2022年2月24日木曜日

コンパクト構成ながら多彩で見応えあるガラ  Kyoto Ballet Gala Special  2月19日(土)《京都市》




2月19日(土)、ロームシアター京都にてKyoto Ballet Gala Special を観て参りました。
http://www.kyoto-ballet-academy.com/a_ballet.php

http://www.kyoto-ballet-academy.com/upload/a_ballet/1638416121_1.pdf

京都バレエ団のダンサー、そして京都バレエ団と所縁の深い方々集結しコンパクトな構成ながら趣き様々な作品で楽しませてくださいました。
幕開けはショパンの軍隊ポロネーズで全員が登場。『ショピニアーナ』の序奏として演奏される、景気付けにも良さそうな勇壮な曲調でございます。
トップバッターはゼンツァーノの花祭り。京都バレエ公演での『くるみ割り人形』での気高く馨しい金平糖の女王が今も尚印象に焼き付いている
北野優香さん(京都バレエ団)の村娘役を初めて拝見。おっとり柔らかく丁寧な踊り方で魅せ、振り返るときのふわりと香る余韻に至るまでも美しや。
長谷川元志さんとも波長が合っていて、無背景であってもお花畑が見えたのは(これ大事)お2人が互いを思いやるように優しく物語を紡いでいたからこそでしょう。

『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥは鷲尾佳凛さん(有馬バレエでバレエを習い始めジョージア国立バレエにて活躍後2020年より京都バレエ団に拠点を移されたとのこと)と
佐々木夢奈さん。演目柄どうしても目を光らせてどころか抜粋であってもジャンのマント姿が絵になるか
生死のかかった大試練を乗り越えた2人に見えるか、と爛々として観てしまうのですが
佐々木さんはきりっとゴージャスな華を広げるようなダイナミックな踊りに引き込まれ、衣装が少々ガムザッティ寄りにも見えた気はしたものの
(頭飾りは冠に豪華なヘッドドレスで中世ヨーロッパの姫らしい風味あり) 仮にグラン・パ・クラシックの面々を従えていても頭一つ抜けた存在感で牽引なさると想像できます。
鷲尾さんは昨夏東京の新国立劇場におけるバレエ・アステラス2021での初日、研修生演目3本カットである旨の開演直前告知によって
まだ観客も動揺が隠せない重たい空気の最中、登場が急遽最初になりながらも優しい雰囲気を湛えて『コッペリア』を披露し
観客をリラックスさせてくださったお姿が忘れられず。またアステラス2日目のランゲデムが観客を市場に来た人々に見立てて賑わいへと雄弁に誘い込み
カーテンコールやフィナーレにおいても全幕を観ているような気持ちになった記憶も新しいところです。
貴公子系の役は初見で、アステラスでのインパクトに比較すると手堅く抑えめだった印象もありましたが
しなやかな技巧を散りばめながら佐々木さんと力強く盛り上げていらっしゃいました。

第1部最後はブルノンヴィル版『ラ・シルフィード』より、コール・ド付きでのパ・ド・ドゥ。
シルフィード役の前澤芽依さん(京都バレエ団)が優美で脚捌きも軽やか。意思をはっきりと示す仕草もいじらしく映って妖精達を率いるリーダー格もあり。
ひょっとしたら1番の話題であったかもしれないジェームズには二山治雄さん。ローザンヌ入賞直後の2014年春のPDA東京公演以来の鑑賞ですから約8年ぶり。
細い身体の中に強靭なバネが宿っているのでしょう。一見華奢ですが跳び上がると繰り出されるパワーに驚かされました。

なかなか観る機会のない『ラ・ヴィヴァンディエール』を鑑賞できたことも嬉しく、主軸を踊られた梅本悠羽さん
(京都バレエ専門学校を首席で卒業後スターダンサーズバレエ団ジュニアカンパニーに入団)の
ゆったりめの曲調であってもぐらつかず安定感のある技術、村娘な衣装の可愛らしい着こなしにも和みました。
京都バレエ団、京都バレエ専門学校生からなる4人の女性ダンサー達の息もよく合い、中盤の全員で脚を各々高さを変えて上げる千手観音風のポーズも綺麗に静止。

『海賊』第1幕より奴隷市場のパ・ド・ドゥは牧阿佐美バレヱ団の光永百花さん(京都バレエ専門学校出身)と石田亮一さん。
光永さんは楚々とした悲しみ漂うグルナーラで淡い紫や青を重ねたチュチュもよく似合い
石田さんは奴隷商人にしては随分と品がありましたがすらりとした上背で光永さんとのバランスも良い印象です。

大トリは藤川雅子さん(京都バレエ団)と山本隆之さんによるTHE MAN I LOVE。照明が一転して満天の星々が瞬く夜空へと変わり
リフトからの降下の僅かな箇所に至るまで絡み合ったものがするりと解かれるかの如く滑らかさが宿って
手を取り合って見つめ合いながら佇む場は下手すれば時間を持て余してしまうわけですが、いつまでも浸っていたくなる静けさに溶け込む余韻にもうっとり。
大人の芳醇な色気と香りが広がっていたのは明らかです。女性はピンク色の膝上くらいの丈のワンピース風衣装で男性は上下黒で
シンプルながらいたくスタイリッシュ。この数分のみ、摩天楼が光り輝くニューヨークのブルックリン辺りに身を置いた気分で鑑賞いたしました。

フィナーレは『威風堂々』にのせて出演者総登場。演目数は少なかったものの多彩な作品や近年はお目にかかる機会が滅多にない作品も揃い、見応え十二分。
特に今回は東京にて鑑賞予定であった公演の突如の中止告知が前日になされた翌日でもあり、出演者の皆様が心の隙間を優しく埋めてくださった気がいたします。
最後に登場された代表の有馬えり子さんの嬉しそうな笑みからも、観客の前で披露開催ができて良かったと心底思えたのでした。

ロームシアターは京都会館時代も含めれば3度目の来館ですがサウスホールは初めて着席。
2階席で鑑賞したところ段差が急で階段は慎重な歩き方が求められますが、その分どの席からも見易そうな印象を持ちました。木目調の座席も腰掛け易く綺麗な内装です。それから京都弁、全く話せぬ東京人による呟きをこの場ではお許しください。

やはり舞台は生が良いどすえ。


※今回はガラでしたが京都バレエ公演の中でひときわ印象に刻まれているのは2018年『京の四季』と『屏風』の2本立て公演。
生け花との共演で着物とチュチュ両方を取り入れても繊細な美しさが彩る四季の移ろいに魅せられた前者、
冷徹さや恐怖を一層引き立てるサティの音楽が見事なまでに怪談に嵌っていた後者、と衝撃の2本でございました。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/httpwwwkyoto-ba.html

以下、ひとまず写真何点か。その他の写真等はまた後日、ワクチン3回目接種日までには少しずつ掲載予定。



さて、今回の京都滞在は当初は2月19日(土)、20日(日)の1泊を予定しておりましたが、
2月18日(金)に行われる東京での新国立劇場バレエ団吉田都セレクション舞台稽古見学会に当選。
それならば金曜日休暇を取り、見学会終了後そのまま京都入りして美味しい夕食を味わっておこうと2泊3日に変更。
但し、1月末の新国立枚方公演の本番2日前に中止告知の例や、1月半ばのニューイヤーバレエにおいては本番は無事開催できましたが
見学会は前日の15時か16時頃に非公開の連絡が対象者に渡っていた例もありましたので直前まで待とうと様子をうかがい
枚方とは異なりセレクションは本拠地公演ともあって本番1週間前から直前にかけてメディア掲載情報更新や
なぜだかアラジン財宝の洞窟場面のルビー限定(私は歓喜したが)リハーサル映像アップと
順調に準備が進んでいると捉えておりました。
そして見学会の2日前の夜にまずはホテルを2泊3日で予約。新幹線は時間の融通がきくよう自由席にし、見学会前日に購入。
見学会前日の18時、19時と連絡は無くさあ予定通り公開、本番も開催と安心しきっていた矢先の20時30分過ぎに着信。予感は的中し、見学会は非公開に。
ホテルは2泊分決済済み予約でしたがこれはもう仕方ないと思い、予定を早めて白昼から東京を出発。
本番はどうか開催をと願いましたがそれも束の間。13時過ぎた頃、中止の発表を新幹線の車内で読んだ次第。
そんな経緯から、いつもは切り替えが早い管理人も今回ばかりは気持ちが沈んだままの京都入りとなり
到着時は晴天にも恵まれていながら行動にも至らず、まだ日が昇っている最中での夕食後はチェックイン時刻すぐにホテル入りし大浴場でしんみりでございました。
しかし翌日以降は救い、励ましにもなる滞在でございました。
諸々長くなりましたが以下写真多数ございます。忍耐力がまだ持ちこたえそうな方はどうぞご覧ください。




ホテルから徒歩10分程度のところにあるコーヒー店アストレア。苺とクリームチーズのホットサンドがまろやかさと甘酸っぱさの比率が良く、美味しい。
抹茶が濃く苦味も強い抹茶ラテも味わい深し。



清水寺。宿泊先から徒歩約30分、雨予報は出ていましたが午前中は雲間から光が射す、歩きやすい気候でした。午前9時過ぎでも人通りがまばら。
10年ほど前に、拝観時間開始直後の朝の6時に訪問したときと同じくらいかと思います。



このご時世ですので、朝10時過ぎ頃でも空いていました。時代劇のセットを見学或いはタイムスリップした心持ちとなり
お侍さんが颯爽と歩いているまたは悪党退治のため全速力で突っ切っていく姿を想像。
お店の方曰く、以前は写真を撮っても人の頭しか写らなかったほど賑わっていたようです。



ジブリグッズを扱うどんぐり共和国、京都にもございました。町家風の建築で街に溶け込んでいます。
トトロのぬいぐるみを購入し、マイバッグ、ならぬマイ風呂敷に包んで愛おしそうに手に持って歩くお侍さんが目に浮かびます。
裏側の入口には、トトロに登場する井戸やバス停もございます。



何度か京都を訪れていながら湯豆腐をいただいたことがなく、歴史ある総本家ゆどうふ 奥丹清水へ。



おきまり一通りをいただきました。澄み切った熱さが身に沁み渡ります。庭を見渡し、時折鳥のさえずりが音楽として耳に入ってくる静かな空間でした。



12時頃ホテルに戻り、その後暫くすると予報通り降雨。会場へ向けて出発する16時頃までは室内のテレビで動画鑑賞しておりました。
最近できたホテルでテレビ画面が大きく、画質も綺麗。複数の動画サイトも視聴可能。
京都に来てまで何をしているんだか、と思われるのは重々承知しておりますが、前日に発表された新国立劇場バレエ団2月19日(土)、20日(日)、23日(水祝)の
吉田都セレクション全日程中止のショックをこのときはまだ引き摺っており、新国立バレエやオペレッタ『こうもり』演奏会映像を視聴せずにはいられませんでした。
五輪のフィギュアペアやカーリングもこの画面で視聴できたのは嬉しいことで、インテリアの和風なランプも素敵でございます。(ああ、アラジン涙)
ちなみにお風呂はバスとサウナの2種あり、男女日替わり制。バスは所謂大浴場で、浴槽の上からほんのり神秘的な水色の照明が射し込む作り。
何かで見た記憶が過ぎり、そうです。こちら京都府ご出身で現在新国立劇場バレエ団ファーストソリストとして活躍中の木下嘉人さん振付『人魚姫』の照明を彷彿。
この作品は昨秋の中劇場公演にて初演され、そしてファン投票で選ばれ吉田都セレクションにてオペラパレスでも上演予定でした。(ああ、人魚姫)
大浴槽の中央に浸かって揺らめく水色の光を浴びていると、気持ちだけは人魚姫。しかしのぼせないよう気をつけましょう。
フラリとしても、王子はおろか誰も支えに来てはくれません。これが現実。



終演後、ホテルに戻り、1階にてハイボールで乾杯。



   
ホテルでの朝。勝手に名付けた、京都でニューヨークな朝食。朝食つきプランではなかったため別料金を支払い帰りの朝、いただきました。
サーモンベーグルとアボカドマフィン。自家製レモネードがきりっと酸っぱさがあり目覚めにぴったり。
サーモンベーグルは写真で目にしたときから食してみたかった一品でございます。
そういえば、Who care's?は関西の発表会であったか、一度しか観たことがなく(似通った作品は各地で観ているが)本家の舞台でも観てみたい。



ポークとチーズを挟んだホットサンドと卵サンド。サンドイッチとレモネード、美山産ソフトクリームは注文制。
サラダやスープ、デザート、コーヒー紅茶はセルフサービス。どれもおかわり自由です。種類こそ多くはありませんが、全部制覇。
(中高年のいずれかに達しても我が胃袋はよく働いてくれております)



パッケージも艶やかな和の美、京(みやこ)紅茶。ああ、セレクション涙。
アイスティーの香り高さ、味の濃さが誠に好みで、茶葉の種類が気になるところ。



帰り道、京都タワーを眺めながら徒歩で京都駅へ。このあと新幹線でそのまま東京の初台へ直行、の予定を変更し墨田区のスカイツリー周辺へ。
東京での公演中止の悲しみを引き摺ってしまった感もあり、またゆっくり観光はせずの帰京となりましたが、西の都の滞在に救われた思いでおります。
さらば京都、また会う日まで!!

2022年2月18日金曜日

新国立劇場バレエ団全面協力書籍『楽しいバレエ図鑑』






なかなか気分が上がりませんが(詳細は後半にて)、いつまでもそう言っていられませんので遅ればせながら素敵な書籍の紹介でございます。
昨年12月、小学館より『楽しいバレエ図鑑』が発売されました。
監修はバレエチャンネルでのインタビューや企画でお馴染みの阿部さや子さん、そして新国立劇場バレエ団が全面協力しています。 https://www.shogakukan.co.jp/books/09388750

色鮮やかな写真が多数掲載され、装丁も立派な書籍。バレエの成り立ちから三大バレエや古典全幕、
『不思議の国のアリス』や『アラジン』といった作品紹介もあれば衣装の秘密にも触れています。
ふりがな付きですので子供にも読みやすい文体ですが、イーグリング版『くるみ割り人形』舞台装置の仕組みや裏側に
『ライモンダ』(2006年のニューイヤーでの3幕上演かも)衣装合わせの様子や頭飾りの保管、
そして指揮者アレクセイ・バクランさんへのインタビュー等、メイクが出来上がるまでの過程等バレエ精通者の方々にとっても興味が尽きぬ内容満載です。
新国立劇場バレエ団の比較的新しい舞台写真も掲載され、直近では配信のみになってしまった2021年のローラン・プティ版『コッペリア』。
この書籍購入の決め手となった、千秋楽のフランツとコッペリウスによるグラス掲げてシャンパン乾杯の写真もございますので(そこかい)是非お手に取ってご覧ください。
管理人、透明人間になったら何をしたいですかとの質問があれば、このパーティーに紛れ込みたいと申すことでしょう笑。
(何時の間にかコッペリウスのストックシャンパンまでもが減り続ける現象が発生しそうですが)
話を戻します。決して大規模ではない書店でも取り扱いがありましたので、入手はしやすい書籍かと思います。ただ気になったのが私の地元書店における売り場の位置で
音楽演劇系書籍でもなくスポーツでもなく何とか坂のアイドル写真集の隣りに置かれていたのは謎でございます。






それから、本来ならば2月19日(土)、20日(日)、23日(水祝)に予定されていた新国立劇場バレエ団吉田都セレクションが中止となってしまいました。
実は2月18日(金)に予定されていたゲネプロ(舞台稽古見学会)に当選。前日17日(木)の19時時点では何も連絡がなかったため公開実施するものとどこか安堵しておりました。
今年のニューイヤーバレエではゲネプロ前日に非公開の連絡があったそうですが日中の連絡であったようで、また本番は無事全日程開催できた経緯から
今回ゲネプロ前日の19時時点で何もない、つまりは公開実施及び本番も開催と信じて疑わず。
しかし20時半過ぎ頃に着信。ちょうど五輪のフィギュア女子シングルフリーを視聴していたため気づくのが少し遅れてしまったのですが
気づけば10分間に着信が何本かあったもよう。電話番号からして渋谷区周辺であるのは想像がつき、折り返すと案の定新国立劇場でございました。
まずはゲネプロ見学予定者と連絡がつくことが第一だったのでしょう。書類の音や飛び交う声も電話越しに聞こえ、相当慌ただしい様子であったと窺えます。
『マノン』からまもなく2年、スタッフの方々の労苦がこうも長く続いていることに苦しさを覚えずにはいられませんでした。

そして翌日昼頃に公演中止が発表。ただ誰のせいでもない事態ですし解決策も未だ見つからず、関係者の方々の心境を察すると辛さで出る言葉もありません。
今回は延期演目がまたもや上演不可能となり、一度は撮影し掲示したポスターや配布したチラシも幻となり
演目を変えてのチラシやポスターも作り直していただけに、また1月末の大阪府枚方公演に続く中止となってしまい吉田監督の心身も心配です。
全て再演演目とはいえ、観客投票で選ばれたダンサー振付作品の中劇場を飛び出してのお披露目企画や
『こうもり』初役木村さんのベラ、年齢を重ねた今だからこそ再度観てみたいと思う井澤さんのヨハン、
ベラ&ヨハンでは初めて組む小野さん福岡さんペアやカンカン娘トリオ、よく見ると店長、中堅、新人と序列がありそうなギャルソントリオの配役、と
面白味の連続となりそうで楽しみでございました。シュトラウスの軽快な音楽もこのご時世、一層の幸せを降らせてくれたと思います。
『アラジン』財宝も奇抜でゴージャスな宝石達のめくるめく連鎖はいつ観ても心が昂ぶり、
大抜擢横山さんのダイヤモンドにワクワクとしておりましたし昨年夏の井脇バレエガラでは珍しくも呼吸合う味わいコンビを発揮され、
本拠地初台では初めて組むルビーの奥田さん渡邊さんペアも関心が膨らむばかりでございました。リハーサル映像が公開されたのはせめてもの救いです涙。
そうは言っても渡邊さんの半裸及び茹で卵並みにツルッとしたフォルムも美しい坊主の官能ルビー、観とうございます。
残念であるのは山々ですが一番苦しいのは神経を擦り減らしながら感染対策を取りつつ練習に励み準備を重ねていたにもかかわらず
直前に中止を告知されたダンサーやスタッフの皆様でしょう。上演と関係者、会場に集まる人々の安全確保の同時遂行の難しさを再び思い知らされました。
次公演は無事開催できますように。

2022年2月13日日曜日

【家族が鑑賞】【おすすめとのこと】ミュージカル『雨に唄えば』





私の鑑賞記ではございませんが、鑑賞した家族の1人が感激しておりましたので紹介いたします。ミュージカル『雨に唄えば』、大変おすすめとのことです。
https://singinintherain.jp/

私の知人の何名かが鑑賞予定であると話したところ突如観たくなったようで、公演日直前にチケットを購入。
テーマ曲以外は予備知識無しで足を運んだそうですが、最初から最後まで楽しくも華やぐショーが次々と表れ、照明や装置、衣装も奇抜になり過ぎずお洒落なセンスで
何より、アダム・クーパーの歌の上手さの仰天したとのこと。マシュー・ボーン版『白鳥の湖』での印象が強く
まさか吹き替え無しで張りのある歌声を披露し続けているとは驚愕であったようです。
また傘を用いて大勢で披露するワクワクと心浮き立つダンスや、大量の降雨量演出も興奮へと誘われたとのこと。
傘の裏がそれぞれ異なる色で、覗く度にカラフルな色彩が舞台いっぱいに広がる光景にも見入ったようです。

そして幸運なことにその日は数日前に急遽決定したアダム・クーパーによるアフタートークショー開催日。同日に鑑賞なさる方から聞いたため公演前日にその旨を伝えると
プレイガイド等に掲載が無く、高額席購入者或いは限定イベントであろうと半信半疑な様子でしたが(本当に直前決定のため大々的掲載が間に合わなかったのかもしれません)
いざ当日会場に着くと告知の貼り紙があり、ようやく信じたもよう。終演後暫くすると公演オフィシャル?パーカーに着替えたクーパーが登場し、
司会進行のプロデューサーと通訳さん、そして観客と一緒に心からトークタイムを楽しんでいる様子で、語りたいこと山積みであったのであろうと思ったようです。
昔から歌を学んでいたことや1月公演が中止となり緊迫した中やっと開幕できた喜びが
プロデューサーの方とクーパーのやり取りが弾むように伝わり、聞き入ってしまったとのことでした。

東京公演は本日で千秋楽を迎えますが、今週金曜日からは大阪公演が開始。残席にまだ余裕があるそうで、お値段も座席によっては東京より低めの設定だとか。
関西圏の皆様、この期間大阪周辺に御用のある方、是非足を運んで欲しいと勧めておりましたのでここに記した次第です。
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/3660







ふと思いましたが、雨を題材にした歌でこの作品のテーマ曲ほど明るさに満ちた曲は珍しいと思え
状況と矛盾いたしますが心に光がふわっと射し込んでくる、そんな気持ちが上向きになる歌であると思っております。
雨を歌った曲として私が即座に浮かぶのは欧陽菲菲さんの『雨の御堂筋』、内山田洋さんとクール・ファイブの『長崎は今日も雨だった』(前川清さんの印象強し)、
八代亜紀さんの『雨の慕情』、森高千里さんの『雨』の4曲で発表の時代は各々違えども悲哀や失恋、哀愁がじっとりと滴る作風でございます。
そういえば、アルベールビル五輪のフィギュアスケートエキシビションにて、女子シングルで銀メダルを獲得された伊藤みどりさんが
レインコート衣装で傘を手に『雨に唄えば』に合わせてにこやかな表情でチャーミングに滑っていらした姿が今も記憶にあり、
雨の曲ながら何て希望が広がるような曲調であろうかとじっと耳を傾けてしまった30年前の冬が今も思い起こされます。

2022年2月11日金曜日

スティーヴン・スピルバーグ版 映画『ウエスト・サイド・ストーリー』





スティーヴン・スピルバーグ監督が手掛けた映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て参りました。
記憶の限り、ミュージカル映画を全編鑑賞したのはサウンドオブミュージック以来かもしれません。
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory

見所が詳しく紹介されています。1961年版にアニータ役で出演していたリタ・モレノがスピルバーグ版のオリジナルキャラクターとして登場。
過去の経緯から、対立するジェット団シャーク団の間に立つことができる唯一の人物であったかもしれません。
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220208-west-side-story






まだ公開初日を迎えたばかりですので控えめに綴って参ります。(そう申しながらも毎度終わりが見えぬ展開になるのは
北京五輪開会式での予定時間大幅延長の要因となったIOC会長スピーチと変わりなく、反省の日々でございますが)

音楽は聴く機会が多くよく知りながらも1961年のリチャード・ベイマーとナタリー・ウッド主演版を含め作品を全編通して観るのは初で
名曲の数々の登場順序やどの場面にどう入るのかやっとこさ把握。また『ロミオとジュリエット』を土台にしている点についてもようやく納得し
ロミジュリで言えばティボルトやパリスに当て嵌まるであろう役柄を見つけては時代設定は全く異なる作品であっても
2つのグループの抗争や対立を超えた恋以外の接点の気づきに嬉しさを妙に覚え
ミュージカルど素人な管理人もどっぷり鑑賞できた次第です。現代の技術ならではの
繊細な光の当て方や映像美、また鑑賞した映画館がTCX対応のスクリーンで上から横からも音が響き渡る
立体的な構造であった点や上空、時には通行人目線のカメラワークも面白さを押し上げました。

ちなみに管理人、映画館のIMAXやTCXの位置づけがよう分からず料金が通常よりも高い設定であるとこの度初めて知った、映画鑑賞もまたド素人でございます。
実は午前の回の時間に合わせて映画館へ向かいチケットを購入しようとしたところIMAX対応のため料金がだいぶ高めで驚き
ならばTCXを選んだところ200円増しでしたので後者にしたわけでございます。

話を戻します。先にも述べた通り音楽は大変馴染みがあり演奏会のほか、後輩が通う教室の発表会でも何曲かを組み合わせた中に
テクニックがふんだんに盛り込まれた作品を鑑賞。また2013年のニューヨーク・シティ・バレエ団による公演にて
ジェローム・ロビンズ振付の組曲構成作品を鑑賞したこともございます。
それから吹奏楽の演奏会でもメドレー構成の演奏は大定番で、私は残念ながら吹く機会はなかったものの
入学する少し前の演奏会では披露したようで、のちに先輩が無理矢理直訳して「横っ腹物語」と口にしていたことが忘れられません笑。
そしてフィギュアスケートでも使用する選手は多く、抜粋した複数の曲を繋げての演技は何度か見ているかと思います。
ただ今思えば、フィギュアにおける全幕のバレエ音楽使用時も気にかかっていた物語の順序通りにはなっていなかった構成もあり
最後の盛り上がりステップのために劇中では前半、トニーとマリアが出会うパーティーで流れる弾ける曲を持ってきていたりと
ミュージカル精通者愛好者の中には首を傾げる方もいらしたかもしれません。

バーンスタインが作曲した疾走感と迫力に満ちた音楽の印象先行から作品ももっとノリが良く娯楽性に富んでいると勝手な想像を巡らしておりましたところ
丸々覆されまして、街中での躍動感ある舞踊場面のみならず今のニューヨークの華々しい劇場街建設裏にあった強制退去、
根深い人種差別社会に生きる若者達がすぐさま争いに投じてしまう苦しみやまた台詞が並ぶことによって抗争場面を中心に罵詈雑言の連発が目や耳を痛烈に刺激。
映像で迫るからこそ伝わる目を背けたくなる生々しい決闘を始め最後の最後まで続く憎悪の連鎖が後を引き、予想以上に重たいものがのしかかる作品と捉えております。

それにしてもマンボ~!の叫びはこのご時世の世間の状況表現にも感じたのは皮肉なのか汗
トニーがマリア宅への侵入場面はきっと地域の懸垂選手権優勝者或いは出初式を思わせる登りっぷりには笑ってしまいましたが、若い情熱には何も抗えないのでしょう。
その辺りは横に置き、マリア役レイチェル・ゼグラーの強いの意思と透明感の両方が宿る歌声も美しく
一見改心したように生真面目青年に見えるトニーも憎悪のスイッチが入ると衝動に駆られ誰も止められない行動へと発展してしまう性分も簡単には恨めず。
複雑な感情があちこちで絡みながらの展開に目が離せませんでした。実写映画であるが故に歌と台詞混在に違和感が生じぬか
久々のミュージカル映画鑑賞で心配もありましたが最初のうちは慣れず、例えばお忍び密会で高らかに歌っていたら即座にばれるでしょうにと
他人事ながら思わず慌て気味になったものの展開と共にごく自然に思えてきました。どうぞ劇場でご覧ください。





帰り道、東京クラフトペールエールで乾杯。北米産カスケードホップをたっぷり使用しているらしい。
クーポンが手元にあったため偶々の来店であったが、マリアの家の壁色と似た内装でございます。



自家製プルドポーク バーボンBBQソース。よく味が染み込んだ塊肉を切り分けソースをかけながらいただきます。辛くも少々甘さもあり、ビールが進みます。



苺のセミフレッド塩キャラメルソース。苺の果肉もしっかりと入っています。塩キャラメルソースの苦味が濃く、アイスと溶け合ってうう美味しい。
このご時世ですので空いてはいましたが1人でも入り易く料理2品とビールも気に入り、
店員さんの応対も穏やかで良く、常連さんもいらしたようでほんわかした空気が流れる店内でした。

2022年2月6日日曜日

【お茶の間観劇】【大変おすすめ】宝満直也さん振付  大和シティーバレエ『美女と野獣』

遅ればせながら、2020年末に上演された宝満直也さん振付の世界初演  大和シティーバレエ『美女と野獣』有料配信を視聴いたしました。
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=61707&


ダイジェスト動画




※カンフェティホームページより
ベル: 小野絢子 / 野獣: 福岡雄大 / ベルの父親: 八幡顕光 / 3人の求婚者達: 中家正博、木下嘉人、池田武志 / 猿(近衛隊長ベローシファカ): 福田圭吾 / 猿(近衛兵): 森田維央、飛永喜尉 / 猿の妻: 刀袮平美咲、牧祥子 / 猿の子供達: 金粋璃、宮崎二悠子 / 孔雀(給仕長): 相原舞 / 3羽の小鳥(メイド): 奥田花純、五月女遥、野久保奈央 / 小鳥たち(メイド): 河村美来、中村春奈、成田遥、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、細井佑季、盆子原美奈 / バラの化身: 森田維央、飛永喜尉、安藤沙綾、窪田夏朋、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、牧祥子 / 村人たち: 安藤沙綾、河村美来、窪田夏朋、刀袮平美咲、萩原ゆうき、古尾谷莉奈、牧祥子、小形さくら、加納美咲、山本萌葉、大野彩花、田丸琳々花

スタッフ
振付: 宝満直也 / 曲: D.Shostakovich / プロデューサー: 佐々木三夏 / 舞台美術: 長谷川匠 / プログラム・タイトルデザイン: 長谷川匠((株)アトリエ長谷川匠) / 舞台監督: 千葉翔太郎((株)スカイウオーカー) / 照明: 辻井太郎((有)舞台照明劇光社) / 音響: 中村蓉子 / 映像制作: 林裕人 / 制作: 今村佳奈 / イラスト: 照喜名降充 / 衣装: 吉倉節子、秦智美、小野りか、ソライロヤ、仲村祐妃、大滝広美、Chacott Design M、SBA衣装部 / ヘアメイクチーフ: 中山夏子 / 協力: 資生堂ビューティークリエイション研究センター / 写真: 塚田・長川写真事務所、大洞博靖 / ビデオ: japan digital arts / 後援: 大和市、大和市教育委員会、YCBクラブ、SBA母の会


ご覧になった方々より評判を度々耳にし、再演時は足を運ぶようしきりに勧めてくださっていましたが視聴して納得。
変化に富んだ振付と言い音楽の使い方と言い、舞台転換も工夫が行き届きそして適材適所な配役。これは劇場で鑑賞するべきであったと今更ながら感じております。
2022年7月17日まで配信されていますので、さっぱりとした感想のみ記して参ります。まだご覧になっていない方、是非ご視聴ください。

ベルの小野さんは冒頭の読書姿から可愛らしさと理知的な雰囲気を醸し、優しさ一杯な人柄に気弱そうな父親も毎日救われる日々であったことでしょう。
最初は接し方に戸惑い怯えていた野獣との心の通わせの過程は時に物哀しく、時にはユーモアも含めたやりとりが胸に響き、
次々と襲いかかる試練にもめげず乗り越える様子は少しずつ大人へと近づいているようにも見え、成熟していく姿から目が離せず。
ベルが抱く感情の1粒1粒が四肢から伝わり、映像でも心を鷲掴みにされましたからもし生で観ていたら、と思うと益々興味が沸いてくる役柄です。
目が覚めたら隣に猿がいた衝撃には一緒になってびっくりしてしまい、小鳥さんや子猿さんたちとの戯れもほのぼのと映りました。
小野さんは新国立に入団された頃から観ておりますが、実は私の中でここ約1年で一段と注目熱が上昇中。
殊にシェイクスピア・ソネットで見せた魔物のような姿や『コッペリア』での喜劇センス抜群なスワニルダ、
神様仏様小野絢子様と平伏してしまうほど劇場を完成支配していた『ライモンダ』や魔力全開なライト版『白鳥の湖』オディールに
4階末端席着席者をも強力に吸い込むようであった『くるみ割り人形』クララの引き寄せ力、と強烈な印象を刻み続けてくださっています。

福岡さんの野獣は粗暴な恐怖感もさることながら、パーティー?でずっと俯いている寂しがり屋な一面や、ベルと少しずつ打ち解けての風変わりなリフトでも沸かせ
野獣の持つ多彩な面を表現。ほぼ全編通してマスクを装着した状態で表情での誤魔化しが不可能な条件下であっても心の移ろいを全身で表していてお見事でした。
喜劇な要素は抑えめかと思いきや宴を楽しく取り仕切り観客に問いかけ笑いの反応を引き出していたのは福田さんの猿で
野獣とは仲睦まじいのかそうでもないのか笑、テンポ良く交流したり、ピンチのベルを導いたりとあちこちで活躍。
そして求婚者のトリオのリーダー格、中家さんの悪代官も仰天であろう黒い魅力を広げながらの牽引力にも驚嘆。
しかも技術も盤石で、背が高く体格もしっかりしていながら急速な曲調でも遅れが微塵もなく
終盤には野獣を肩に担いで歩く場もあり。力が無尽蔵なのかただただ驚きを覚えた次第で、豪快に踊りながらの野獣との攻防戦も大迫力でございました。

衣装がどれもお洒落でベルのピンクのワンピースや御召し替えでの水色にきらりと光る装飾で薄く彩ったドレスも美しや。
小鳥達の繊細な羽を模したようなチュチュの切り込みや求婚者達の光沢のある、戦士にも見える黒い衣装もシックで素敵でした。

振付はどの役にも高難度テクニックが散りばめられ、余程の音感とテクニックを備えていなければとても踊りこなせぬ要素が盛りだくさん。
中でもベルの軽やかなソロや小鳥たち特に奥田さん五月女さんの緻密なステップ、求婚者達の豪胆且つスピード感のある見せ場が印象に残っております。

そして音楽構成も秀逸で、ショスタコーヴィチの中でも耳に入りやすい、馴染みある曲を多数組み合わせていて、しかもぶつ切り感が皆無。
振付と場面や舞台転換のタイミングがしっかりと噛み合っているからこそでしょう。
ショスタコーヴィチの音楽は一部複雑で難解と捉えつつも『明るい小川』や『黄金時代』、『じゃじゃ馬ならし』といった全幕バレエで使用されている曲はどれも好きで
この宝満さん版『美女と野獣』には私が好む曲の数々がほぼ網羅されていた気がいたし、音楽の面でも聴き惚れてしまったのかと思います。

長谷川さんのシンプルで洗練された美術や装置も作品をお洒落に盛り立て、装置の裏表両方を用いて
ぐるっと転換後すぐ次の場面に遷移できるよう作られたデザインも唸らせました。
昨年3月の日本バレエ協会公演コンテンポラリーの『いばら姫』においても美術装置を手掛けられた長谷川さんによる公演当日に開催されたギャラリートークに参加して
2018年に新国立劇場で鑑賞した『夏の夜の夢』そして宝満さん版『美女と野獣』の模型も展示され
また大変和やかな空気の中で長谷川さんに直接お話を伺った経緯もあり作品にどっぷりと浸かる楽しみに繋がったのかもしれません。

かれこれ5年前から我が携帯電話のロック画面に設定しているほど南仏で制作された全くの別版『美女と野獣』への思い入れが非常に強いがために
(つまりこの5年間、別版の野獣の画像を見ない日はないのだ)
違う演出振付とは分かっていても同名作品ですから楽しめるか多少の心配もあったものの振付から配役、音楽構成、衣装装置に至るまで大満喫。
公演の1ヶ月ほど前に行われたDancers Webさん主催のズームトークにて宝満さん司会で出演者達と繰り広げるお話から
(そういえば福田圭吾さんは客演した舞台の関係で愛媛県内の滞在先ホテルからご出演。その舞台を観に私も伊予の国へ行っておりましたので思わず笑ってしまった)
面白い作品になりそうとは思っておりましたが予想以上の楽しさで満たされました。新作で全幕を振り付ける手腕に再度拍手を送りたい思いでおります。






振り返ると管理人、13年前には1人でショスタコーヴィチのお墓参りをしております。
赤やピンクのお花で彩られていました。チャイコフスキーが白鳥の湖構想を練った修道院のお庭のすぐ隣です。
国に翻弄されながらも闇が深そうな曲から可愛らしい曲まで発表した作品は多岐に渡り、再度手を合わたい気持ちでおります。



ダンサー、振付家双方で大活躍の宝満さん。テレビアニメの振付も手掛けていらっしゃり、つい先日公開されました。
漫画と疎遠な管理人ですが、妹がこの作品に精通していたかと記憶。詳しく聞いてみようと思います。

2022年2月4日金曜日

【恵方巻ではなくてもかぶり付いて読み耽た】東京大学音楽部管弦楽団の定期演奏会プログラム






昨日は節分。ご自宅で豆撒きを楽しみ、恵方巻を味わった方もいらっしゃることと存じます。
管理人は関東育ちであるためかどうも恵方巻にかぶり付いて食す文化に馴染めずにいるものの
寿司店に陳列する商品が通りすがりに目に留まり美味しそうには思えた次第です。仮に購入したとしても、通常の太巻きと同じように切って食すかと思います。

代わりに豆菓子は食し、年齢と同数の粒を口に入れるとなると、蓄音機で音楽を聴いていた世代疑惑まで持たれておりますため
途端にお腹が膨張するであろう数字ですので真偽のほどはさておき、本日は思わずかぶり付いて読み耽てしまった定期演奏会プログラムの話です。

管理人の家族の1人が友人に誘われ、先日東京大学音楽部管弦楽団の定期演奏会へ行きました。
曲目がこれまた私好みな構成でチャイコフスキー 幻想序曲『ロミオとジュリエット』、グラズノフ『四季』より秋、ショスタコーヴィチ『交響曲第5番』。
3曲目のショスタコーヴィチ作品は少々難解そうな曲である印象を抱いておりますが、1、2曲目における前者は重厚な起伏に心が揺さぶられ
後者は煌びやかな風が吹き誘う心から好きな曲でございます。何しろ前者はエイフマン版『アンナ・カレーニナ』の2幕終盤
アンナの葛藤が最高潮へと達しいよいよ決意を固める場面にて、後者は深川秀夫さん振付『ソワレ・ドゥ・バレエ』にて
近年は抜粋で踊られる機会が増えたパ・ド・ドゥでも使用されている共に馴染みある曲。2曲とも落ち着いて聴ける心境にはならないのは目に見えております。
前日に鑑賞予定であった大阪府枚方市で開催の新国立劇場バレエ団によるクラシック・バレエハイライト公演が中止となってしまい
実のところ当日券購入が可能であれば鑑賞も検討いたしましたが、奇しくも枚方市でも披露予定であった
深川さん振付『ソワレ・ドゥ・バレエ』で使用曲が含まれるグラズノフ曲を聴くと今回ばかりは喜びよりも寂しさがまさってしまうであろうと思い
(中止は残念でしたがこれだけ拡大している状況下、誰も落ち度はありません。)今回は家族の感想を待つ側といたしました。

東京大学音楽部管弦楽団は創部100年を超える伝統ある楽団で団員も大変多く、曲ごとの座席表が細い線と小さな文字で詰めるように作成されていたほどで職場の座席表彷彿。
団員の名前もずらりと記載され、東大ですから当然ながら所属学部が理Ⅰや文Ⅲ等といった表記で
演奏活動にも精を出す全国から集まったエリート達であると思うといたく壮観。名前、学部、出身地も明記されていました。

そして本題、帰宅した家族から借りたプログラムを開き驚愕。曲目、作曲家についての学術書かと見紛う
事細かな解説が視界を覆い尽くし、思わずかぶり付いて読み耽けてしまいました。
中でも着目したのはグラズノフ『四季』より秋で、最初からバレエ音楽として作られている曲ですからバレエについては如何ほどの解説であろうかと
興味津々に目を通してみるといやはや仰天。グラズノフの生い立ちや曲のフレーズの特徴は勿論のこと、バレエの成り立ちにも触れたりプティパについて
そしてグラズノフとプティパの関係、テクニック名やグラン・パ・ド・ドゥの定義に至るまで
膨大に綴られている紙面にひたすら圧倒されるばかり。学生の方が執筆なさったのか詳細は分かりかねますが
参考文献もしっかりと紹介され、バレエ関連の書籍も相当読み込んで書かれた解説かと見受けます。
しかも、ややこしい言い回しは避けあくまで簡潔さっぱりとした言葉遣いであるため、読み進めるのが楽しい。
開演前にここだけは読んで欲しい箇所として短く纏めた箇所もあり、読み手に配慮した文体、構成の解説でした。
終わり無き記事に捉えられても仕方ない、以下長くなります宣言も時折行っている管理人と大違いでございます。
大学の演奏会には足を運んだ経験は無く、もしどの学校でもこういった詳細な膨大解説を綴っているのでしたら知識不足で申し訳ございません。
偶々誘われた家族から見せてもらったプログラムにて、情報量が多くも整理された解説に目を見張った出来事でございました。

東京大学と言えば名門中の名門難関大学であり、思い出すのは中学校の同級生で進学した2年生時の級友。
国立の高校を目指していると話し、そういえば5段階評価であった学業成績は9教科中殆どが5。
しかし鼻にかけることは一切なく、それどころかテレビはNHKか学習或いは世界遺産系の番組しか視聴していないと思いきや
音楽番組やドラマもよく見ていて、家族とカラオケに行ったりと会話を交わす限りよくいる女子中学生と変わらず。
今思えば、本当は数学の定理等について語り合いたかったものの9教科の5段階評価の並びが四羽の白鳥状態にあった我がレベルに引き下げて話をしてくれていたのかもしれぬが
(我が学業成績は今も親族間でも触れてはならぬ話題の1つで低迷ぶりは中学生の頃は定着し、既にこれといって驚かれず。
それよりも本日行われた北京五輪開会式選手団登場にて流れた四羽の白鳥、及び名曲アルバム或いは小中学校のお昼の校内放送を思わせる曲構成の方が衝撃は強いことでしょう)
しかし決定的な違いが1つあり、その同級生は勉強を心から愛し喜びを感じながら勉学に励んでいたこと。
帰宅してからの一番の楽しみな時間であると嬉々として語っていた姿が忘れられず、私も嘘でも良いから勉強が好きと一度でも口にしてみたいと憧れたものです。
その同級生とは成人式にて偶然再会。在住地域は人口が多いため出身小学校ごとに区分けされての3部制でしたが用事があった関係で午前中の第1部に参加したところ
姿を見つけ、声をかけると覚えていてくれた様子。近況を尋ねると東大に進学し建築を学んでいると充実した表情で語り
中学生の頃の記憶が巡って私も嬉しくなったと同時に、ご利益と言わんばかりにその同級生の振袖を摩り続けていた行為はどうかお許しください。

さて定期演奏会に話を戻します。プログラムを読み進めて行くと一挙に3人の作曲家作品が堪能できる今回の3作品構成に一層関心が高まり
バレエ観劇にとどまらず演奏会にももっと足を運びたくなりました。
そしてショスタコーヴィチと言えば配信で視聴したいバレエがあり、今週末やっとこさ視聴予定でおります。

  3作品構成といえば、バレエにおけるトリプル・ビルは全幕と同様好んで観たいプログラムで、先日はKバレエカンパニー公演にて堪能。
2時間半でブリテン、ベートーヴェン、ショパンを鑑賞でき目も耳も幸が凝縮でございました。
残念ながら中止となってしまった東京シティ・バレエ団のトリプル・ビルもチャイコフスキー、メンデルスゾーン、ストラヴィンスキーと
これまた1公演で音楽の面でも宴の如き構成。音楽ファンも気分高まるプログラムでしたのでしたので延期公演をどうかと願っておりましたが
3月10日(木)に東京文化会館にて開催と本日発表、これは嬉しい。 そしてトリプル・ビルとは異なる形ですが
新国立劇場での2月公演ももしかしたら一足先に!?お目にかかれるかもしれずひときわ嬉しい鑑賞となりそうです。
ただまだまだ不安な時期が暫くは続きます。以前と変わらず気をつけながら過ごして参りたいと思います。

かぶり付きといえば、今では一部の現代作品では間近で息遣いも感じられる座席構造で観客を出迎える公演もありますが
数年前までは舞台でもイベントでも目の前に憧れのダンサーが出現、なんてこともございました。
本日我が家に届いた新国立劇場からの寄付のお礼としての『不思議の国のアリス』クリアファイルを手に取り
今年のアリスの無事上演そして気にかかる2020年もし上演していたならば実施されていた
2018年の『眠れる森の美女』に続いてのバレエ観劇着物とダンサートークショー付きイベント。
眠りのときに参加し、最終日に主演その他は青い鳥や求婚者を踊られたお方による、オーロラへの求愛をリラに訴えるデジレ王子の実演を
それはそれは手が届きそうな距離にて拝見したあの時間がいかに尊いものであったか、今一段と身に沁みて感じております。

2022年1月30日日曜日

思いがけず巡り合わせたトリプル・ビル Kバレエカンパニー『クラリモンド~死霊の恋~』全編 『FLOW ROUTE』 『シンプル・シンフォニー』1月29日(土)




1月29日(土)、Kバレエカンパニーのトリプル・ビル昼公演『クラリモンド〜死霊の恋』、『FLOW ROUTE』、『シンプル・シンフォニー』を観て参りました。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2022lamorteamoureuse

『シンプル・シンフォニー』
振付:熊川哲也
音楽:ベンジャミン・ブリテン
舞台美術デザイン:鈴木俊朗
舞台美術デザインアシスタント:佐藤みどり
衣裳デザイン:前田文子

成田紗弥  高橋裕哉   小林美奈  山田夏生  杉野慧  吉田周平

記憶違いでなければ2013年の初演以来9年ぶりの鑑賞。当時の出演者は荒井祐子さん、西野隼人さん、日向智子さん、橋本直樹さん、佐々部佳代さん、伊坂文月さんでした。
全員黒で統一した衣装で女性はタイツもポワントに至るまで黒色であっても光沢のある小さな宝石のような装飾がアクセントになり
また何より、音の1つ1つを刻むような細かな技巧てんこ盛りな振付を踊りこなす達者な布陣なだけあって踊りを繰り出す身体がくっきりと見えたほどです。
女性陣のチュチュの内側がキラリとした緑色で、動いて翻るたび、またリフトされたときにはシックな空間によく映えて実にお洒落。
色味の広がりに至るまで計算し尽くされた振付、衣装と見て取れました。ペア毎に三角形を描画するようなフォーメーションや
男性が跳躍を繰り返している間、女性が顎の下に両手を添えてユーモアな魅力を全開していたりと飽きのこない工夫がされた振付であった印象です。
男性陣のぺったり撫で型な髪の纏め方は指定であるのか分かりかねますが、女性陣の夜会巻はきりっと決まっていて美しや。
成田さんの淀み無きポーズの連鎖や小林さんの強い軸から放つパワフルな造形がひときわ目を惹きました。

お好きな方には申し訳ないが奇妙で且つ掴みどころがないと耳が覚えてしまったのかブリテンの曲は大の苦手で
初台にて『パゴダの王子』全幕を計9回鑑賞しても、そして9年前のこの作品初演を鑑賞しても苦手意識は拭えず。
しかし今回は特に女性陣の踊りが好みに合った点や、舞台とオーケストラ双方が近くから俯瞰して見渡せる席で
中盤のピチカートな場面では演奏者達の手が一斉に爪研ぎをする猫の手にも見えたりと舞台と演奏者同時進行で楽しく観察。
黒に近い赤い背景も締まりをもたらし、以前よりはずっと好みに近づいた作品です。


『FLOW ROUTE』

振付:渡辺レイ  
音楽:L.v.ベートーヴェン
コリオラン序曲 作品62  
弦楽四重奏曲  第14番  嬰ハ短調 作品131より
交響曲  第7番  イ長調 作品92より  第4楽章

飯島望未  山本雅也
萱野望美  高橋怜衣  辻久美子  吉田早織
辻梨花  新居田ゆり  栗山結衣  吉岡眞友子  
酒匂麗  杉野慧  栗山廉  関野海斗  
本田祥平  三浦響基  金瑛揮  髙橋芳鳳

殆ど予備知識無しで鑑賞し、ベートーヴェンの曲構成ならば睡魔には襲われずに済むコンテンポラリーなのであろう程度に観始めたら寸分のダレも無く驚愕の連続。
やや暗い空間にて卓球台ぐらいの大きさの黒いテーブルを黒のスーツ風衣装の男性達が囲んで怪しく踊る箇所から目が離せず。
そして最たる衝撃は飯島さんで、ファッション界でも有名人としか印象を持っておりませんでしたが大変失礼極まりなく、
身のこなしが誠に軽やかで急ピッチな曲調の中で僅かな狂いも皆無。飯島さん自身が音楽を突き動かして支配しているようにも見え、恐れ入った次第で
彼女が主軸を務めるコンテンポラリー作品をもっと観たいと欲が募らずにいられずでございます。
考えてみればKバレエカンパニーの公演でのコンテンポラリーも初見かもしれず、皆揃って高い身体能力、何より心から喜びを発して踊る姿にも驚かされるばかりで
最後、全員で対角線上に突っ切るかと思ったところで昇華して暗転する幕切れにも痺れました。
大掛かりな照明効果も忘れられず、暗闇に照らした太い光の道が開いてやがて情熱が覆う大地へと移り変わるような変貌演出にも見入りまた観たい作品の1本に追加決定でございます。


『クラリモンド〜死霊の恋』

演出振付:熊川哲也
音楽:ショパン
ピアノ協奏曲  第2番  ヘ短調 作品21 、ほか
ピアノ協奏曲  第1番  ホ短調  作品11 第1楽章
音楽監修:井田勝大
ピアノ独奏:塚越恭平
編曲:横山和也
原作:ピエール・ジュール・テオフィル・ゴーティエ
舞台美術デザイン:ダニエル・オストリング
衣裳デザイン:セリーヌ・ブアジズ

クラリモンド:日髙世菜
ロミュオー:堀内將平
セラピオン:石橋奨也
バーバラ:浅川紫織
ロートレック:関野海斗
修道院長:グレゴワール・ランシエ
神父たち:三浦響基  金瑛揮  武井隼人  髙橋芳鳳
娼婦たち:岩井優花  戸田梨紗子  高橋怜衣  辻久美子  吉岡眞友子
客人:杉野慧  栗山廉  奥田祥智  田中大智

2018年に初演した短編作品を60分の全幕版にして上演。ショパンの音楽に振り付けられている点やあらすじからして『椿姫』に似た作品になるかと思いきや
舞台転換や振付もよく練られ、終盤のクラリモンドとロミュオーのパ・ド・ドゥのみ終わりが見え辛くやや冗長に感じてしまったものの
シック且つ艶やかな衣装や調度品の色も品の良い質感で工夫が行き渡り、斜めに吊るされた曇がかったアンティークな鏡が不穏な展開をも彷彿です。
堀内さんのロミュオーは品行方正な修道士が、聖職に就く直前に若さゆえか俗世での戯れの欲に負け逃走を決意する苦悩や娼館のマダムであるバーバラからの誘い、
そしてクラリモンドに出会い呑まれてしまうさまを力強くも丁寧な踊りで描出。
全編通してほぼ踊り通しの役柄でありながら常時安定した舞台姿で作品を牽引され、終盤死んだはずのクラリモンドが吸血鬼と化して現れての再会にて
驚くも幸福が沸き上がっていく感情をのせた場面もずしっと余韻を残していくものがありました。

日髙さんのクラリモンドは長くしなるような手脚をさっと動かしただけでも妖しい香りを漂わせ
急速テンポな両脚が絡みそうな登場ソロでも身体を巧みに使って舞台を駆け、艶かしさを体現。同性でも魔力に嵌められてしまいそうになったほどです。
真面目一徹に生きてきたであろうロミュオーがすぐさま目も心も奪われ恋の沼に落ちていく展開に説得力があります。
一方で病を患い、主人であるバーバラの前だけで見せる弱い部分も細かに表し、客前の顔と素顔の切り替えを明示。
終盤での吸血鬼となってロミュオーに迫る姿は恐怖感を与えつつも悲しげな眼差しも焼き付き、現実世界で恋愛を謳歌する人生を歩みたかった無念さが胸に沁み入りました。

物語の鍵を握る人物として橋渡しな役目も果たしていたのは浅川さんのバーバラ。ロミュオーを招き入れ、クラリモンドとの恋を見守り客人や娼婦達を取り纏める
知性が滲み出た落ち着きある女性で、周囲からも慕われている人物と推察。ポワントで踊る箇所もふんだんに用意され、
現在は指導者やユースの監督としても活動なさっていながら舞台姿の美しさは健在で、要所を引き締めてくださいました。
ロミュオーを心配して娼館を訪問したはずがクラリモンドの魅力に圧倒されてしまう様子を喜劇要素が一切無い作品であっても
思わず笑ってしまうほど分かりやすく伝えてくださったランシエさんの修道院長や
ロミュオーの部屋にてクラリモンドの死霊を感じて十字を切るとクラリモンドが苦しみ、対して倒れ込みから復活するロミュオーからは突き放される怒涛の展開の中心を担っていた
セラピオンの石橋さん、デッサン欲がおさまらぬ興奮した心持ちを素早いテクニックで見せた関野さんのロートレック等
適材適所な配置で詳細なあらすじは頭に入れずに鑑賞に臨んでも(プログラムは終演後に購入)悲恋の世界をじっくり味わうことができました。

ロートレックは好きな画家の1人で、昨夏に平日の夕方八王子市での鑑賞前に立ち寄った会場近くの珈琲店にて絵が何点も飾られ
職場を早退できた安堵感からのんびり眺めているうちに時間がぎりぎりになってしまった真夏の昼の現実でございましたので
バレエでの描かれ方にも注目しておりました。そういえばフランスのトゥールーズのバレエ団ではロートレックが主人公!?のバレエが制作されたとか。興味をそそられます。
話を戻しまして、ショパンの音楽からの選曲も良く、ロマンティックな感情の浮き沈みが波打つように描写された曲で構成。聴き入ってしまう曲ばかりでした。
大人数作品ではなくても娼婦達と客人達の賑わいある見せ場も用意され、全員異なる隅々まで凝ったデザインの衣装も充実。1時間に凝縮された物語バレエでした。

この日は当初別公演を鑑賞予定が中止となったため予定を変えて足を運び、白昼に本来ならば京阪電車に乗車しているはずが
京王井の頭線利用している現実の受け止めが難しい気分も微かにあったものの、いざ鑑賞すると3本全て満足度が非常に高いトリプル・ビル。
『クラリモンド』裏側レポート映像も豊富でリハーサルや衣装製作映像も当日朝から全て視聴し
時折時刻が目に留まると今頃は車窓から富士山眺めて間もなく静岡通過、と本来の計画が脳裏を過ぎりつつも
振付や衣装、音楽まであらゆる観点から捉える『クラリモンド』に興味を示すきっかけとなり午後の鑑賞がより楽しみに。制作過程映像発信、大変助かりました。
全国各地舞台開催が再び困難となってしまった状況下、仮に中止となってしまっても誰のせいでもありませんが
危ぶまれる中でも無事予定通り開催され、生の鑑賞を満喫できたのは思いがけずの巡り合わせで幸運でした。
3月の『ロミオとジュリエット』も今から心待ちにしております。




今回はプログラムが1000円でしたので、また3作品とも非常に満足度が高かったため購入。額縁を描いた装丁が古書物のような趣あり。
『クラリモンド』のページには衣装デザインを手掛けたセリーヌ・ブアジズによるデッサン画が1役に1ページずつ割いてカラー掲載。
画集のようで、1着1着見惚れてしまいます。



渋谷駅とBunkamura間は以前から人混みを避け道玄坂側出口からの裏道を使っており、改札までの通り道にある
マークシティ内のお店にてフランス産ワインを飲みつつチーズの盛り合わせで1人乾杯。
蜂蜜をかけるとふくよかな味わいとなり味変化も美味しい。
お店から井の頭線アベニュー口改札までは我が足で約50歩でございます。

2022年1月28日金曜日

【再放送あり】NHKサラメシにアトリエヨシノ登場

本日は短文記事です。ご安心ください。
俳優の中井貴一さんがナレーションを務め、日本や世界各地の職場の食事事情をレポートするNHKの番組サラメシにて
バレエ衣裳製作とレンタルを行っているアトリエヨシノさんが登場しました。
https://www.nhk.jp/p/salameshi/ts/PVPP6PZNLG/episode/te/YVYWVYQ8YQ/

1月30日(日)朝に再放送がございます。是非ご覧ください。
https://www.nhk.jp/p/salameshi/ts/PVPP6PZNLG/schedule/te/YVYWVYQ8YQ/ 

バレエの舞台、特に発表会ではプログラムを開くと大概は衣裳欄に社名が記載されていると言っても過言ではない大手であり
各地の発表会を鑑賞していると、目にすっかり馴染んで見覚えのある衣裳が何点かございます。
徳島と東京、千葉でお目にかかった同じ衣裳と思われる葦笛の可愛らしい衣裳は特によく覚えており(恐らく)、全国各地の舞台を支えていらっしゃいます。
何点もの衣裳が保管された部屋に入ると有名どころのバレエ音楽が流れる中で中井さんナレーションも気分が昂ぶり
またデザイン担当者と縫製担当者の呼吸の合い方がいかに大事であるかもインタビューにて紹介されていました。
短い時間ですが段ボールへの詰め込み作業やミシンを動かしチュチュを縫う作業等、舞台を支える現場の様子が垣間見えて面白く、どうぞご覧ください。

余談ですが、ヨシノさんではありませんが実は管理人、バレエ衣裳製作レンタル業者の面接を受けた経験がございまして
鑑賞のオタク度が強過ぎたか勿論ご縁無く終わったものの、プログラムではしばしば目にする会社で
社名が視界に入る度に面接を担当してくださった代表の方の素敵なお姿が今も目に浮かびます。全国のバレエ関係者から厚い信頼を得ていらっしゃるのも納得でございます。
後にも先にもバレエ衣裳の会社に足を踏み入れたのはこの面接のみでしたから、美しい衣裳が並ぶ空間やお話を伺っていた時間は思い出す度に幸せが込み上げ
この状況下において特に2年前は舞台やコンクール中止の大打撃も受けてこられたであろう昨今、皆様お元気でお過ごしでいらっしゃることを願います。

中井貴一さんによる痛快で楽しいナレーションもこの番組の大きな魅力ですが、中井さんといえばドラマから映画まで数々の作品に出演されていますが
とりわけ印象に残っているのはドラマ自体は視聴していないながら、1996年放送の『Age35 恋しくて』予告映像で流れていた
シャ乱Qが歌う主題歌『いいわけ』の潔いインパクトと劇中の訳ありな様相が絡む場面との見事な調和。
26年前の放送であっても何故だか脳裏に焼き付いております。それから前年に放送の、生まれ変わって江戸時代からタイムスリップし現代の企業に勤務する男女を描いた
『まだ恋は始まらない』はほぼ全話視聴していた記憶。(周囲ではさほど話題になっていなかったが)主演は小泉今日子さんで、のんびりした喜劇な作風で楽しく視聴しておりました。

バレエから話がずれまして失礼。本来ならば明日の白昼は京阪電車に乗車しているはずの2022年1月末の土曜日、予定を変えての芸術鑑賞満喫いたします。


2022年1月23日日曜日

貴さと風刺の2本立て  新国立劇場バレエ団   ニューイヤー・バレエ  『テーマとヴァリエーション』『ペンギン・カフェ』 1月14日(金)〜16日(日)





1月14日(金)〜16日(日)、新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエを計3回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/newyearballet/


※キャスト等は新国立劇場ホームページより
『テーマとヴァリエーション』
【振付】ジョージ・バランシン
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術】牧野良三
【衣裳】大井昌子
【照明】磯野 睦

14日、16日
米沢唯 奥村康祐

池田理沙子  飯野萌子  奥田花純   廣川みくり 井澤諒  木下嘉人  小野寺雄  山田悠貴

益田裕子  朝枝尚子  木村優子  中島春菜  原田舞子  土方萌花  廣田奈々  横山柊子
宇賀大将  太田寛仁  小川尚宏  上中佑樹  佐野和輝  西一義  西川慶  樋口響

15日
柴山紗帆 渡邊峻郁

池田理沙子 五月女遥 廣川みくり 池田紗弥
趙載範 中島駿野 中島瑞生 渡邊拓朗

朝枝尚子 多田そのか 徳永比奈子  中島春菜  原田舞子  土方萌花 廣田奈々 横山柊子
宇賀大将 太田寛仁 小川尚宏 菊岡優舞 佐野和輝 仲村啓 西一義 西川慶  


2000年の初演以来バレエ団の得意作品の1本で、2017年NHKバレエ饗宴以来5年ぶりの上演。両日幕開きから拍手が沸き
清涼な宮殿背景にシャンデリアが映える空間にて 主役2人と女性陣12名が静止するポーズの折り目正しさ、そして無事開幕を祝す観客の気持ちから自然と出たのでしょう。
初日こそまだ全体に硬さがありましたが千秋楽は実に張りがあり、皆で音楽を豊かに奏で押し出しや調和も強まっていた印象です。
プログラムに掲載された上野房子さんによる解説を読むと、いかにこの作品が変則の連続であるかが分かり
何度か観ている作品であってもパーツごとには振付を覚えていながら順序が混乱する作品であると思え
クラシックを基盤にしつつ何処かお決まりルールを崩しているバランシンのセンスのどんでん返しな面白味にも気づかされました。
またチャイコフスキーの音楽の中でもとりわけ好きな、締まりある気品香る流麗な曲調で、これにキビキビと美しく変則に満ちたバレエも加わり
視覚も聴覚も興奮せずにいられず。中でも後半の大団円ポロネーズは毎度胸が高鳴ってしまいます。

米沢さんはNHKバレエの饗宴のときよりも一層音楽に乗り切っていて鋭い強さと品ある柔らかさがバランス良く共存し
1つ1つくっきりと示す明瞭なステップや大きく使う上半身の語り、女王然とした姿も視界を幸福で満たしていきました。
奥村さんは幕開きから満面の笑みで、パ・ド・ドゥからソロ、群舞従えての前進も安定な仕上がりで
初日と千秋楽は休憩挟んだ次の演目ではシマウマさんとして登場する過密公演であるとも思わせなかったほど。(今思えば今回は代役での登板でした)
米沢さんとの呼吸もよく合い、ただ手を繋いで左右に動く振付でも ぴたりと揃いつつ交わす視線からも爽やかな幸せが紡がれ
スピード感のある忙しいスライディングサポート移動の滑らかさや、支えている時も今幸せの絶頂と言わんばかりの余裕たっぷりなにこやかさに驚嘆。
恐らくは2019年の『アラジン』以来の主役共演かと思いますが、お互いの澄み切った美しい踊りが音楽と溶け合ってコール・ドを引っ張る君主な風格を醸すペアでした。

柴山さんは幕開きの堂々たる姿から、失礼ながら配役発表時に過った、後方の出演者達に埋もれる心配も飛んでいき美しいポーズの数々にはっとさせられた次第。
また『セレナーデ』ソリストのとき以上に強靭な足腰を生かした跳躍に胸躍り、対角線上に迫る大ジャンプは
直前に少し躓いたとは思えぬ豪快且つ高さ、正確さも保ち唸らせるものがありました。

渡邊さんは端然とした序盤から品格があり、幕が開き現れた宮殿の柱を背景に佇む、金と白のシンプルで胸元が広めに開いたやや古めかしい衣装が似合う姿も目の正月。
女性陣が踊る最中に後方から再登場するときの歩き方や、立ち姿からも貴い支配感を示し
昨秋の『白鳥の湖』記者会見で仰っていた「踊り方改革」、止まらずここでも効果が表れていました。
しなやかなバネや滞空時間の長い跳躍も光るソロ、大団円行進の力感ある統率力も二重丸で、今年に入って以降饗宴の録画をおさらいしては、
そもそもトゥールーズ時代バランシン作品の経験も豊富であったとの記事を5年前には読んでいた経緯もあって
遡れば2017年の饗宴開催時やその少し前の同年2月ヴァレンタイン・バレエでの上演時も両公演とも客席にて
いつか渡邊さんのテーマ、、、主役にお目にかかりたいと、まだ周囲には殆ど打ち明けてなかった当時既に願望を募らせていた約5年前が懐かしく思い起こされます。
テーマ、、、は数あるバランシン作品の中でも女王、王者な風格が主役に不可欠な作品と思っており、重厚で華麗な波が増していく音楽にも毎度聴き惚れており
何しろ山本隆之さんが2000年6月に新国立主役デビューを飾られた、目を光らせて観てしまう作品でのちに見つけた当時の記事は大事に保管しております。
(タイムスリップできるなら22年前に降り立って拝見したい)
饗宴録画を観ては、山本さんの記事に目を通しては格調高く君臨するお姿を想像し
いつか渡邊さんで観たい作品上位に入っておりましたので、念願叶っての実現に今も尚酔い痴れている今日この頃でございます。
さて2022年のニューイヤーでもやります髪型観察。今回はちょいと驚きな古式ゆかしい趣きへと回帰な纏め方で
髪全体を少々アップしてから分けたスタイルなのかもしれません。そういえば昨年の配信ニューイヤー『パキータ』と似ていたかと思いますが古風な雰囲気もこれまた魅力。

柴山さん渡邊さんの並びは私はいたく好感を持っているのですが、今回は引っかかるものがあったのは正直な印象。
Aキャストに比較すると音楽がゆったりであったのは理解できるのですが、それにしても遅く感じられ
特に大団円前のヴァイオリンソロを中心としたパ・ド・ドゥの部分はお2人とも時間を持て余し滑らかさに欠け苦戦している様子に思えてしまい
加えて初役同士緊張もあったのでしょう。表情も硬めで手に汗握る展開に見て取れ、好きなペアであるはずがこうも長く思えたのは初であったかもしれません。
管理人、下半身が引き攣った状態で鑑賞しており、パンパカパッパパーンの響きが聴こえると安心しきってやっとこさ全身の力が抜けた、そんな状況でございました。
昨年6月『ライモンダ』での夢の場も時折現実に引き戻されてしまう箇所もあったものの何しろカウントが取りにくいふにゃふにゃ曲調ですし(グラズノフよ、失礼)
それはそうと役柄としての並びは淑やか姫を愚直騎士が守り抜く我が一番なる理想であったため
また8月のバレエアステラス2021におけるガラ特別仕様パ・ド・ドゥは威風堂々としている上に呼吸がよく合い
抜粋であっても命懸けの試練や修羅場を乗り越えた経緯が見えてくる威厳や凛然とした姿で実に天晴れな仕上がりだったのです。
全幕公演における帰還場面のなんぞ、目を心臓印にしての語りを繰り返し延々と聞かされている友人知人の皆様、申し訳ございません汗。
話を戻します。『シンデレラ』も同作品共演の2回目2017年公演は物静かで慎ましいヒロインが王子と少しずつ心を通わせ幸せを掴む展開に頬を緩ませて見入り
直近では『くるみ割り人形』での複雑リフト満載1幕パ・ド・ドゥにおけるクララの躓きハプニングのすぐ後の持ち直しで
寧ろ吹っ切れて愛が深まり疾走感が増した姿も忘れられず。これまでの共演の一部を掘り起こしてみると
今回のテーマのパ・ド・ドゥにおいては会心の出来と言わんばかりの万歳は難しいと感じたのでした。一番引っかかるのは演奏のテンポなのだが。

身長も合わせたのか、米沢さん奥村さん組の水色ソリスト男性陣はやや小柄で小気味良い技巧達者な軍団。
対する柴山さん渡邊さん組は平均180cm超⁈華々長身山脈軍団。渡邊さんが率いての前進場面、格式高くそして大迫力でございました。(これが特に観たかった)
ニューイヤーから1週間が経ちますが、饗宴の録画を眺めては回想しまだ幸福に浸っております。

ところで、2017年の饗宴放送以来この作品鑑賞を夢見ていた妹も15日公演を鑑賞。新国立でのバランシンは2018年の『シンフォニー・イン・C』、
更に遡り2009年の新国立初鑑賞時が『セレナーデ』でしたが5年前の饗宴放送が大衝撃であったようで
新国立劇場バレエ団のテーマ、、、が観たいと願い続け、5年越しに叶ったのでした。
コール・ドにも大満足し、翌日くれた連絡内容には「テーマ爆上がり」の文字。姉も嬉しうございました。
勿論キャスト問わず新国立劇場での鑑賞は喜ばしいことですが、15日キャストで鑑賞してくれた巡り合わせに
もう暫くは前年2021年の幸運を繰り越してもきっと許されるのであろうと初台と満月に向かって手を合わせた次第です。




『ペンギン・カフェ』
【振付】デヴィッド・ビントレー
【音楽】サイモン・ジェフス
【美術・衣裳】ヘイデン・グリフィン
【照明】ジョン・B・リード

ペンギン:広瀬 碧

ユタのオオツノヒツジ:
木村優里、井澤 駿(14, 16)    米沢 唯、井澤 駿(15)

テキサスのカンガルーネズミ:福田圭吾

豚鼻スカンクにつくノミ:五月女遥(14, 16)   奥田花純(15)
原健太 小柴富久修 清水裕三郎 浜崎恵二朗 福田紘也

ケープヤマシマウマ:奥村康祐
木村優里 寺田亜沙子 細田千晶 渡辺与布 川口藍 益田裕子 今村美由起 関晶帆(14,16)
米沢唯 寺田亜沙子 細田千晶 渡辺与布 川口藍 益田裕子 今村美由起 関晶帆

熱帯雨林の家族:小野絢子、貝川鐵夫 谷口奈津(14, 16) 本島美和、貝川鐵夫 坂本藍菜(15)

ブラジルのウーリーモンキー:
福岡雄大
飯野萌子 加藤朋子


昨年のニューイヤー無観客配信でも話題となり、また今回予定していたアシュトン版『真夏の夜の夢』代替演目。
配信とは言え1年前に観たばかりと当初はさほど期待を膨らませておりませんでしたが、当然ながら映像と生では全く違い
終盤に悲しみが全身を覆い尽くす感覚は生だからこそでしょう。配信でしかご覧になったことがない、劇場では初鑑賞の方々も驚きを覚えている様子でした。

ペンギンは昨年に続き広瀬さん。足取り軽やかで愛嬌たっぷり、ちょこっとお澄ましな雰囲気もまた愛らしく
お盆持っての回転はするすると、されど要所要所でのバランスポーズもぴたりと決めたりと巨大な被り物をしていながら音楽の抑揚を表現する技量に見入るばかりでした。
ヒツジのときには序盤、お盆を持ったまま頭を左右に振りながら一緒に音頭を取って後方で見守り、やがて取り外されるヒツジさんのスカート部分をさらりと回収。
愛くるしく走って去り、アシスタントな役目も果たしていたとは実は2010年の新国立初演鑑賞以来初めて知ったのでした。

序盤の洒落た軽やかさからは一転し、終盤雨に打たれながらの悲しみ背負うソロも訴えかけて痛切感が押し寄せ
特に顔を俯き、羽をパタパタとさせる箇所は全身から涙が零れているかのよう。時間軸戻りますが、ウーリーモンキーとのサンバが賑やかさ最高潮に達して潔く終了し
暗闇と化したときには既に後方の隅に静かに佇む姿もまた、胸を突くものがありました。
同じ歩調で仲間達と舟に向かっていてもペンギンだけは乗れず顔を下に向けて片手を下に翳し
しかし乗れた生き物達も決して喜びは見せず静かに客席に視線を送る状態で幕。演奏の震える余韻と舞台からじわりと滲み伝わる悲しみが後をひく幕切れです。

ヒツジ初挑戦の木村さんは初日は少しばたついた様子もありましたが2回目はスタイリッシュな踊り方、歩き方を色っぽく披露。
米沢さんは大胆セクシーな魅力を全身で表し、ヒツジの顔を被っていて表情での変化が見せられぬ条件下であっても肩や腕、脚の雄弁な動きに引き寄せられました。
以前の公演での終演後ビントレーさんが客席前に立ってのお話会にて観客からの投稿質問にあったヒツジを被ったときの視界について、
「殆ど見えません」と即答されていたかと記憶。中でも暗がりはダンスパートナーへの信頼感で左右されると思われ
井澤さんはもう気持ち機敏な足運びになればとも望みも募ったもののダブルキャストのヒツジさんをお洒落に支え、導いていらっしゃいました。

カンガルーネズミの福田さんは一呼吸置く間もない、マラソンのような振付であっても、年齢重ねても、3日連続でも素早さを維持しながらの移動もお手の物。
静寂と愛嬌を交互に操りながらの最後も、観客とお喋りを楽しんでいるかのような余裕でお見事です。
(福田さんに限らず、ひょっとして2013年の再演を除けば新国立初演の2010年時と干支一回り12年ほぼ不変な布陣か)
ノミの五月女さんは弾力性抜群且つ粗も見せずきちんと音に刻み込む スキップに目を見張り、初役奥田さんは伸びやかでエレガントな風味もあり両キャスト堪能。
肩車から滑り台を降下するような着地も面白く毎度観察です。モリスダンスチームは清水さんが軽快で遊び心も濃縮し、チームを引っ張っていた印象を持ちました。

今回救世主並みの大活躍であったのはシマウマの奥村さん。初日と千秋楽は『テーマとヴァリエーション』で
代役である主演登板を忘れさせる好演をなさった上に、休憩挟んですぐシマウマ。
恐らくは汗もひかぬ状態でせっせと黒塗りしたり、上へ上へと引き上げ重要なテーマと打って変わってのずっしりと重心を下に向けた振付を
1日でこなすのはどれだけ過酷であったことか。しかも体力有り余っているような若い年代では決してないはずが
ゼブラガールの無機質なカウントと鬩ぎ合うようにシマウマの孤高な叫びと最期を気高く踊られ
背中のタテガミを見せながらしなやかな質感を思わせる中盤も目が離せずでした。

そして2日目は後世に伝わるであろう落とし物事件解決者として活躍。ノミチームの1人の帽子が落下し中央に放置されたまま終わりを迎えてしまい、
暗転し次のシマウマ登場までの合間に誰か回収に来て欲しいと観客も願ったのでしょう。
時間稼ぎも兼ねて拍手も長めに続いていたかと思います。しかし、誰も来ない汗。
このときばかりは客席もそわそわとした息遣いが充満し、あろうことかシマウマ登場のファンファーレが。
帽子はそのままの状態で幕が左右に開き、後方からシマウマが登場したわけです。固唾を呑んで見守るしかありませんでしたが
前進する振付を生かして帽子を自身の間近に移動させて振り向きざまに袖へ投げてゴール!に一見思えましたが惜しくも及ばず
幕前に落下してしまったようでちょうどゼブラガールとして舞台後方に立った米沢さんが振付の流れに沿ってさらりと後ろ蹴りして帽子は無事舞台袖へと入り一件落着。
帽子が落下したままの状態である旨は時間軸を考えると奥村さんに伝わっていたとは思えず
シマウマ1本での登板である2日目、さあ登場と幕が開いたら舞台中央に帽子が置かれ、不安そうに見つめる観客の異様な空気感も感じ取っていらしたでしょうし
踊りながら対処方法を考えていらしたかと思うと、参りましたと申すしかございません。過去にも落とし物事件には
『アラジン』の財宝場面でアラジンの八幡さんが宝石に見惚れつつ装飾物を回収したり、『ジゼル』にて樽から落ちた一房の葡萄を
ペザントで登場の木下さんが拾って縁起が良いと言わんばかりに奥田さんと喜び合ったり
牧版くるみ時代に出会いの場でなぜか落ちていた筒状の物を雪の精の細田さんがアラベスクジャンプに紛れさせて袖へシュートしたりと
他も含めれば多々居合わせておりますが、今回は物が大きい上に自然な回収ができる役目の人もいない状況下。後世に語り継がれる事件となることでしょう。

熱帯雨林は一層強まった小野さんの母性、短いソロでも本島さんの哀愁と包容力のある踊りそれぞれ見入り、優しい眼差しの貝川さんが両日登場。
慎ましく仲睦まじい愛情に溢れた家族が住処を追われる、静寂な中に潜む悲しさが舞台に暫く残りました。
空気を一変させるウーリーモンキーの福岡さんは音楽の中で遊びながら周囲をぱっと明るくさせ
跳びながら上階末端席にまで向ける挨拶するような視線の余裕っぷりにもびっくり。
終盤の降雨の場面では走りながらノミの五月女さんや奥田さんを日替わりでリフトしつつ下ろしてまた走る繰り返しも
相変わらずの滑らかさで年末年始の『くるみ割り人形』若返りに続き仰天でございます。
幕開きにはペンギンウェイターであった飯野さん加藤さんが今度は濃厚ピンクな衣装でサンバのモンキーのお供をする姿も闊達で可愛い魅力一杯。
ペンギンとモンキーの助さん格さんな役目なのかもしれません(違うか)。

冒頭と少し重複いたしますが、配信と生ではこうも違う理由を再度考えを巡らせてみると、
それぞれの生き物役の見せ場最後に向ける視線と演奏の余韻が交わって会場を包み込む感覚に左右されると捉えております。
英国での初演が1988年ですから、ペンギンを軸にしたお洒落なバレエに環境問題や自然破壊を盛り込み痛烈な余韻を残す作品をいかにして思いついたのか
ビントレーさんの構想力に再度平伏すばかりです。初演から4年後の1992年の英国ロイヤル・バレエ団来日公演での上演時における客席の反応も気になるところで
管理人、この30年前の来日公演は『ラ・バヤデール』しか観ておらず。また知識皆無でプログラムの写真から
ノミが戦隊物にしか見えなかったり、シマウマを着飾る女性達の意味合いも分からず終い。
昨年の配信でも同様の内容を綴った記憶がございますが、当時ご覧になった方の感想を聞いてみたいと思っております。
くるみに続き2022年の幕開けを彩った高貴な宮廷を思わすバランシン作品と、風刺を効かせたビントレー作品。どちらも観続けたい作品です。

今回、年始まで12回公演が続いた『くるみ割り人形』から時間を空けずの開催で練習時間の確保も労苦があったかと察しますが
蓋を開けてみれば、世間の状況を考えると1月半ばまでの日程を組んだのはかえって良かったのかもしれません。
開幕するか否か、直前まで心配が尽きずであったニューイヤー・バレエ。まだまだ不安が立ち込める日々であっても
くるみも終えて2022年の始まりを祝す公演が無事開催でき、未だ安堵と喜びで満ちております。



※バレエアステラス2021フィナーレが少し前に公開されました。グラズノフの華麗なポロネーズにのせて
大トリとして柴山さんと渡邊さんがご登場。堂々たる『ライモンダ』でした。
『パリの炎』には、スロバキアから帰国し新国立に移籍された上中さんがご出演です。








※以下順不同でございますが写真諸々。


幕間にマエストロにて。再度テーマを思い出しつつ乾杯。



洋梨のタルト。小ぶりですが洋梨がざくっと多めに入っています。



中日は無事の開幕とテーマの鑑賞を祝い、静かに乾杯。上品な味付けのイタリアン、美味しうございました。



タコのサラミ仕立て。ユニークな前菜です。



レモンバターのリングイネ。まろやかさの中にレモン爽やかさとピリっと締まりある唐辛子が効いていました。今回はテーマの影響か白いお酒が続きます。



中日、妹も13時過ぎには劇場到着を決意してブリッジカフェにてケーキを食する予定でいたようですが
のんびり屋さんのため(身内といるとき限定か。職場ではきちっとしていそうなのだが)だいぶ遅れるとの連絡。
姉、1人でいただきます。苺がごろごろ、クリームは軽めのふわり感。好みな味でした。
13時40分頃、ようやくやって来た福島県白河市のご当地キャラクターしらかわん似の可愛らしい美女
(つまり妹。昨秋新白河駅到着時に視界に入ったお出迎えしらかわんのポスターを目にして似た傾向な可愛らしさに目を疑ったほど。
私とは大違いで容姿良し性格良し頭も良し加えて芸術家肌。長所無き不出来な姉に似なかった点は親類縁者も安心しているであろう)が向かいに着席。
妹はお茶だけ飲みつつ、プログラムを眺めながら本日のキャストをざっと確認。偶々この日が空いていたらしく、キャストは問わずで来たようでした。
姉の立場を利用し無理矢理土曜日のテーマキャストに鑑賞を合わせるよう強制したわけではありませんので誤解無きように。
妹が新国立を初めて観たのがビントレーさん着任前年の2009年のバレエ・ザ・シックですので
ペンギン・カフェのベテランキャスト勢はまさによく覚えている方々ばかりであるの様子。
本島さんや小野さん、米沢さんや福岡さん、福田さんらのお名前を見ると安心感を覚えると同時に
主演舞台は初めて観るテーマとヴァリエーションの柴山さん渡邊さんペアも楽しみなようでした。



カウンセラー友人と。途中まではアドバイザー友人も。静かに公演振り返り。
そしてユニオンジャック柄の箸袋を眺めているとビントレー作品ももっと観たいと欲が出て、『カルミナ・ブラーナ』是非。
『パゴダの王子』は情報の入手伝達が容易な時代に作られたとは思い難い東西南北の王達の描き方が気に食わぬがそれはさておき
もれなく髷姿にお目にかかれると思うと「キャストによっては」王子役を観てみたい気もいたします。
ただテカテカ光沢な着物が好みでないのだが笑(新国立初演のとき、マツケンサンバを彷彿)。髷姿と着物衣装は浦島太郎で間に合っているが
ああしかし終幕の敵退治の棒アクションは観たいかもしれぬ、と8年前の公演模様が巡ります。



ニューイヤー関連の仲間達。ラスクは干支にちなんだ、阪神タイガース仕様。昨年末のくるみにて、大阪の方からお土産にいただきました。
黄色い模様が入っていて、歌詞はよく知らずでも六甲おろしを歌いたくなります。
甲子園球場には何度か足を運んでおりますが阪神戦観戦の経験無く、一度はあの濃い観衆の中に入ってみたい気もいたします。
ぬいぐるみは4年前の平昌五輪中に購入。家族にスホラン好きがおりました。目眉がきりっとしていて賢そうなお顔です。ー(我が家ではトラちゃんと呼称)
ニューイヤーブレンドコーヒーは妹から。ヤギさんが富士山登頂に成功した、おめでたい赤と金色の袋デザインです。



大切に保管しております、山本さんが『テーマとヴァリエーション』にて新国立劇場で主役デビューされた当時の記事のコピー。
素敵な記事で多くの方にお読みいただきたい気持ちは山々ながら大昔の出版ではない本のページ丸ごと載せるのは憚られ、画質落としております。
このダンスマガジンの評によれば大畠律子さんとの共演について「思いやりに満ちた優雅さで包み込み、素晴らしいパートナーシップを築き上げた」とのこと。
うう、叶うものならタイムスリップして当時の舞台に居合わせたい。
テーマ初演時は4人のソリストで、そのときパトリシア・ニアリーさんの目に留まり、次の上演時の主役抜擢に繋がったそうです。
先に触れた内容と重複いたしますが、王者な風格を備えた高貴な君臨を求められる、バランシン振付の中でも別格と思える作品に元祖王子と新鋭王子が主演。
管理人、2000年の想像と2022年の回想をひっきりなしで往来真っ盛りでございます。

2022年1月17日月曜日

13日(木)夜の癒しとなったバレエの美神2021ハイライト映像

寒い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
現在多数の舞台の中止が相次ぎ、開催か否か毎度緊張を強いられる方も多くいらっしゃることと存じます。
先日の金土日と初台の公演は無事開幕、全日程終了し安堵。3公演観て参りましたので感想はまた後日に回すといたしまして(相変わらず頭の働きが遅うございます)
昨年4月末の突如の緊急事態宣言発令が出そうにあったときにコッペリアはどうなるんやと人生の楽と苦が同時に来る云々と走った水戸黄門のテレビ視聴ではなく今回はバレエに依存。
開催か否か不安で仕方なかった13日の木曜日、考え込んでいても仕方ないと思い 気晴らしに偶々視聴した
全く異なる分野の公演のハイライト映像が面白かったため紹介いたします。
光藍社主催バレエの美神2021です。







公開されたばかりのバレエ・アステラス2021フィナーレ映像の視聴直後に見つけ、バランスのとれたプログラム構成や人選等
ご覧になった方からの評判は聞いておりましたが納得。古典から現代作品まで幅広く、何コレ珍百景な選択もなく自信を持っての披露に頷く作品が揃い
現代作品もわけの分からぬ系は無くネオクラシックに近いものが並んでいた印象です。
こういった来日公演が隔離期間も経てどうにか開催に漕ぎ着けていた昨年夏から秋にかけての時期が奇跡のように思える現在ですが
美神の公演の時期、(上野ではベジャール・バレエ団公演)東京では震度5の地震が発生したり、他日にはJRの変電所火災による電車の乱れも生じて開演が遅れたりと
ただでさえ世界規模での大変な事態に次から次へと災難が舞い込んでいた時期でもあったと思い出し
関係者もてんやわんやであったと察します。公演実現にかかわった光藍社の方々にも敬意を表します。

さて、映像を視聴して特に印象に残った方をざっと順不同に綴って参ります。大雑把ですが悪しからず。
まずボリショイのアリョーナ・コワリョーワ。来日公演でのミルタで観た記憶がございますが
クラシック・チュチュでの姿の映像は初見。腰位置の高さ、身長の高さが更に目立ち、ポワントが画面から消えかけるつまりは追えないほど脚が長く
本人も身体の条件、コントロールには苦労しているのであろうと推察。ただスケールはあり。
それからエレオノーラ・セヴェナルドとデニス・ロヂキンによる『スパルタクス』。
リフトした上でポーズを巧みに変えつつ移動したりと盤石なパートナーシップに双方に強靭な体幹がなければ成し得ない振付で
グリゴローヴィヂの手腕に唸り、今観ても色褪せぬ魅力がございます。 フリーギアが背負う悲しみを情感豊かに踊るセヴェナルドですが
『ドン・キホーテ』キトリでは品性を保つ端正な踊りとぱっと華やぐ表情、ポーズの連鎖にも見入ってしまいました。
それからナターシャ・マイヤー組が披露する作品が何本かあり、Luminousだったか、流れるような爽快感をもたらしていました。
フィナーレはビゼーの交響曲ハ長調の第4楽章にのせて全員が登場。披露した作品の一部分を溶け込ませつつ高度な技巧を一斉にこなす場もあり高速展開のまま終了。
出演者全員テクニックも安定し(オデットまでフェッテ笑)、長髪がやや気になったロヂキンが座長らしく締め、なかなか楽しいフィナーレでした。

この曲といえばバランシンのシンフォニーインCがすぐさま浮かばずにいられず。そうです、この金土日3日間バランシンたっぷり堪能いたしました。
それはそうと、このバレエの美神映像、見応えありますので是非ご覧ください。

2022年1月10日月曜日

年末年始無休営業   新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年12月18日(土)〜2022年1月3日(月)  計7回




2021年12月18日(土)から2022年1月3日(月)、新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』を計7回観て参りました。
大晦日とお正月に新国立劇場でのバレエ鑑賞は初体験です。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/

※キャスト等は新国立劇場ホームページより
12月18日(土) 18:00
クララ/こんぺい糖の精:木村優里
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:中島駿野
ねずみの王様:渡邊拓朗
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:飯野萌子、廣川みくり
井澤 諒、原 健太

    指揮:冨田実里

12月21日(火) 14:00
クララ/こんぺい糖の精:柴山紗帆
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:中島駿野
ねずみの王様:木下嘉人
ルイーズ:飯野萌子
雪の結晶:渡辺与布、広瀬 碧
花のワルツ:寺田亜沙子、中島春菜
浜崎恵二朗、渡邊拓朗

    指揮:アレクセイ・バクラン

12月24日(金) 19:00
クララ/こんぺい糖の精:木村優里
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:中島駿野
ねずみの王様:渡邊拓朗
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:飯野萌子、廣川みくり
井澤 諒、原 健太

    指揮:冨田実里

12月25日(土) 13:00
クララ/こんぺい糖の精:池田理沙子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:奥村康祐
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様:小柴富久修
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶 飯野萌子、廣川みくり
花のワルツ:飯野萌子、廣川みくり
井澤 諒、原 健太

    指揮:アレクセイ・バクラン

12月31日(金) 16:00
クララ/こんぺい糖の精:小野絢子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様:小柴富久修
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:飯野萌子、廣川みくり
井澤 諒、原 健太

    指揮:アレクセイ・バクラン

2022年1月2日(日) 14:00
クララ/こんぺい糖の精:柴山紗帆
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:中島駿野
ねずみの王様:木下嘉人
ルイーズ:飯野萌子
雪の結晶:渡辺与布、広瀬 碧
花のワルツ:寺田亜沙子、中島春菜
浜崎恵二朗、渡邊拓朗

    指揮:アレクセイ・バクラン

2022年1月3日(月) 14:00
クララ/こんぺい糖の精:小野絢子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様:小柴富久修
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶:飯野萌子、廣川みくり
花のワルツ:飯野萌子、廣川みくり
井澤 諒、原 健太

    指揮:アレクセイ・バクラン






※大晦日カーテンコールの様子。ドロッセルマイヤーの魔法で特別演出です。




池田さんクララは午前零時の部屋へのあどけない様子での登場から以前にも増しておどろおどろしい展開を予期させ、視線の運び方が一層遠くまでも届くようになった印象。
ヴァリエーションでの腕の掲げ方や顔の傾け方も柔らかくスムーズで、脚運びは急速なテンポでも達者ぶりに拍手です。
奥村さんは客間での笑みが穏やかな空気をふわりと作り出して客人達との細かな懇談やきりりとした風情と温厚な表情の使い分けの観察も一段と面白く行いました。
5年連続で組む強みもあるのでしょうが、池田さん奥村さんともにパ・ド・ドゥの仕上がりが実に宜しく
1幕の出会いでのリフトにしても振り幅がより強まっただけでなく2人の全身から喜びが零れていて心身共に大冒険。
2幕では終盤に向かうにつれて体力が辛くなってくるかと思いきや逆行で特に奥村さんがコーダで更にスピード感が増して勢いが落ちず。
振付の忙しなさを全く感じさせぬ出来でございました。

小野さんは登場時の幼さが残る少女らしさが、子役クララから入れ替わりの登場でもさほど違和感無く
ネズミ達を追い払っては隠れたりと1人で大忙しな役割も高速刻みな変化を綿密に表現。
2幕でのシャンパンゴールドを何重にも彩ったかの如く煌めきは随一と思われ、両日4階末端で観ていても
余りの眩さ、くっきりとしたオーラを放つ踊りに双眼鏡が殆ど不要であったほどです。
福岡さんはなかなか目立ったメッシュ?はさておき笑、子供クララから受け取った髪飾りを上に掲げて興味津々にじっと見つめる仕草に
クララからしたら、就寝直前まで夢見るひとときが舞い降りていたに違いありません。
また昨年よりも踊りに楽しさが表れ、いくら5年連続出演で慣れていらっしゃるとはいえ出番多く疲労困憊になる振付作品でも余裕綽々な姿に目を見張りました。
そして小野さん福岡さんペアの盤石ぶりはこのややこしい危険度の高い振付においては格が一段階違うと唸らせ
特に1幕では嵐を巻き起こすような疾走感、恐れが一切無い信頼関係から繰り出す歓喜が溢れる練り上げに驚嘆。別格の凄みを見せつけられました。
リフトされながら回転する際に小野さんが見渡す視線が最上階端まで届き、吸い込まれそうになった感覚は忘れられません。
お2人の牽引はバレエ団史上初の大晦日公演(正月もだが)にて特別な昂ぶりをもたらし
2021年も色々あったが劇場にいる人々全員で楽しく1年を締め括ろうと並々ならぬ気迫が伝わってきたほどです。

今回のくるみで主演者の中では唯一の初役柴山さんクララは昨年12月公演よりも1月2日は1幕は特に伸びやかさが出て
くるみ割り人形が出現し最初は不安を持ちつつも怒涛の展開に巻き込まれながらも守られて行くドキドキとした心の内を美しいフォルムを保ちながら描写。
人形が変身し憧れの甥っ子となり、起き上がってきたときの驚きや喜びようも格段に前面に出て、
音楽と調和しながらの甥っ子との交互のアラベスクも滑らかに乗り切っていました。
昨年にも触れましたが、意外にもネグリジェが似合い良家の楚々とした令嬢な雰囲気も好ましく映りました。

※ちょいと長くなります。水分補給をどうぞ。
渡邊さんは初役柴山さんに合わせて安心安全を重視且つ昨年の21日以上にときめき溢れるパートナーリングで導いて夢世界を描き
あれこれ組み込みなテクニックも颯爽と披露。1幕にて、飛び込もうとした柴山さんが躓いてしまったのか滑りかけてしまう
一瞬ひやりとした箇所も、渡邊さんが咄嗟に前に出て受け止め事なきを得ました。
それどころか寧ろ柴山さんも緊迫状態を解され吹っ切れたのか、物語と同じく危機を救われたためか益々愛が深まった展開に感じさせる心浮き立つ流れと化。
あわや滑りそうになった柴山さんの肩を渡邊さんがガシッと両手で掴んで助けたこの場面を思い浮かべるだけでも管理人、今月は心の花園満開にして生きていけます笑。
イーグリング版を2017年に新国立で新制作初演以来、過酷で複雑、十二分なスタミナも不可欠なドロッセルマイヤーの甥っ子/くるみ割り人形/王子役で前代未聞、
渡邊さんが2人をパートナーに代役含め計4回の登板が発表されたときは体調や怪我の心配もありましたが、なんのその。
同作品で共演を重ねている木村さん、初挑戦の柴山さんそれぞれに心を砕いて違った王子像を見せてくださいました。渡邊さんは今期くるみの最大功労者でしょう。
客間での、クララのおばあさんの手の甲へ口づけする横顔も美しや。

さて2022年もやります髪型観察、この度も丸。実のところ1幕ではまさに士官学校卒業生なるピシッとした分け方で軍服時は風紀検査の模範に望ましいお姿ではあっても
シャンパンカラーの上着を着た王子様では果たしてと心配が募っていたのも束の間。1幕でクララと出会った
雪の前のパ・ド・ドゥにて徐々に前髪が靡き気づけば自然な整え方へと変貌。場面ごとの変化に即し計算し尽くしての固め具合であったのか
それとも激しいサポートやらテクニック駆使といった複雑な振付の影響であるためか真相は分かりかねますが、想定外な変化に喜びを覚えてしまった次第です。

中家さんドロッセルマイヤーは何を任せても予期せぬ事が生じてもどっしりとした安心感を漂わせ、
蝶々のサポートも自らも楽しく一緒に踊っているようで、葦笛の音楽にて蝶々が踊る
無理のある且つ経緯も不明な設定であっても巧みに見せ、堪能させてくださいました。
そして大晦日には特別仕様のカーテンコールでの仕切りもお手の物で、何事かと動揺しつつ徐々に喝采を送り始める観客と会話するように
また舞台上部に投影される挨拶文や雪の結晶模様のタイミングも見計らっての魔法のかけ方も万全。
最後は客席両側からの紙テープ発砲の合図も行い、『8時だよ全員集合』をも彷彿とさせましたが笑
紅白歌合戦風の締め括り演出で大喝采のまま幕が下り、2021年の公演無事終演。管理人の脳内、すぐさま寺院の鐘が鳴り始め『ゆく年くる年』旋回です。
初役中島さんは初回こそ4階から観ていても手品で冷や汗ものな展開になってはしまったものの
(恐らくは甥っ子、子役含め、舞台上の全員が中島さんの初役手品を応援していたかと想像)2回目以降は落ち着きするりとスムーズ。
なぜに失敗と隣り合わせな手品場面が多いのか謎ではあるが、パーティーにて子供を喜ばせる出し物としてちょうど良いのかもしれません。
歴代のこの役の中では若手の世代でしたが頼りないなんてことは全くなく、優雅でソフトな雰囲気もまた魅力に映り
2幕のスッカラカン魔法の国モデルルーム状態の空間においても、1人でのお出迎え係と観客役として(これもどうかと思うが)
躍動するかのような堂々たる立ち居振る舞いでした。

ネズミの王様も三者三様で、全幕作品では初の大役デビュー渡邊拓朗さんは歴代ネズミ王の中で最長身で体格もしっかりしているだけあって
登場時に侵入するクララの部屋がいたく窮屈そうで笑、それでもきちんと直立している姿がどこか健気。
踊り方はダイナミックで豪胆、しかし仕草は細かく、兄上人形!?に奥側へと追い詰められ退治されてしまう全身をワナワナとさせた粘りも笑わせ
大役での兄弟対決実現に、戦闘で敵対関係にあっても接触の度に興奮。カーテンコールではじっと見つめ合っての力強い握手で讃え合う姿に
願いがまた1つ叶った思いでおります。24日には豪快ポーズと目玉点滅の演出も合わせた工夫凝らしたカーテンコールでも沸かせてくださり
兄弟対決を見届け、24日は初台に舞い降りた至福のクリスマスイブでございました。
木下さんはすばしっこい器用さが抜きん出ていて、役の経験の豊富さからの安心感とまだまだ未知の動きが飛び出す面白さの双方が合体。
対する初役小柴さんはまろやかな風味があり、グロテスクな被り物していても不思議とそんなには怖さがなく
掴みどころのない可愛らしさや王の地位にいながらもおっとりしたお茶目な魅力が詰まっていた印象です。
尚、ネズミ王名物アドリブ大会のネタで唯一すぐに分かったのは小柴さんで、目が回らない竹中直人さんの特技?バットでぐるぐるを披露。
舞踊といえるのかご判断にお任せですが笑、流行やテレビ事情に疎い私でも分かったのは何だか嬉しいものです。

雪の精たちのクリスタルな輝き、統一感は何度観ても溜息が零れ、大胆な雪の結晶フォーメーション
(上階から観ると巨大な雪印のマークを造形)も息を呑む出来栄え。ティアラ型の頭飾りから反射する光もまた、銀世界に彩りを添えています。
マンゴー&温州みかん色にも目が慣れ、寒い国ならば温暖な趣も良いかと年々思えてきた女性と男性が同人数で踊る花のワルツもパワフル且つ優雅。
ソリストでは飯野さんによる音楽の強弱を自在に全身で魅せる踊り方から目が離せず。
フィナーレでの男性のみで直線から段々と三角隊形へと変化させていく勇壮な展開も何度観ても胸躍る場面です。

それから1幕にて、秘かなお気に入りが羊さんの車輪付きおもちゃで毎度の癒し。玩具店で売っていたら購入したいくらいです笑。
1階の下手側前方席での鑑賞時にはこの羊さんを貰った女の子がすぐそばに来まして、彼女が抱いていると羊の目がこちらを向き、羊と目が合う思わぬ幸福も。
そんな楽しみも増えてきたのもこのくるみ、あれこれ不満を呟きながらも5年連続でおおよそ全ての公演を鑑賞してきたからこそでしょう。
パーティーシーンはいつの頃からか勝手に華麗なる保護者会と名付け、人物観察にも集中。
子供に手を振ったりと母親役が堂に入り、肩の美しい使い方も魅せられた根岸さんが目を惹き、
子供達が中央でスキップしていると隅っこで一緒に体を動かす童心に帰っているお父さんも。太田さんでした。
母親役は土方さんだったか?無理に止めることなく大らかに見守る優しさに和みました。

主役2人のリフトが多すぎる点は要改訂と感じるのは初演以来不変で、出会いの場面も序盤は昂ぶりや疾走感効果もあってまだ良いが
雪に変わる直前の最後の最後まで限界突破したいのか、リフトが延々と続くともうええよ、と毎度思ってしまいます。
それでも各ペア再演重ねて一層の高みを目指し余裕すら出てきているのはお見事としか言えず。クララ初挑戦の柴山さんもよく仕上げてきたと思います。
結局は代役登板日も両日足を運び、観る予定になかった21日は素敵な高校生の女性と心洗われる出会いがあり
2日は4階での鑑賞予定を変更しお正月一発目ともあって1階舞台近くの席を購入してこれまでで一番楽しきお正月を過ごしていた自身がおりますので
あれやこれや申す資格はございませんがこの作品で渡邊さん、2人のパートナーと計4回登板は想像を超える過酷さであっと察します。

他にもクララと魔法の国の人々との接点がないまま宴開始の展開もぶつ切り感が残り、首を毎度傾げておりますが
主役の振付に比較すれば私も諦めの境地に到達しつつあるのか以前ほどは気にはしなくはなりました。(だが気にはなるが)
シックながら華やぐ品のある客人達や煌びやかな銀色の雪、こんぺいとうと王子のシャンパンゴールド、甥っ子の軍服、と衣装はどれもセンス良く
イーグリング版の魅力も諸々ありますから、今後の上演するならば満喫したいと思う2022年の年明けでございます。
出店もクリスマス以降は和の飲食物も加わり、思いがけず年末年始のくるみも気分が華やいで気に入ってしまった、2021年から2022年に跨った初台のクリスマスでした。





イブのマエストロにて、蕪と浅蜊のクリームソースパスタ。ブリュットと雪景色な色味に浮き立つくるみ気分。




この日は当ブログレギュラーの後輩と、後輩と同じスタジオに長く所属されレッスンを重ねていらっしゃる
芸術の表舞台と裏方の両方こなしていらっしゃる素敵なお方と乾杯。
新国くるみ、お気に召して存分に楽しまれたご様子です!
そして後輩は2022年何を踊るか、気持ちは赤鉛筆を耳に引っ掛けて勝手に予想大会笑。



クリスマスを過ぎると日本のお祝い要素も加わり、大晦日公演限定鴨ネギ蕎麦。
新国立劇場内にて立ち食い蕎麦をする日が到来するとは夢にも思わず。ネギがごろっと大きめで香ばしい焼き加減、鴨肉も食べ応えございました。
食べたらささっと返却口へ運んで立ち去る点も、立ち食い蕎麦店と同様です。
マエストロのスタッフも大晦日お正月返上で総動員であったご様子。ありがとうございました。




2021年公演も無事終わり、蕎麦でまだお腹が膨れておりましたので小さなパフェと白ワインで乾杯。
まさか大晦日も三が日も公演を打つシーズンが到来するとは夢にも思わず。帰宅後は紅白とジルベスターを視聴しあけまして2022年。



年明け一発目の1月2日。公演期間の中盤あたりから上手側のテラスではアルコール販売が再開され、ホットワインも登場。
柑橘の薄切りが入り、スパイスも効いて日光浴効果もあり身体がじわりと温まっていきました。シックなカップもお洒落です。
それにしても新年最初の鑑賞にこちらの王子様、歓喜なる鑑賞はじめでございます。開演前から嬉々としておりました。



新国立劇場が甘味処と化し、甘酒とお汁粉も登場。この日のペアは和の趣も感じられ(それも魅力)2種のメニューは2日に味わおうと計画しておりました。
麹の食感がしっかりと残る甘酒と白玉入りの甘めのお汁粉。ここは本当に新国立劇場か笑。
甘酒はつい最近までは苦手でしたが、昨秋に福島県白河市の千駒酒造さんの酒蔵見学時に紹介映像を見る際に
麹の香りや質が締まりある味わいな甘酒をいただたいことがきっかけで好物に。
そして限定ポストカードプレゼントも嬉しく、ブルーの落ち着いた照明が注ぐこの『ライモンダ』結婚式の場面、格調高く憂愁も帯びて美しうお2人でございました。
勿論この写真も作品好きとしては嬉しさ一杯でごさいますが、マント装着時間約15秒であった猛然凛然とした帰還場面の写真、何処かで公開お待ちしております。



見送り看板。2022年一発目、清楚なクララと優しく勇ましい力強さもある甥/人形/王子なペアの公演でした!


千秋楽を無事終え、予定通り12公演全て上演にビールで乾杯。一緒に祝杯をあげたカウンセラー友人は全公演制覇とのこと!



赤ワインとチキンステーキ。予約不要クイック宴会プランでしたので飲み放題。くるみと昨年1年間を静かに振り返り、ワインも進みます。
昨年の狂喜乱舞はコッペリア夢の共演であると何度も話を聞いてもらい、次は壮絶系重厚系作品でも共演実現祈願と意見一致。
アンナやライモンダ等のヒロインは理想の板挟みでございます。



ビールとから揚げ、王道の組み合わせです。昨年のダンスマガジン9月号の日本の美しい男たち特集で
好きな食べ物の1品目にから揚げと回答なさっていた方、いらっしゃいました。



ペンネとスパークリングワイン、白と赤両方ございました。まずは白から、この後に赤も。
ところで店内では『枯葉』や『禁じられた遊び』等物哀しい曲が次々と流れ、後者は私も1つ、子供の頃発表会にてトラウマまでとは言わぬが思い入れがあり
ふとした拍子に友人に打ち明けたところ現在におけるある要素への尋常ではない憧憬に繋がっていると遅ればせながら気づき、機会あれば綴って参ります。
それにしてもこれまでの人生で最も楽しい年末年始でございました。
昨年12月21日に偶然出会った素敵な高校生への接し方に問題なかったか今もまだ心配な管理人。
この日の王子様のように、緊張気味な相手の心を解きほぐし安心感を与える名手でありたいと理想を掲げたが人間力欠如の管理人は夢のまた夢。
しかし舞台は心底楽しんでいた様子でしたので、きっと再び新国立劇場バレエ団の公演に足を運んでくれると思っております。

2022年1月7日金曜日

清々しい双眼鏡事件




昨日は東京も大雪となり今朝は路面凍結に悩まされた方も大勢いらっしゃるかと存じます。
普段は駅まで自転車利用の管理人も本日はペンギンを意識した徒歩で向かいました。尚、カフェではありませんからカクテルは運搬しておりません。
途中、すれ違う一回り以上はお若いであろう女性がツルッと前に転倒しそうになり、偶然なのかすぐさま受け止め転倒を未然に防ぐことができました。
その方からも、打ちどころが悪かったら怪我していたかたかもしれないと丁重にお礼を言ってくださり、お互い安堵した通勤の朝でございます。
ただ気がかりが一つ、受け止めたのが私ではなく素敵な王子様であったならばその女性にとって、朝から美しき銀世界を巡る、いい夢旅気分になったであったろうに。
状況としては似通っていたこのお正月の某舞台1幕ときめきハプニングを思い出しつつ、背中から廃れた哀愁漂わせ改札へ向かった管理人でございます。

さて相変わらず頭の回転が宜しくないため昨年末からの新国立くるみ感想は連休あたりに回しまして
本日も大寒波で雪解け困難な1日でしたので、昨年最終日の記事序文にて少し触れた、劇場の隣席にいたZ世代の方との心温まった話です。

新国立劇場でのとある日(詳細公演日はこの後の内容からすぐお分かりになるかと思いますが)のくるみ割り人形公演でのこと。
2幕開演前に、私の隣席の女性が、あのうすみません、、、と恐る恐る声をかけてこられました。
もしかしたら私の腰掛ける体勢が良くないのか、それとも体調が思わしくなくスタッフを呼んで来て欲しいのかもしれないと
まずは話を聞いてみると、少しだけで良いので可能であればオペラグラスを貸していただけないか、とのこと。
その席は4階末端エリアで、恐らくは1幕の最中は持参してこなかったことを悔やみ、しかし現在は貸出中止のため幕間に悩んでいたのかと思います。
そして意を決して、勇気を出して、隣席の私に声をかけてくれたのでしょう。隣席とは言え見ず知らずの他人に声をかける、
しかもオペラグラスを少しだけでも貸して欲しいと申し出て、機嫌を損なわれたらどうしよう、と大変緊張しながらの決心だったに違いありません。
私からは、勿論!少しだけなんて言わず終演まで使って欲しいと渡した次第。
すると、終演までなんてそれは申し訳ない、少しで良いんですと当初は遠慮がちな返答でしたから、私からとどめの二言。

私ね、あと5回はこの公演観に来るから。
それから今日の主演キャスト、お正月には1階の舞台近くの席で鑑賞するから、だから遠慮しないで最後まで使って!

尋常でないオタクな隣席者に驚いた様子でしたが何処か安心した表情も見せ、ズームは好みに調節して良いからと伝えると嬉しそうに受け取り使ってくれました。
5回は来るからとの箇所には、すぐそばに座ってた学校団体の生徒さんの1人も反応していたのは気のせいか笑。
若人達よ、ここでのバレエ観劇がある限り社会人生活は楽しき人生であると伝える契機になったか
それはさておき時折一生懸命駆使して踊りや装置、衣装の細かな部分も眺めていたようで私も我が事のように嬉しくなったものです。
帰り1階へ降りる階段の道中も含め少し話もし、ご両親の影響でクラシック音楽が好きになり、やがてチャイコフスキー三大バレエに興味を持ち始めたとのこと。
学校制服を着用し、スポーツシューズのケースを手にしていたためもしやと思ったら現在高校生で運動部に入っているそうです。
くるみ割り人形は前にも観たことはあるそうですがまだ観劇経験は少なく、この日はちょうど都合もつき
ようやく観に来ることができて今日はとても嬉しいと噛み締めるように語る姿に、管理人、心が清流のシャワーを浴びたような気分。
私が10代の頃を振り返るとここまで純粋で理知的な要素、無い。(現在もだが)高校生の頃には感性が廃れていた記憶すら過ぎります。
学業やスポーツに真面目に打ち込みつつ、寛ぎの時間にはクラシック音楽を嗜み、バレエ観劇も始めた素敵な高校生との出会いでした。
プログラムの配布袋に入っていたチラシを見てニューイヤー・バレエにも興味があると話してくれましたので、
チャイコフスキーの音楽が好きならばテーマとヴァリエーションはきっと気に入ると、勧めた次第です。

観劇回数はまだ少ない中、劇場の中に入るだけでもきっと緊張もあったでしょうし、何事もなく穏やかに終われば問題ありませんが
万一後ろ向きな気分にさせられる騒動に遭遇してしまえば、以降劇場から足が遠のいてしまうかもしれません。
私自身、既に通い詰めている頃であっても観客同士の口論がすぐそばで発生した際は、1幕で帰ろうかと本気で考えたものです。
一方で、嬉しい、ほっと心が安堵する出来事への遭遇ならばその劇場のイメージもより良好となり、また行きたいと足を運ぶ機会も増えることでしょう。
もしこのとき会った高校生がニューイヤーでも何でも、今後新国立劇場を訪れる機会が増えたならば、オペラグラスを貸したオタク気質な私なんぞの印象を掻き消すほどに
舞台パフォーマンスが上質であった点が影響したわけで、柴山さんや渡邊さん始め出演者の皆様や、彼女が観劇に関心を持つきっかけとなった
チャイコフスキーの音楽を美しく奏でてくださったオーケストラの皆様、制作に携わった方々のお力が高校生の女性の心に響いたからこそです。

ところで高校生の女性が私に話しかけようとした決定打を探っているのですが、年齢が近そう、では全くなさそうですし(ご両親より私の方が年上である可能性も大)
そうだ。声をかけてくれたタイミングが2幕開演前に着席後、入場前に購入したカレンダーを取り出し表紙を眺めながら
2022年は1年中『シンデレラ』の写真のページを開いて飾りたいと、目を細めながら見惚れていたときであったと記憶。
高校生の女性からしてみれば、隣の人、怖くはなさそうであるとの判断材料に繋がったのでしょう。もしそうならば渡邊さん、ありがとうございました。
そもそも私は当初発表の主演キャストではこの日は鑑賞しない予定でしたから、巡りに巡ってこの素敵な高校生に出会えたのです。
平日昼間ながら観に来た理由を高校生も気になったようでしたので、王子役の人が好きで
仕事は休みとって観に来たと話すと、情熱に再び驚きを隠せぬ様子でしたがそりゃそうだ笑。
とにもかくにも、心洗われ、清々しい気持ちとなった双眼鏡事件でございました。私も高校生を見習い、上手くいかぬことがあっても
彼女が打ち込む競技を題材にした人気作品の人物の名言「諦めたらそこで試合終了ですよ」を脳裏に浮かべ、2022年頑張って参りたいと存じます。

2022年1月2日日曜日

謹賀新年2022





あけましておめでとうございます。東京は寒波到来の晴天日和となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
昨年も当ブログにお立ち寄りくださった皆様、どうもありがとうございました。
遅い、余分な脂肪多し、華やかさ度数皆無、と私自身をそのまま映し出した感が満載な相変わらず長所無きブログでございますが、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
昨年は5月、ただでさえ遅い上に約20日間に及ぶ未更新期間最長記録を作ってしまい、人生最大の幸福をもたらした公演含む感想とはいえども時間を要し過ぎたと反省。
何名かの方から心配の連絡までいただき、ありがとうございました。時期によっては札幌に滞在中と当時の状況においては打ち明けられず、
宿泊先のホテルの部屋鍵がコッペリウスのものとそっくりなレトロな丸い形状で1人コッペリア余韻浸りを行っていたことも申せず
されど宿泊先や復路の機内でもつらつら綴ってどうにか終えられた次第でございます。
機内にてANAのCAさんから飲み物サービス時、仕事中と思われてしまった妙な嬉しさも忘れられません笑。

さて、皆様は年末年始どのようにお過ごしでしょうか。私は12月30日が仕事納めで翌日は新国立劇場バレエ団くるみ割り人形大晦日公演へ。
大晦日やお正月なんぞ集客困難であろうとの想像を覆し、満員御礼。お正月3が日も元日はともかく2日、3日は売れ行き絶好調で吉田監督の戦略が大当たりな様子です。
大晦日は特別仕様のカーテンコールで客席両側からの紙テープ発砲に初台版紅白歌合戦を観終えたような感覚が残り、そのままゆく年くる年の気分笑。
帰宅後はジルベスターにてエグモント序曲を鑑賞し、意外な選曲に驚きつつも『ベートーヴェン・ソナタ』の一場面を思い出すと同時に
3年前の再演時この場面に出演していた布陣を思うと年越しぎりぎりまで続く2021年の幸運に驚倒したまま次年の運気を不安視しながらあけまして2022年。

元日は管理人の家恒例の平均年齢高めな少人数親族女子会で、飲食飲酒就寝自由な、親族外には決して見られてはならぬ!?ぐうたら元日でございました。
夜はこれまた恒例ウィーンフィルニューイヤーコンサートを視聴。第二部最初の『こうもり』序曲で満足してしまい、
ああ大名演者のヨハンと、是非全幕ヨハンに挑戦して欲しいと願うお方双方の追想妄想が巡り、ワインも進み
ウィーン国立バレエの皆様によるバレエ場面は完全に見逃しました笑。衣装はなかなか綺麗そうでしたが振付は全く目にできず、まあこんな年もあるでしょう笑。

さて、本日はいよいよ鑑賞はじめ。これまでの人生で最速お正月真っ只中の1月2日に迎えるとは、しかも初台更には当初の予定からの変更による代役とはいえども
主演男性にはひたすら目が心臓印と化す配役で、年明け早々幸せなお年玉をいただいた気分でおります。
これまでにこうにも幸せなお正月、あったやろうかと思い返してはまだ昨年の運気の引き摺りが続いて欲しいと願う新年一発目の公演でございました。
感想は昨年末分も含め纏めて明日以降に綴って参りますので暫しお待ちを。




前代未聞、この過酷な出番数及び複雑リフト多きパ・ド・ドゥが彩るくるみに年末年始跨ってパートナーを変えながら4回王子登板が無事終了。
渡邊さんは今期のくるみ最大功労者でしょう。安堵のビールで乾杯。