2020年6月30日火曜日

マイ ジゼルとは何ぞや


テレビ画面の貼り付けは宜しくないとは思いますが、迷宮状態なためお許しください。


突如不可解な記事名で失礼いたします。本日までは勝手にジゼル週間でございます。前回と異なり短めの内容ですのでご安心ください。
当ブログでは度々話題となっておりますボリショイ・バレエ団グリゴローヴィヂ版1989年収録の『くるみ割り人形』映像、
元々はレーザーディスクで所有しておりましたが随分前から機材も故障し修理にも出せず、2009年のモスクワ滞在時にグリシコで購入したDVDを今も時々観ております。
ウェアには興味を示さず、DVDそしてお店に置かれていたロシアのバレエ雑誌をもっと読みたいと片言にもほどがある英語で伝えたところ
裏からバックナンバーを何冊も持ってきてくださり、全冊購入。変わり者と思われたでしょうがそれはさておき
雑誌のある号には、ちょうどその約2ヶ月前にモスクワ国際バレエコンクールでペアを組み銀賞を受賞した、 現在ロイヤルシネマにてリラの精の予定のはずが主役の当日降板により急遽代役でオーロラ姫を踊り大成功を収めた話題沸騰英国ロイヤル・バレエ団の金子扶生さんと
東京都内のバレエ公演再開の弾みとなればと願う7月下旬開幕の新国立劇場バレエ団新作『竜宮』のトレーラー映像に浦島太郎役で登場された
奥村康祐さんの写真も掲載されていました。お2人ともまだ大阪を拠点に活動なさっていた頃です。

さて話を戻します。くるみのDVD主演はナターリア・アルヒーポワとイレク・ムハメドフ。『くるみ割り人形』役以外は恐らくは子役無しで
おもちゃの兵隊たちとネズミ軍団の戦争場面は『スパルタクス』さながらの男性群舞が大活躍。
また通常は2幕から登場する各国のお人形さんたちが不気味な真夜中の場面からクララと共に怯えたり、
戦争がおさまったときには喜びを分かち合ったかと思えば雪が降ってきたらはしゃいだり
2幕では花のワルツへの場面転換を誘導するかのように盛り上げクララと王子の結婚式のお手伝いや付き添いもこなすなど繋がりを色濃く描いた演出も特徴です。

そのDVDにはボーナストラックメニューがありつい先日初めて再生してみたときのこと。
Ballet's trailerとしてグリゴローヴィヂ版作品シリーズとして同時期に発売された映像の一部分が数分程度収録されています。
『イワン雷帝』、『石の花』、『ロミオとジュリエット』、『眠れる森の美女』、『ジゼル』、『愛の伝説』、『ライモンダ』、
ここまでは分かるのですが、最後の8本目に記された文字は MY GISELLE。マイ ジゼルとは何ぞや、と疑問を持たずにはいられません。
先に挙げた『ジゼル』はグリゴローヴィヂ版でナターリア・ベスメルトノワとユーリー・ヴァシュチェンコ主演。
勿論市販化されレーザーディスクは我が家にもございました。しかしMY GISELLEとは誰にとってのMyであるかも分からず。
再生してみるとグリゴローヴィヂ版ではなくラヴロフスキー版のようで、舞台美術や衣装もだいぶ色彩感が異なり
ジゼル役は可憐で愛らしいリュドミラ・セメニャカ。(先週のシネマでのラトマンスキー版における肝っ玉母さんも素敵でしたが笑)
決して上質とは言い難い不鮮明な映像ながら、1幕ワルツでの全員一列で両端にジゼルとアルブレヒトの姿が見える場面が収録されています。
説明の文字からして1990年の映像と思われますが、ただこの頃にはグリゴローヴィヂ版も発表されており、1990年の来日公演でも上演。
私も鑑賞予定でしたがベスメルトノワの舞台化粧に対する苦手意識が働いたのか発熱して断念。教訓としているのか以来体調不良による鑑賞断念はございません。
ひょっとしたらこの時期は両方をレパートリーとして現地では上演していたのかもしれませんが真相は分からず。
ともあれどなたかセメニャカご贔屓のバレエ研究者が携わった経緯からであるか、市販化映像にはより詳細な内容が収録されているのか気になるところでございます。

それにしても当時の連なる指導者たちの名前には興奮を覚え、ウラノワ、コンドラーチェワ、セミョーノワそして1週間ほど前に逝去したニコライ・ファジェーチェフまで
歴史に名を刻むダンサーばかりです。こう言ってはなんだが、映像では何度か目にしているご子息アレクセイ・ファジェーチェフよりも
モノクロ写真でしか触れていないニコライ・ファジェーチェフのほうが印象に残っているのは不思議でございます。
特にウラノワとのジゼル1幕で腕組みしてのジャンプだったか、微笑むジゼルににっこり笑いかけている場面は幸せに満ちた躍動感が伝わる写真でした。
ああ、ミルタ役はグラチョーワ。強い念力や情念を備えていそうで、想像だけでも胸が高鳴らずにはいられません。
一昔前の『ジゼル』、現代の『ジゼル』、魅力はそれぞれに詰まっており
ましてや管理人版「マイ アルブレヒト」なんぞ始動すれば語りが止まらなくなりそうですのでこの辺りでお開きといたします。
このままですとボリショイ街道まっしぐらブログと化すのは目に見えているため、次回はまた違うお国へ行って参る予定でおります。
日本で特に絶大な人気を誇るバレエ団でファッション関連を始めメディア登場も多しカンパニーにも拘らず
ロシア系に比較すると我が鑑賞回数は格段に少なく更に学びを広げていきたいと思っております。

2020年6月28日日曜日

ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2019 - 2020『ジゼル』

約3ヶ月ぶり劇場鑑賞復帰第一弾は映画から、6月24日(水)ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2019 - 2020
アレクセイ・ラトマンスキー改訂版『ジゼル』を観て参りました。
https://liveviewing.jp/contents/bolshoi-cinema2019-20/#information

スパイスイープラスでの紹介
https://spice.eplus.jp/articles/270675


音楽:アドルフ・アダン
振付:アレクセイ・ラトマンスキー
台本:テオフィル・ゴーチェ、ジャン・アンリ・サン=ジョルジュ
出演: ジゼル:オルガ・スミルノワ
アルブレヒト:アルテミー・ベリャコフ
ハンス(ヒラリオン):デニス・サーヴィン
ミルタ:アンゲリーナ・ヴラーシネツ
バチルド:ネッリ・コバヒーゼ
ベルト:リュドミラ・セメニャカ
モイナ:クセーニャ・ジガンシナ
ズルマ:アナスタシア・デニソワ
ペザント・パ・ド・ドゥ:ダリア・ホフロワ、アレクセイ・プーチンエフ


ボリショイ劇場ホームページより収録当日の詳細キャスト
https://www.bolshoi.ru/en/performances/7095/roles/#20200126180000



ダイジェスト映像




リハーサルやインタビュー


スミルノワのジゼルは登場時から快活で朗らか。上背もあり孤高崇高な姫のイメージが先行し村娘役はなかなか想像し難かったのですが
夢見る不思議ちゃんな趣で、目をパチパチさせながらアルブレヒトを探し回る健気なところや
アルブレヒトが懸命に話しかけても上の空な表情を浮かべるなど、掴みどころのない愛らしさがありました。
身体が弱いからと大事に大事に育てられ、外との交流も余りなかったであろう事情を思えば他の娘たちとはだいぶ異なる風変わりな魅力があった点も納得。
狂乱は静かに静かに、目を見開いたかと思えば虚ろな目つきで壊れていくさまに痛々しさが募りました。
ラインの美しさは絶品の一言で、アルブレヒトと戯れるときも精霊となった後も指先から脚先に至るまで神経が行き届き微塵も崩れず。

ベリャコフのアルブレヒトはジゼルに対して純粋な反応を見ては喜びされど花占いでは元気付けようと必死に励ましたり遊びか純情か序盤では見え辛かったものの
ジゼルの死を眼前にしたときの行動が圧巻。農夫たちに何度も取り押さえられながらも突き放してはジゼルに縋り付き
常日頃から力仕事に従事する農夫たちも仰天の怪力男である設定か否かはさておき、それだけジゼルへの執念が凄まじかったと見て取れる1幕終盤でした。
惜しむらくは髪型で、中途半端に長く且つぱっくり真ん中分けで角度によってはルネッサンスと杯を掲げるネタで知られるお笑いコンビ髭男爵のひぐちくんを彷彿。
恐らくは制作側からの指定かと思いますが(初演時のアルブレヒト像かもしれぬ)その点を除けばプロフィール写真など素顔はそこまで古めかしくないのだが
舞台上ではいわゆる少女漫画系ではなく一昔前の銀幕の世界に登場しそうな古風な容貌に均整のとれた抜群のスタイル
雄々しくも品性を持ち合わせた踊りといい深く熱が迸る表現といい『ライモンダ』でのジャンに引き続き我が好みのツボをだいぶ押された次第でございます。

3月のシネマ『ライモンダ』にてスミルノワとベリャコフは見た目は中世の宮廷歴史絵巻に相応しい美女美男で誠に宜しいバランスと惚れ惚れしましたが
崇高で凛然とした姫と懸命に尽くす騎士なるお2人で心震わす感情の通わせがあったかと聞かれたら2幕後半のあわや誘拐な緊急時における救出劇以外は大きくは頷けず。
舞踊絵巻な作品ならば良いのでしょうが、ドラマ性が濃い『ジゼル』でのパートナーシップはやや不安もありました。
しかしいざ観ると心配無用、1幕序盤でのアルブレヒトが捕まえようとしてもすり抜けてしまうジゼルのやりとりでは
会話が聞こえてきそうなほどはしゃぐように戯れていて、高身長の2人ですから容姿と行動の対比にも殊更微笑ましく頬が緩んでしまいました。
2幕では度々ジゼルの墓から離れようとせず、従者の催促に見向きもせず後悔の念に駆られるアルブレヒトを
空気に溶けて消え入りそうに儚くもそっと優しく包み込むように接して細やかな感情の行き来が見え、しかも2人とも一瞬一瞬が絵になるフォルム。
ドラマ性の強い作品においても予想に反してお似合い且つ化学反応も香り立つペアでした。

舞台をビシッと引き締め盛り上げたのはハンスのサーヴィン。『パリの炎』ジェローム(2017年来日公演で観て感激)や
シネマでの『くるみ割り人形』における軽やかな身のこなしで見せ場を作っていたドロッセルマイヤー、長過ぎる『海賊』で辛うじて目を開けていられたのは
サーヴィンのビルバントの存在があったからこそ、など舞台に登場すれば必ず厚みと面白味を加える
名前が目に入ると鑑賞を何倍にも楽しみにさせてくださるダンサーで今回も期待以上。
やや濃い目のメイクのせいか遠目で見ると博多華丸さん風にも見えなくもなかったが笑、
序盤から木陰に立って「ハンスは見た」な立ち位置でアルブレヒトとウィルフリードの会話を聞き逃すまいと覗き見る姿や
アルブレヒトの身分暴露の機会を窺いまずは証拠の剣を落ち葉で隠す行動から粗暴そうであってもジゼルに尽くす情熱、不正を許したくない正直過ぎる性格は誰にも負けず
もう少しジゼルに歩調を合わせてそっとアプローチをしていたならば恋は成就したであろうにと思えてならずでした。
2幕、音楽と呼応するようにウィリたちからの囲い込みに狼狽える姿から劇的に盛り立て突き落とされる最期に至るまで劇的に盛り立てる活躍です。

そして最たる嬉しい配役の1人がコバヒーゼのバチルド。当ブログのプロフィールに明記しているほど好きなダンサーであり(虜になってかれこれ15年目)
出演だけでも喜びが込み上げてくることに加え事前に読んだ情報によればジゼルとも交流をしっかり行う姫君である設定と知り
ぴたりと嵌りそうと想像しておりましたが神秘的な美しさを秘めたお顔立ちに醸される性格も含め絵になり過ぎる姫君。
明るめのブルーのドレスを纏い、本物の白馬に跨って登場する姿からしていよいよ中世ドイツのおとぎ話の絵本の世界に迷い込んだ心持ちにさせられました。
ジゼルと出会い、もてなし準備のために一旦引っ込んだジゼルの印象を雄弁なマイムで何と可愛らしい少女と感激しきりな様子でクールランド公に伝え
その後はジゼルと仲睦まじくお互いの婚約者について語らいのひととき。見間違いもあるかもしれませんが
バチルドは背景画のお城に向かって手を掲げ、結婚式の日には踊りを披露に来て欲しいとジゼルを招待する意向を示していたほどで
ジゼルを妹のように可愛がる優しいお姉さんにも見えました。ベルトに止められてももう暫く話をさせて欲しいとまで訴えていましたから
余程ジゼルが愛おしくて仕方かなかったのでしょう。聞き上手でジゼルの婚約者自慢の話にもじっと耳を傾け
間近に迫ったお互いの結婚を我がことのように祝福し合う光景に、まさか婚約者が同じ男性であるとは本人たちは知る由も無く、結末が分かっているとはいえ
2人が会話に花を咲かせ仲睦まじくなればなるほど切なさに押し潰されそうになりました。
アルブレヒトの二重婚約発覚後も戸惑いはあっても露骨に怒りは見せず、それよりも仲良くなった愛おしいジゼルが発狂し苦しむ姿に胸を痛め
狂乱の様子も顔を時折覆いつつ手を差し伸べたくても出来ずもどかしさや悲しみを募らせていた印象です。
初演時の振付通り2幕最後は憔悴しきったアルブレヒトを皆で迎えに訪れ慰める中で幕。2人にとってジゼルは束の間の幸福をもたらしてくれたのは紛れもない事実で
きっとこの慈悲深いバチルドとアルブレヒトならばジゼルの月命日には必ず花を手向けに墓を訪れ祈りを捧げるであろうと想像いたします。

そして往年のバレリーナであり現在は教師を務めるセメニャカによる母ベルトも忘れられず。ジゼルにウィリの悍ましさを語る場面がたっぷり時間を取る演出で、
ジゼルの経験に裏打ちされた悲哀と冷たさが宿るポーズ1つ1つに説得力をもたらしていました。
セメニャカがジゼルを踊る写真はボリショイ劇場ホームページにも掲載され、異次元の美しさです。

眺めているだけでも恐怖感とひんやり冷風に包まれそうになったウィリたちの群舞も見事。
衣装の柔らかな素材やデザインの影響もあるのか一層軽やかで幽玄な雰囲気と化し、ジゼルが登場後急速回転を行った直後に一斉に移動して十字架の形を作り
ジゼルが交差部分に入る仲間入り儀式の流れは身の毛がよだつ恐ろしさでした。
パ・ド・ドゥ直前には復刻曲なのか厳粛で弾みのある音楽に乗せてジゼルとアルブレヒトを追いかける場面もあったかと記憶。
唐突に思えたのはほんの僅かで、新米ながら規定に逆らいミルタに刃向かうジゼルとすぐさま殺めたい対象であるアルブレヒトを追い詰める効果大でした。

改訂振付、演出を手掛けたアレクセイ・ラトマンスキーはかなり初演時の舞踊譜や史料を読み込んだようで、
音楽も振付共にもはや改訂しようがないのではと勝手に思い込んでいた作品ですが初演時の振付や音楽を違和感なく取り入れ、
幕間の解説によればソ連寄りであった傲慢冷酷な貴族のイメージ解釈をヨーロッパ寄りに戻してバチルドとジゼルの仲睦まじい関係を描いたり(聞き間違いがあったら失礼)
マイムを多用したりと新鮮且つ古色蒼然に見せぬ上質な舞台でした。以前目を通したシリル・ボーモントの著書
『ジゼルという名のバレエ』を再度読み、初演時からの変遷を紐解いて学ぼうと思います。
1つ欲を言えば、墓参りの場面は薔薇の花束を持ちウィルフリードの肩にもたれかかりながらではなく1人で百合を持って登場いただきたかった思いもいたしますが
従来の演出の印象先行による望みですし従者との関係性もより覗ける演出も宜しいかと考えを転換。
男性目線であると捉えるご意見もあるかもしれませんが、終幕ジゼルがアルブレヒトに対してバチルドのもとへ行くよう促し
戻ってきたアルブレヒトをバチルド優しく赦す演出にも私はいたく納得。
明らかに遊び人なアルブレヒトならば疑問を投げかけたくなるでしょうがジゼルにも本気で愛情を注いでいたとするならば
結果として三角関係になってしまったもののお互いを尊重し合う仲に発展していた女性2人は見捨てたり復讐に燃える行動には走らないと思うのです。
別れの場面はお墓ではなく、反対の上手側前方の茂みに横たわったジゼルが離れたがらないアルブレヒトの手を握りつつ
安堵の笑みを浮かべながら消え行く流れは胸を締め付けられそうになりながらも浄化される余韻を残しました。

また主要キャスト4役(アルブレヒト、ハンス、バチルド、ベルト)が現在のボリショイの中では我が脳内で描く『ジゼル』理想の布陣だったこともあり、
特にボリショイの男性ダンサーでは即座に名前を挙げたくなるベリャコフとサーヴィンの熱い対決は夢の共演実現でしたしそこへコバヒーゼが絡んで並び
セメニャカも出演。前回のボリショイシネマ『ジゼル』には足を運ばず今回もキャストが分かるまでは鑑賞する気はそこまで進んでおりませんでしたが
発表された途端脳内花畑。先に挙げた4方の嵌りようは勿論、スミルノワの空想好きそうな少女っぷりも響き
今までに観た海外のバレエ団やダンサーの『ジゼル』で生、映像含め一番心に刻まれる公演でした。再上映があれば是非ご覧ください。
名物司会進行のカテリーナ・ノヴィコワさんの登場シーンにも驚かされるかもしれません笑。



余談
※ベリャコフについて、ボリショイ・バレエ団2020年来日公演ジャパンアーツ特設サイトの写真や来日公演チラシ掲載写真は端正で知的な風貌が大変素敵なのですが
ボリショイ劇場ホームページの写真が風に吹かれた怪しい兄さんな写りで、誰が掲載を決めたのか知りたいものです笑。(プロフィール写真、大事)


※ここ最近はバレエを映像で満喫する習慣が身に付き、せっかくですから予習も兼ねてベリャコフの映像を辿ってみたところ驚愕。
初めて海外のダンサーのファンの方が運営のSNSを覗いてみると、写真のみならずいかにして映像を入手そしてアップしたのか分からぬと考える隙も与えぬほど
多岐に渡る映像満載。まとめられているため検索も不要で20本程度は映像があったかと思いますが、驚きに拍車をかけたのが務めてきた役柄の幅広さ。
『白鳥の湖』王子とロットバルト両役の経験は知ってはおりましたが、グリゴローヴィヂ版『ロミオとジュリエット』でもロミオとティボルト両方務め、
(ラトマンスキー版ではロミオのみ)白と黒両方で惹きつけることができる大変魅力あるダンサーであると再確認。
他のボリショイ男性プリンシパルのレパートリー事情はよく調べていないため詳細は分かりかねますが(失礼)
昨年夏頃プリンシパルに昇格したばかりとは思えぬ主役経験の豊富さに仰天いたしました。(リーディングソリスト昇格時は2階級飛び級だったらしい)
しかも古典のみならず『明るい小川』でのシルフィードに扮した生真面目姿には深夜に大笑いしてしまい
ロシアの報道番組内で放送されたらしき、マクシモワとワシリエフの共演が刷り込まれている『アニュータ』でのしっとりしたパ・ド・ドゥも視界に入り
ノイマイヤー版の『アンナ・カレーニナ』ではヴロンスキーを務めたようですがお若い年齢にしては貫禄があり過ぎ、カレーニン役のダンサーが気になります。
そういえば、何年か前には『じゃじゃ馬ならし』では先輩クリサノワのカタリーナを娘に持つ設定のお父さん役でした。
マイヨーの要望だったのでしょうが今思えばよく若手に託したと思います。
3月のシネマ『ライモンダ』直後に少し調べただけでも驚いたものですが、
既に主役のツム(ボリショイ劇場隣の百貨店。赤の広場のグムより使い勝手が良さそうな印象)
到達かと思わせ今回は映像も多々目にできたこともあって、ロシアバレエ界の噴水の如き自由な映像放出事情にはおそロシアと呟くしかありません笑。
そして来日公演の実現を願い、『スパルタクス』やガラのみならず平日昼公演の『白鳥の湖』にも足を運ぼうと思っております。




平日の昼間にこの場所へ来たのは初、青空を背景にゴジラがお出迎え。



タイムスケジュール。観客は200人収容の会場に20人程度でした。



スタジオジブリ作品の上映もあるようです。



帰りはこちらへ。3ヶ月ぶりの劇場鑑賞後の一杯はドイツ居酒屋へ。



陶器に入ったビールとバワンレバークネーデル(肉団子のきのこソースかけ)料理で乾杯。開店早々であったため、貸切状態でした。
それにしても、3ヶ月ぶりに公共の場で芸術鑑賞しかもこれまでのボリショイシネマで最も終始集中してじっと見入る映像で終映後にはたっぷりのビール飲み干しと
久々の行為に身体もついていかなかったのでしょう。酔いの回りが早く、帰宅後早々に就寝。自宅で焙じ茶飲みながらの鑑賞に慣れ切っていた管理人でした。



レジ近くにあった貴族を描いたと思われるレリーフが美しい瓶。写真どうぞと言ってくださり、喜んで撮影。



※ところで、実は3年前から疑問の不思議なジゼルの法則がありましてこの度もびっくり笑。
今回は映画ですが、東京で観た印象に残るジゼルの公演3本が全て6月の3連続日に集まっております。
※愛媛のジゼル(2009年2018年)は殿堂入り


2020年は6月24日


2006年は6月25日


2017年は6月25日、26日

偶然か周期があるのか分かりかねますが、毎年6月24,25,26日はジゼル感謝祭としてドイツのお酒を嗜む日にしようと制定。
そして奇しくも本日6月28日は『ジゼル』パリ・オペラ座での世界初演の日。当初の予定では今頃は群馬県高崎市に滞在していたはずですが
都内から出ぬ1日、『ジゼル』の映像や写真を眺めながら過ごしたいと思っております。

2020年6月21日日曜日

【お茶の間観劇】ミュンヘン・バレエ団 ガラ Gala mit Stars des Bayerischen Staatsballetts

バイエルン州立劇場(ミュンヘン・バレエ団)から配信中の2017年1月上演のガラ
Gala mit Stars des Bayerischen Staatsballettsを鑑賞いたしました。バレエ団の公演は初鑑賞です。
様々な時代の作品が組まれたプログラムで現在も配信中ですので(恐らくは6月27日まで)是非ご覧ください。感想は短めですのでご安心を笑。
https://t.co/3d08gwEOJE



レッスン再開の様子。



Der Nussknacker - Grand Pas de deux
Choreographie Vasily Vainonen
Musik Peter I. Tschaikowsky
Tatiana Tiliguzova, Dmitrii Vyskubenko
Vladislav Dolgikh, Konstantin Ivkin, Wentao Li, Erik Murzagaliyev

『くるみ割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥ。但し女性1人に男性複数人の構成で見覚えのある振付と思ったらワイノーネン版。
衣装が本家マリインスキーのメルヘンな趣からはかけ離れたすっきりスタイリッシュなデザインであったため
また男性も白い丸みある鬘も無く違和感は拭えなかったものの、名物鯱リフトも決まりお見事。
芸術監督がゼレンスキーだからこの振付を採用と思われるが詳細は分からず。


Parting
Choreographie Yuri Smekalov
Musik John Powell Assassin's Tango
Maria Shirinkina, Vladimir Shklyarov

一昨年2018年のマリインスキーバレエ団来日公演にてエカテリーナ・イワンニコワとコンスタンチン・ズヴェレフ組で観て気に入ったスメカロフ振付『別れ』。
純朴で愛らしい印象が先行していたマリア・シリンキナが驚くほどに色っぽく、身体の線がよく見える腰までスリットの入った赤紫のドレスもお似合いで
大胆な開脚で絡む流れも嫌味を感じさせず。永遠の少年とどうしても思ってしまう(失礼)ウラジーミル・シクリャローフがタンゴの曲で踊る姿も新鮮。


Schwanensee - Weißer-Schwan-Pas de deux
Choreographie Marius Petipa, Lew Iwanow
Musik Peter I. Tschaikowsky
Prisca Zeisel, Erik Murzagaliyev

アダージオであってもプリスカ・ザイセルのオデットは実にダイナミック、特に肩から腕、背中にかけての筋肉も立派で王子よりも遥かに強そうでオディールも観てみたい。
ムルザガリエフはぱっと目を惹く華は控えめだが勤勉そうな雰囲気に軍服衣装がよく合います。


Raymonda - Grand Pas de deux
Choreographie Marius Petipa, Ray Barra
Musik Alexander Glasunow
Ksenia Ryzhkova, Alexander Omelchenko
Luiza Bernardes Bertho, Antonia McAuley, Vera Segova, Freya Thomas
Vladislav Dolgikh, Konstantin Ivkin, Wentao Li, Dmitrii Vyskubenko

レイ・バラ版『ライモンダ』よりグラン・パ・クラシック。セルゲイ・ポルーニン客演時にダンスマガジン2019年2月号にてカラーで大きく報じられていたため
記憶の片隅にございました。(随分と野性味がある印象だったが)
ライモンダは嘗てモスクワ音楽劇場バレエ団に在籍していたクセーニャ・リシュコワ。そういえば2015年の来日公演時はゼレンスキーが芸術監督を務め
入団2年目ぐらいの新進気鋭ダンサーとしてプログラムで紹介されていたと思い出しました。
まろやかで上品な踊り、少し憂愁を帯びた神秘的なお顔立ちにも自然と惹きつけられる姫君です。
ジャンのヴァリエーションは新国立劇場にて毎年夏開催のガラ公演バレエアステラスフィナーレで馴染み深い『バレエの情景』Op.52 より第8曲 ポロネーズを使用し
格調高く力強く気分が高揚する曲調で聴くたびに惚れ惚れする曲でまさかヴァリエーションでの使用には驚かされましたが舞台を一気に盛り立てる効果大。
衣装は全員薄めの金色とオフホワイトと合わせ、太い縁取りがアクセントになったデザインで
中世(とは言っても時代はまちまちだが)らしく胸元が平たいカッティングである点も嬉しく結婚式の場面だけでも全編通して観たいと思わせます。


Spartacus - Pas de deux Aegina-Crassus
Choreographie Yuri Grigorovich
Musik Aram Chatschaturjan
Prisca Zeisel, Erik Murzagaliyev
そうでした、グリゴローヴィヂ版『スパルタクス』をミュンヘン・バレエ団でも採用しているのでした。
エギナのザイセルはオデットよりずっと生き生き。ギラついた陽性オーラを放ち、全幕で群舞を従えても負けぬ存在感があると想像。
ムルザガリエフは茶色いクルクルカールの鬘無しであったためか健全クラッススに見えたが、エギナにお仕えしている感はなかなか良いかもしれません。



スパルタクス上演時のゼレンスキー、グネーオ、ザイセルへのインタビュー。



Frühlingsstimmen
Choreographie Frederick Ashton
Musik Johann Strauß Frühlingsstimmen-Walzer
Mai Kono, Javier Amo

アシュトン振付『春の声』。英国ロイヤル・バレエ団以外でも採用されているとは知らずにおりました。
2006年の世界バレエフェスティバルでの初鑑賞時に登場時の振付から「花咲かコジョカル」と勝手に名付けた記憶がございます笑。
花びらと共にほんわかと幸福感を振り撒き、スパスパっと素早いポーズの切り替えも含め河野舞衣さんがいたくチャーミング。


Le Corsaire - Pas de deux
Choreographie traditionell
Musik Adolphe Adam, Léo Delibes
Maria Shirinkina, Vladimir Shklyarov

ここはマリインスキーの誇りを示したかったのか、シクリャローフはブルーのパンツ。謎の網襷も無く、腰部分の煌めく装飾も二重丸。(私の中でアリといえばこれです)
シリンキナは一見ロシアのものではなさそうな、抑えたゴールドで整えられたデザインで2人のバランスが今ひとつでしたが各々は似合っていましたから良いか。
ヴァリエーションはシェル男爵作曲『シンデレラ』の中の1曲、何度聴いても歌えない曲調です。シクリャローフのヴァリエーションカットの理由は不明。


Romeo und Julia - Balkon-Pas de deux
Choreographie John Cranko
Musik Sergei Prokofjew
Ksenia Ryzhkova, Jonah Cook

クランコ版『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ。リシュコワのジュリエットはロミオとの再会に高鳴る鼓動を必死に抑え
徐々に心を解放していく表現が実に細やか。同性でも蕩けそうになり、品位ある舞台姿も好印象。全幕を観ているかのようでした。
『ライモンダ』でも『ロミオとジュリエット』でも全幕主演舞台を鑑賞したいと感じさせたダンサーです。
ドラマティックな表現はダンチェンコ時代によく訓練され培われたのかと思います。


Don Quijote - Grand Pas de deux
Choreographie Marius Petipa
Musik Ludwig Minkus
Ivy Amista, Osiel Gouneo
Irina Averina, Luiza Bernardes Bertho, Shuai Li, Antonia McAuley, Vera Segova, Freya Thomas

イヴィ・アミスタのキトリは輪郭がはっきりとした鮮やかさで魅了。勢い任せにせず、ポーズも1つ1つ丁寧に描き出していました。
ボリュームのあるチュチュで、表は白地に緻密な金色レース模様ですが裏側は赤。翻る度に赤色が覗き、明るさやめでたさが倍増です。
グネーオのバジルは胸元が開き過ぎる衣装が気になって仕方なかったが笑、2月のコジョカル「救済プロジェクト」で鑑賞したときの『海賊』とは異なり
決してステップを詰め過ぎず過剰なバランスも取らずあくまでシンプル路線。


冒頭ではプログラムと一覧と共に夜の灯りと雪に包まれたプリンツレーゲンテン劇場の光景が映し出され、ミュンヘン旅情にも浸れます。どうぞお楽しみください。


余談:自宅でも旅気分と思い、以前にも触れましたが焙じ茶を飲みながらサスペンスドラマの再放送をよく観ております管理人。
昨夜は渡瀬恒彦さん主演の『タクシードライバーの推理日誌』を視聴していたところ、舞台は広島県尾道市。
2017年夏に愛媛でのバレエ鑑賞後すぐに瀬戸内海に浮かぶ大三島に移動し、翌朝からしまなみ海道を自転車で走り
途中からは船で渡り降り立った場所で何かしらバレエを思い出す日々でございます。
県外移動が解禁されても暫くは都内から出ぬ日は続きそうで、バレエ映像や2時間サスペンスで旅気分を味わいたいと思っております。

2020年6月17日水曜日

【お茶の間観劇】ペルミ・バレエ団 ミロシニチェンコ版『ラ・バヤデール』

ペルミ・バレエ団が配信していたアレクセイ・ミロシニチェンコ版『ラ・バヤデール』を鑑賞いたしました。
バレエ学校のドキュメンタリーは見たことはありましたが(リュドミラ・サハロワ先生が恐ろしかった印象ぐらいしかないが)初めて鑑賞するバレエ団です。
ミロシニチェンコは映画『マチルダ』での振付も担当していたバレエ団首席振付家とのこと。



メイキングドキュメンタリー。主演者へのインタビューやインド人エキストラを交えたリハーサルの様子も映されています。


ニキヤ:ナタリア・オシポワ
ソロル:ウラディスラフ・ラントラートフ
ガムザッティ:マリーヤ・アレクサンドロワ


オシポワは失礼ながらニキヤのイメージが当初は沸かず、半ば恐る恐る鑑賞いたしましたが(失礼)
抑えてはいても反骨心露わな表情が前面に出ていてこれはこれで魅力ある強者舞姫。かえって大僧正の心をくすぐってしまうのでろうと推察です。
しかしガムザッティとの修羅場では身分財力全てにおいて勝ち目がないと俯きなら悟り、瞬時にして悲哀感に包まれた姿に祈る思いで見入ってしまったほど。
花籠は随分とブンブン振り回していた印象ですが、とにもかくにもパワフルで四肢の可動の激しさがそのまま執念の滲みに繋がっていたもよう。
影となったあとも儚さは無く、弾むように鋭く踊り熱や体温を感じさせ続けていた姿は寧ろソロルを引っ張っていた何処までも頼もしいニキヤでした。
順番前後して登場時、被っていたベールが頭から外れてしまい冷や冷やしましたが肩に乗せたまま維持。
顔が見えぬよう真下に折り曲げ、状況を察した大僧正も肩から力を込めて取り外し、ニキヤが顔を上げるのを今か今かと待ち侘びる心も伝わり見事な咄嗟の判断でした。

ラントラートフのソロルは登場時からお人好しそうな雰囲気でもう少し見るからに戦士らしさがある方が好みですが
強気過ぎる女性2人の板挟みになる姿が絵になるのも説得力があると言い聞かせた次第。
記憶が正しければガムザッティとに対面時に剥ぎ取った虎の皮らしきものを肩から掛けていましたが
米国アニメ版の熊の物語のキャラクターな色合いで思わず笑いが込み上げ、
その後ニキヤが舞を披露する1幕後半では隅っこの壁に隠れて項垂れている有り様で、情けなさに更なる拍車をかける効果がありました。(笑)
白っぽい衣装であった点も猛々しい戦士ではなくすっきり品のある人物に見せていたのかもしれません。

大きな見どころであったのがアレクサンドロワのガムザッティ。ただ怖い、意地悪ではなく将来は藩をしっかり治め繁栄させるであろう
知性や政治能力にも長けていそうな女性で、登場での美しさを見せびらかそうとせず落ち着いた足取り、表情で現れる姿から明らかでした。
赤い模様を彩った衣装や蝶を模した金色の髪飾りも似合い、最前列からでも見え辛い画廊に展示されているサイズ館の小さ過ぎるソロルの肖像画を目にしても
いかに魅了される男性であるかと全身で表現。観客に伝えてくださいました。
2幕冒頭ではピンク色の長い裾のある衣装でメイクも濃いめでまさに『ムトゥ 踊るマハラジャ』あたりに登場するインド映画の王女様。
その後はチュチュに着替え、久々に大作にてクラシック・バレエを踊るアレクサンドロワを目にでき
嘗ては天を突き刺すような潔い脚先に驚愕したイタリアンフェッテを始め技術は少々衰えは否めなかったものの
場の支配力や絢爛な空間にて祝福されるに相応しい王女っぷりは健在。感激もひとしおでした。
ニキヤのソロではガムザッティは姿勢崩さずじっと見据え、ソロルは下げたままの顔を上げられず笑。2人の力関係が明確過ぎます。

立ち役の従者やニキヤのお付きにインド人エキストラを採用した点も話題になったようですが、
映像のせいかさほど気に留まらず。ただ生で劇場で鑑賞したら壮観であったかもしれません。それよりも、インド人の視点からこの作品の感じ方を知りたいのだが笑。
(2006年のボリショイ来日公演では近くにインド系のご家族の観客がいらしていたが、時々笑いながら鑑賞していました)

気にかかったのはパ・ダクションと影たちの衣装がよく似た形状、色合いでもう少し違いがあれば尚良かった印象。
チュチュは全体が大きく膝にかかりそうな丈でプティパ作品の世界初演時代を彷彿させ、ボリュームがあり過ぎる気もいたしました。
影の群舞は手に汗を握らせるダンサーやばらつきもかなりありましたが、チュチュの雲海と化した光景はなかなかの迫力。

2006年のボリショイ来日公演におけるガムザッティ役でアレクサンドロワの虜となり早14年。好きな海外の女性ダンサーと聞かれたら最初に名を挙げ
プロフィールにも明記しているほどの存在になるきっかけとなった役柄を2014年以来久々に鑑賞でき、幸運でございました。
またオシポワのニキヤに対抗できるダンサーは恐らくは数少なく笑、アレクサンドロワとマリアネラ・ヌニェスぐらいでしょう。
そして先述の2006年におけるアレクサンドロワのガムザッティ日本初お披露目当時はコール・ド・バレエに属しながらも
影のヴァリエーションで頭角を現していたオシポワ(他にも影トリオにはニクーリナやクリサノワ、コバヒーゼと宝庫状態であった)が
火花を超えて火山級の対決の実現映像の鑑賞にも喜びに浸った次第です。


インドの踊り(太鼓の踊り)ソリストをエンジン全開で務めていた宮原詩音さんのブログより、衣装の作りがよく分かる写真を載せてくださっています。
くす玉の例えに思わず納得。
https://ameblo.jp/miyahara-shion/entry-12430065365.html

2020年6月14日日曜日

【お茶の間観劇】1984年6月11日収録 アメリカンバレエシアター アットザメット ミックス・ビル




1984年6月11日に収録された、メトロポリタンオペラハウスでのアメリカンバレエシアターミックス・ビルを紹介いたします。
動画サイトにも作品ごとに経緯不明なるアップがされていますが、DVDもまだ何処かでは入手できそうなため少しでもご興味を持たれましたら購入して損はありません。
かれこれ30年ほど前から繰り返し観ているやや古めながらも今観ても色褪せない魅力が凝縮した映像で、どこかの機会で綴りたいと思ってはおりましたが
劇場での鑑賞や講座受講など日々充実していたため市販化された映像の紹介にまでは手が回らず。
この機会に、また開催が36年前の3日前でしたのでこじ付け感がある点は目を瞑んでいただけますと幸いでございます。
是非ご覧いただきたいお勧めの映像ですので紹介は簡潔に済ませますが悪しからず。但しいつも以上に独断と偏見が多いかもしれません。





『レ・シルフィード』
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:フレデリック・ショパン

マリアーナ・チェルカスキー
シンシア・ハーヴェイ
シェリル・イエガー
ミハイル・バリシニコフ

シルフィードたちが巧者集団で、妖精らしい軽やかさがありつつも凛然として揃っているクールな雰囲気。
1978年のガラとは衣装が変わり独立提灯袖となったため、肩から腕の部分が見えるようになった点も
華奢なフォルムの一層の引き立ちに効果をもたらしたと思えます。
微笑みを湛えて大らかに舞い、パステル画を彷彿させるマリインスキーの『ショピニアーナ』と比較するといたく面白く
音楽構成と振付は同じであってもあたかも全然違う作品を観ている心持ちにさせられ、
どちらが良いか否かではなく各カンパニーの持ち味や表現はそれぞれで、双方甲乙付けがたい魅力があると感じ入ります。
チュチュのたなびきと連動しての柔らかに弧を描く腕運びが見事なチェルカスキー
派手な技巧は無しでも、音楽と溶け合うようなロマンティックな趣きも似合うバリシニコフにも引き込まれます。
恐らくは3、40年前のABT得意演目で節目やミックスプログラム時には頻繁に上演されていたのか完成度が実に高く、私の中では『レ・シルフィード』の決定版。
ー 演奏が澄み切った空気の中を流れるように細やかで清々しく、誠に上品な点も気に入っております。
冒頭では夜のメトロポリタンオペラハウス前のライトアップされた噴水や内部の煌々と輝くシャンデリアも映し出され、METに入場した気持ちで鑑賞できる点も嬉しい。


シルヴィアーパ・ド・ドゥー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:レオ・ドリーブ

マーティン・ヴァン・ハメル
パトリック・ビッセル

派手な要素を求めず振付、音楽に忠実に踊るハメルの折り目正しさが目に胸にじわりと響き、お手本を眺めているかのよう。
ビッセルは『ドン・キホーテ』におけるバリシニコフのバジルとガンを飛ばし合いながら笑、火花を散らしていたエスパーダの印象しかありませんでしたが
やや前のめりな音取りが一瞬気にはなるものの気づけば演奏とぴたりと合い、ダイナミック且つさらりと端正。
パートナーシップも頗る良く、特にアダージオ後半にてハメルが斜めに身体を傾けながらの回転では
遠心力までもが音楽がぴたりと噛み合いビッセルのサポートの上手さが光るところの1つ。
ブルーを基調にピンクの小花や銀色模様に彩られたゴージャスで煌びやかな衣装も必見です。
何度も観ているパ・ド・ドゥですが、ダンサー、踊り、衣装、音楽すべてが調和していてこれまた私の中の決定版でございます。
1996年の第1回マラーホフの贈り物にて、アマンダ・マッケローとマラーホフが踊っていますが、すっきりしたデザインの衣装を着用していました。
後に劇場で鑑賞したアシュトン版やビントレー版、ノイマイヤー版も良作であるとは思いますが、
轟いていた雷鳴がおさまり打って変わって寄せては返す漣を思わせる曲調へと変化したところでクラシカルな装いの2人が登場する
独立したグラン・パ・ド・ドゥ形式が管理人、この映像を初めて観たときから好みでございます。


トライアド
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

ロバート・ラ・フォス
ヨハン・レンヴァル
アマンダ・マッケロー

2人の双子の青年と1人の女性の三角関係と取り巻く青年たちを描いているらしいがすぐさま明確には分からず。
しかしプロコフィエフの劈くヴァイオリンの音色が渦巻く思惑や良からぬ関係性を暗示していると窺え
身体を思い切り傾けたり、手を真っ直ぐに繋いだ青年の腕に干された布団の如くパタリと身体を折り曲げた状態で引き摺られたり
人体綾取りと名付けたくなる複雑に絡みながらの造形といったマクミラン特有の振付が散りばめられ、陰鬱な作品であっても気づけば堪能。
衣装はシンプルで、マッケローはピンク色のレオタードに切り込みの多いスカート、男性陣は赤系マーブル模様の総タイツです。
気まぐれなのか鬱っぽさがあるのか掴みどころのない女性をマッケローが好演。


パキータ
改訂振付:ナタリア・マカロワ
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス

シンシア・グレゴリー
フェルナンド・ブフォネス

レスリー・ブラウン、スーザン・ジャフィ、シンシア・ハーヴェイ、ディードラ・カーベリー

タイトルロールのグレゴリーの型を厳守した踊りにこれまた恍惚と魅了され、とにかく肩から腕にかけてのラインが崩れず
また余計なことはせずとも深紅のバラがぱっと花咲くような舞台姿、経過年月問わず記憶に残り続けると確信。
ブラウンの軽やか達者で抜群のコントロール力に、間延びを一切思わせぬ音楽を全身でたっぷり魅せるジャフィも唸らせ
ハーヴェイの優雅さを持たせつつ豪快な跳躍や軸のぶれぬ安定感から繰り出す職人級の連続回転も圧巻でした。
カーベリーの伸びやかで音楽にぴたりと嵌る踊りも心躍らせ、凄腕揃いであった1978年の『テーマとヴァリエーション』に比較すると
群舞はばらつきが目立ってはいたものの舞台を華々しく盛り立てていた印象。
対角線上に女性陣が勢揃いした中を堂々ゆったり登場するブフォネスも場に相応しい華や品、躍動感とエレガント魅力を備え
当たり前であるとは重々承知していてもグラン・パのリュシアンは相当な人物でないと務まらないと再確認。
来年2021年1月に新国立劇場バレエ団が18年ぶりに再演を予定しており、配役が今から気になるところです。

※ケース記載の順番と異なり、私が観る限りヴァリエーションの順序は1ブラウン、2ジャフィー、3ハーヴェイ、4カーベリーに見えましたが
違っていたら申し訳ございません。


いつも以上に勝手な気ままに綴りまして失礼いたしました。同時期の1980年代から1990年頃にかけて鑑賞した
テレビ放送録画を含む映像も当時から紹介したいものは山々ございますが、いかんせんその頃はインターネットも無く
またちょうど就労もせず学校へも行かずな時期でしたので鑑賞の感想を語り合う知り合いもおらず、30年の時を超えて現在に至ってしまいました。
当ブログでもまだ触れていないながら何処かでの紹介を考えている映像としては、ベスメルトノワやヴァシュチェンコの『レ・シルフィード』や
ムハメドフの『スパルタクス』抜粋上演したボリショイのロンドン公演や、キエフバレエのアンナ・クシネリョーワ主演『眠れる森の美女』
ガリーナ・メゼンツェワとコンスタンチン・ザクリンスキー主演レニングラードバレエ(当時)『白鳥の湖』など色々ございます。
ただそうこう言っているうちに管理人の劇場鑑賞復帰(但し映画)も近づいて参りましたので、タイミングを見つつ紹介して参りたいと思っております。

2020年6月10日水曜日

アリス事件ー下巻ー

今月に入って以降電車通勤者も増え、分散ではあっても学校の授業も再開されつつ
映画館や美術館図書館、習い事の教室なども制約を設けながらも営業再開の様子が伝わってきます。
映画館においてはパリ・オペラ座『真夏の夜の夢』や私も3月に鑑賞したダンスの饗宴、マシュー・ボーン版『ロミオとジュリエット』やロイヤルシネマシリーズ、
英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』再映も始まりご覧になった方のご感想を楽しく拝読しております。
しかし管理人、映画においてはバレエ関連作品も多々公開されているにも拘らず未だ足を運んでおらず
平日の出勤はほぼ通常通りで電車利用は何ら問題ありませんが、3月中旬以降休日は自宅周辺徒歩圏以外には出向かぬ習慣が根付いてしまい
毎週末のように劇場通いしていた日々が遠い記憶状態でございます。勿論バレエ公演再開後は劇場へ足繁く通う予定でおりますが
『雄大の部屋』も終了し、まだ暫くの間の週末昼下がりは焙じ茶を飲みながらバレエ映像そしてサスペンスドラマの再放送を視聴する生活が続きそうです。

さて文庫本でもシリーズを度々読み、時刻表を用いたり目的地へのありとあらゆる移動手段を絞り出しては捻った経路を導き出したりと日本各地を巡る
旅情に浸れる作風や十津川警部と亀さんこと亀井刑事のコンビぶりも好みで先週末も毎度のように西村京太郎トラベルミステリーを視聴していたときのこと。
映し出された駅を見ると上野駅の公園口そして群馬県の高崎駅!前者は東京文化会館目の前の改札で下車回数は数知れず。下半期は可能なら何度も通いたい駅でございます。
後者は今年上半期の最後を飾る予定であった新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』千秋楽の地であり初の群馬公演会場である高崎芸術劇場の最寄駅で
駅看板には群馬県のキャラクターぐんまちゃんが描かれご当地感も十二分。ちなみに舞台となった特急列車名は「あけぼの」で
『眠れる森の美女』や『コッペリア』を彷彿させ、一見バレエに絡みがなさそうな作品であっても常に身近にご縁のある芸術であると再確認です。

ところで事件と言えば、今年の年明け早々に紹介したアリス事件ー上巻ー。早5ヶ月が経過いたしましたが
本来であれば初台にて連日『不思議の国のアリス』の世界に入り浸りな時期ですので下巻も綴って参ります。
身内絡みの話のためお急ぎの方は次回のお茶の間観劇更新をお待ちください。

遡ること2年前の11月、WOWOWのバレエ・プルミエールにて新国立劇場バレエ団によるアリス初演特集が組まれ放送されました。未加入のため複数の友人より
感想をお寄せいただいたりその後は録画を見せていただき(感謝)、自宅で堪能できた次第です。
主要な役を務めた4人のダンサーが出演し、アリス役の米沢唯さん、ハートのジャック役の渡邊峻郁さん
白ウサギ役の奥村康祐さん、ハートの女王役の本島美和さんが集まり、大貫勇輔さんと本田望結さんによる司会進行で楽しいお話が繰り広げられました。
各々のキャラクターになりきって1人ずつの登場で、放送当時は公演の終了後でしたので舞台を思い起こしながら鑑賞。
そして聞き取り調査を行ったお互い(1人のダンサーの対して他の3人がそれぞれ回答)印象を大貫さんが発表なさり
米沢さんは鉄人(確か)、本島さんは女優、奥村さんは動物が似合い絵が上手(新国立画伯の先駆け)、渡邊さんは知的エネルギー溢れる真面目スーパージャンパーだったか
他にも多数の印象が語られていたと曖昧な部分もございますが記憶しております。

特に面白かったのが盛り上げ係なのか奥村さんのお話。渡邊さんに対して、見ての通り真面目であること。またスーパージャンパーだが
ジャンプが得意な人は割とちゃらんぽらんな人が多い!?と発言なさり笑、しかし渡邊さんは例外であると主張する奥村さんは跳ぶときの渡邊さんを
真剣な顔つきで(恐らくは奥村さんにとって精一杯の渡邊さんの顔真似であると思われる笑)「ウー、ッハー!!」な感じですと、椅子に掛けたまま口頭で再現。
この光景には隣で見ていた母も大笑いし、真面目なんだねえ、きっとお侍さんのような人なのであろうと捉えておりました。(間違ってはいないと思う)
映像は最初から一緒に見ており、渡邊さん登場時は名前の漢字が読めないとの一点張りでしたが(このときは字が読めない人)、
本島さんの美しさやハートの女王の嵌りっぷり、同年のNHKバレエの饗宴『くるみ割り人形』2幕にて
奥村さんのネズミ王がいたく気に入っていたため楽しいお人柄にも感激していた様子でしたが
すぐ近くにいる長女が同年の『眠れる森の美女』着物イベントへ出かけたお目当てとは知る由も無く
真面目ジャンパーを再現したウー、ッハー発言には笑いたい放題でございました。

最後視聴者に向けたメッセージとして、米沢さんの「新国立劇場は… … 初台駅のすぐ近くです」発言にも出演者一同笑い転げ米沢さんも壁側に逃亡笑。
我が家も笑いに包まれましたがただ笑っただけではなく、妹が東京都で最も交通の便が良好そうな学校の卒業生で
学校説明会に参加した際にもらった案内に最も目立って記されていたのが「アクセスナンバー1」の文字。
公立の進学校ですしそこまで強調せずとも入学希望者は集まるであろうと思うものの
妙に感心してしまった不動産業者の如き宣伝と米沢さんの思わぬ発言が重なる部分も大きく、勝手に親しみを感じていたのでした。
すかさず大貫さんが「雨に濡れずに行けます!」と救いの手を差し伸べ、番組終了。
再演のアリスは全公演中止になってしまいましたから振り返れば誠に貴重な映像と思います。

さて、事件は翌日に発生。前夜見たアリス特集が余程面白かったのか平日の慌ただしい朝にも拘らず、母が話題にしておりました。

「米沢さんの不動産屋さん発言面白かったねえ」
「本島さんは舞台でなくても美しかったねえ」
「ネズミの王様の人、良い人そうだったねえ」

(管理人の心境、あと1人!)

「あら、もうこんな時間」

(管理人、椅子からずり落ちた。母気づかず…)

まあ仕方ない。それに翌年1月は長女が目的は伏せたまま突如オペラに行くとの話に観たいと言い出し
藤原歌劇団『椿姫』初日を別席で鑑賞しテレビ放送も視聴。(放送録画を視聴時も字が読めなかったらしい)
加えて3月には『ラ・バヤデール』3月9日(土)昼公演を1階前方席で鑑賞し、ソロルも好印象だったようですし帰宅後にアリスや椿姫闘牛士を思い出したのか
字の難しい人だ!と繋がったもよう。今年に入ってからは配信の『ロメオとジュリエット』を通りすがりにチラッと見た程度でしたが
果たして記憶の片隅にあるのか分かりかねますが、まあ良いか。

そして本日は言いたい放題をお許しください。予定通りであれば本日6月10日は『不思議の国のアリス』東京公演日程で最も待ち望んでいた日でございました。
新国立ダンサーペア主演且つ2018年『眠れる森の美女』でも参加した、きものサロン主催のイベントに今回も参加予定でおり、
要項を目にしたときから着物や忍ばせる役柄、モチーフを考えていた管理人でございます。
舞台の余韻に浸りつつ花が咲き誇るお庭付きのまさにアリスが住んでいそうなお洒落な洋館を改装したお店にて食事を堪能しつつ、
また当日主演のお2人がゲストとして登場されお話を聞くことも心待ちにしておりました。ううう。
ただ忘れてはならないのは、参加予定者よりも遥かにお辛い思いをなさっているのは主催元の関係者やレストランの方々。
日程調整、お店の確保、参加者の募集や連絡に会の進行プログラム、料理のメニュー決めなど大型の催しですから企画の段階から大変骨の折れる作業であり
レストラン側はこのイベントにとどまらず結婚式や歓送迎会なども何件もの予約がキャンセルとなっていると思われ
誰が悪いわけでもなくお互い開催したい気持ちは山々ながら中止せざるを得ない事態にはお気持ちを察するばかりです。

長くなりましたが、ご参考までに2018年『眠れる森の美女』初日終演後に行われた着物イベントの様子です。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-1.html

参加者は約70名で筋金入りの新国立ファンは3人。ゲストにとっても我々筋金入り!?にとってもアウェイ空間でしたが
(そして着物着慣れていないのは管理人1人であったと思うが)同じテーブルの日本舞踊好きな方々とも会話が弾み
何よりバレエの魅力を工夫しながら伝えてくださるゲストお2人のお話や目の前でのマイム再現にも感無量になった、和やかな雰囲気の催しでした。
時間を要するとは思いますが、再びこういった催しが開ける日が戻りますように。




偶然ですが、2018年『眠れる森の美女』着物イベント公演日は『不思議の国のアリス』バレエ団初演のチラシが初めて配布された時期でした。
薔薇の花が重要なポイントであるのは共通である点から、着物を入れて記念に撮影。気分だけでも本日に置き換え、想像を巡らせたいと思います。



当日に着用した着物の上前部分。レンタル店のホームページにて白地にピンク色の薔薇模様が視界に入り
イーグリング版『眠れる森の美女』のイメージに合うと即決でした。黒みがかった色彩は追ってくるカラボス!?

※次回はお茶の間観劇再開です。36年前の明日、つまりは1984年6月11日にメトロポリタンオペラハウスで収録された
アメリカンバレエシアターのミックスプログラムです。本日ジャック役で舞台にそしてトークイベントのゲストとご登場予定であった
渡邊さんが昨年のニューイヤー・バレエに向けて参考になさっていたとインタビューで仰っていたバリシニコフ主演の『レ・シルフィード』が収録されています。
バレエに興味を持ち始めた頃からかれこれ30年繰り返し観ている思い入れの強い映像でございますが、週末あたりをお待ちくださいませ。

2020年6月7日日曜日

新国立劇場バレエ団2020/2021シーズン開幕公演『白鳥の湖』から『ドン・キホーテ』に演目変更

新国立劇場バレエ団2020/2021シーズン開幕公演演目がピーター・ライト版『白鳥の湖』に代わり『ドン・キホーテ』上演決定の発表がありました。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017511.html

ホームページも更新されています。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/donquixote/



2013年公演動画 3分でわかるドン・キホーテ


吉田都舞踊芸術参与(次期舞踊芸術監督)のメッセージ。就任最初の演目変更に心境を察しますが
ダンサーたちに寄り添いながら一丸となって成功させたいお気持ちが伝わってきます。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_017520.html

新国立劇場における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインも発表されています。定款や約款並に膨大な内容ですが観客も必読。
https://www.nntt.jac.go.jp/common_files/pdf/20200605_guideline.pdf


海外での準備を伴う新制作の上演はもしかしたら厳しいかもしれないと予感はしており、
万一変更の場合は再演を重ねている古典作品且つ劇場で保管している衣装や装置で対応可能な演目であるとするならば
今年のゴールデンウィークに上演を予定し、上演可否が見えぬ中で練習を重ねながらも中止となってしまった『ドン・キホーテ』が理想であろうと思い描いておりました。
何よりも幕を上げること、公演を行うことがまずは大事ですから変更しての上演は大歓迎です。

また吉田次期監督が大原監督の思いを汲み取っての決定にも頷き、2019/2020シーズンガイドブックにおけるラインアップについてのインタビューで大原監督は
<『ドン・キホーテ』は私の思いで(笑)、6回公演を主役は6キャストで上演します。><ぜひ毎公演楽しみにしていただけたら。>と配役を熱弁。
特別演劇要素の濃いわけでもなく、ボリショイの演出振付で話も音楽も明快なズンチャッチャ系統ですから大原監督が心底好んでいらっしゃる作品ではないと思いますが
バレエ団の層の厚さを証明したいお気持ちで今だからこそ可能な、しかもゲスト無しの自前でキトリ5人バジル6人のバレエ団史上最多に組んだキャストは
とりわけの以前シーズンラインアップ説明会でも仰っていた男性ダンサー強化を目標に掲げた
大原監督の集大成の1つとも窺えていただけに速水渉悟さんの主役デビューも含め、年内の実現に繋がって安堵もしております。
キャストはそのままスライド、小野さん福岡さんペアが1日増える日程となりました。

ピーター・ライト版『白鳥の湖』は来年秋に延期とのこと。新制作の上演に向けて準備を進め
またご自身も主演経験のある吉田次期監督の任期最初を彩るに相応しい演目での開幕とはいかなくなりましたが
これまでにない厳しさに直面しているダンサーたちに寄り添い、公演を成功に導いてくださると思っております。
再演を重ねてきた、何もかもがスカッとしそうな明るい陽気な作品で無事来シーズン開幕できますように。気を緩めずこれまでと同様感染防止に努めて参りたいと思います。
来シーズンの開幕、序奏が終わり陽光降り注ぐバルセロナの港町に切り替わった瞬間込み上げてくるものがありそうです。

開幕演目変更やシーズンチケット中止、払い戻し作業など対応が山積みで終わりがなかなか見えぬスタッフの方々の労苦は想像に難くなく、敬意を表します。
劇場再開後は一層感謝の思いで、通い詰めたいと思っております。

ところで気になるのは2021年4月に延期となった山形公演。当初は牧阿佐美さん版『白鳥の湖』上演の予定でしたが
来年への延期に伴い新制作のピーター・ライト版を上演予定と発表されました。しかし本拠地初台において2021年秋の初演予定となりましたから
それ以前に山形での上演はまずないと思われます。そうなれば、山形交響楽団との共演も話題を呼んでおりましたし
『白鳥の湖』の演奏リハーサルも進んでいた点を踏まえると、当初の予定通り牧さん版『白鳥の湖』上演となりそうな予感がしておりますが
管理人の勝手な予想ですのでどうぞ発表をお待ちください。

牧版上演だそうです。

2020年6月4日木曜日

【お茶の間観劇】新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』

新国立劇場より、巣ごもりシアターシリーズとしてバレエは第3弾ケネス・マクミラン版『ロメオとジュリエット』が明日6月5日(金)14時まで配信中です。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017336.html

スパイスイープラスにて巣ごもりシアターの見どころを紹介してくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/270063


収録は2016年11月4日公演、主演は小野絢子さん福岡雄大さんです。
これからご覧になる方もいらっしゃることと思いますのでこの場ではあれやこれや語りはいたしませんが(但し自信はない)
第1弾の『マノン』と同じく著作権が厳しいであろう2本目のマクミラン作品配信に発表時は誠に驚きました。
劇場スタッフの方々の交渉の賜物そして事態が事態なだけにマクミラン財団側も許可を下したのかと想像いたします。大変嬉しい配信です。

この年の『ロメオとジュリエット』小野さん福岡さん主演日は1度しか観ておらず、また米沢さんムンタさん日を含む鑑賞した3回全て上階末端席でしたので
アップ映像で表情や装置美術の細部まで観察できるのは喜ばしいこと。映像ならではの魅力でしょう。
舞踏会にやってきた福岡さんロメオがジュリエットを見るなり、恋に落ちましたと言わんばかりのマスク越しでも火照った表情であった点や
娼婦長田さんの大胆で気風の良い踊りも懐かしく思い出しながら鑑賞いたしました。明日6月5日(金)14時まで配信中ですので是非ご覧ください。


以下はお時間の許す方のみお読みください。お急ぎの方は恐れ入ります、次回のお茶の間観劇まで今暫くお待ちください。
さて、本題渡邊さんのパリス。(主役やないねんとの突っ込みは流します)昨年2019年の小野さん福岡さん主演日にも渡邊さんはパリスを務められ
容姿は耽美な貴公子ながら3幕では約束が違うと怒りを滲ませていく表現が秀逸で腕組みした後ろ姿のみでも高圧的な態度に背筋を戦慄が走るなど絶賛いたしましたが
私の鑑賞眼の乏しさを物語る恥ずかしい話、同じ役柄であってもこの2016年公演当時は好印象一切持てず心にも響かずでございました。
当時の感想を前ブログで読み返しても、パリスについては出演者一覧の明記のみ。
茶髪が不自然に思え、また七三分けの髪型の古風を超えた不自然さが真っ先に目に飛び込んだまま
ジュリエットへの接し方云々に我が目が行き着く間もないまま終演。(当時の自身が恨めしい)
きちんとご覧になっていた方によれば小野さんジュリエットと米沢さんジュリエットに対してそれぞれ異なる役作りで臨んでいたとのちに聞いて驚きを覚え
気にも留めずにおり、また普段から醸す雰囲気だの打ち震わす表現力だの諸々連ねながらも結局は容姿、
しかも同一人物でも写真にしても舞台姿にしてもそのときによって脳内で気ままに印象を変化させている我が単純な性格を思い知らされたわけでございます。

公演映像配信開始早々、このときのパリスは好みではないと勝手過ぎる私の感想を知るお世話になっている複数の方々が
パリスの印象情報をノーブルで表情も素敵だから、訴えるものがあるからと文面にて送ってくださって
とにかく早う鑑賞するべきと助言をいただき、先週末に鑑賞した次第です。結果、正面から見るとどうしても先にも述べた
髪型メイク共に自然であった点も合わせて昨年の名演渡邊さんパリスと比較してしまいましたが
横顔、中でも1幕のジュリエットとの初対面時に手をそっと取って甲に口づけし、何か語りかけようしている高貴な表情や立ち姿にうっとり。
そういえば、偶々通りかかった家族も作品は知ってはいてもパリスの役どころを忘れていたのか
一瞬王子であると勘違いしたほどです。(そして我が家全員ファンである本島さんキャピュレット夫人を観るなり、ああ姐さんと大興奮笑)
そして舞踏会でのゆっくり優雅に滑らせるサポートにも見惚れ、3幕拒否の姿勢を崩さぬジュリエットに困惑と少し怒りも込められた表情で迫る姿
特に横顔の真剣な眼差しには予想以上に心臓を射抜かれました。
思えば1幕、結婚相手としてパリスに初めて会ったときのジュリエットは嫌がってはおらずむしろ興味津々な様子。
恥ずかしがって乳母のもとにすぐ駆け寄ってしまっても視線はパリスに向けられていたりと優しそうなお兄さんが突如目の前に現れ
驚きや喜びが交錯した状態で見つめていたのでしょう。この場面の小野さんジュリエットがいたくあどけない無邪気な少女で同性から観ても頬が緩みっぱなしです。
もしジュリエットがロメオに出会わずこのまま予定通りパリスと結婚していたら、両家の決め事であったとはいえ
兄のように慕う新婦と妹のようにたいそう可愛がる新郎の姿を妄想いたします。

そして可愛がるといえば、菅野さんティボルトがパリスと一緒にジュリエットを眺めるときだけは束の間の緊張中和時なのか実に仲睦まじい光景。
お互い親族関係になる将来を喜び合っているとも思えるほのぼのとしたやりとりでした。
この年の末頃に発売された『ダンススクエア』に菅野さん渡邊さんが対談インタビューで登場され、
前にも新国立ダンサーが掲載されていた旨は知っておりましたため試しに手に取り開いたところ アイドル雑誌に団内でとりわけ似つかわしくないお2人の登場は違和感あり過ぎでしたが(褒め言葉)、個性の強い役も好きと語る菅野さんのお話や
チキン南蛮弁当の楽屋持ち込みを迷った渡邊さんのエピソードが思い起こされます。
本屋で雑誌を見つけたのが2016年末、この時点での渡邊さんに最も惹かれたお姿はおけぴの柴山さんとのシンデレラ初主演リハーサル写真で
パリスとは別人か!?と目を疑う大人の貫禄や渋めのオーラにほんの少しときめきましたが、
大晦日から数日後の衝撃お正月火の鳥事件勃発はまだ知る由も無いダンススクエア立ち読みでした)

話を戻します。全体を通して映像は既に2回は鑑賞しており、より胸を高鳴らせた大きな理由の1つがテレビ画面に映しての鑑賞であったため。
携帯電話上のYoutube等動画の画面をテレビに映す機械の購入については以前記事でも紹介いたしましたが、
新国立劇場の配信はホームページに埋め込まれた形態のためテレビでの鑑賞は断念しかけておりました。
機械にある程度精通している方ならばさっさか可能にするのでしょうが、いかんせん嘗ては「化石」と呼ばれていた管理人。
『マノン』、『ドン・キホーテ』は携帯電話画面での鑑賞で満足できたものの『ロメオとジュリエット』はどうにかテレビ画面で鑑賞できぬものかと
願望を募らせるも機械操作の研究を伴う作業は半ば諦めておりました。しかし執念に突き動かされたのか調べに調べたところ
携帯電話上の操作をそのままテレビ画面に映すアプリケーションなるものを知り、利用してみると
Youtube等を映す機械と連動するのか見事、テレビの大画面にて再生成功。但し画質は少々粗めで音は携帯電話からしか発しないため
テレビ画面とはややずれて聴こえてくるものの、渡邊さんパリスがしかも全幕版でテレビに映ったのですから万々歳!
2016年のパリスは何も響かなかったと言い走っていなかったかとの突っ込みは受け流します笑。
時々様子を眺めていた家族も、スマートフォンの扱いすら怪しい私の行動に対して妙に感心してくれたのか『マノン』『ドン・キホーテ』は携帯で観たが
『ロメオとジュリエット』はテレビ画面に映したいと思って調べた事の成り行きを話したところ、真相を未だ知らずにいる家族から一言。

思う念力岩をも通す

これで何度目の呟きか、人間とはかくも身勝手で単純な生き物でございます。




2016年当時の公演プログラムを再度眺めながら久々の一杯。主要役での出演者による直筆(勿論印刷です。井澤さんはこのときは怪我で降板、昨年ロメオデビュー)
メッセージが添えられ、「一文字入魂」精神で懸命に書いていらっしゃるパリスの姿が目に浮かびます。

2020年6月3日水曜日

【お茶の間観劇】アメリカンバレエシアター 1978年リンカーンセンターガラ

リンカーンセンターから配信されている1978年のアメリカンバレエシアター(ABT)ガラを鑑賞いたしました。情報提供いただいた方に深謝。
スターたちが大競演、タイムスリップして観に行きたい公演の1本です。指揮は遠藤明さん、長らくABTの指揮をなさっていたそうです。



リンカーンセンター制作のステイホーム映像


『レ・シルフィード』
レベッカ・ライト
マリアーナ・チェルカスキー
イワン・ナジー

ABTの『レ・シルフィード』といえば、少しあとにバリシニコフ主演で映像化された公演の空気と舞っていそうでありつつも
毅然とした妖精たちの印象が強く残っておりますがこの公演ではより柔らかでふんわり。
フォーキン時代の作品ながら、ゆかしいポーズの取り方やおっとりとした風情といい
ロマンティック・バレエ全盛期へ時空旅行した気分となりました。特にチェルカスキーの夢見心地な表情と滑らかな腕使い、
今にも宙に浮きそうなポワントワークにうっとりするばかり。見間違いでなければ、
コール・ドにエレイン・クドウさん(バリシニコフ主演ドンキでのキトリ友人、青いほう)らしき方の発見も嬉しうございます。


『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
ナタリア・マカロワ
フェルナンド・ブフォネス

マカロワが赤紫と黒を重ねた独特の衣装で登場。小柄な身体から放つパワー、オーラの強さに照明が何倍にもなったかと思わせるほど。
ブフォネスの奇を衒わず規範からはみ出ず、跳躍も高いが力みがなく品のある踊りが好印象。グレゴリーとの『パキータ』、また観ようと思います。
そしてマカロワの自伝、もう1度読もうと決意。



先月5月21日にマカロワ版『ラ・バヤデール』初演から40周年を迎えての映像。マカロワからのメッセージもあり。


『テーマとヴァリエーション』
ゲルシー・カークランド
ミハイル・バリシニコフ
※前記事にて書いておりますので割愛しますがゴージャス且つコール・ドの技術、呼吸の合い方も宜し。プリンシパル2人は文句の出ようがない。


『火の鳥』(フォーキン版)
火の鳥:シンシア・グレゴリー
イワン王子:ジョン・ミーハン
王女:レスリー・ブラウン

幕開けから、衣装は新国立劇場バレエ団で採用と同じデザインに懐かしさが込み上げ、
上下が赤く同色の三角帽子で小さな塔のような塀を登って登場するイワン王子のサンタクロースぶりを突っ込むのはお決まりとして笑
そうこうするうちに火の鳥登場。グレゴリーの研ぎ澄まされた肢体、鳥だからと言って過剰に手をヒラヒラバタバタさせずとも
音楽と躍動して孤高で絶対的な存在感。煌めきを抑えつつも装飾多き真っ赤なチュチュよく映え、フォルムの美しさにも身震いがいたしました。
実はグレゴリーは私の鑑賞の原点で、人生初バレエ鑑賞の主演ダンサー。1989年のABT来日公演『白鳥の湖』で
いわゆる可憐系では全くないすらりと背が高くきりっとした佇まいに今回も平伏し、グレゴリーが最初のダンサーである鑑賞歴を誇らしく思えた次第です。
ブラウンのチャーミングで吸い込まれそうに大きな瞳のある姫が愛らしく、侍女たちのりんごキャッチボールも成功と見えたもよう。

近年はベジャール版や(リハーサル場面映像中心ですが)中村恩恵さん版を目にする機会がありましたがフォーキン版は久々に鑑賞。
カスチェイの登場あたりからは舞台を人が覆い尽くし、複数のグループで交互に踊りながら徐々に熱気を帯びていく流れや
中間部からの曲調変化場面における足踏みしながら一斉両手掲げと言いロシア民話の絵本そのままの色彩感と言い、大所帯作品ならではの醍醐味も堪能いたしました。
大人数が必須であるためコール・ドの中にもソリスト投入の事態にもなったと想像。思えば新国立での初演時は
入団間もない菅野さんや米沢さん、他にもソリスト級の方々もコール・ドに入ってのご活躍であったと記憶しております。

昔は良かったとの表現は好ましくありませんし、現在のABTの状況を私が把握していないだけで魅力あるダンサーが今も揃っていることと思います。
しかしそれにしても、この時代の綺羅星なダンサー競演、しかも余所からのゲスト出演や参加ではなく生え抜きのスターが揃っていた時代は
100年が経過してもバレエ団の歴史に刻まれているに違いありません。のちにプリンシパルとして活躍するシンシア・ハーヴェイやシェリル・イエガーも
当時はコール・ドに名前があり、層の厚さにも仰天。ハーヴェイがキトリ、イエガーがキューピッドを務めた
バリシニコフ主演『ドン・キホーテ』が収録から約40年経っても色褪せぬ名映像であるわけです。

2020年5月31日日曜日

【お茶の間観劇】【バランシン周遊】ニューヨーク・シティ・バレエ団『ドニゼッティ・ヴァリエーション』他

ニューヨーク・シティ・バレエ団から配信されていたバランシン振付『ドニゼッティ・ヴァリエーション』を初めて鑑賞いたしました。
日本では20年前に小林紀子バレエシアターが上演し、もしやと思い調べたところ<ステイジド・バイ:ナネッタ・グルーシャク>の文字に胸躍り
もっと遡れば足川欽也さんがガラで踊っていらしたと記憶しております。
女性7人と男性4人程度の構成の入れ替わり立ち替わり踊る緩急に富んだ展開で、
主軸を務めたアシュリー・ボーダーの身体コントロール力、突き刺すような脚力の強さに惚れ惚れ。
ボーダーは一昨年の『世界バレエフェスティバル』Bプログラムにおける黒鳥グラン・パ・ド・ドゥでの
優雅さが無いに等しい(失礼)体育会系オディールに驚きを覚えましたが、2013年のNYCB来日公演では『タランテラ』で
急速テンポでも一瞬たりとも揺るがぬ盤石のテクニックを披露して本家本元の誇りを示し、このとき以来の好印象。濃いピンク色の村娘衣装もお似合いでした。

音楽はガエターノ・ドニゼッティの『ドン・セバスチャン』より、ニューヨークシティ・バレエ団初演は1960年でメリッサ・ヘイドンが主役を務めたとのこと。
ドニゼッティはバレエではなかなか聴く機会がないものの2006年の世界バレエフェスティバル幕開けを飾った
オーストラリア・バレエのルシンダ・ダンとマシュー・ローレンスによる『ラ・ファヴォリータ』にしても
ルグリ振付のパ・ド・ドゥにしても(曲は恐らく同じ構成)クラシカルで祝祭感があり、また観てみたい作品です。
兄ジュゼッペ・ドニゼッティの音楽は昨年八王子での発表会における魔王登場時、時代劇の大物参上を彷彿させた曲で強烈な印象に残っております。

さて、ほぼ毎週末劇場での鑑賞を当たり前のように行っていた以前では特例を除いては考えられなかった動画延々検索行為に走ってしまったところ
先に述べたNYCBよりも心を掴まれた映像を発見。ゲルシー・カークランドとミハイル・バリシニコフが踊る
1978年のアメリカンバレエシアター『テーマとヴァリエーション』です。公式ではない配信経緯不明のため大々的には紹介いたしませんが
カークランドと言えば1977年にスタジオ収録されたバリシニコフと組んだ『くるみ割り人形』での幸が薄そうな(失礼)クララと
麻薬中毒に陥り楽屋でも倒れ、のちに執筆した暴露本の印象ぐらいしかありませんでしたが、まさに完成されたプリンシパル。
ステップやポーズ1つ1つがクリアで正確、実にエレガントでクラシック・チュチュを着けた姿は初見でしたが脚がすらりと真っ直ぐ伸び
クラシック・バレエの真髄に魅せられた気がいたします。バリシニコフの無駄のない美しい跳躍や澄み切った品の良さにもこれまた見入り
コール・ドも精度高く、誠にゴージャスな舞台。総合力に圧倒された次第です。尚衣装はプリンシパルは白、他は赤系で纏められていました。
1980年前後辺りのABTのコール・ドにも憧れを抱き、シンシア・ハーヴェイとバリシニコフの『レ・シルフィード』や
シンシア・グレゴリーとフェルナンド・ブフォネスの『パキータ』は30年前から映像で目にしておりましたが
大人数のバランシン作品においても呼吸の合った舞台を堪能です。

その後は『ユニオンジャック』に到達。同じベースの振付で披露された関西や四国の舞台を思い返し再び県境を跨いでの移動が自由になる日を夢見つつ
(大阪にて井澤駿さんが踊られたこともあり、セーラー服でスキップなさっていても王室から派遣されたであろう随分上品な水兵さんでした笑)
『スターズアンドストライプス』では日本のバレエ団としては全編初上演を果たしたNBAバレエ団の公演が思い起こされました。

ところで余談ですが管理人、今春以降飲酒量が激減。劇場帰りの乾杯が習慣化していたにも拘らずお茶の間観劇においては酒瓶に手を触れる行為にはなかなか至らず
この日は焙じ茶を飲みながらのバランシンでした。肝臓は弱まったか、それとも肝臓の働き方改革遂行によりむしろ丈夫になったか
新国立の巣篭もりではイタリアワインを用意して臨み確認したいと思っております。

2020年5月29日金曜日

【できるかな】【お茶の間妄想】新国立劇場バレエ団で『スパルタクス』

緊急事態宣言は解除されましたがまだまだ油断できぬ状況が続いております。
時々当ブログにも登場する管理人の妹は子供達と接する仕事をしているため暫くの間休業状態でしたが、来月から通常勤務に近い状態で再開予定。
ただ在宅時間が長く続いたとはいえ遊んでいたわけではなく、再開の準備や子供達が家で楽しく過ごすための策を練っていたとのこと。
その内の1つが工作絵本で、各々好きな絵を描いて着せ替え人形のように絵柄が変わる絵本の作り方の図解説明書を製作しウェブ公開または配信していたそうです。
幸い私と似ておらず、幼い頃から一般教科のみならず図画工作も得意であった妹ですので
(4歳違いのため小学校は2年間在籍が重なりましたが、妹の担任の先生と廊下で会うたびに何回褒められたことか)
従事する職業においても素質が存分に生かされており、一族の誇りでございます。(対する姉の管理人は幼稚園児の頃から趣味だけは確立するも人生迷走、現在に至る)

さて工作といえば、ウェブ配信がない時代から大勢の子供達に支持されていたテレビ番組が2本ありました。
両者とも教育テレビ(当時の名称)で『つくってあそぼ』(7年前頃まで放送)と『できるかな』です。
前者はわくわくさんと心優しい熊のゴロリが、後者はノッポさんと何の生き物かは不明なゴン太くんがペアを組み
身近にある材料を使って工作を楽しむほのぼのとした子供番組でした。『できるかな』は大長寿番組で私も好んで視聴しておりましたため
昨今バレエ関係の会話にて英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのワディム・ムンタギロフさんの多種の愛称の1つ「ムンタくん」を最初に新国立劇場で耳にした際には
思わずゴン太くんが浮かび、鋏と紙を手にして工作に勤しむムンタさんが脳裏を過ったものです笑。

さて本題。『できるかな』を懐かしく思い出したつい先日、ちょうど福岡雄大さんが司会進行を務めるインスタグラムライブトーク通称『雄大の部屋』にて
渡邊拓朗さんが登場された回でのこと。挑戦したい役や作品を尋ねられ、『白鳥の湖』王子とロットバルト両方と回答した後にもう1本
新国立では難しいと思いますがと前置きした上で口にしたのは『スパルタクス』
福岡さんも思わずおお!!と声を上げ、鎖付けたスパルタクス役が拓朗さんに似合いそうと嬉々として語っていらっしゃいました。
そういえば、拓朗さんは10代の頃にカルロス・アコスタ主演の『スパルタクス』をご覧になり
男性らしい魅力が詰まった作品から受けた大きな衝撃を2018/2019シーズンガイドブックでのインタビューにてお話しになっていて
今回のライブトークも視聴した限り、また昔のバレエ映像研究家でもある兄上の存在もあり笑(複数のインタビューで拝見)、恐らくは振付も全て頭に入っていて
ムハメドフやワシリエフなど往年のボリショイキャスト映像も目に焼き付けていらっしゃることでしょう。
『スパルタクス』なら役柄問わずやりたい、男性ダンサー達が一斉に行進して雄々しく踊り出す箇所に憧れを抱いているなど『スパルタクス』愛に溢れたお話でした。

私も好きなバレエ作品で上位13選に入っており、ソビエト時代のバレエ作品に絞った半期講座のみならず
2017年には『スパルタクス』特集の講座にも足を運んだオタクではございますが
当時新国立劇場バレエ団に当て嵌めたときには主要4キャストは瞬時の妄想が巡ったものの
男性ダンサーの平均身長も上がり、層も厚くなってきている傾向があるとは言いながら
グリゴローヂヴィヂ振付作品には不可欠な長身且つ筋骨隆々な体型でなければスパルタクス側クラッスス側何れにしても男性群舞は困難であろうと想像しておりました。

しかし今回のライブトークから、ある程度の上背は必要でしょうが何も皆が皆ボリショイ男性な体格である必要はなく
踊りこなす技術があるのは前提として、要所要所にはイーグリング版『くるみ割り人形』アラビア常連隊を配置してあとは踊り方の工夫、スタミナの持続
そして内面から沸き出るパッション(最重要かもしれない)を持ち合わせていれば実現できそうと妄想。
「できるかな」から「できそう」、「できる」、観たい!と考えが徐々に変化していった次第です。
多少は筋肉増強が望ましいでしょうが、筋トレの帝王!?貝川鐵夫さんに弟子入りし、
劇的な色合いを込めた近頃話題の「ドラマチック筋肉体操」の考案者福岡さんに入門して実践すれば自ずと作品の理想体型に近づきそうです。(勝手な推進で失礼)
大原永子監督も説明会でしばしば男性ダンサーの強化を課題に掲げ、『トロイ・ゲーム』や「Men Y Men」といった
男性のみによる構成作品のレパートリー化も行ってはいますが、私の見る目が無いのか今一つ印象に残るものが無いままでございます。(お好きな方、すみません)

そんなわけで、拓朗さんのお話からつい妄想が膨らみ今も膨張状態。まずは幕開け、中央に集合したローマ軍の一斉に前方への突進と
足踏みしながらのクラッスス凱旋場面を初台でも観てみたいと欲が妄想が止まりません。
本島美和さんによる毒々しさと華々しさを兼備するエギナも想像するだけで平伏してしまいそうです。そしてボリショイ、どうか予定通り来日できますように。



ボリショイシネマの宣伝映像。43秒あたりの盾を持って身を潜めていた軍たちが豪快に飛び出して踊り出す箇所、生で早く観たいものです。

2020年5月27日水曜日

【お茶の間観劇】【必見】佐々木美智子バレエ団『バフチサライの泉』




大阪の佐々木美智子バレエ団が、2018年に上演した創立40周年記念公演『バフチサライの泉』の
少しずつ切り取り編集した映像をインスタグラムとブログにて公開してくださっています。どうぞご覧ください!
リンク先のインスタグラム、ブログともに各映像に解説を明記してくださっていて場面状況や人間模様はすぐ分かるようになっています。
インスタグラムにおいては全編をほぼ網羅しエピローグまで載せ、ブログではまだ途中段階ですが引き続き更新してくださるようです。

プーシキンの叙事詩をもとにバレエ化され、東西の文化が交錯し入り乱れて苦悩、憎悪、嫉妬、といった
人間の感情が奥底から沸き真正面からぶつかり合う魂を揺さぶる濃密な作品でバレエ団の十八番として節目ごとに上演を重ねています。
テレビでも放送されたマリインスキー・バレエによる上演の印象が強いかもしれませんが
2013年に初めて佐々木バレエでこの作品を観たあとにマリインスキーの映像を観ても良く言えば上品過ぎてしまい物足りなさを感じてしまい
東大阪の土地が育んだのであろう、大地が唸りそうな熱きエネルギーが結集した
佐々木バレエの『バフチサライの泉』は是非とも生で一度はご覧いただけたらと常々願っております。

とにかく映像を見て明記の説明を読んでいただけれ当ブログの解説なんぞ不要であるのは重々承知しておりますが、以下は言わせてください。
まず、山本隆之さんによるギレイ汗の重厚な存在感と色気に陶酔。韃靼軍を率いる威厳、異国の姫に好意を持ってしまい
寵愛していたはずのザレマを拒絶する苦悩といい何時どの場面においても全身が物語る姿が胸を突き刺し圧巻です。
ギレイ汗に尽くす隊長ヌラリは佐々木大さん以外にはもはや思い浮かばず忠誠心と野性味が内側から溢れ出ていて、
そして目を通した限り他の批評では取り上げられていなかったものの心を鷲掴みにされたのが第二夫人の杉前玲美さん。
研ぎ澄まされた細身の肢体から繰り出す妖艶な輝き、ザレマに負けじと誇り高くダイナミックに踊りギレイ汗へ捧げるソロも
豪華な美術までもが霞んで見えるほどに目に心に迫るものがありました。
全編通して前半の貴族たちにしても後半のハイライト韃靼群舞まで全出演者の渾身のエネルギーが炸裂し、2018年に約80回鑑賞した中でも上位6本に入る公演です。
(他5本は板東ゆう子ジュニアバレエのジゼル全幕、篠原聖一さん版ノートルダム・ド・パリ、
新国立劇場バレエ団眠れる森の美女、不思議の国のアリス、ニトリホール・旧北海道厚生年金会館閉館ガラ。この年は同率1位が多かった)



バフチサライの泉 佐々木美智子バレエ団バレエ団インスタグラム・ブログより 万一リンク先を誤っておりましたら申し訳ございません------

https://instagram.com/p/BtCZ2ZIn04X/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12593253887.html
王道少女漫画恋愛模様なマリアとワズラフ

https://instagram.com/p/BtN47bslkQR/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12593966124.html
マリアとワズラフのヴァリエーション、剣の踊り

https://instagram.com/p/BtclqdsgV-I/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12594817058.html
マリアとワズラフのアダジオ、貴族たちの勇壮且つ優雅なコーダ

https://instagram.com/p/BuJGKv2A2CK/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12595787717.html
やがて韃靼突入

https://instagram.com/p/BuVvb0GA-e2/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12595984093.html
ギレイ汗登場!ワズラフ死

https://instagram.com/p/Bv81ajRAzpx/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12596535698.html
大奥な部屋 第二夫人も

https://instagram.com/p/BwJthYRAzxt/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12596959661.html
ギレイ汗達帰還

https://instagram.com/p/BwY10OsgA73/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12597223847.html
マリアに全て捧げようとするギレイ汗と嫉妬するザレマたち。ギレイ汗の坊主姿が嗚呼セクシー、鼻血要注意。

https://instagram.com/p/Bw1NvZHgwru/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12597654757.html
鈴の踊り、壺の踊り、ザレマも渾身のソロで訴えるもギレイ汗は興味示さず

https://instagram.com/p/BxXFsH5guJp/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12599428954.html
第二夫人も踊るがギレイ汗退席

https://instagram.com/p/BxtMSxzgbs5/
https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12599890188.html ザレマ再三の訴え虚しくギレイ汗の心はマリアへ

https://instagram.com/p/Bxy8GlmAibv/
マリアは竪琴を弾きワズラフや故郷想うがギレイ汗に迫られる

https://instagram.com/p/BzrPFGygew9/
ギレイ汗マリアを諦める

https://instagram.com/p/B5hSvulga_0/
マリアの死

https://instagram.com/p/B_RjKQgAfvq/
ザレマ処刑 ギレイ汗苦悩

https://instagram.com/p/B_W2Z9WgYBs/
韃靼群舞!!さあ皆様もタオル持ってレッツ韃靼笑。但しお怪我防止及び近隣住民へのご迷惑にならぬよう細心の注意をお払いください。

https://instagram.com/p/B_i4YbHAOEx/
ギレイ汗の涙


※ご参考までに、公演の感想はこちらでございます。前日には響きだけは似ている世界バレエフェスティバルーササキガラーを鑑賞し終演後そのまま夜行バスで大阪入り。
東京と大阪2日連続でササキバレエを満喫した2018年のお盆でした。バフチサライ公演前に心斎橋で食した韃靼蕎麦、また味わいたいものです。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/816-191a.html

2020年5月24日日曜日

【お茶の間観劇】ハンブルク・バレエ団『幻想・白鳥の湖のように』

ハンブルク・バレエ団が配信していたジョン・ノイマイヤー振付『幻想・白鳥の湖のように』を鑑賞いたしました。



DVD化もされており、予告宣伝映像


https://www.hamburgballett.de/en/news/video_on_demand.php

王:イリ・ブベニチェク
影:カーステン・ユング
ナターリャ(王の婚約者):エリザベート・ロスカヴィオ
アレクサンダー(王の友人):アレクサンドル・リアブコ
クレール(その婚約者):シルヴィア・アッツォーニ
オデットを踊るバレリーナ:アンナ・ポリカルポワ
ジークフリート:ヤチェク・ブレス ほか ハンブルク・バレエ

指揮:ヴェッロ・ペーン ハンブルク交響楽団
振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣裳:ユルゲン・ローゼ


『白鳥の湖』が古典バレエとして骨組みが完成され過ぎているため大胆に置き換えた設定演出版の鑑賞はなかなか気が進まず
オーストラリア・バレエのグレアム・マーフィー版は英国王室を皮肉った演出で来日公演も面白く鑑賞いたしましたが
周囲で絶賛の嵐であったマシュー・ボーン版は1幕の派手な衣装や賑やかさが苦手。ノイマイヤー版の存在は知っていながら
オデットの肩部分にヒラヒラした羽が装着されている程度しか知識がなく、設定を書籍なりで早い段階からきちんと目を通しておくべきでした。
ルートヴィヒ2世の時代に置き換え、しかもノイシュヴァンシュタイン城が深く関わっているとつい最近知り、俄然興味が沸いて大急ぎで鑑賞した次第です。
全編を隈なく把握するには至らず、大雑把な感想ではございますが悪しからず。

まずブベニチェクがルートヴィヒ2世によく似ていて、髪型のせいだけではないと思うが
プロローグでノイシュヴァンシュタイン城の模型らしきものを撫でながら政治そっちのけで
城建設の夢に傾倒しているさまも王が乗り移っているかのような目を見張る入り込み。
1幕のワルツは城の建設中の現場を訪れた設定なのか混沌とした労働現場と化しており
合間にはスポーツに興じる青年も多々いてもう少し踊りの場面を増やして区画整理をして欲しいと感じましたが
市民の熱気と王家の格式が共存するユニークな場面と見受けました。

思わず身を乗り出して見入ったのは湖畔の場面で、王は椅子に腰掛け、『白鳥の湖』上演を鑑賞している設定と思われますが
次第に舞台の世界にすっと入ってジークフリートを差し置いてオデットのパートナーを務め
しかしオデットはジークフリートに戻され再び現実に引き戻されそうになったりと夢と現実の境界を彷徨う表現に
観ているこちらまでもが磁力の如く往復させられた心持ちとなりました。

以下自身の経験ですのでスケール小さき話ではございますが、実は私もよく夢を見る方で幸いなことに悪夢には殆んど縁が無く
見るとすれば現実にはあり得ぬ状況下に置かれた内容。但しどっぷり夢に浸かっているかと言うとそうではなく
脳の半分は夢の出来事を満喫している一方もう半分は現実を見ている状態で、例えば3日前ですと繁華街を歩いている夢でしたが
楽しく歩いてその後はお店で飲酒する内容で幸せ一杯なひとときでありながら、このご時世でマスクしていない
また繁華街を遊び歩いている状況に不信感を抱いていたり目覚まし時計の音はしっかり聞こえている、といった夢と現実が半々の状態になるわけです。
そのためか狭間で揺れ夢うつつな王の状況がごく当たり前の、頻発する出来事に映ってしまったのでした。

ロットバルトの代わりである影のユングの怪しさや、王の憧れの象徴として透き通るように白く
浮世離れしたオデットを踊るバレリーナのポリカルポワの存在感も印象深く、群青色に白鳥が描かれた幕にも1幕が始まる前から釘付け。
ノイマイヤーの代表作でありながら初演から随分と年月が経過した今、ようやく鑑賞できたのは幸運であると思っております。

思いのほかこの作品を集中して観てしまったのは、子供の頃自由研究でノイシュヴァンシュタイン城について調べ、
それ以前にも誕生日にヨーロッパの城や宮殿の写真集を買ってもらいダンスマガジンと同様来る日も来る日も眺めていた経緯もあったため。
当時衝撃であったのは明治維新以降に完成した大変新しいお城で、国力誇示や戦争のためでもなく王の趣味のお城であると知ったときでした。
おとぎ話に登場しそうな外観とは裏腹に王の尋常ではないワーグナーへの傾倒や幼い頃と変わらず狂おしいまでに夢を追い求める心酔ぶりが秘められた城の姿を
いつの日かこの目で確かめたいと思う日々です。



子供の頃から今もしばしば読んでいるヨーロッパの城の写真集。表紙を見てすぐ欲しがったと記憶。



もう1つ、作品を堪能できた理由が一昨年4月に念願のこの場所を訪問したため。現地からこの写真を妹に送ったところバイエルンへ行ったと思ったようでしたが…


実際は兵庫県姫路市の太陽公園に2/3サイズで再現されたお城。山の下にはローソンがございます、しかも青看板に記された地名が白鳥台!
グラッシオバレエスクール発表会『白鳥の湖』鑑賞前日に訪問いたしました。



入口。シンデレラの気分にも少し浸れます。但し王子様はいません、靴を落としても自身で事務室へ行きましょう。これが現実。



城内部入口近くにはバレエにて王が撫でていた模型によく似た形のステンドグラス。プロローグを観てすぐさま思い出しました。



勿論白鳥もいます。



姫路城に比較すると客は誠に少なく、公園目の前の甲子園(今年は中止になってしまいましたが)出場常連校の東洋大姫路高校の野球部グラウンドのほうが遥かに人多し。
お城はほぼ貸切で、城主ルートヴィヒ2世の気分を味わえます。採算が心配ですが。



広間の玉座、お城内部でも写真撮影は自由です。



細かい箇所まで精巧に再現されています。



帰りも人がいません。姫路城(通称白鷺城)よりも、また千葉県浦安市の夢の国のお城よりも格段にゆったり滞在できます。
姫路にお越しの際は和の白鷺城と洋の新白鳥城、どうぞ両方へ足をお運びください。管理人、決して姫路市の回し者ではございません。

2020年5月22日金曜日

【お茶の間観劇】韓国国立バレエ団 グリゴローヴィヂ版『ラ・バヤデール』

韓国国立バレエ団が配信していたグリゴローヴィヂ版『ラ・バヤデール』を鑑賞いたしました。初めて観るバレエ団の映像です。



バレエ団の映像チャンネルより、影の王国リハーサル映像


書籍に掲載された来日公演や評論記事にて、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』共にグリゴローヴィヂ版を取り入れ
バレエ団の持ち味に合っていると読み、一概には言えないもののサッカーW杯などの応援やテレビドラマの宣伝で目にする熱さ迸る国民性や表現力、
舞台写真を一目見て女性は細身で恵まれた体型、男性は筋骨隆々で上背のあるダンサー揃いである印象から何処となく想像はついておりましたが
今回初めて舞台映像を全幕で観て納得。どのダンサーも技術は揺るぎなく、表現は熱くされど荒々しくはならず優雅さとダイナミックな魅力双方を備え
何よりバヤデールの重大要素である陰謀渦巻く愛憎劇を繰り広げるに相応しい心の底から沸き上がる感情を火傷しそうなほどに強く表現し
修羅場はどのバレエ団よりも恐ろしや。また容姿からして役柄が明確で、ニキヤは慎ましく薄幸ながらも伏し目がちな表情ですら情念を滲ませ
ガムザッティはいかにも勝ち気そうな美女。蛇の仕込みの疑いをニキヤに名指しされても澄ました顔であしらい、犯人確定です笑。
グリゴローヴィヂ版のガムザッティはソロルの前に歩み出てヴェールを捲られ姿を現わす溜めに溜めてからの登場ではなく
1幕第2場の行進曲が始まって早々にガムザッティが踊りながら登場するため、何時の間にかの登場にもなりかねない振付ですが
そんな心配何処吹く風で一気に目を惹く艶やかなオーラを放散。同じ版つまりは本家ボリショイでも瞬時にインパクトを与えるのは難しく
2006年と2014年の来日公演で計6回観ている中でもいたく凛然としたマリーヤ・アレクサンドロワと
ゴージャスな輝きに満ちたアンナ・ティホミロワぐらいであったと記憶しております。

男性の見せ場もふんだんに用意され、とにかく兵士たちも登場しながらの跳躍多し。
演出によっては女性の役の活躍に比較するとひたすら行進してはお仕えするにとどまりがちになるわけですが
ガムザッティのお披露目にしても婚約式にしても、上背があり筋骨隆々体型のダンサーが揃いも揃って跳びながら舞台を横切る光景は大迫力で
婚約式コーダでのブロンズ像も兵士も太鼓もお祭りわっしょいな勢いで交互に登場する流れはボリショイよりも強烈なパワーを放っていた気もいたします。
レパートリー入りしているグリゴローヴィヂ版『スパルタクス』も観たくなりました。

男性のみならず婚約式での女性のコール・ドや壺の踊りも熱く、一歩の一歩の移動距離が長く上半身もコントロールを効かせつつ大きく動かし
端正さはそのままに全身が高揚してうねるような力強い印象をも与えていました。コール・ドは扇隊とオウム隊の2編成で壮麗豪華。
きらりとした頭飾りも付けずシンプルに削ぎ落とした衣装効果もあって幽玄この上なく、すらりと美しい四肢が映える統制のとれた影たちにも息を呑みました。

衣装の抑えた色彩や太めの縁取り、ティアラの耳上部分の湾曲具合からしてもしやと思ったら予想的中ルイザ・スピナテッリが手がけたとのこと。
婚約式でのガムザッティはより煌々とした黄金な装いのほうが好みではあるものの、品のある青と白を組み合わせた華やぎのあるデザインも目に宜しく
ソロルは平たいヘアバンドのようなものを装着。新国立の丸みのある輪っか(装着者によってはねじり鉢巻)によく伸びた羽飾りも懐かしく思い出しますが
主役からコール・ドに至るまで、徹底した訓練が生み出す隙や斑のない上質な全幕バレエを堪能できました。
ダンサー名は全てハングル表記表示で管理人には一切分からず、把握できなかった点は惜しまれます。

韓国国立バレエ団の最後の来日は記憶が正しければ2002年のサッカーW杯日韓共催大会直前の4月。『白鳥の湖』と『ジゼル』の2作品上演でダンスマガジンを捲ると
グリゴローヴィヂ版『白鳥の湖』の写真が大きく掲載され、ボリショイの専売特許また外部のバレエ団に上演許可を下すとしても
ヨーロッパ圏に限ると思っていたため、顔立ちの系統は日本に似ていながら特徴や強みは全然違ったものを持っているのバレエ団であろうと読み進めたものです。
同年5月には新国立劇場バレエ団2002年日韓国民交流年記念事業公演『ドン・キホーテ』に
来日公演でも主演したキム・ジュ・ウォンとジャン・ウン・ギューがゲスト出演。
新聞の宣伝記事で目にはしておりましたがまだ新国立の公演を頻繁に鑑賞する前の時期で、足を運ばず終いであったのは悔やまれます。
2005年頃には康村和恵さんが渡韓して何度かゲスト出演され、朝日新聞にも旅立ち前のインタビューが報じられ
言葉を覚える手段として韓国ドラマも活用していると語っていらしたかと思います。
康村さんがクララ役で出演されたグリゴローヴィヂ版『くるみ割り人形』現地レポートは桜井多佳子さんがダンスマガジンにて詳しく執筆されていました。
写真はモノクロでしたが2幕で棒状の蝋燭を手にする花のワルツ男性たちの坊主な鬘がどうしても僧侶の行列に見えてはしまったものの
雄々しさは写真でも伝わり、長い手脚を持ち華もあり表現も豊かな康村さんはコール・ドを従えても一際見栄えする容姿と
ボリショイバレエ学校仕込みの技術でバレエ団に溶け込みつつ舞台を牽引なさっていたと想像いたします。
矢上恵子先生(2019年逝去)は日本人振付家としては初めて招聘され、振付作品も上演されたそうです。

以下は余談ですが、家電量販店にて電子辞書販売を担当していた頃にちょうど『冬のソナタ』といった韓国ドラマが大流行し
スマートフォンがない時代も関係したのかコリア語を学ぶために電子辞書を購入しようと多くのお客様にお越しいただいた光景は今も覚えております。
そしてペ・ヨンジュンさんのキーホルダーやチャン・ドンゴンさんの写真などグッズを嬉しそうに見せてくださる方もいらっしゃり
年齢を重ねてもときめく心の維持は大切であると学んだ次第。(バレエにおいてもこれ大事)◯◯ダ電機某店へのご来店の皆様、誠にありがとうございました。
お客様の好みを理解しようと当時の韓流四天王を暗記し、ドラマは私も視聴はいたしましたが
二体の雪だるまを近寄せての接吻を始め純愛過ぎる展開に気恥ずかしさが募ってしまい早々に断念。
歴史物においては身内同士での陰謀やら身分差による禁断の恋など事件が凝縮し、ありとあらゆる箇所にて嘆きや憎悪の声が響き渡る流れに
これまた心が付いていかず。しかし思えば『ラ・バヤデール』に通ずる要素満載で、ドラマは苦手でも(韓国にも喜劇や刑事物など多種のドラマは存在すると思いますが)
韓国国立バレエ団によるバヤデールのような愛憎劇バレエは一癖あって面白い、しかも舞台の質も高し。他の作品にも着目して参りたいと思っております。

※そういえばニキヤは元新国立劇場バレエ団の楠元郁子さん、ニキヤの奉納時に中央寄りの立ち位置にいた扇隊の1人が米沢唯さん、
そしてソロルの肖像画がムンタさんに似ていた気がいたします。再配信の機会があればどうぞご注目ください。

2020年5月20日水曜日

お茶の間観劇のお供による初再生は初演から半世紀・ベジャール版『火の鳥』

一部の地域では緊急事態宣言が解除されながらも劇場に行けぬ日が続いている昨今、配信映像で芸術鑑賞を堪能いる方は大勢いらっしゃることと存じます。
これまで管理人におきましてはせっかく劇場へ行きやすい環境にて生活している以上はバレエは極力で生で観る、
知り合いがいれば会場のロビーで談義する、そして帰りは一杯ひっかける流れをバレエ鑑賞の基本としておりました。
しかしバレエは劇場で観る感覚を大事にしたい、劇場で生まれる鮮烈な感激を薄めたくないために
特例を除いては極力動画サイトでの検索や視聴は控えてきた頭の古さがここにきて行き詰まりかけてそうは言っていられなくなり
劇場通いで手一杯であったとはいえネット上での全幕映像鑑賞とは無縁であった今までの慣例にとらわれず
現在は配信映像を活用して鑑賞を満喫しております。配信情報を発信してくださっている皆様、ありがとうございます。

さて、先月上旬のボリショイバレエ団の配信『スパルタクス』『眠れる森の美女』の頃までは
ipadが古いだのパソコンが故障中だの我が「機器」管理能力欠如による大画面での配信映像が鑑賞できぬと言い訳がましくぼやいておりましたが
心配してくださったのか大変お世話になっている方が勧めてくださった機器を購入し解決。こちらです。



※訳あってポルトガルのニワトリの置物コッコちゃん(名付け親は管理人)を飾っておりますが、こちらは別売りです。


テレビに接続して自宅で利用しているWi-Fiに繋げ、動画を携帯の画面ではなくそのままテレビに映し出せる優れものでございます。
機器事情に疎遠であったためまさかYoutubeをテレビ画面で堪能できる日が到来するとは思いもせず、現在ではバレエ鑑賞のみならず
動物関係の動画を見たがっている家族共々活用しております。上野の森バレエホリデイでの上映では一部vimeoでの配信でしたが
箱には明記されていないながらテレビでの視聴も可能でした。東京シティ・バレエ団の「L' Heure Bleue」や
井上バレエ団の『ゆきひめ』も岡本佳津子さんと井上博文さんのNHKバレエの夕べ最終回の写真も思い出しつつ無事鑑賞でき喜びもひとしおした次第です。

さて、GoogleChromecastを繋げるには自宅で利用中のWi-Fi登録が必要で簡単にできると何処を見ても記載されていましたが
子供の頃から時代遅れ、化石、20代の頃には身内から年寄りと呼ばれております機械関係も苦手分野である管理人にとってはかなりの時間を要してしまうありさま。
接続以前にYouTubeのアプリもダウンロードしておらず(アプリ音痴も家族から度々指摘を受けております…)その段階から準備を開始。
一部始終を隣で眺めていた家族も心配している様子でしたが、約45分が経過し無事完了。
接続成功後最初の記念再生映像は既に購入前から考えており(それよりも接続が先でしょうがとの突っ込みは受け流します)
これまでに観た中で最も好きな動画がこちら。『雄大の部屋』こと新国立劇場バレエ団の福岡雄大さんが同僚のダンサー1人ずつと対談を行う
インスタグラムトークライブにて、渡邊峻郁さんがトゥールーズのキャピトル・バレエに在籍されていた頃の特に思い出深い作品として
退団直前に踊られたこの『火の鳥』を挙げていらっしゃいましたが当時2016年の公演に向けて制作されたリハーサル映像です。
複数名の場面とソロの場面の2本のリハーサルを交互に編集しています。前半は同時上演の『パキータ』が収録されているため、お急ぎの方は1分43秒からどうぞ。
(ただどちらも流れているのは火の鳥の曲で、編集の名手がいるのでしょう。ぴたりと嵌っています)





ベジャール版『火の鳥』の初演は1970年20世紀バレエ団、初演から今年でちょうど50年を迎えます。
実はこの動画は前ブログにて遡ること3年前の2017年に2回紹介しており、1回目は干支の酉年の幕開けに鳥に関する作品の内容として。
※こちら→http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post.html
2回目は同年のゴールデンウィークに開催された、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017でのフランス国立ロワール管弦楽団演奏の『火の鳥』鑑賞時の感想に
いずれも半ば無理矢理こじつけての紹介でした。しかし2回とも反響は多くはなかったのが正直なところで
1回目は酉年の幕開けとして新国立でレパートリー入りしているフォーキン版『火の鳥』回顧と前年入団のダンサーの宣伝も兼ねて
さらりと綴ったのであろうと友人曰く思ったらしい。私としては、新年の一発目にご登場願うのは余程のお方に限ると思い耽るも、周囲は知る由も無いわけで
同年6月の『ジゼル』でようやく周囲がまさかな事態に驚くに至ったのはあったのはさておき
前年2016年の『シンデレラ』おけぴリハーサルレポートや写真を目にして読んで以降虜になりかけ
そして翌年のお正月に「特例」行為に値するひたすらトゥールーズ時代の動画を検索していた最中にこの動画を発見。
一度見ただけでも魂を撃ち抜かれるような強い衝撃を受け、古典ではなかなかお目にかかれない鋭い視線や
火の鳥に変身し敢然と戦いに挑む革命軍の青年らしい勇猛さや雄々しさが全身から漲り、映像を見るだけでも心を突き動かされ
2017年はその年明け以来ほぼ毎日の頻度で再生しては見入っておりました。(お正月辺りは日に50回ぐらい再生していたと記憶)
このときが当ブログに記事の内容のメインとしては渡邊さん初登場、及び元祖王子のフォーキン版のイワン王子の写真と新鋭王子のベジャール版のタイトルロールの映像が
同じ記事内での競演実現!と1人感激しきりであった2017年酉年記念一発目2本立ての火の鳥なるお正月であったわけです。

衝撃の強さを物語る話をもう少し。2017年の新国立『ジゼル』記事内での暴露にてお正月明けに訪問する大阪府の天王寺の下調べも放ってと綴っておりましたが
正確には、天王寺入りして目的の舞台を鑑賞しホテルに戻ってもベッドの中でひたすら再生。
宿泊したのはユースホステルで2段ベッド4台が設置された女性8人相部屋でしたからシャワーを浴び終え部屋に戻ったら同室の宿泊客に配慮して
すぐ就寝の予定であったはずが、閑散期だったためか私1人。つまりは8人部屋を1人で貸し切り、シングルルームと同等な状態を良いことに寛ぎなから
四天王寺前夕陽ヶ丘駅での舞台の余韻にも浸りつつ、一方で我が年齢より遥かにお若いながら大人の貫禄すら漂わす姿にすっかり見惚れてしまった
数日前に発見の衝撃動画を度々眺めていたのでした。浪速に来てまで何をやっていたんだか笑。

さて話を2020年に戻します。無事テレビでの再生が成功し、大画面にこの動画が映し出されると予想以上に画質も宜しく大興奮。
しかし隣には家族もおりましたため露わな声出しは控え、黙って目を心臓印にして眺めておりますと横から「この人、日本人?」と聞かれ
藤原歌劇団『椿姫』バレエ場面の闘牛士、新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』ソロルのいずれも字の難しい人、と2回は公演で鑑賞しているはずだが言うべきか
まだ諸々繋がっていないようで寧ろ高校大学時代に学んでいたから読めるとフランス語表記の題名の方に興味津々な様子でしたので今回はまあこれで良いか。
回り道を失礼。バレエ鑑賞人生における過去2回の転換期である2005年と2017年はいずれも酉年、更には双方鳥関係の作品。(2005年は白鳥の湖。2029年はいかに!?)
そんなわけで、テレビ画面での初再生を数あるネット上の動画の中から2017年お正月の衝撃『火の鳥』を選んだ記念として箱の隣にコッコちゃんを並べて撮影。
実はコッコちゃん、ポルトガル旅行前に観光場所を悩んでいた母に対してトゥールーズのある作品のDVD鑑賞がきっかけで登場人物や所縁の地を私が口走り
訪問地を安易に決めてしまったようで、現地で買ってきてくれた置物でございます。その話はまた何処かの機会で行うかもしれません。

2回目の記事についてはほぼ割愛で失礼。『火の鳥』の音楽聴きたさに何度か演奏会に足を運びラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017もその1本でしたが
ただ好みや聴き慣れもあるでしょうが最もテンポや表現がしっくり響いたのは2018年3月の季節外れの降雪日、サントリーホールにて開催された
トゥールーズ・キャピトル管弦楽団の演奏でした。来日中であるのは前日に知りましたがこれは何としても行きたいと、チケットを無事確保して鑑賞に出向き
受取でお世話になった隣席の方には大雪にも拘わらず大急ぎでチケット入手をして足を運んだ経緯が不思議に映ったようで
理由を正直に申し上げたところ希少動物を目にしたような驚きを見せていらっしゃったもののバレエにも理解ある方で、
演奏会慣れしていない私に肩の力を抜いて楽しむコツやお連れの方とも幕間にはビュッフェで乾杯。
赤ワインが渋めで重厚な好みの味わいであった点も含め今も忘れられぬ体験です。

右に左に話が流れ続けて申し訳ございません。ひとまずは次の2回はさらっと短めに、今週鑑賞した配信映像の感想を綴る予定でおります。

2020年5月14日木曜日

【お茶の間観劇】デンマーク・ロイヤル・バレエ団 ニコライ・ヒュッベ版『ライモンダ』

デンマーク・ロイヤル・バレエ団が配信中のニコライ・ヒュッベ版『ライモンダ』を鑑賞いたしました。
配信関係はそう多くは観ておりませんが時代設定を変えた演出に興味を持ち
またデンマーク・ロイヤル・バレエの全幕舞台は生でも映像でも観たことがなく、鑑賞した次第でございます。
※ネット配信映像をテレビ画面で視聴する環境が整い、携帯頼みであった以前よりは格段に快適に。
衣装製作現場の映像もアップされ、手作業で仕上げに臨むスタッフの姿や試着するダンサーの姿も。色とりどりのデザインにうっとりです。





※キャストやスタッフは動画サイトに掲載されていましたが、デンマーク語での転記の自信がなく、気になる方は恐れ入りますがご自身でお調べください。

振付や物語展開は他の版とそう変わりはないものの、ヒュッベ版の大きな特徴の1つが設定を中世十字軍時代ではなくロココ時代にしている点。
コルセットが入っているであろう腰部分が絞られどっしりと膨らみがあるドレス姿の貴族たちの衣装や鬘、小道具からもはっきりと見て取れます。
主要人物の衣装はあくまでクラシカルで、膝丈のふんわりとしたチュチュがお洒落。
ライモンダにおいては1幕は爽やかな青と白に眩い金色で輝き、2幕でのはっとさせられるルビー色も目に残る色彩で
クレメンスとヘンリエットの1幕では一方は白と水色、もう一方は淡い黄色(判別が付かず失礼)、2幕では金系で揃え品良くゴージャスな装いです。
ベルナールとベランジェや1幕ワルツの男性たちは髪をリボンで束ねて柔らかなシャツと薄い色合いベストで整えられており、ワルツの女性たちは白い膝丈チュチュ。
陽光射し込む庭園を背景に、1幕は全体を通して明るい爽やかさが漂っていました。

それからもう1つ、アブデラクマンはジャンとの決闘で絶命せず握手して和解。しかも仲裁に入るのはライモンダ自身で
白の貴婦人が背後にいたものの、ただ待っているだけ怯えているだけの姫では全くなく臆せず行動に移す性格として描かれています。
世界情勢に配慮しての設定かそれとも他の理由か分かりかねますが例えばアブさんが2幕で登場し、率いる軍団の余興を見せる際も
ライモンダの近くに大人しく腰掛け、ライモンダはいたく楽しそうに見物しているためあたかも『くるみ割り人形』クララとドロッセルマイヤーと見紛ったほど。
順番前後して1幕で突如ライモンダの前に現れたときもライモンダは戸惑いも少なそうでジャンとはタイプが異なる男性に興味津々な様子でしたし
婚約者の留守を良いことにクレメンス、ヘンリエットと共に女学生の会話の如く魅惑的な男性に出会えた喜びを共有していたと推察。
2幕でのアダージオでは心配して引き離そうとする友人らを横目に、ライモンダが視線を下から上へとじっくり送りアブさんを誘惑している構図とも見て取れ、
悪人ではなく綺麗なアラブの騎士として捉えたとされる牧阿佐美さん版に比較しても、
これまでに観たアブさんの中ではライモンダへの接し方においては最もノーブルで物静かな人物でした。
しかし、ジャンを前にすると本能を露わにして一歩も引かず、肩を掴んでは押し倒すか投げ飛ばす勢いでただ大人しいだけではないようで
基本敬意を払って人に接するが、いざ競争心に火が付くと抑えられなくなる気質なのかもしれません。
また夢の中では露出度の高い服装で出現、野性味や官能美を押し出していたこのときばかりはジャン以上に!?勇敢そうなライモンダも戸惑いを隠せずにいたのは納得です。

ロマネスクを始め中世をイメージした音楽が連なりながら意外にもロココの世界にも違和感なく嵌っていた点にも驚き、
中でもユニークな使い方であったのは幕開けの吟遊詩人の曲。ボリショイのグリゴローヴィヂ版ではいつの頃からかカットされてしまった
いかにも中世の宮廷音楽らしいリュートあたりを想像させる(実際はヴァイオリンであると思われる)
繊細な旋律で始まる、聴くと一気に中世ロマンの世界へと入り込む曲調です。
しかしヒュッベ版では使用人らしき女性たちが一旦仕事の手を止めて整然と戯れながら踊る振付で
溌剌と軽快で跳躍も多く舞台全体を覆いながら踊るうち、ライモンダ登場の合図がなされると花並べを行って準備完了。
主人公いきなりの登場よりは一呼吸置いて宮廷の様子を見渡せる情景場面が挿入されている方が
舞台の世界に引き込まれますし、主人公の登場にも一層華やぎを持たせる効果があると思わせます。

3幕はマズルカは無し、但し他の版では省略されがちな子供たちの踊りが用意されており、グリゴロ版ではジャンが3幕で踊るヴァリエーションでの使用曲に乗せて披露。
元々は子供用に作曲されたと聞いた覚えがあり、原典に忠実な演出といえるでしょう。
チャルダシュはポワント・バレエシューズチームとブーツチームの2構成で、中盤に差し掛かると後者が登場。
グラン・パ・クラシックは概ね基本通りでしたがライモンダ含めて5ペアであったため寂しい気もいたしました。
ライモンダの衣装が黒と金色基調であるためオディールに見えかけたりもしましたが、重厚な色味と装飾で結婚式には相応しいと感じさせます。
群舞は揃っているとは言い難いのが正直なところですが、女性は筋肉がしっかりと備わり上背のあるダンサーが多数。
パワフルで威勢の良い、されど1幕のワルツや夢の場は呼吸も合っていて調和も取れていた印象です。

どうしても把握に至らなかったのはジャンの設定で十字軍時代でもなく、夢の場で初めて登場。
1幕ではハンガリーの御使いがやって来て内股ステップを踏み、ジャンの動向を説明して本日は帰還せずといった内容を伝えた途端
その場にいた全員が落胆する大袈裟なコントの如き光景が広がってはいたものの長期出張なのかそれとも他の事情があるのか分からぬままでした。
バレエ団のホームページにはあらすじ解説が記載されているとは思いますので、デンマーク語及び英語に自信のある方は各自でお調べ願います。(無責任ですみません)

現在のデンマーク・ロイヤルのダンサーについては失礼ながら全く存じ上げず、未だオーゼ・ガッドゥで止まったまま。
書籍での『ゼンツァーノの花祭り』作品解説といえばブルノンヴィル本家本元として必ずと言って良いほど登場していたと記憶しておりますが
そういえばアナニアシヴィリと親交が深かったのか、東京で開催され映像化もされたデビュー10周年ガラにも出演。
また先日紹介した1992年モスクワ赤の広場での野外ガラにも出演がカーテンコール映像からは確認できますが
副題としてロシアバレエのスターたちと名付けられているためか映像化においては出番はカットされたもよう。
やや濃いめのエメラルドグリーン村娘衣装からして『ゼンツァーノの花祭り』と思われます。
(だからこそジゼルのパ・ド・ドゥを披露したカロル・アルボとカデル・ベラルビの
パリ・オペラ座ペアが収録されたのは判断基準が謎でございます。大トリのドン・キホーテで
アナニアシヴィリと組んだベラルビの株がロシア国内で急上昇したのか、何れにしても収録は今思うと私としては嬉しかったが)

さて管理人、これまでの人生においてデンマーク人との接点は1度だけあり。昨年の10月大阪へ行く新幹線の自由席車内で隣りに掛けたのがデンマーク人の女の子でした。
家族旅行での来日で、席がある程度埋まっていたためご両親やご兄弟とは離れて座ったようで
富士山の写真を一生懸命撮影しようとしていたため手伝うといたく喜んでくれて私にとっても嬉しい記念となりましたが、今頃どう過ごしているか気にかかっております。
当時はまさか1年も経たぬうちに地球規模の大変な事態に見舞われるとは思いもせず、平穏な日々に戻るよう願ってやみません。



ニューヨーク・シティ・バレエ団時代アポロを踊るヒュッべ、ワシントンD.C.のケネディ・センターの案内パンフレットに登場。
2008年の新国立劇場バレエ団ワシントンD.C.公演先でいただきました。

2020年5月10日日曜日

【おすすめ巣篭もり】福岡雄大さんのインスタグラムライブトーク『雄大の部屋』

新国立劇場バレエ団の福岡雄大さんが、巣篭もり企画として連日バレエ団のダンサー1人ずつと対談する
インスタグラムライブトーク通称『雄大の部屋』が4月28日より配信され、引き続き明日以降も行われますのでどうぞご覧ください。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_017434.html

1回30分、日によっては1日に複数回行い既に何名ものダンサーとの対談が開催されましたが
とにかく福岡さんの司会進行がお見事。同僚とは言え入団後の経過年数や年齢も様々なダンサーを相手に
時には学校の進路相談中の先生と生徒或いは上司と新入社員との定期面談と化してしまうのもご愛嬌、
緊張気味であれば話をゆっくり引き出してあげたり、さりげなく褒め言葉をかけて自信を持たせたり
女性ダンサーとのレオタードや化粧品の話題においてもしっかり会話もこなされていて
臨機応変柔軟に対応なさり、絶え間なく到着する質問やコメントにも目を通しながら拾うタイミングの見計らいも万全で
毎回心和む笑いと楽しい時間を届けてくださっています。
またメディアへの登場が殆んどない普段コール・ドを踊るダンサーにも焦点が当たり、話を聞ける機会に繋がったのは嬉しいこと。
テレビ番組においてもこういったゲストを招いてのトーク番組、コーナーは多々あり
時間のあるときは欠かさず見ていた昼番組に重ね、「福岡雄大のごきげんよう」(敬称略)や「新国でいいとも!インスタショッキング」など
勝手に名付けては福岡さんが小堺一機さんやタモリさんに見えて1人笑って楽しんでおりましたが
どうやらバレエ団公式SNSにおいても『雄大の部屋』が定着したもようです。
確かにスタジオではなく実際の福岡さんのご自宅のお部屋からの配信ですので、本家『徹子の部屋』よりも現実味ある名称かもしれません。

休日は極力、平日も在宅時には視聴しており2回目から見ており特に印象深く残っている内容をいくつか挙げますと
木下さんのヨーロッパでの豊富な舞台経験話や双子のお嬢さんも登場し前に抱え背中に乗られて素敵なお父さんぶり、
稲村さんのお辛い出来事も多々あったのであろうと見受けながらもクールに発言なさっていた「何やかんや」に
フェスにも行くほど日本のロックバンドがお好きでレッスンでのTシャツがバンド系ばかりといった趣味のお話や
説明が非常に明確で論理的な中家さんによるサプリメントとバレエダンサー特有の偏った身体をメンテナンスする大切さについて語っている最中に愛猫が目の前を通過。
今村さんの、2009年モスクワのボリショイ劇場公演『椿姫』に備えて現地の舞台条件に慣れるためスタジオが傾斜状態になっていながら
同年12月初演の牧阿佐美さん版『くるみ割り人形』衣装試着と回転までさせられたなど牧先生の大胆な指示が窺えるお話にも笑ってしまい
怪我のため研修所修了公演にて『ドン・キホーテ』第2ヴァリエーションが踊れず悔しさが残っていたが昨年のバレエ・アステラスで悲願の披露が叶ったと
福岡さんからも感動秘話と何度も言われていた廣川さんのエピソードや、イーグリング版『くるみ割り人形』花のワルツの男性コール・ドの難しさと
回数をこなしていくうちに組みやすくなったとパートナーから褒められたときの喜びを語る太田さんのひたむき精神にも胸が熱くなりました。
本日の小野寺さんの前半はゲーム話一色。ドラゴンクエストに登場するのはピーチ姫と勘違いしていたほどゲーム音痴の管理人、理解できずも楽しい趣味話でした。
原田さんは印象深い作品として『ファスター』を挙げ、ビントレー作品初出演であったため難しいカウントも含め好きな作品と目をきらきらさせて熱弁。
実は研修所入所前の原田さんの舞台を名古屋で観ており、2007年のBALLET NEXT市川透さん版『ドン・キホーテ』森の女王を踊られ
今後が期待される若手とプログラムの紹介文の通り、初々しくも美しい妖精でした。

とても全ては書き切れませんが、そうでした福田紘也さん笑。眼鏡にスーツ姿で決めて登場し、カメラを高めに設置していたため尚且つ声も通り饒舌過ぎて
まるでインターホン越しの胡散臭い訪問販売営業(しかし思わずドアを開けてしまいそうだ)。内容が余り入ってこなかったのは言い訳になりますが
コメントに寄せられていた、道化とエスパーダが観たいとの要望を見て管理人ニンマリ。東京在住者では数少ないと思いますが紘也さんの両役、鑑賞しております。
道化は2018年徳島の清水洋子バレエスクール第20回公演『白鳥の湖』で登場した瞬間の印象、まあ大きい笑。
しかしおっとり味わい深さと懸命なお仕えぶりは外見バランスの違和感を超越。
ちなみに王子は福岡さん、今回の対談と異なりこの公演では紘也さんを大事にしていらっしゃいました笑。
エスパーダは2015年大阪にて、Kバレエスタジオ第30回記念コンサートでの全幕『ドン・キホーテ』。
従来のエスパーダの概念を覆し、登場するや否や流し目で観客を見渡す姿に黄色い歓声は無く場内を良い意味で不思議な笑いが包んでいたのは明らかで
ケイスタの上演史に残るキャラクターであったとのこと笑。思い出したが2015年はドン・キホーテ大当たり年で全国各地で鑑賞。
福岡、徳島、大阪、世田谷区、愛媛にて観る機会に恵まれましたが福岡県と世田谷区での山本さんの王道色男、徳島での福岡さんのキレキレ男に比較すると
紘也さんの流し目エスパーダは実に独特の趣きであったと回想いたします。

それから新国立劇場は画伯揃いなのか福岡さんの似顔絵を披露されたダンサーもいらっしゃり、廣川さんはipadで描いたと思われる優しいタッチの漫画風で
稲村さんは黒系のペン1色でギリシャ彫刻のような描画。紘也さんも渾身!?の1枚で黒ペンを用いて
斜め下に向けて画面を見ている視線を矢印付きで描き、服にはブランド名がカタカナで明記笑。

さて、今や黒柳徹子さん以上に司会進行で手腕を発揮されている福岡さんですが決してお話が頗るお上手なタイプでは決してなかったはず。
公の前で話をなさる姿を初めて拝見したのは2012年の朝日カルチャーセンターにおける講座で、新国立劇場バレエ団によるビントレー版『シルヴィア』前の時期で
守山実花先生との対談形式での開催でしたが、大阪ご出身とはいえ底抜けに明るそうでもなく所謂我々が想像する関西人とはやや違いそうな印象があり
話が続くのか、守山先生の助け舟によってどうにか1時間経過となる事態を友人らとも心配していたものです。
しかし開始すると福岡さん、一生懸命言葉を選びながらチューリッヒ時代での高所恐怖症には辛過ぎる高い位置で寝そべりや滑り降り体験や
ヴァルナのコンクール、新国立入団後のことをたっぷり語ってくださり
狙ったわけではなくてもふと出た一言がどれも面白く、和やかな笑いを度々起こしてくださいました。
その次が翌年チャコット新宿南口店で開催された新国立ダンサーイベント。2本の企画で1本が寺田亜沙子さんと堀口純さんによる公開バーレッスンで
もう1本が福岡さん、八幡さん、厚地さん、奥村さんが登場の男性ダンサーによるトーク。(容貌が同系統かはさておき4人は新国ジャニーズと呼ばれていた気が笑)
そのときには既にリーダー格な存在で頼もしくチームを引っ張り、奥村さんのはしゃぎっぷりが止まらなくなると調整役をこなしていらしたと記憶しております。
そして現在は外出自粛最中の救世主であり『雄大の部屋』の主。新国立入団前の舞台から拝見している者としては、振り返っていくと妙に感慨深い思いに駆られます。

ところで『雄大の部屋』ではライブトーク中に質問やコメントを送ることができ、皆さん素早く器用にこなしていらっしゃるもよう。
しかし質問コメント云々以前に管理人、インスタグラムの使い方を把握できておらず初視聴の際は何処を押せばライブ画面に遷移するかも分からずあたふた。
奥村さんの回は少し遅れての視聴となってしまいました。ライブ画面に遷移すると自身のハンドルネーム?と参加表明の文字が表示されびっくり。
服装髪型全て自由であった校風を活用せず高校時代に周囲から化石と呼ばれていたとは言え、
現在も尚流行文化の先端からいかに疎遠状態にあるか、思い知らされた次第です。
それにしても質問やコメントは皆さん短文でまとめ上げ絵文字も入ったりと色とりどり。
更には会話中の話題はみるみると変わりますから送信には素早さも求められ、私なんぞ眺めているだけで精一杯でございます。

しかし、昨日5月9日に限っては何か送ると心に決め(そこまで決心する必要もないとは思うが…)
恐る恐るされど即座に送信、アイコンと自身が送った文字がそのまま表示された画面を見ると1人感激していた
冗談抜きで誕生時テレビは存在したか、国道20号でアベベに声援を送っていたであろうと
1964年の東京五輪以前生まれとしばしば誤解されがちである流行の先端には程遠い管理人でございました。
そして外出自粛の状況下に連日楽しいひと時を届けてくださっている福岡さん、ご準備も大変かと存じますが毎回ありがとうございます。
また昨日は数ある中から我が駄文の質問を読み上げていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
久々に乙女になった(いや、なっていないか)昨日、今月分のエネルギーを使い果たしたと言っても過言ではありません。



本日、予定通りならば全日程通っての『ドン・キホーテ』千秋楽でした。
バレエ団の快挙とも言える、契約ダンサーのみで日替わりバジル6人
しかも誰1人似たり寄ったりではなく個性様々、このままスライドしての上演を切望いたします。
新国立巣篭もりドンキと先日紹介したヌレエフ版3幕抜粋含む映像を再度眺めながら気分だけでもバルセロナで乾杯。

2020年5月8日金曜日

【お茶の間旅行】高所好意症の始まりはシアトル

二転三転歳月20年超の時間を辿る内容でございます。お急ぎの方は次回をお待ちください。

ゴールデンウィークから連続して昨日今日と休暇の方もいらっしゃるかと存じます。
例年この季節といえば賑わう観光地や混雑する新幹線発着駅、高速道路の渋滞といった報道が連日なされていますが今年は例外。
随分と前から旅行を計画しながら泣く泣く断念された方や帰省を諦めた方も少なくはないはずです。
自身を振り返ると生まれも育ちも東京で帰省とは無縁なまま現在に至り、ゴールデンウィークだから旅行へ出かける流れにはなったこともございませんが
バレエの用事があれば他の時期と同様出向いたことは何度かあり。前回に触れましたが昨年は初台シンデレラ、大阪、また戻って初台
4年前は初台ドン・キホーテ(もうじき配信されます)、西宮市での発表会、また戻って初台でしたが但しこのときのドン・キホーテは4回観ようと思えば行けたものの
大事を取って夜行バスで朝東京到着した当日は鑑賞せず、計3回鑑賞。昨年のシンデレラは同じ条件で帰京いたしましたがそのまま自宅にて数時間休息後初台へ。
2016年と2019年の間の何処かで鑑賞体制に大幅変更が生じ、比較にならぬほど初台への執念が強まってしまったがためでございます。

旅と言えば、今年に入ってからは1月以降はご無沙汰しておりますが、前ブログのアンデオールバレエ日和でも綴っている通り
バレエ鑑賞を伴う旅が多いのが当ブログの特徴で鑑賞、お酒、旅、主にこれらの要素によって成り立っております。
そして思い起こしていくと、家族旅行や修学旅行林間学校を除いてバレエを伴わない旅は殆んどしないまま気づけば2020年。
バレエのおかげで全国津々浦々へ、回数こそ少ないものの時には旅券が必要な場所へも出向く機会に恵まれたのは幸運に尽きる思いでおります。
時期によっては毎週のように大阪訪問、或いは毎週全国各地探訪時には帰京後朝風呂済ませてそのまま劇場へ向かう
西村京太郎トラベルミステリー並みの行程と自負していたこともございました。
しかし親類縁者一族の中では国内中心の我が移動範囲は狭いほうで、野生の象やキリン、かばさんが見たいからと新婚旅行でケニアへ行った両親や
草原でお馬さんに乗りたいからとモンゴルへ、オーロラを見たいからとアラスカへ1人で行った妹
(バレエ好きなオタク姉の血筋なのかオーロラを眺めながら眠れる森の美女結婚式のグラン・パ・ド・ドゥコーダ部分を歌っていたとか笑)
何の取材であったかは目的は未だ不明だがアフガニスタンに滞在していた亡き父やオーストラリアに留学していた叔母に
ヨーロッパ各地で過酷過ぎない登山を満喫する大叔母など強者揃いな一族なのです。

さて外出自粛が続く現在、先日ある歌番組で森進一さんの『襟裳岬』や細川たかしさんの『北酒場』など
管理人好みの旅情気分に浸れる曲特集が組まれ、束の間のお茶の間国内旅行を堪能できましたので
当ブログにおきましても真似事を行いたいと思います。管理人の人生においては稀少である、バレエを伴わない且つ旅券が必要な地域へ出向いた際の出来事です。

遡ること22年前の1998年、夏の全国高校野球甲子園大会にて横浜高校の松坂大輔選手が一世を風靡した時期の話でございます。
管理人、バレエ鑑賞でもなく家族旅行や修学旅行でもなく米国のシアトルに行く機会がありました。
当時はスターバックスコーヒー日本上陸2年後でイチローさんのマリナーズ入団前の頃、
周囲にシアトルの名前を出しても場所説明が欠かせず、また位置する州がワシントンであると話せば首都のワシントンD.C.と勘違いされ
大都市ではあってもニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコに比較すると随分と知名度は低かった覚えがあります。
バレエにおいてはシアトルに本拠地を置くパシフィック・ノースウェストバレエがあり、中村かおりさんが入団されて1年弱が経過した頃。
中村さんと言えば渡部美咲さんと並んで山本禮子バレエ団の2枚看板と80年代後半の雑誌『バレエの本』で度々目にしておりましたから
(恐らくはローザンヌにて先に中村さんが、あとから渡部さんが入賞なさったぐらいの時期)
シアトル訪問時には中村さんのお姿が目に浮かんだものの当時周囲にはバレエについて熱く語り合える友人もおらず話題にもできずでございました。

滞在していたのはワシントン州沿岸地域の郊外でシアトルを訪れたのは2回でしたが、中でも特に面白い体験であったのが高所自転車。
シアトルパシフィックサイエンスセンターのアトラクションの1つでおよそ5mの高さ、
重りが吊るされた自転車に乗って円形に沿ってゆっくり漕いでいくものです。2階建ての家の屋根の上から自転車に乗る様子をご想像ください。
恐怖感は無く、ペダルは重たいものの空中遊泳な気分ですが映画E.T.の最後のように軽やかには漕げません笑。
またベルトで腰部分を固定はしておりますが油断すれば体勢が崩れて宙吊り状態にもなりかねず、気を張っておかねばならず体幹の大切さも身に沁みて感じた次第。
バレエは勿論、自転車乗車時と格好は似ているであろう乗馬の愛好者のバランス感覚や体幹の強さにはたまげるしかなく
幼い頃からバレエと乗馬両方に取り組んでいた歌手の華原朋美さんは只者ではなかったと高所自転車の上で考えたものです。
余談ですが、華原さんはこの前年にはなぜか自宅から徒歩10分程度の場所にプロモーションビデオの撮影いらしていて
小室哲哉さんプロデュースのもとデビュー時から立て続けにミリオンセラーを記録していた人気歌手が海外の絶景やお洒落なスタジオでもなく
なぜごくごく普通の住宅街近くの桜景色をお選びになったのか。ボリショイとパリ・オペラ座の異色ペアであったアナニアシヴィリとベラルビによる
モスクワの赤の広場ガラでの大トリ『ドン・キホーテ』実現の映像初鑑賞と同様、23年経った現在も謎でございます。
ちなみに華原さんはダンスマガジン2008年1月号のインタビュー「ダンスと私」にご登場。
バレエを習っていて良かったこと、ミュージカルへの挑戦について語っていらっしゃいます。

そんなわけで、どうやらシアトルへ行ったこの頃から私は高所好意症に拍車がかかり、展望台だけでは欲求を満たせず
以降バレエを伴う旅ではモスクワの雀が丘や天橋立、札幌の大倉山ジャンプ競技場のリフトや、大阪梅田のHEP FIVEや道頓堀のドン・キホーテ観覧車
徳島の眉山や函館のケーブルカー、兵庫の天空の城と呼ばれる竹田城や愛媛の別子銅山など行く先々で高所を楽しむようになりました。

話が二転三転長い年月に跨る内容となってしまい失礼。次回は高所恐怖症の話から派生するバレエ内容の予定でおります。



高所旅行地シリーズ写真として色々掲載しようかと考えましたが取り急ぎシアトルパシフィックサイエンスセンターの高所自転車を楽しむ22年前の管理人。
ベルトは巻いておりますが他は露わな状態です。日本でうっかり購入してしまったPUFFYのTシャツ、国内では恥ずかしく、米国にてようやく着用。

2020年5月3日日曜日

長年の謎・赤の広場でアナニアシヴィリとベラルビが組んだ理由/愛弟子が踊るヌレエフ版『ドン・キホーテ』3幕抜粋で乾杯

晴天が続くゴールデンウィーク、皆様いかがお過ごしでしょうか。
昨年を振り返れば初台『シンデレラ』初日鑑賞後東海道新幹線で大阪入りして地下鉄中央線深江橋駅の魚と日本酒が美味しい「和たなべ屋」にて1人打ち上げ
(店名と同じ名字で方の入るナベの字の店主に管理人、チラシ見せて強調宣伝笑。店主より、シュッとしたええ顔立ちや男前やとお褒めいただき満悦)
翌日同じ沿線の地域にて年間1回の貴重な有酸素運動を無事終えて当日出発の夜行バスで帰京し家で4時間休息後また初台『シンデレラ』、と
バレエと移動三昧が幻であったかのように今年は自宅で粛々と連休を過ごしております。
ただ仕事内容の都合上自宅勤務が不可能なため出勤は緊急事態宣言発令以前と変わらず、平日週1回は自宅待機日が割り振られた以外は暦通り。
極端な運動不足や曜日感覚の狂いとは無縁ながら、危険と言われつつも何処でもドアが開発されない限り避けては通れぬ電車通勤では
乗客同士立ち座り問わず自発的に距離間隔維持に努めており引き続き気をつけながら過ごして参りたいと思っております。

さて本題バレエの話に移ります。前々回マクシモワの記事で触れました、1992年の赤の広場野外ガラ・コンサート映像の紹介です。
そもそも最大の目当てはニーナ・アナニアシヴィリで、この映像収録のレーザーディスクを入手した23年前当時はまだポケットベル流通の時代であり
(所有はしておりませんでしたが)インターネットも使いこなせず動画サイトも存在せず映像の市販も少なく
アナニアシヴィリ収録映像は辛うじて揃っていたほうで、日本で開催されたデビュー10周年ガラ、ペルミ・バレエ客演の『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』
そしてエッセンシャル・バレエぐらいであったかと記憶しております。いずれも収録は1990年代初頭の頃です。
当初はペルミ・バレエ『ドン・キホーテ』を検討いたしましたがキーロフ・バレエの英国ロイヤル・オペラハウス公演も収録され(故ダイアナ元妃のお姿も)
赤の広場のほうにはマクシモワ、プリセツカヤも出演者に名を連ねていたため
旧ソ連含むロシアバレエに注目してきた我が好みに合致すると思いエッセンシャルに決めたのでした。

さて男性ダンサー出演者に関しては気を留めずでしたのでガラの大トリ、アナニアシヴィリの『ドン・キホーテ』出番となってびっくり、
バジル役のパートナーは冒頭の『眠れる森の美女』と同じくアレクセイ・ファジェーチェフかと思いきや、パリ・オペラ座(当時)のカデル・ベラルビだったのです。
その映像がこちらでございます。





当時から現在に至る疑問が、アナニアシヴィリとベラルビが最初から組む予定であったのか。
ソ連崩壊前、恐らくは英国ロイヤル移籍直前のイレク・ムハメドフがパリ・オペラ座ヌレエフ版『眠れる森の美女』に客演し
エリザベット・プラテルと共演を果たした写真記事は読んでおり西側東側の往来、ボリショイとパリ・オペラ座の交流が極めて珍しいことでは無かったとは思うものの
野外ガラ冒頭の『眠れる森の美女』ではアナニアシヴィリとファジェーチェフと組んで長年のボリショイ看板ペアとして登場していましたし
何しろソ連崩壊後間もないモスクワの赤の広場、言わば国を象徴する場所での初の野外ガラ・コンサートでの大トリ
しかもマクシモワやプリセツカヤ、ワシリエフやルジマトフ(十八番の海賊を披露)といった
バレエ史に名を刻むロシアのバレエ団のスターたちの後に出演するわけですから、今思い返しても不思議でございます。
またベラルビは『ドン・キホーテ』数作品前にはパリ・オペラ座のカロル・アルボと組んで『ジゼル』2幕パ・ド・ドゥを披露していて
余程の事情が無い限り2作品への出演、ましてや地元ボリショイの大スターアナニアシヴィリと組んで
初演がボリショイ劇場である演目を踊る大トリを務めるなんぞ考えにくい。お2人の共通点は強いて言うなら
アナニアシヴィリはジョージア出身でベラルビは確かトルコ系で、ルーツが近いぐらいかと思います。
実は解説書には『ドン・キホーテ』の欄にベラルビではなくファジェーチェフの名前が記され、執筆者の誤記か定かではありませんが
当初からベラルビで決定だったかそれとも何らかの事情で変更になったのか、未だ謎に包まれたままです。

初めて映像を鑑賞したときから抱いた印象としてベラルビさん、結婚式のバジルはともかく
仮に全幕上演であったとして、1、2幕の床屋バジルが全く想像できずであったこと。
とにもかくにも色男過ぎましていかにも庶民なる床屋さんにはならず、下町からは妙に浮き立ったお洒落なサロンを開業していると勝手に妄想。
鋏や剃刀の手捌きにいちいち色っぽさが宿り、客も落ち着かないであろうと要らぬ心配をしてしまうほどでした。
ましてや狂言自殺場面における、アザラシ或いはアシカ、オットセイの如く身体を起き上がらせて笑いを誘う箇所も
周りの人々、特に女性陣はうっとりするあまり見守るどころではない事態となるでしょう。
また収録の1992年当時バジルの経験があったかは分かりかねますが、(エスパーダは1989年のダンスマガジンで確認済)
もし経験済みであったとしてもパリ・オペラ座はヌレエフ版を採用していますからグラン・パ・ド・ドゥの振付もだいぶ異なりますし、
この映像を観ても明らかにボリショイスタイルには馴染んでいるとは言い難くいたくエレガント(褒め言葉)。
ロシアらしい黒で整えられたバジルの衣装を着用したベラルビの姿は貴重かもしれません。

続きまして、本日ばかりは言いたい放題をお許しください。
さてボリショイとパリ・オペラ座の異色スターペアによるモスクワ赤の広場ガラの大トリ『ドン・キホーテ』披露から28年、
映像の初鑑賞から23年の年月が過ぎた2020年。管理人、ゴールデンウィーク含む5月初旬は旅券持たず電車1本で6回バルセロナへ行く予定でございました。
ベラルビの愛弟子が日本での全幕バジルデビューを飾る予定であった本日5月3日は大本命の1日となるはずで
昨夏のバレエ・アステラスでのグラン・パ・ド・ドゥ鑑賞以来心待ちにしていた日でしたから嗚呼無念。
師匠と違い、1幕から素朴で慎ましい床屋さんがたいそう似合いそうで客に対し、来店時と退店時には両手をぴたりと腿に付けて深々とお辞儀して出迎え見送る
礼儀正し過ぎる接客が容易に想像できます。キトリの父ロレンツォに結婚の許し懇願の際は立て膝ではなく
正座をして額と両手両膝床につけて頭を下げ続けていそうですが(向田邦子ドラマの寺内貫太郎一家のよう…笑)
しかし弾けるときはとことんお調子者になると思われ対比も楽しみでしたし
バレエですから出現するわけはないものの、赤青白の三色サインポールが自然と見えてきそうです笑。
全幕バジルならばぴっちり七三分けでも床屋さんですから髪型観察では丸印を掲げよう、エスパーダ登板もあったならば
昨年バレエ場面にて披露された藤原歌劇団『椿姫』でのオールバックにシニヨンで纏め、揉み上げの長い視線ギラギラな古風なる闘牛士復活なるかと
そんなこんな勝手な楽しい妄想を繰り返してきただけに、今回登板予定であった
新国立劇場バレエ団史上最多の男性主役自前で6人抜擢の日替わりバジルはこのまま変えず、いつの日かの上演を心待ちにしております。

長くなりましたが、本日はトゥールーズ時代にヌレエフ版『ドン・キホーテ』3幕を踊られたときの渡邊さんの映像を眺めながら
『白鳥の湖』オディール/ジークフリート/ロットバルトのパ・ド・トロワにも注目しつつスペインワインを程々に飲み干したいと考えております。
ヌレエフを讃える公演だったようで他に『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥ、『ラ・バヤデール』影の王国、
『ロミオとジュリエット』パ・ド・ドゥも含まれたダイジェスト映像です。
流れている音楽はバヤデールの影の王国コーダ部分ですが、トゥールーズには映像編集の名手が存在するのかどの配信映像においても
違う作品或いは同じ作品中の違う箇所であっても音楽が違和感なく嵌っていて見事な構成でございます。バジル、衣装がまた色鮮やかでお洒落!


2020年5月1日金曜日

上野の森バレエホリデイ@home




先月末より数日間、上野の森バレエホリデイ@homeを視聴いたしました。
大変嬉しいことに、一部の動画の配信が延長されています。
https://balletholiday.com/2020/news/home-3.html

完全網羅はとても困難なほど充実したプログラムでしたので、視聴できた公演映像や対談の感想を順不同で簡単に紹介して参ります。


◆井上バレエ団『ゆきひめ』 小泉八雲『雪女』を下敷きに杉昌郎さんと関直人さんが振り付けバレエ化。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』を使用しているとのこと。
和製『ジゼル』といった趣きで、青白い照明に包まれ整然と並んだ女性たちが一斉にふわっと薄く白いヴェールを靡かせる光景が
一瞬海月の揺らめく美しさを思わせたのも束の間。冷たさを帯びた幻想性に触れ、体感温度が低下に違いないであろう不気味さも十分。
ゆきひめ役の田中りなさんがほのかな可愛らしさを残しつつおどろおどろしい様相で迫ってくる踊りに震え上がり
小刻みな脚運びがワーグナーの音楽の弦の音色と溶け合って共鳴し、肝試し以上に恐ろしや。夏に生で観てみたい作品です。

関直人さんと言えば井上バレエ団の芸術監督、振付家として長らく活躍されていたことは存じ上げておりますが
お名前を目にしてすぐさま思い浮かぶのは貝谷八百子さんの展示会にて読んだ1948年頃の白鳥の湖公演の新聞記事だったか
その2年前に白鳥の湖(恐らく初演)を観てすっかりバレエに魅せられ上京して小牧さんの門を叩き、2年後には王子に抜擢と紹介されていたプロフィール。
当時バレエダンサーを志す男性は非常に少なかった事情があるとはいえ、2年で主役を射止めるとはと驚いたものです。
そして旧漢字が並んでおり関の字は門構えに糸のような字が2つ入り、その頃は出身学校の掲載が当たり前だったようで白河中學と記され
近年では國學院以外にはなかなかお目にかからぬ學の字に一種の懐かしさが混在する興奮を覚えた次第。
インターネット全盛時代に70年も前の記事を回想するのはさておき『ゆきひめ』は2018年に大和シティバレエの公演にて
小野絢子さんと福岡雄大さんを主演に迎えて上演されました。写真のみでも冷ややかな空気感が伝わります。
https://www.dance-square.jp/smy2.html


◆東京シティ・バレエ団「L' Heure Bleue」
ブベニチェクの振付で、バッハとボッケリーニの聴き馴染みある音楽に乗せて貴族風の装いをした人々が
お洒落にされど時折くすっと笑いが零れるお茶目な面を覗かせ、音楽と一体化した滑らかさにもうっとり。
照明の柔らかな色彩感にも目が行き、生で確かめたい作品の1本です。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000198.html


◆上野水香さんと高田茜さんの対談
お2人ともおっとりした口調ながら本音をズバズバと零していた会話が面白く、トゥ・シューズは見た目は皆同じにも拘らず履くと全然違い選ぶ作業は毎回悩む、
一番しんどいパ・ド・ドゥは『くるみ割り人形』で長いアダージオに金平糖は長いヴァリエーション。王子はなぜ短いのか、そしてお辞儀は長めにして欲しいなど
日頃の鬱憤!?をあれこれ口になさっていて引き出せばまだまだ噴水の如く溢れ出すに違いないと想像。


◆上野水香さんと小野絢子さんの対談
振付家との出会いの大切さをお2人とも熱弁。上野さんはローラン・プティ、小野さんはデヴィッド・ビントレー。
2001年の『デューク・エリントン・バレエ』にて初めて上野さんを鑑賞したとき
新聞や雑誌を開いて目に飛び込んできた以上に細身で脚がすらりと長いスタイルに仰天したのは現在も覚えております。
小野さんはご自宅らしき場所よりカジュアルな装いでリモート出演に対し上野さんは東京バレエ団スタジオのロビーと思わしき瀟洒なお部屋から。


◆岡崎準也さんによる家でおどろう
岡崎さんの説明が分かりやすく、声のトーンや話す速度など耳に入りやすく感じました。
管理人はこのときも勿論鑑賞専門でしたが(家で動き回ると音だけならともかく踊れば床に間違いなく穴が空き、階下の住人大迷惑は事態は目に見えている笑)
ダンス初心者でも気持ちよく汗ばんで楽しめそうな振付であった印象です。


これ以外にも視聴いたしましたがひとまずここまで。延長配信を引き続き満喫したいと思っております。
予定では例年通り上野の東京文化会館の屋内外でバレエ上演、マルシェ、物作り、限定飲食物に至るまで
多種のプログラムや出店を企画されていたはずが、縮小開催を試みたのも束の間。緊急事態宣言発令に伴い急遽全オンライン配信に変更を決断。
時間がない中、実行委員会の方々はそれこそ睡眠時間を削りながら国内外のダンサーへのインタビュー対応や各バレエ団への映像提供の募り、
SNSを通しての告知や更新に至るまで膨大な作業に追われていたと察します。
開催予定であった日は晴天の行楽日和でありながら悔しがる暇もなく、視聴者がバレエの世界に没頭できるよう
心を砕きながらギリギリまで準備を進めていてくださっていたに違いありません。
結果として、上野の森での開催は中止になってしまっても自宅にいながら鑑賞実践問わず1日中何かしらバレエを満喫できる時間となりました。
まさか全プログラム配信によるバレエホリデイでこうも楽しめるとは、実行委員会及び関係者の皆様に敬意を表します。
本当にありがとうございました。次回こそはまた例年通り上野の森での開催を心待ちにしております。


ご参考までに、一昨年2018年の上野の森バレエホリデイの様子。晴天に恵まれ、新緑がそよぐ中で堪能いたしました。
バレエキャラクターみくじもあり、予想外のジゼルに管理人ニンマリ。但し心臓よりも肝臓を労わらねば。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/2018-14d3.html