当日に購入、夏公演記事は佐々木美智子バレエ団バフチサライの泉鑑賞で西宮に行く前に購入。
佐々木さんがヌラリ、山本さんがワズラフ、福岡さん圭吾さんが剣の踊り、紘也さんが貴族、
そして福岡さん圭吾さん紘也さんはダッタン兵士も兼任。今回のゲスト陣総出演でした。
今回のイベント、恵子先生と香織先生は愛情かけて育てた弟子たちを揃って近くから笑いつつ目を細め、時として心配そうにご覧になっていたに違いありません。
そして、最前列に座っていたところ数列後ろから馴染みある大阪弁が聞こえ、振り向くとにっこり微笑む久留美先生そして、
となりのトトロの如くニイーッと笑い「やっぱりな、一番前におるな〜!」と楽しそうに声をあげていらした
恵子先生の表情にに思わず肩の力がふっと和らいだ 2016年11月の国立劇場にて山本さんが日本舞踊家と共演され在原業平を踊られた公演のときと同様
今回も腰掛けた我が席位置を面白がっていてくださっていたら、喜ばしうございます。

大変長く、そして私情も多々含む記事で申し訳ございません。お読みいただきありがとうございました。

2人のコッペリウス

更新が長期間滞り申し訳ございません。皆様いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言の発令や対象告知が心臓に刺さりそうで
先週末にかけてはニュースから目を逸らし、水戸黄門に走った日もあった管理人でございます。
ゴールデンウィーク予定が飛びました、との方も大勢いらっしゃることかと存じます。

宣言前ぎりぎりで間に合った素敵なイベントもあり、明日辺りにはアップできるかと思っておりますが暫く滞っておりましたためひとまず更新。
新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』が4キャスト全て無料配信されます。
2人のコッペリウスのリハーサル動画がバレエチャンネルさんより発信されていますのでどうぞご覧ください。
山本さんと中島さん、年齢やキャリア、アプローチも全く異なるお2人の見比べも面白さの要素の1つかと思います。






配信の詳細はこちらから。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coppelia/

2021年4月18日日曜日

1年延期を経ての初の山形で牧版白鳥見納め 新国立劇場バレエ団 牧阿佐美版『白鳥の湖』山形公演  4月10日(土)《山形市》




新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』を観て参りました。バレエ団にとっては1年延期の初の東北公演、
そして2006年秋に初演以来上演を重ねてきた牧阿佐美さん版『白鳥の湖』は最後の上演です。
https://yamagata-bunka.jp/event/2021/04/10038469.html


※今回最後の牧版白鳥ですので、役名や出演者名が明記されていない方の中で特に印象深かった役は勝手に解釈するなりして()して綴っておりますがお許しを。
その他、前回の速報でもない速報と重複する部分もございます。

オデット:米沢唯
ジークフリート王子:井澤駿
ロートバルト:小柴富久修
王妃:本島美和
道化:井澤諒
(熱血)家庭教師:中家正博
王子の友人パ・ド・トロワ:池田理沙子 柴山紗帆 渡邊峻郁
(ワルツ陣を移動させてまで湖の景色を堪能する)貴族:福田圭吾

小さい4羽の白鳥:池田理沙子 奥田花純 五月女遥 広瀬碧
大きい4羽の白鳥:寺田亜沙子 柴山紗帆 細田千晶 渡辺与布
儀典長:太田寛仁 (妙に目を惹く)ラッパ手:渡邊拓朗 花嫁候補:加藤朋子 徳永比奈子 中島春菜 原田舞子 土方萌花 山田歌子
スペインの踊り:川口藍 益田裕子 速水渉悟 中島駿野
ナポリの踊り:奥田花純 五月女遥 原健太
ルースカヤ:木村優里
(野心メラメラ)ルースカヤ付き人:中家正博
ハンガリーの踊り:
細田千晶 宇賀大将
赤井綾乃 菊地飛和 北村香菜恵 廣川みくり 守屋朋子 横山柊子
髙橋一輝 中島瑞生 西一義 西川慶 樋口響 渡部義紀
マズルカ:
今村美由起 木村優子 関晶帆 廣田奈々
趙 載範 浜崎恵二朗 福田紘也 佐野和輝

2羽の白鳥:寺田亜沙子 細田千晶
大きい4羽の白鳥:渡辺与布 川口藍 玉井るい 益田裕子



米沢さんは最後の牧版白鳥の主役を背負う身としてか序盤こそ少し肩に力が入っていたようにも見受けられましたが、残像に至るまでもが美しいオデット。
プロローグでの人間の姫としてただ一人佇む場面においても何かが起こる予感を募らせる孤独感が宿り、
以前は侍女がいたもののいつからか1人となったこの場面も最後と思うと寂しい限りです。
漣のような細かな腕さばきやくっきりと描き出すフォルムは勿論のこと、全身が訴える悲哀が深く、
前回公演以上に前へ前へと出る姿勢が強かった点も印象に刻まれました。
オディールでは品を持ちつつも邪悪な光線を送り、誘惑が楽しくて仕方ない様子につい呑まれそうなほど。いつのまにか乗せられ罠に嵌っていく王子に同情です。

井澤さんは見るからにおっとり優しそうな王子で、穏やかであったであろう人生がこのあと波乱な試練続きに一変するとは知る由も無かったことでしょう。
王妃から結婚を命じられても、あからさまに嫌そうな表情は抑えたり舞踏会でもきちんと礼を尽くして
花嫁候補達と踊るなど育ちや人当たりの良さ窺わせる造形です。

米沢さんと井澤さんは先月中旬の大阪に続いての白鳥全幕。版は異なれど踊り込みの成果が一層表れたのか
決してドラマ性が深いとは言い難い、再会し許しを得てからは愛を丹念に確かめ合うこともなく(いつの頃からか悲哀と重々しさが融和したワルツがカット)
王子が担いでの最終兵器オデットマン攻撃展開なる牧版名物急ピッチ終幕も、心がぐっと入っていたのでしょう。気力を振り絞ってのロートバルト追い詰めは
後にも述べますが気迫のあるコール・ドや演奏の厚みも総動員して劇的な幕切れを焼き付けました。

小柴さんのロートバルトは目線が一段と鋭くなり、善良な人物や生き物の役柄が脳に刷り込まれていながら魔力にはっとさせられる箇所が増えた次第。
先にも述べた、誠に呆気ない終盤もみるみると弱って倒れていくさまをじっくり演出しオデットと王子の愛の勝利に貢献です。

パ・ド・トロワは全員経験者ながらこの3名の組み合わせは初で妙に新鮮味あり。池田さんは柔らかで無駄なくすっきりとした腕使いも良く、
柴山さんはきっちり且つメリハリに富んだ踊りで魅せ、 渡邊さんはジークフリートと親交のある他国から祝福に駆け付けた貴公子と見紛う高貴な姿で薄いブルー衣装が鳴呼爽やか。
女性2人を優しく見守りつつもサポート盤石で会話が聞こえそうな様子にも癒され、
明暗が今一つはっきりしないヴァリエーションの音楽においても曲調のちょっとした変化を自在に体現。
滞空時間の長い跳躍からのぴたりとした着地も爽快でございます。のちに王子の横へ行きワインを注ぐ所作も丁寧で品が宿り、眼福です。
さて山形でもやります髪型観察、今回は丸印。珍しくやや長めでしたが纏め方は自然でふわっとなびく様子も宜しく、
フランツもこのままの路線か、待ち侘びているところでございます。

前回の速報でもない速報を含めて何度か申しておりますが私が初めて劇場で観たバレエがABTの来日公演『白鳥の湖』で、
帰りの電車内でも同行者にはっきりと伝えていたほど最も印象深かった役がトロワでした。以来当時から30年以上の年月が経過し
その間国内団体及び来日公演合わせてもこれぞと唸らせる方になかなかお目にかかれず、
ようやくのトロワこそ2018年に牧版白鳥初挑戦で王子と兼任で踊られた渡邊さんでした。
最後の牧版白鳥となる2021年山形公演にて嬉々たる配役であったこと、幸せでございます。格式高く納得の牧版トロワ締めができました。
トロワの衣装は牧版白鳥の中でも特に好きなデザインで、女性はグリーンのレース地のような布で彩られ、男性は薄いブルー。
気品香る上品な色彩で、記憶が正しければ2006年初演少し前にオペラパレスホワイエにて開催された2006/2007シーズン演目説明会でも展示されていた気がいたします。

全国公演名物の珍配役もあり、主役そっちのけで観察してしまったのは中家さんの家庭教師。のんびりとした坊ちゃんをどうにか勉学に目覚めさせようと
とにかく熱血指導。そのまま叫び声が文字化して響き渡っていてもおかしくない雄弁さについ引き込まれ、目が離せず。
勉学の大切さを熱く説いているかと思えば囲んできた美女にはデレデレ、そしてお酒にもめっぽう弱く堂々熟睡笑。
それゆけ家庭教師なる物語が成立しそうで見てみたいと思わせる家庭教師は初めてでした。
また気位高く美貌の本島さん王妃が登場した際に一緒に入ってきた福田圭吾さんの貴族も双眼鏡握って集中鑑賞してしまった役柄で、
近くにいたワルツの2人を(1人は五月女さんだったか)移動させて湖の景色に感心しながら満喫。舞台の額縁が充実し過ぎると主役を見逃す事態に至り困ったものです笑。

それから白鳥群舞のレベルの高さは言うまでもありませんが、揃っているのは大前提で更に毎回違った印象を与えてくださるのも魅力。
今回は特に4幕冒頭のワルツにて、しっとりと物哀しく美を繋げて行く流れから一転してオデットと王子と共にロートバルトへの立ち向かいが
気迫のある展開で切り替えが見事。全身から1人1人の覚悟が覗き見え、群舞も主役と同等と再確認させるひと幕でした。
改めて思います、急ピッチで呆気ない終盤も劇的幕切れになったのは倒し勝利する側のオデット陣営と倒れ敗北するロートバルトの結集力があってこそです。

民族舞踊の力量にもたまげ、スペインは鋭い斬り込みと濃厚さでびしっと空気を引き締め、身体の切れ味が幾分も増した印象。
ナポリの軽やかさとほのぼの感の比率も絶妙で息もよく合い、ハンガリーの前半のゆったりした箇所でも間延びせず
ポーズ1つ1つのくっきりとした繰り出しも目を見張りました。一番驚かされたのはマズルカでしっかりとした軸を保ちつつ上体が実に豊かに音楽と溶け合ってうねり、
止まるべき箇所では型がいたく美しく出来上がって惚れ惚れしながら鑑賞。
ルースカヤ木村さんの瞬時に舞台の空気を変えるオーラも眩しく、冗長になりがちな音楽であっても優雅に麗しく魅せる術や
付き人として野心燃え盛る視線が3階後方席にまで届き慄いた中家さん(多分)にも驚嘆です笑。

そして忘れてはなりません、山形交響楽団の演奏。非常に高いレベルを誇るオーケストラと噂には聞いておりましたが想像を遥かに超え
序盤からゴージャスで厚みと張りのある演奏を届けてくださいました。 初の山形、最後の牧版白鳥に相応しい音楽で彩る舞台に居合わせ、感激です。
地元で根強い人気があり山響ファンも大勢いらしていた様子で、バレエファンと山響ファン双方が互いに分かち合い喜び合うような喝采に包まれていました。
山形で咄嗟に思い浮かべるのはさくらんぼ、ドラマ『おしん』、1999年に『孫』が流行した歌手大泉逸郎さんでしたが今回より山響さんも仲間入りでございます。

1年延期を経ての無事上演で出演者、オーケストラ、スタッフ、観客の喜びがぎゅっと凝縮した、大盛況な公演でした。主役から群舞に至るまで実に気持ちが入った披露で、
公演頻度も高かった牧版最後の上演を悔いなく終えようと力を尽くした舞台であったと見受けます。
東京での見納めではないと知ったときには寂しい気もいたしましたが山響さんの演奏に彩られ、新しいやまぎんホールを祝福する舞台となったのは幸運でした。
観やすく綺麗で床や椅子の模様も山形の伝統工芸が覗くやまぎんホールの作りも気に入り、是非ともまた山響さんとの共演による山形公演を継続していただきたいと願っております。

さて、次回の白鳥(2021年秋)からは一新してピーター・ライト版。色鮮やかで清々しい祝福感に満ちた牧版とは正反対な演出です。
昨年1月半ばの清泉女子大学でのラファエラ・アカデミア講座にてスウェーデン王立バレエ映像を少し鑑賞したときの印象を以下重複箇所多き点は悪しからず。
一見純古典な衣装装置であっても国王の葬儀から描き、王室礼賛な雰囲気がほぼ無く、黒を基調とした衣装装置美術に彩られ何処か陰鬱。
吉田都監督も主演を務めた1989年のサドラーズウェルズ来日記事は繰り返し眺めておりましたが
2015年のバーミンガム来日公演でも鑑賞しておらず実は映像で目にしたのも初でした。
『白鳥の湖』といえばお祭りわっしょいな祝祭感や終盤には王子による羽根捥ぎ取りと必殺連続回転跳躍でロートバルトを追い詰めて倒す
勧善懲悪明確なセルゲイエフ版を好んでいるため、いくら王子の感情を事細かに描いているとはいえ葬儀から始まる版なんぞ好きになれそうにないと
新国立劇場バレエ団の来期2020/2021シーズン上演作品一覧を眺めながら思っておりましたが(但し2020年秋上演の予定がドン・キホーテに変更し、2021年秋へ延期) 映像で観てみると、王妃を避けたがったりベンノに駆け寄ったりと兎にも角にも王子の感情表現が想像以上にまあ細かい。
踊るテクニックのみならず心の機微の表現に相当卓越した人でないと場を持たせるのが非常に困難な役柄であると分かり
そう考えると当時2020年1月の時点で10月24日(土)夜公演のジークフリード王子に決定していた渡邊さんはぴったりであろうと捉え、
更に同年11月に鑑賞したシェイクスピア・ソネットでも暗鬱な感情を静かに紡ぎ出していく表現が抜群に上手く、
そう考えて行くと案外好きになるプロダクションかもしれないと1年4ヶ月前に観たスウェーデンバレエの映像を思い出して姿を重ねた次第です。


本来ならば牧版白鳥総括を今回行うべきでしたが、延期後の山形公演はピーター・ライト版を上演と一時告知が出ていたため
牧版白鳥初演から勝手気ままに振り返る記録をうっかり昨春に行ってしまいました。初演以来ほぼ全公演観ており長い記事ですが宜しければどうぞ。
ザハロワ直前降板で厚木三杏さん、川村真樹さんとウヴァーロフペアが誕生した2010年など懐かしく思い出します。
https://endehors2.blogspot.com/2020/04/blog-post.html

※ここまでお読みいただきありがとうございました。 日帰りながら以下写真が何枚もございます。昨秋の札幌公演ほどの量ではありませんが、
気力と忍耐力に自信のある方はどうぞ続けてご覧ください。大型連休前の慌ただしい最中にそんな暇はないと叫びたい方は恐れ入ります、次回をお待ちください。



東京駅にて初乗車、山形新幹線つばさ。朝6時過ぎのため、まだ半分眠っている状態の管理人。飛びはしませんが翼をはためかせて白鳥達のもとへと山形へいざ出発。



窓が大きく景色が観やすく、朝の晴れ間が気持ち良く視界に入ります。戸田ボート場あたりです。



那須牧場を過ぎて東北入り、新白河駅を通過。



ニトリ白河店が見えます。白河自動車学校も線路近くに位置しています。景色に向かって手を合わせた次第。



東北のほっこりなキャラクター達。福島物産館でもキビたんは目立ちます。山形のきてけろはさくらんぼの飾りがお洒落な旅人です。



チケットの公演日程表記は2020年4月4日。延期前の日程チケットでもそのまま入場可能と告知が昨年の段階であり、
購入した2019年12月中旬以降1年4ヶ月の期間を経てようやく出動。部屋の目に付き易いところに洗濯バサミで留め、
出演者やスタッフ、オーケストラの皆様と同様チケットも出番を待っておりました。
学校一斉休校、ソーシャルディスタンス、テレワーク推進、1世帯に2枚のマスク配布、PCR検査、緊急事態宣言、ワクチン接種開始、と
この1年数ヶ月を眺めてきたチケットと思うと重みがずしり。



山形駅到着。



駅から徒歩10分程度の霞城公園、桜が満開でした。朝早いためかまだ人もまばら、ゆったり散策です。



霞城公園内に建つ、桜に覆われた旧済生館本館。詳細はこちらをどうぞ。
https://www.pref.yamagata.jp/110001/sangyo/sangyoushinkou/him_top/him_maincat1/him_15.html



回廊のような作り、不思議な空間に思わず息を呑みます。



アルブレヒト、の名前にどきりとしますが、金沢医学校から招かれたオーストリア人医師。
各部屋は診察室、待合室が復元され、医療器具も展示。当時に時間旅行した心持ちになります。



一部階段から頭上までが低く、身長163㎝の私でも頭が衝突しそうな空間。歩く際にはお気をつけください。



お昼は駅すぐそばのビル2階、クラシック音楽が優雅に流れるお店米沢牛の案山子にて1人静かに焼いた、柔らかな肉質の米沢牛。
じゅわりと響く音と、クラシック音楽が調和します。朝日町の赤ワインで乾杯です。
野菜の焼き加減がなかなか難しく、気づけばピーマンが焦げかけた笑。
ただ、札幌での2年連続同じジンギスカン店訪問時の玉ねぎ焦がした事件の経験が生きたのか、丸焦げにはならず。



やまぎんホール外観。和の家屋を思わせる渋い作りです。ロビーには昔使われていた椅子も残され、
座ることも可能。かなり低い作りで、歴史を感じます。



無事終演、1年越しの上演に1人で乾杯。帰りは地酒米鶴で。鶴の目がつぶらで可愛らしい絵です。



キャスト表を眺めながら。脇が誰であれ初の山形最後の牧版白鳥を観ようと行く気満々ではあったが、トロワの名前が視界に入って思わずニンマリ。



豪勢なお刺身、これで1人分。心は浦島太郎です。今夏の竜宮再演も楽しみで、昨夏に続き髷の違和感が無さすぎるサムライ太郎にお目にかかれますように笑。
お通しの県産野菜のシャキッとした瑞々しさも美味しく、お店の方の素朴で優しい語り口も好印象なお店でした。
帰りの新幹線内でお土産の写真でも撮る予定でしたが、発車早々の18時過ぎから
コートを布団代わりに掛けてすっかり熟睡。朝も早かったため、仕方ないか。
1年越しの山形、短時間でしたが満喫いたしました。次回はレトロな洋風建築が並ぶ鶴岡や
おしんの舞台にもなった、木造旅館が立ち並ぶノスタルジックな銀山温泉にも足を運びたいと思っております。
そして芋煮、季節が合えばさくらんぼも味わいたい。
さらば山形、また会う日まで!!

2021年4月12日月曜日

【速報でもないが】新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』




4月10日(土)、新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』を観て参りました。バレエ団初の東北公演であり、私自身人生初の山形上陸です。
https://yamagata-bunka.jp/event/2021/04/10038469.html

詳細内容はまた週末あたりに書いて参る予定でおりますので簡単に。まず、1年延期を経ての無事上演で出演者、オーケストラ、スタッフ、
観客の喜びがぎゅっと凝縮した、大盛況な公演でした。主役から群舞に至るまで実に気持ちが入った披露で、
公演頻度も高かった牧版最後の上演を悔いなく終えようと力を尽くした舞台であったと見受けます。

それから山形交響楽団の演奏が見事なもので、非常に高いレベルを誇るオーケストラと噂には聞いておりましたが想像を遥かに超え
序盤からゴージャスで厚みと張りのある演奏を届けてくださいました。 地元で根強い人気で定期演奏会もチケットの売れ行きが良いらしく、山響ファンも大勢いらしていた様子です。
お目当ては異なっても結果としてバレエ好きと山響ファンが互いの愛着ある分野、団体を讃え合っているような喝采に包まれたカーテンコールでした。
昨秋の札幌公演と少し似ていて、拍手が鳴り止まず客電がついてもなかなか観客が帰りたがらず。1年待ち侘び、依然として緊迫な状況が続く最中に
無事上演できた喜びがそのまま表れていたのでしょう。全国公演名物の珍配役もいくつかあり、その辺はまた後日。

それと1点だけどうしても。主演以外は当日発表で入場しプログラムを開くと、牧版締めのトロワに歓喜。
何度か申しておりますが私が初めて劇場で観たバレエがABTの来日公演『白鳥の湖』で、帰りの電車内でも同行者にはっきりと伝えていたほど
最も印象深かった役がトロワでした。昭和であった(では無かった、平成元年)当時から30年以上の年月が経過いたしましたが、
最後の牧版白鳥となる節目公演にて嬉々たる配役であったこと、幸せでございます




ひとまず山形で味わったものを紹介。クラシック音楽が優雅に流れるお店米沢牛の案山子にて、1人静かに焼いた柔らかな肉質の米沢牛。朝日町の赤ワインで乾杯。



帰りは地酒を。魚いち分店で米鶴で乾杯。



豪勢なお刺身、これで1人分。心は浦島太郎です。今夏の竜宮再演も楽しみで、昨夏に続き髷の違和感が無さすぎるサムライ太郎にお目にかかれますように笑。
お通しの県産野菜のシャキッとした瑞々しさも美味しく、お店の方の素朴で優しい語り口も好印象なお店でした。

2021年4月7日水曜日

【バレエカレッジ】バレエ音楽の魅力と秘密《第16回》 「眠れる森の美女」後編(全3回)第2幕~第3幕




遅ればせながら、オン・ポワント主催の井田勝大さんが講師を務めるバレエ音楽の魅力と秘密《第16回》 「眠れる森の美女」後編
(全3回)第2幕途中~第3幕をオンラインアーカイブで視聴いたしました。2回の予定が3回となり、今回で寂しくも無事終了です。
https://balletcollege-maestro16.peatix.com/?lang=ja

眠りが決していたく好きな作品ではないと言いつつも3幕にも好きな曲がいくつもあり、特に宝石。ピアノの音色が上手く生かされた曲であると感じておりましたが
オーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥでも同様に使用されているとされる理由を含め今回納得。
また私は好んで観て聴くものの近年の上演時間短縮化事業仕分けで真っ先に対象となるであろう『シンデレラ』場面が挿入上演された事情や
ポロネーズを取り入れたのは当時の潮流を汲んでいたため等、初めて知る事柄が多々あり。また『白鳥の湖』と比較してのチェロの使い方にも言及され
先日逝去された脚本家橋田壽賀子さんの代表作の舞台となった県にて今週末全幕鑑賞するため、
現地のオーケストラ演奏にもじっくり耳を傾けて参りたいと思っております。

井田さんのこだわり逸話について思わず同意してしまったのが、グラン・パ・ド・ドゥのアントレを省略したくないお考えである点。
セルゲイエフ版では長々と演奏され、新郎新婦の再びの登場(3幕幕開けに登場し、赤頭巾ちゃんや青い鳥ら招待客をお出迎えしたのち
一旦引っ込んでお色直し?して登場する)にお小姓や妖精達も再び集結して場を盛り立てたりと絢爛豪華な祝宴がいよいよ極致に達する期待感を
溜めに溜めさせる効果があるため私としては好みなのですが、英国系の場合数秒で終了する簡潔な登場であると記憶。
昨年9月にバレエ部門で井田さんが指揮をなさった新国立劇場のオペラとバレエ研修所主催で上演されたヤングアーティストガラでは、
観客間に賛否両論はありましたがガラであっても時間をかけて演奏されていました。今思えば井田さんのこだわりが出ていたのでしょう。嬉しく鑑賞いたしました。

現地参加者、オンライン受講者双方が聞き易く見易いよう配慮の行き届いた講座で、機材の準備から楽譜の映し方や話す表情を見せるタイミング等
今やごく当たり前のように行われているとつい思ってしまうオンラインの対応は実に労力の要る作業のはずで、主催者の方々には感謝が尽きません。
本当にありがとうございました。全3回、今回は自宅にて楽しませていただきました。

次回は現段階では未定ですが『ドン・キホーテ』を解剖し、あとから加わった曲をも掘り下げていきたいとのこと。
来月下旬はKバレエカンパニーにて上演されますので、合わせて楽しむのも良さそうです。



※バレエチャンネルさん主催の企画として4月24日(土)13時より、神保町ブックハウスカフェにて誠に素敵なイベントがあります。振付家・ダンサーとして活躍された
矢上恵子さんの作品について取り上げ、豪華過ぎる愛弟子達も大集合です。 現地参加は現在売り切れのようですが(キャンセルが出る可能性もあり?詳細はホームページをご確認ください)オンラインはまだまだ受付中です。
作品も何本か上演される予定で、関西圏以外ではなかなか上演機会がなかった恵子先生の作品に触れ、更には愛弟子達のお話も聴けるまたとない機会です。
https://bch-yagamikeiko.peatix.com/view



※上の写真、『眠れる森の美女』初演から100年目であった1990年の日本バレエ協会にて全幕上演にて
客演に迎えたパリ・オペラ座バレエ団のノエラ・ポントワとローラン・イレールのグラン・パ・ド・ドゥ舞台写真が掲載されたダンスマガジン。
日程が3月6日〜8日(日)であったそうで、今年2021年のコンテンポラリーと古典の眠り2本立て協会公演と同時期であったと思い起こされ
残念ながら32年前の公演を鑑賞しておらず、悔やまれます。中身を開くと、赤頭巾に井上バレエ団の藤井直子さんらしき方がいらっしゃいます。
表紙の項目に目を向けると、パリ・オペラ座の芸術監督がルドルフ・ヌレエフからパトリック・デュポン体制へ移行した時期っであったもよう。
古典の大作の改訂に度々踏み切り次々を若手を見出して黄金期を築いたヌレエフの後を継ぐのはどれだけ重圧があったことか。
タイミングが重なり考えさせられる表紙です。

2021年4月4日日曜日

コンテンポラリー界の重鎮とDTFの結合 舞姫と牧神たちの午後2021 3月26日(金)〜3月28日(日)




3月26日(金)〜3月28日(日)、新国立劇場小劇場にて舞姫と牧神たちの午後2021を4回鑑賞して参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/fauns-and-nymphs/

舞台写真も一部掲載されています。フェイスブック等SNSにこの他何枚かの写真もございます。
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/2406232659523459/?d=n


※所謂コンテンポラリーダンス大集結な公演に殆んど足を運んでいない且つ教養に乏しい者が書いており、
作品によって長短まちまちな上に随所に頓珍漢感想があるかと思いますが悪しからず。


Danae
【出演】木村優里&渡邊峻郁
【振付】貝川鐵夫
【音楽】ヨハン・セバスティアン・バッハ

2019年のDTF初演時より更に官能性が濃く身体の交わる場の滑らかさや情感の深みが電流走る感覚を呼び起こし、舞台近くの席での鑑賞時は序盤から卒倒寸前。
音楽が舞台用に演奏録音された点も喜ばしく、全体の展開がスムーズになり、ダナエとゼウスの情事に恍惚と魅せられ沼に浸かった4回でございました。

木村さんが色気を醸す女性が似合うダンサーとなり、身体の使い方も奥底へ潜るようにより雄弁となってゼウスに愛されてしまったが惑いつつも
幽閉された孤独感から救ってくれるかもしれぬ淡い期待をもそっと募らせ、やがて身を委ねていく流れを艶かしく体現。同性でも胸の高鳴りが止まらずでした。

渡邊さんは音楽無しの空間を歩いての登場から神ではあっても魔物のようなおどろおどろしさを纏い、静けさの中から危うさを放出。
引田天功のイリュージョン(でも出来ないか)ではありませんからどうしたってご自身が本物の黄金の雨滴と化して舞台に出現は不可能ながら
冒頭の片手を翳して掌から黄金の雨を降らせていく仕草が、禁じ手と分かっていながら欲に背けぬゼウスの覚悟を彷彿させました。
ダナエに絡んでいくさまがいたく生々しく、理性の螺子がすっかり外れダナエにのめり込んでいきながらも
単に柔軟云々ではなく身体の表現の可動域が実に広く、ほんの一瞬に生じる間の取り方や音楽との溶け合いながらダナエと一体化していくよう
いかにして美の結晶にして観客の目に刻むか熟考されているのでしょう。見せ方にも長けていて、単調な激しい抱擁に止まらぬ
美しい官能画を描写していたと捉えております。空間や音楽とのバランスの掴み方も目を奪われました。
前回は作品を観るだけで手一杯だったが(4回公演全て観たはずが)最後、ダナエのスカートを脱がせて鷲掴みにして胸に抱いたまま床で蹲っているのは
身篭らせた後悔の念も何処かに残ってるのか、他者を寄せ付けぬ威厳ある登場から最後は悶絶哀れな状態に一変。ゼウスの心理に迫りたくなるも胸を突く幕切れです。

それにしても、黒タイツのみで上半身裸体なる至極シンプルな衣装でも1ミリも余分な脂肪が無い且つ肩や腕が逞しく肉体美に口あんぐり笑。
ミケランジェロが生きていたら肉体は勿論、斬られそうに鋭く狂おしい視線にも惚れ込み
間違いなくすぐさま彫刻刀を手にして作品のモデルにしたい欲求に駆られたでしょう。

さてダンス公演でもやります髪型観察、この度も二重丸。先月のバレエ協会『いばら姫』銀髪以降、今後の客演予定先のリハーサルにて
青に近い不可思議に変色してしまった?写真を拝見し、ゼウスこのまま決行かそれとも黒戻しか先行きが気がかりでしたが
元の黒髪に戻り、自然な纏め方で一安心。やや切れ長で瞳が深く眼力の鋭い古風な容貌が一段と整って見えうっとりです。

※貝川さんの作品は禁じられた情事から子供達大勢出演作品まで実に幅広く、2019年にBALLET NOW (バレエナウ)さん発表会で上演された、
オリジナル作『長靴を履いたネコ』は会場一体となって幸せ溢れた秀逸作でした。保育士にも見えた、 悪役ながら子猫やぬいぐるみにも興味津々な魔王も忘れられません。


かそけし
出演酒井はな&森山未來
演出・振付:島地保武
音楽・演奏:藤元高輝(gt.)

大伴家持の歌から構想を練った作品とのことで、擦り付けるような音を手と声でも響かせていくユニークで仕掛け多々な振付や
膨らみのある群青色衣装も印象深く残ります。酒井さんの細身な肢体から繰り出す角度の素早い切り返しや小刻みな躍動は年齢を考えると驚異的。
中盤にて回転しながら舞台袖に入っていった後に壁に激突して声出ししながら再登場する箇所があり、バレエでもコンテンポラリーでも
基本舞踊公演にて声による表現は決して好みではありませんが(中村恩恵さん振付シェイクスピア・ソネットを除く)
再登場すると、打って変わって折り目正しくクラシック・バレエの歩き方で進み出て『テーマとヴァリエーション』のパロディのような振付を踊られ
舞踊年譜を遡る流れにも見せる効果あり。森山さんの手を取りながら横並びで踊るもわざとサポートを崩され
ずっこける展開もさまになっていたのはクラシックの基盤があるからこそでしょう。

劇場で鑑賞した『世界の中心で、愛をさけぶ』やドラマ『ウォーターボーイズ』など映像作品の印象が強い森山さんが踊る姿を初めて観られたのも嬉しく
想像以上にしなやかで自由自在な踊りこなしに驚きを覚えた次第です。(挙げた映像作品も目新しくはなく、遅いタイミングでの舞台鑑賞で失礼)
2日目夜、酒井さんが捌けるときに後方に設置された藤元さんの譜面台に衣装を引っ掛けてしまうハプニングがありましたが、すかさず森山さんがフォロー。
再度登場して挨拶した後の捌けるときは森山さんが率先して両腕でガードレールを作って引っ掛け防止を演出。最後まで予期せぬ出来事と笑いに包まれました。


Butterfly
【出演】
池田理沙子&奥村康祐(3月26日(金)・27日(土)18:00)
/五月女遥&渡邊拓朗 (3月27日(土)13:00・28日(日))
【構成・演出】平山素子
【振付】平山素子&中川 賢
【音楽】マイケル・ナイマン、落合敏行

池田さんは初日こそ硬さや段取り通りな様子が目立ちましたが2日目は正面からのぶつかりや藻掻きっぷりが全身から響いて変化が表れ
奥村さんは本島美和さんと組まれた2012年上演時も観ており、とにかく若く初々しかった頃に比較すると年齢を重ねて達観すら感じさせ
飛び込んでくる池田さんを危な気なく包み込むように導いていらした印象です。

初組み合わせの五月女さん渡邊拓朗さんは強弱や静動の付け方も巧く、ギリギリの所から繰り出す緊張感あるポーズ一瞬一瞬の間から閃光が差し込み
古典で組むならば狼と赤頭巾ぐらいかと思われる身長差をむしろ生かしたフォルムで語る鮮烈ペア誕生に居合わせた思いです。
Facebookでも紹介されていた写真での、2人の脚のラインが平行四辺形を描いた瞬間の切り取りも見事。
五月女さんはコンテンポラリー経験も豊富で初挑戦とは言え披露前から安心感すら持っておりましたが、
拓朗さんの高身長を持て余さずに操る身体能力にもびっくり。体格もがっちりとして貫禄も十二分ですが、
ちらりと覗く初心な青年感もまた作品によく合っていたと説得力がありました。
先述の通り2012年に初見した作品ですが、蝶の生命力をこうも儚く激しく描くのかと今回も驚嘆です。2組それぞれ全然違った魅力が開花していました。


極地の空
出演・振付:加賀谷 香&吉﨑裕哉
音楽・演奏:坂出雅海

天守物語を題材にした振付で、とうりゃんせの童謡も挿入の不思議な和の趣。舞台後方の台座に腰掛けた演奏者坂出さんが、世を司る仙人にも見えました。
道しるべが出来上がったりぽっかりと浮かび上がったりと1階後ろの席から鑑賞すると光の当て方が実に効果的。


Let's Do It!
出演・振付山田うん&川合ロン
音楽:ルイ・アームストロング ほか

長い髪のプロフィール写真とは印象ががらりと異なるおかっぱ髪型が可愛らしい山田さんと川合さんがお洒落な曲で戯れるように踊り、肩肘張らずに楽しめた作品。
肩車から急降下しての股の潜り抜けなどあっと驚かせる無邪気な要素も散りばめられ、夏に上演の山田さん振付『オバケッタ』も気になっております。


「A Picture of You Falling」より
【出演】湯浅永麻&小㞍健太
【振付】クリスタル・パイト
【音楽】オーウェン・ベルトン

世界各地のカンパニーに作品を提供している振付家と耳にしながらも遅ればせながら本公演にて初鑑賞。
流れる中に自然な所作が混ざった振付に目が行き、タンクトップやゆったりしたシャツといった一見家での寛ぎ時間に着用していそうな衣装が
座ったり隣に並ぶなど生活の一端であろう行為から徐々にダンスの動きとなっていく過程には実に好ましいものであったと観終わってから気づいたのでした。
小尻さんは22年前のローザンヌ映像は今も覚えており、ラ・シルフィードのジェームズを軽快に踊っていらして、当時新設されたプロフェッショナル賞を受賞と記憶。

初日(ダブルキャストの翌日バタフライも)出演者と振付家が異なる場合は振付家は舞台には登壇せず
各演目後に出演者からの合図にて客席で起立し拍手に応える形でしたが、NHKのど自慢での司会者が歌い終えた出場者の親族友人を探す光景にちょいと似ていて
面白く観察笑。初日は2階席でしたので出演者と振付家の客席を挟んだやりとりキャッチボールがよく見え、貝川さんはきちっとお辞儀。
島地さんは両手を掲げてアピール、平山さんも手を突き上げて出演者を大いに讃え、平山さんが最も親族応援団な雰囲気があり意外な一面を目にした気分です。

難解な作品もありましたが、知人曰く紅白並みに豪華なコンテンポラリー界の重鎮が揃った公演を4回も鑑賞できたのは幸運。
そうは言っても結局はトップバッターの裸体ゼウスを崇めての集中に終わった感のある年度末の金土日でした。
いつかビントレー版『カルミナ・ブラーナ』における性欲に負け遂には服を脱ぎ捨て、道を踏み外し罠ヘと陥っていく生真面目な神学生3役にて鑑賞できる日を待ち侘びております。





余韻に浸ってゼウス降臨ハイボール。黄金色の超炭酸製造サーバーゼウスタワーで作る、強炭酸の刺激です。
名称もサーバーの色も嬉しいこった。レモンも入って爽やかさもあり。

2021年3月30日火曜日

古典の格は崩さずに唸らせる山本隆之さんの解釈と切り口 吹田市制施行80周年・メイシアター開館35周年記念 第186回吹田市民劇場 『白鳥の湖』 3月21日(日)《大阪府吹田市》




3月21日(日)、吹田メイシアターにて吹田市制施行80周年・メイシアター開館35周年記念第186回吹田市民劇場『白鳥の湖』を観て参りました。
監修は大原永子前新国立劇場舞踊芸術監督、芸術監督・演出・改訂振付は新国立劇場バレエ団オノラブルダンサー山本隆之さんです。
http://www.maytheater.jp/series/2103/0321_ballet.html

オデット:米沢唯
ジークフリード王子:井澤駿
悪魔ロットバルト:宮原由紀夫
悪魔の娘オディール:伊東葉奈
王妃:田中ルリ
家庭教師:アンドレイ・クードリャ
王子の友人:石本晴子 北沙彩 水城卓哉
道化:林高弘



米沢さんは音楽を隅々まで使って透き通る美と強さを魅せ、オデットの羽ばたきは実に細やかで漣の如き揺らめきが哀しみを語っているよう。
内向きに蹲ったかと思えばぱっと羽を広げるように大胆さも表し、音楽のちょっとした間や余韻にも忠実な踊りで舞台を牽引なさっていました。
黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥでは珍しくフェッテで少し失速しかけてしまい米沢さんお得意のトリプル盛りのスーパー滑らか回転ではなかった点に驚き
恐らくは沸き上がる大阪名物な手拍子に呑まれてしまったかと推察。しかしさりげなく投げかける視線にすら妖気がすっと宿り
肌を静かに摩られている不穏な感覚が背筋を走って誘惑の罠に今にも落ちそうに。

井澤さんは2月公演『眠れる森の美女』を怪我で降板され、回復が心配でしたが、慎重さは見られたものの丁寧な踊りで場に華やぎを与え無事復帰。
王子の鬱屈感をより明示する演出を体現し、またパ・ド・ドゥでの視線の合わせ方はしっかりと、サポート時の手の置き方も一層落ち着いた所作に見えて
気持ちの込め方も宜しく、パ・ド・ドゥの師範な山本さんの指導も入った成果でしょう。
米沢さんと井澤さんが組んで新国立牧阿佐美さん版白鳥に主演されたのは2018年ですが、それ以前まで(正確には何年までであったかは記憶無く申し訳ない)は
残っていた、王子が過ちの許しを乞う湖畔の場での悲哀を重々しく引き摺るワルツが今回復活。
オデットと王子、そして群舞が交互に囁くように踊る静かな劇的展開を見せて行くワルツで、上演の短時間化における事業仕分けでカットされたであろう
この曲の復活は喜ばしい限り。離れてはくっつく2人の悲痛な叫びの呼応が伝わり、米沢さん井澤さんペアでようやく鑑賞できたのは嬉しい驚きでした。
井澤さんの見るからに王子な容姿は好評であったようで、大阪の皆様にも受け入れていただき初台で毎度観ている者としては一安心。
大阪ではなかなか踊る機会が無かっただけに満員御礼の吹田の劇場でのお披露目となり何よりです。
(記憶の限り私も足を運んだ2018年のクレオ中央大阪で開催されドン・キホーテハイライト3幕バジルやシルヴィア、
英国の水兵さん達がコミカルに踊る某作品にも出演された Ballet Studio Mさんの発表会は貴重な大阪舞台であったのでしょう)

王子の友人トリオの爽やかさも印象深く、快活で明るい石本さん、おっとり優美な北さん、華と安定感のある水城さんとバランスも好印象。
抜群の身体能力で軽やかさも満点な林さんの道化も場を盛り上げ、しかもただ技を次々繰り出すのではなく1幕ではワルツの人々、
3幕では貴族とも語らうように踊り宮廷を纏める活躍で、マイペースそうな王子の優しい相棒な存在感も微笑ましく映りました。
要所要所で場を引き締めてくださったのは田中さんの王妃。長い裾のドレス捌きもお手の物で、威厳ある気高いお姿で登場すると緊張感が走って空気は一変です。

上演前から何かと話題になっていた吉本興業所属のバレエ芸人こと松浦景子さん(けっけちゃん)の3幕道化は
ゴージャスな真紅の衣装に身を包み表情も濃く登場の瞬間から吉本オーラ発散。ただテクニックは盤石で脚力も強そうであり、小柄ながら全身を目一杯使い
舞踏会幕開けを盛り立て、そして宮廷に似つかわしい存在であるようやり過ぎにはしていなかった点も好ましく感じた次第です。
松浦さんは動画配信も多くなさっていて人気シリーズ「バレエあるある」も拝見し笑わせてもらったこともありますが、
最も印象に残っているのは成長期の無理なダイエットの危険注意喚起動画。お母様が熱心な余り学校へ持参のお弁当も
偏った食材且つごく少量であったりと非常に過激な減量を繰り返していたと告白され
ずんぐりむっくり酒樽体型な素人の私が言うのもおかしいかもしれませんが、近年はコンクールや発表会の写真や映像も目に付きやすくその度に感じるのは
成長期であるはずの年齢の生徒さんの細過ぎる身体に、月経不順や怪我の心配を募らせること。
勿論先生によってはきちんとした食事や規則正しい生活の重要性を教えている方もいらっしゃるとは思いますが
男性と組むパ・ド・ドゥやコンクールと諸々事情はあるにせよ、むやみやたらな痩身減量圧力や夜遅い時間までの練習も如何なものかと私個人は思っております。
一時だけは細く綺麗になったとしてもその後の人生のほうが長いのですから。松浦さんの注意喚起が広まればと願っております。

山本さん版白鳥の最大の特徴とも言えるのは、オディールの存在。挨拶文によれば、舞踏会で登場するだけの出番に疑問を感じていらしたそうで、
存在をぐっと強くするためプロローグからロットバルトと共に登場させて嘆き悲しむオデットと向かい合い、妖しい光で支配する流れを構築。
オディールのメイクは一見映画『ブラックスワン』かと見紛う色味に最初は度肝を抜かれたものの、よく見ると薄い青や白、赤を絶妙に重ねたアイラインで
睫毛も光を帯びて青っぽくなったりと過剰に邪悪にならず、頭に付けた羽飾りとの統一感ある色彩で角度によって様々な色合いが覗く工夫が凝らされていました。
メイクデザインは新国立劇場バレエ団の画伯の1人でTシャツも好評であった廣田奈々さんです。
またオディールは2幕の湖畔の場にも出没し、白鳥達の群舞に挟まれた状況に斬り込んでブルメイステル版などで踊られるソロを披露。
オディール役の伊東さんは技術達者でぶれぬ軸の持ち主で空間の使い方にも長け、白鳥達を惑わす不気味なオーラを漂わせダイナミックに支配し
白鳥たちは仲間が踊るときとは異なり顔や身体を背け、怯えや拒絶を体現するポーズへと変化して
オディールの怖さを魔力をくっきりと浮かび上がらせ、常時支配下にある設定が伝わるひと幕でした。
湖畔の場に突如オディールが入ってきたら幻想的な世界観が崩れるとお思いの方もいらっしゃるでしょうがそこは心配無用で、
橙色や水色が何層にも重なる万華鏡のような照明に切り替わってオディールと調和し、違和感が無し。
雪景色の中に突如ネズミ達が乱入して美しい銀世界が台無しに近い(までとは言わぬが)某国立の『くるみ割り人形』とは大違いなわけです笑。
(今年から来年にかけ大晦日と正月も通いますが)

尚、所謂「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」は米沢さんが新国立の妙にすっきりとしたオディールの衣装で踊り、
窓辺にオデットが現れ王子が混乱するときにはプロローグから登場しているオディールが出現し王子を益々惑わしてはさらりと消え去る展開。
王子でなくても目の前で起こっている現象を把握できぬ恐怖感に襲われる、背筋がぞくぞくと冷ややかさが走る演出で
終幕もロットバルトと共に最後までオデットと王子を追い詰めるも遂には愛の力に負け揃って倒されてしまうフィナーレまで
オディールに焦点を当てた斬新且つ古典の流れを崩さぬ切口が唸らせました。

焦点を当てていたのはもう1つ。王子の鬱屈した心や葛藤で、例えばパ・ド・トロワのアントレのワルツが終わり
そのまま平和なヴァリエーションに移るかと思いきや、席に腰掛けていた王子が立ち上がり、晴れ晴れと祝祭感に浸る人々とは正反対に不安そうな表情のまま
大概は1幕の終盤に踊られるソロを披露。薄暗い舞台上で1人きりではなくお祝いに訪れた人々までもが心配そうに見守る中での披露であるため
祝福どころではない鬱々とした内面が広がりを見せて行くような説得力のある演出でした。またトロワがただ登場して踊ってお終いな独立3人組ではなく
アントレの後に不穏な空気を纏って踊る王子を励ますようにヴァリエーションへと移るため人物関係が密接に、物語に一貫性があるとも見て取れました。
そして3幕舞踏会はファンファーレにて王妃とは登場せず、花嫁候補達の登場でようやく王子到着し大遅刻。
しかも王妃に促されながらも俯いた表情で半ば嫌々着席。リアリティがあって面白いと思えた人物造形です。
グラン・パ・ド・ドゥでは民族舞踊のダンサー達も皆立ち上がって前のめりになるように2人に釘付け状態となり、
宮廷全体が摩訶不思議な空間と化していく描写を後押ししていた印象です。

これまでに観た白鳥の湖で最たるレベルであろう照明の色鮮やかさもわすれられず。
オディールとロットバルトが佇む場面には深みのあるルビー色を帯びた色彩が輝き真っ赤な満月かと思わせる月が現れたり
白味が強い光で白鳥達の神秘性を引き立てたり、先述の通りオディールの斬り込みでは橙色と水色を重ねた不思議な色合いを当てるなど
色とりどりの変化に目を見張りました。背景画であっても岩や湖の描かれ方に奥行きがあり、
照明の当て方も加減が自在なのか立体画に見え、これまた驚きの連続。 舞台がそのまま自然の森の湖へと繋がっている錯覚すら起こさせたほどです。

それから、プログラムをよく読まぬまま開演を迎え、驚倒寸前となったのは幕が開き、視界に入ったのは馴染み深い衣装達。
殆どが新国立劇場で上演している牧阿佐美さん版の衣装だったのです。舞踏会の開幕は余りの豪華さに拍手が沸き
2006年11月の初演からかれこれ50回は観ているであろう牧さん版の衣装も見納めと言われている
来月の新国立劇場バレエ団初の東北公演である山形公演『白鳥の湖』を前に鑑賞できるとは、そして関西の方々の着こなしも美しく喜びが二重三重と増幅でした。
更には、1幕のワルツからして皆所属先が違うとは思えぬ一体感に感激。普段活動をしている場所は違っても、
山本さんを慕うお気持ちは共通で心を一つにさせたのでしょう。幸福感が零れる序盤から胸が熱くなった次第です。
大阪で知り合った方や、関西の何かしらの舞台で拝見した方々が舞台に勢揃いし、レッスンでたった1人標準語で喋る管理人にも優しくしてくださった方や
初級クラス受講ながらお上手で見惚れていた方、その他劇場やお食事の席で会話を交わした方やスタジオ公演のチケット申し込み時に
電話で対応してくださったと思われる方など、関わりのある方を目にしては嬉しさが込み上げたり
直接の顔見知りではない方でも関西の舞台で何度も拝見していると勝手に知り合いと思い込んでしまったり(身勝手ですみません笑。関西でバレエ観始めて早15年か)
遠方在住の親類縁者のような心持ちになってしまったのも正直なところです。

カーテンコールには山本さんもご登場。それはそれは爽やか高貴なお姿で「芸術監督」の登場でこうにも興奮したのは、
人生初のバレエ鑑賞である1989年のABT来日公演『白鳥の湖』におけるミハイル・バリシニコフ以来でした。
そういえばこのときも演目は白鳥で芸術監督であったバリシニコフ自らの改訂版。
後々上演の機会はすぐさま減ったようですが、山本さん版はこれからも上演を重ねて欲しいと願ってやみません。
コロナ渦の不安に覆われる中、無事開催しかも満員御礼での上演を心から祝します。
リモート指導に明け暮れるも来日が叶わなかった大原永子先生も、スコットランドのご自宅から祝福を送ってくださっているに違いありません。


2日間滞在しておりましたが写真は順不同でございます。



朝8時、青空を見上げ中之島公会堂を眺めながら目覚めのコーヒー。当日最初の入店客であったのか、暫くはテラス貸切でございました。
公会堂、フェスティバルホール、水路が同じフレームに入る構図で、大阪の建築、水運文化を見て取れるとても好きな風景です。
フェスティバルホールでは2回鑑賞しており、共に新国立の白鳥の湖。2008年にルンキナ、ウヴァーロフを迎えた牧阿佐美さん版、
2019年にセルゲイエフ版踏襲の子ども白鳥を観ており、特に後者は前日頃に公式発表があった急遽の代演王子が忘れられず。
主演変更を知ったのは公演前夜、新幹線の当日券購入して大阪へ行きましたが
地元出身ダンサーの代役として立ち、爽やか真面目な王子や、ええやないかと関西の観客から好評なお声が多々聞こえどれだけ嬉しかったことか。



公園のシンボル、太陽の塔。大阪万博での三波春夫さんが歌う世界の国からこんにちはは今聴いても名曲であると思います。


万博公園入口の床には白鳥の絵。早速吹田の白鳥さんが出迎えてくれました。



万博公園を散策、そして高所好意症のため行ってみたかった万博ビースト。時間ごとに人数を制限しての入場で、年齢問わずシニアでも可との記載あり。
近年は年齢不詳疑惑も益々加速し明治かそれ以前生まれと呼ばれることもあり、こうなったら幼き日の思い出深い出来事として大政奉還とでも言うておきます笑。
それはさておき、3段階の高さが設けられ、一番高い所ではマンションの4階とおおよそ同じ高さに張られたロープや組まれた足場、
ぐら付く場所をさっさか歩く管理人。運動神経皆無者でもお楽しみいただけます。
但し、当日は宿泊先の大浴場にてしっかりと浸かるも翌日は腕が上がらず腹筋が動くたびに痛みが走り笑、私のような年配者はお気をつけください。

ところで大阪でビースト、と言えば昨年末に神奈川県大和市での大和シティーバレエにて宝満直也さん振付『美女と野獣』に主演された
大阪府ご出身で同じスタジオで学んだ山本さんの後輩にあたる福岡雄大さんを思い浮かべるべきなのでしょうが
管理人の中で野獣と言ったら1人しか浮かばず(ここ大阪やでとの突っ込みは受け流します)
しかし!お二方とも作品の振付家の心を捉えたダンサーであること、そして来るべき5月にはローラン・プティ版『コッペリア』にて
山本さんコッペリウスと共演は共通!丸く収まった笑。



梅田にて、こぼれ寿司とハイボール。かっぱ巻の上にどっさりと海鮮が乗っかっています。



公演日の朝は白鳥ラテ。ラテアートが見事であるのはさることながら、苦味とまろやかさのバランスがこれまでに味わったカフェラテで一番好み。



宿泊地界隈に位置する浪花教会。古めかしい建造物が並ぶ閑静な街で、建築観察の案内が銀行の窓ガラスにも貼り出されていました。



公演帰り、大阪在住の方より教えていただいた梅田駅構内のジューススタンド。
階段の隅っこにあり、見逃してしまいそうで教えていただけて幸運でした。季節のあまおうジュースが爽やかで甘く瑞々しい。



公演の無事開催と成功を祝しドイツビールで乾杯。満員御礼で開催でき本当に良かったと心からの祝杯です。



ソーセージとプレッツェル。ビールが進みます。






遡ること12年前2009年5月、東京女子大学での公開講座に山本さんと酒井はなさんが招かれ、白鳥の湖について語る講座が開講されました。
佐々木涼子さんのゼミ主催だったかと思いますが、在校生や卒業生でなくても受講可とのことで私もトンジョ生の気分で
(東京女子大の愛称はトンジョだそうです。身内に卒業生がおります)行っておりました。
メディア取材も入っていて、雑誌『クロワゼ』には後日レポートが掲載されたかもしれません。
新国立バレエ及び日本バレエ史に名を刻む黄金ペアのお2人による
ほのぼの漫才な展開に司会者も受講者も頬が蕩け、それはそれは和やかな講座であったのは今も忘れられません。
踊っても語っても絶妙なパートナーシップでございます。 司会者からの質問で白鳥の湖を振り付けてみたいかとの問いかけに対し
こんな大作を演出するなんてとても、と山本さんは謙遜なさっていた気がいたしますがちょうど干支一回りした2021年、地元大阪にて見事実現。
幸運にも会場に居合わせ私も上演を見届け、人生分からぬものです。
その講座が開催されたのは2009年の5月下旬で新国立劇場では『白鳥の湖』公演が終わった頃、そして次回2009年6月公演の宣伝として
山本さんの後ろ辺りに貼られていたのが山本さんもフランツ役として出演されたローラン・プティ版『コッペリア』1度目再演のポスターでした。(新国立初演は2007年)

時間軸があちこち往来して失礼。干支一回りした2021年、講座のテーマであった『白鳥の湖』演出改訂振付を手がけられた舞台を大阪にて上演
そして今年5月久々の新国立復帰舞台がローラン・プティ版『コッペリア』コッペリウス役。
結果として12年後を予期する講座でもあったのか、不思議なタイミングの巡り合わせに興奮するほかありません。
最後受講者からの自由質問時間にて我が目の前に座っていたバレエサークルに入っている学生さんが挙手。酒井さんや山本さんの視線も当然こちらに向けられ
思わず管理人恥ずかしい余り頭を垂れ下げ、周囲から見れば授業中の居眠り状態な格好であったかもしれず
眠っておりませんお酒飲まされたフランツではありませんなどと心内で口走っていたのだが、
12年後、山本さんがプティ版のコッペリウスとして出演されるだけでなく初日と千秋楽に共演のフランツを思うと、
今考えれば予期する出来事であったのかと回想。干支12年の周期を侮るなかれ、人生分からんものです。