2025年6月23日月曜日

青山さんの全幕ラストステージ   牧阿佐美バレヱ団『ジゼル』6月14日(夜)





6月14日(土)夜、牧阿佐美バレヱ団『ジゼル』を観て参りました。牧バレヱのジゼルは初鑑賞です。
https://www.ambt.jp/pf-giselle2025/







リハーサル



バレエチャンネルさんリハーサル映像より



ジゼル:青山季可
アルブレヒト:清瀧千晴
ミルタ:土川世莉奈
ヒラリオン:米倉大陽
バティルド:久保茉莉恵
クールランド大公:京當侑一籠
ウィルフリート:石田亮一
ベルト:諸星静子
ペザント パ・ド・ドゥ:秦悠里愛  𡈽屋文太
ドゥ・ウィリ  ズルメ:高橋万由梨
ドゥ・ウィリ   モイナ:西山珠里



青山さんのジゼルは物静かで内気で、喜びをそっと示す淑やかな少女。最近は全公演には出演なさらず
以前観たとき以上に細身でいらしたため体力が心配になりかけたものの
ニコッと微笑みながらのポーズや、いったんひと呼吸してから紡ぐおっとりした仕草に残る余韻がたいそう美しく映りました。
アルブレヒトも、ジゼルに会うたびに彼女が醸す穏やかさに心和んでいたであろうと想像いたします。
ガラス細工に少しずつヒビが入ってやがてほろほろと崩れ落ちるような悲しみに暮れる狂乱も響き
そういえば、近年ジゼルを多々観ていると狂乱にて余りに情熱的表現に走る人をみかけなくなり
昔は髪の振り乱し姿が映画『リング』の定子か、或いはロックのコンサートかと思わす人もいたかと記憶。近年は自然な描写路線であるのかもしれません。
精霊になった2幕は空気にすっと溶け込み、ジゼル出現前に舞台後方を飛翔するベールを被ったウィリーらしき人形?とよく似た透け感を表現していて
腕の動きががチュチュの動きとそのまま連動しているほどに見える柔らかさにも注目せずにいられず。

清瀧さんはアルブレヒトデビューとのことで、恐らくは純愛寄りと思う造形で初披露。
ジゼルを愛してはいるが決して許された愛ではないことは分かっていそうな慎重ぶりで、恨めしいタイプではなかったと思います。
少なくともクズではなく笑、ジゼルとの時間を円やかに過ごす御坊ちゃまなマロブレヒト。
2幕でのゆったり足の裏を大切に踏み締めながらの歩き方が綺麗な軌跡で、ジゼルに再会して抱こうとするもすれ違ってしまう戸惑いや苦しさもしっとりと体現。
終盤、役柄の設定上はミルタの命令によって散々踊らされて大疲弊しているはずが、疲労困憊を見せつつも
高級裁ちバサミで裁断大移動しているような力強さに目を奪われました。強固なテクニックを誇示せずされど見せ場ではしっかり示していた印象です。
『ジゼル』で組むのは初であっても長年あらゆる作品で組んできたお2人なだけあってパートナーリングは観ていて安心感があり
とりわけ2幕パ・ド・ドゥでの静謐な中で丹念に描き出して行く許しへの懇願はスッと引き込まれる魅力がありました。

ヒラリオンは衣装がむさ苦しくない(笑)デザインで、見方によっては眠りの四人の王子にも思えそうなすっきり品ある装い。
ジゼルへの接し方もそこまでしつこくなく、スカートへの顔埋めもなく(これはアウト行為と思います汗)
だからこそ、哀れな最期と思わす説得力もありました。米倉さんヒラリオンは力強く迫るもジゼルが怯えるほどには近寄らずであった印象です。
ウィリに踊らされる箇所での大ジャンプの軽やかな鋭さにもびっくり。
いよいよアルブレヒトの正体を暴こうと貴族を呼び寄せるときに貴族の角笛を使うと、駆けつけた狩の隊長から怒りを買い
すぐさま没収される振付は初めて観ましたが、高身分者達の持ち物を無断使用した罰は大きいでしょうから納得な演出です。

ペザントはバレエの饗宴で2幕オデットデビューされた気鋭の秦さんと𡈽屋さん。品良くも若さ弾けるパワーで盛り上げました。
ウィリ達の交差はバヤデールの影の王国のような顔を下に向けてのアラベスク交差で
隣同士足並みを合わせているとはいえ、進行方向が見えぬ状態であってもよく揃った仕上がりでした。
青山さんと嘗ては何度も組んでいた逸見智彦さんや京當さんが貴族やクールランド大公で出演され、
青山さんのラスト全幕をどんな思いで見守っていらしたことか、胸に迫るものがあります。

カーテンコールは長く長く続き、第一線で主役を張ってこられた青山さんを讃える拍手がいつまでも鳴り響きました。
現在はミストレス仕事も始めていらっしゃるようで、幅広い作品経験を丁寧に次世代へ伝えていってくださることでしょう。





青山さんの主役デビューを観ております。2006年6月、ゆうぽうとでの『白鳥の湖』でした。



サイン入りポスター。ローマ字で一生懸命書かれたカワイイはパリ・オペラ座からのゲストのブルーエンさんでしょうか。
牧バレヱへの客演を楽しんでいらしたなら何よりです!



上野ではべらぼう企画。



帰りは白ワインで乾杯。青山さんの新たなステージに幸あれ~。


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