2024年6月17日月曜日

【速報でもないが】【おすすめ】新国立劇場バレエ団  デヴィッド・ビントレー振付『アラジン』前半日程2024





新国立劇場バレエ団デヴィッド・ビントレー振付『アラジン』前半日程を4回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/aladdin/


告知映像。2019年公演より。奥村さんアラジン、米沢さんプリンセス、渡邊さんジーン。



初日の様子。カーテンコールにビントレーさんも登場!



ジーン達のリハーサル。三者三様です。



バレエチャンネルさんによる動画




バレエチャンネルさんによる福田圭吾さんロングインタビュー。これまでのキャリアから18年同じバレエ団にて活動できた理由や今後の夢等ボリュームたっぷりな内容です。



まだ後半日程がありますのでここではさらっと程度の感想にとどめ、詳細は全日程終えてから載せて参る予定でおります。
初日は福岡雄大さん小野絢子さん組。福岡さんアラジンは憎めないやんちゃ坊主で
ここぞという見せ場での作り方、アクセントの付け方も巧みに見せ、年々若返るお化けな身体能力にまたもや脱帽です。
小野絢子さんは芳しく知的なプリンセスで音楽と繊細に戯れる優美さとマグリブ人誘惑でのダークなお色気戦術もうう鳥肌もの。
トリッキーで角度の付け方やバランスも非常に難しいパ・ド・ドゥを何とも音楽を共に奏でるように紡ぐ鉄壁超越なパートナーシップはこの2人ならではでしょう。
アラジン初挑戦の速水渉悟さんは笑い上戸な能天気アラジンで、ママ大好きな甘えん坊少年。駆け回る姿を始め、とても似合っています。
益田裕子さん母と楽しい親子ぶりで、益田さん母が現れると途端に目がキラリとして「ママー」との吹き出しが見えたほど笑。
柴山紗帆さんは淑やかゆかしいプリンセスでアラジンにそっと心を開いて行く様子がいじらしい。マグリブ人誘惑は笑み迄湛え大胆に変化していました。
バヤデールのときは冷や冷やが尽きなかったパ・ド・ドゥも破綻なく、ひとまず無事終了。

奥村康祐さんアラジンは可愛さが倍増で悪戯するときのはしゃぎっぷりも子供らしい無邪気さ。
宝石場面の仕草が細かく、エメラルドの手のポーズの真似やダイヤモンドお付き達が次々と登場し
目の前を通過していく光景に興奮して数えたり、両腕を大きく掲げたりと反応が多彩でした。
米沢唯さんはしっとり上品で輿に乗る直前にアラジンを再度見つめて笑みを送っていた表情が実に愛らしいプリンセス。
奥村アラジンとは優しさがほわっと広がるパ・ド・ドゥを披露され、心安らぐ気分で幸せに。
しかし3幕前に米沢さんが体調不良のため3幕は降板。約30分遅れて開演して3幕は福岡さん小野さん組が代役を務めました。
眠りやドンキとは全然違った独創的なパ・ド・ドゥが3幕にもあり、ペアごと交代でないと対応不可能であったのでしょう。
緊急事態でしたが福岡さんと小野さんは全く動じず、幕が開くと1幕2幕で踊っていたかのように
新婚生活を謳歌しチェスで遊ぶアラジンとプリンセスとして登場され、大きくあたたかな拍手が沸き起こりました。
2年前の『シンデレラ』最終日に奥村さんが2幕で怪我をされ、3幕からは井澤さんが代役を務められたときも登場時には大きな拍手で迎えられたことも思い出します。
カーテンコールでは緞帳前に奥村さんも登場され、大喝采。そして奥村さんが福岡さん小野さんを呼び込んで3人で手を繋いでの特別挨拶が心に沁み入りました。
突如の事態に最も苦しい思いをなさっていたのは米沢さんご自身でしょう。どうか回復を願っております。
勿論無理はして欲しくありませんが、次の土曜日公演は出演できますように。

今回の公演をもって退団される福田圭吾さんアラジンは(ラスト公演は6月22日土曜日夜公演)市場の後方から現れる一見見えづらい登場シーンであっても
屋台を覗く仕草や友人への挨拶、隙を突いて泥棒行為に走る部分始め行動全てがはっきりと見え、友人達と輪になっての水平跳びも形がぴったり。
池田理沙子さんはちょこっとクールで近づき難いお姫様が少しずつ心を開いて行く様子が愛らしい。
2幕パ・ド・ドゥはアラジンとプリンセスこれまで全く異なる人生を歩んできた過程をゆっくり振り返りつつ
気持ちの昂りが一気に突き上げていく流れを大らかに表現され、いよいよ福田さんのラスト公演が迫っていると思うと22日夜は冷静に観ていられるか心配な管理人でございます。

ランプの精ジーンも三者三様で渡邊さんは力み無く何処へでもふわりと舞う妖精らしい浮遊感に、主人に仕える忠臣ぶりに加えて上に立つ支配者らしい威厳も強まり
大看板であり誰も太刀打ちできそうにない福岡さん小野さんペアをがっちり支えて導く風格や存在感も見どころ。
初役木下嘉人さんは俊敏に跳ね回って舞台引き締め、井澤さんは大魔神な圧のある重厚感と以前よりキレキレ感も増した印象。3人見事なまでに全く異なるジーンです。

アラジンが辿り着いた洞窟の宝石達の場面は目にも眩く独特な質感の衣装もじっくり観察。
直塚美穂さん渡邊峻郁さんが振り幅拡張型セクシー変わり種路線燃ゆる灼熱ルビーで
直塚さんの身体能力や技巧の上手さが存分に発揮されている上に、盤石に受け止め更に背中のうねりや雄弁な腕運びによる
ダイナミックなサポートで規格外なポーズを構築していく渡邊さんも見事というほかありません。
一方奥田花純さんと渡邊拓朗さん組のルビーは真っ直ぐ力強く美しく、整理整頓され敷き詰められたような宝石。
男性のお顔はそっくりながら笑、昼夜での見比べが非常に面白く思えた先日の土曜日です。
男性のおでこの装飾模様は彎曲系と直線系と2種あるのか、それぞれ違っていました。
全身が磨き抜かれた精巧な輝きを纏うダイヤモンドそのものな奥田花純さんはまさに宝石職人で、構造が複雑なステップもくっきり正確。
エメラルド小川尚宏さんの上半身が蛇化したように語る柔軟性もびっくり。初役者の鮮烈な発見の連続です。
思えば2022年には吉田都セレクションで演目変更生じてこの財宝の洞窟場面を抜粋上演するはずが中止に。
2012年の記念すべき第一回NHKバレエの饗宴ではトップバッターとしてこの場面が上演された日が懐かしい。

またカール・デイヴィスの音楽が時に東洋の趣を帯びた美しい旋律に彩られて聴き惚れ、
遥か彼方へと導かれていきそうな壮大な序曲から管理人は毎回胸が一杯になっております。
一部勝手に空耳アワーいたしますが、プリンセスのテーマ曲でアラジンが1幕最後にまた会いに行くぞと決心するところを始め随所で演奏される旋律が
1990年7月25日に発売されたKANさんの『愛は勝つ』の必ず最後に愛は勝つ〜に似ている気がいたします。
もう一つ、1幕ルビーの最初部分が、合唱コンクールで馴染み深い『時の旅人』冒頭のめぐるめぐる風〜の箇所と重なって聴こえます。

気のせいとの指摘は見えておりますためそれはさておき今後の再演時に劇場側にお願いしたい要望もあり、アラジン親子の格好や
所々中国の文化が取り入れられている理由についてはプログラムに明記願いたい。
幕が開くと街はアラビアな風景ながらアラジンと母親は中華帽に中華服な格好で登場し、結婚のお祝い事では獅子舞、3幕フィナーレでは龍の舞が披露され
当たり前ですがホワイエの会話でもあちこちから聞こえてきました、何で中国やねん。
決してビントレーさんが適当にアジアンミックスしたわけではなく、初演のプログラムによれば〈アラビアンナイトの原作では、
アラジンは「中国の町」に暮らす中国人の少年なのである〉
〈ディズニー映画『アラジン』が公開されるまで、イギリスの子どもたちは中国風の格好をしたアラジンに親しんできた〉と紹介されています。
そして他のビントレーさんのインタビューにて、日本ではアラジンといえばアラビアンナイトだから、
アラジン親子はアラビアの街に移住した華僑に設定したと明かしていらしたかと記憶しております。
様々な地域の文化が混在した演出にはなっているものの、露骨で恐ろしく問題ありな描写は概ね見当たらず
同じくビントレーさんの振付全幕作品で2011年に新国立で上演した『パゴダの王子』の4地域の王様達の描写
(21世紀に制作した作品としては問題視を避けられない衣装や設定と思います汗)とは違って許容範囲かとは思っております。

『アラジン』に話を戻します。大掛かりな仕掛けや美術装置、やんちゃな少年アラジンが誰かの助けを借りつつも困難を乗り越えプリンセスと結ばれるまでを
楽しくユーモアに富んだ展開で進行していきます。新国立劇場バレエ団のために振り付けられた世界初演は2008年。
直前にリーマンショックが襲い、当時の総理大臣が突然辞任したりと明るくはない報道が立て続けに発生していた頃で
当時の牧阿佐美芸術監督も世相を憂慮する挨拶文を初演のプログラムに寄せていらっしゃいました。
演出に突っ込みどころが全くないわけではありませんが、開放感のあるハッピーエンドな大団円で爽快な気分で劇場をあとにできる作品です。
どうぞ劇場に足をお運びください。

6月22日(土)夜公演は18年間在籍されていた大功労者の福田圭吾さんのラスト公演。
5年前に主役デビューなさった作品でのさよなら公演、寂しいですしまだまだ在籍して欲しい気持ちは拭えませんが、しっかり見届けます。
福田アラジンにお仕えするのは渡邊ジーン。私にとっても、間違いなく特別な舞台になりそうです。



※一部写真を載せて参ります。続きはまた後日、東京公演総括編にて。


初日の儀



空もジーンもブルー



アラジンのポケットサンド。挟まっているのは宝石ではなくヒレカツです。羽田空港にも限定模様のサンド、ありました!



美しい青。チャイナブルーカクテルで乾杯!



いざ劇場へ。ジーンの指先そして強い視線がオペラパレス入口に向いています!

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