2022年11月16日水曜日

調教はやんわり全体を洒脱に モンテカルロ・バレエ団『じゃじゃ馬馴らし』 11月11日(金)





11月11日(金)、モンテカルロ・バレエ団『じゃじゃ馬馴らし』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/montecarlo/


※キャスト等はNBSホームページより
振付 : ジャン=クリストフ・マイヨー
振付アシスタント : ベルニス・コピエテルス
音楽 : ドミートリー・ショスタコーヴィチ
装置 : エルネスト・ピニョン=エルネスト
照明 : ドミニク・ドゥリヨ、マチュー・ステファニー
衣裳 : オーギュスタン・マイヨ―
衣裳アシスタント : ジャン=ミッシェル・レネ
台本 : ジャン・ルオー(ウィリアム・シェイクスピアに基づく)

キャタリーナ : エカテリーナ・ぺティナ
ペトル―チオ : マテイユ・ウルバン

ビアンカ : ルー・ベイン
ルーセンショー : レナート・ラドケ

女家庭教師 : 小池ミモザ グレミオ : ダニエレ・デルヴェッキオ

未亡人 : アナ・ブラックウェル
ホーテンショー : シモーネ・トリブナ

バプティスタ : クリスティアン・ツヴォルジヤンスキ
グルーミオ : アダム・リースト

メイド :
ガエル・リウ、リディア・ウェリントン、
アシュリー・クラウハウス、ハナ・ウィルコックス、
チェルシー・アドマイティス、テイシャ・バートン=ローリッジ、
ポーシャ・ソレイユ・アダムズ、ジュリエット・クライン

従者 :
アレシャンドレ・ジョアキム、クリスティアン・オリヴェリ、
アレッシオ・スコニャミリオ、ロジェ・ネヴェス、
アルチョム・マクサコフ、ジーノ・メルクス、
クリスティアン・アシス、フランチェスコ・レッシュ

4人の女性たち :
リディア・ウェリントン、ハナ・ウィルコックス、
チェルシー・アドマイティス、アシュリー・クラウハウス

2人の女性たち :  ハナ・ウィルコックス、アシュリー・クラウハウス
森 / 盗賊 :
アルチョム・マクサコフ、アレッシオ・スコニャミリオ、
ジーノ・メルクス、クリスティアン・オリヴェリ、
フランチェスコ・レッシュ、アレシャンドレ・ジョアキム


2016年にボリショイ・シネマで観て以来、生での鑑賞を願っていた作品。クリサノワ、ラントラートフ、スミルノワ、チュージン、チホミロワら
初演カンパニーとしてボリショイのオールスター軍団が織り成すパワフルなパフォーマンスも忘れ難いものでしたが
マイヨーの本家本元のダンサー達による舞台にもすっかり魅了された夜でした。
まず原作の内容からして男性が女性を思い通りに調教な要素が現代にそぐわないと不安を覚えるわけですが、実のところシネマ鑑賞時と同様そう気にならず。
調教部分は誇張せず、例えば2人でベッドに入りシーツに包まる場面も長過ぎない配慮がなされ、それよりもキャタリーナの誇り高く凛然とした踊りが場を沸かせ
ペトルーチオと共に張り合いながら2人で洒脱なダンスでぐいぐいと語っていくさまが痛快でした。
キャタリーナ役のペティナはツンと澄ました顔立ちがきりっと美しく、豪快に暴れ回る箇所であっても
長い四肢の隅々まで行き届いた踊りで空間を大きく操りぴたりとしたショートパンツやレオタード姿もしなやか。
光沢を帯びた深緑と同系色の透け素材を用いたドレス姿になったときのちょこっと恥ずかしそうな様子がまた愛くるしく
キャタリーナが持つ多面性を次々と身体で紡いでいっていた印象です。

対照的な人物として描かれるビアンカ役のベインは、ただおっとりおとなしい淑やかだけでないお茶目な女性で、求婚者達との駆け引きも慣れたもの。
上は白、下は青のドレス風衣装もお洒落な色彩でベインの柔らかくも安定軸な踊りと合わさって舞台全体に品とユーモアを振り撒いていました。
開演前から幕の前に登場し、靴履き替えのセクシーな面のみならず今回は時差退場協力願いのアナウンスと連動した頷きを見せていた
女家庭教師小池さんの振る舞いも、このご時世だからこそお目にかかれたお姿でしょう。

照明の当て方やシンプルながら形も色合いもお洒落にデザインされた装置も見所。大概の場面では装置転換も舞台上のダンサー達が行い
一連の流れの中で皆で主人公達の行く末を見守っている光景に見て取れました。
世界規模で名の知れたスターはいないかもしれませんが(私が無知な可能性も高いが)メイドや従者達の滞りなく続く群舞を観ても
とにかく全員の身体能力の高さ、音楽と戯れるように踊る姿にも引き込まれ、冗長な箇所が見当たらず。
そしてショスタコーヴィチ音楽の選曲の妙も挙げたい魅力。何処か風変わりで重厚、しかし舞台が重苦しくならぬ曲の数々にマイヨーのセンスが何度光って見えたことか。
どの場面も心擽り、様々な重低音や楽器が絡み交互に主旋律を奏でて行く『2人でお茶を』は
特に胸の奥にまでがすっと星屑が舞うような幸せが入り込んでくる心持ちとなり、足取り軽く会場をあとにいたしました。
ボリショイ・シネマで話題沸騰となった時期からだいぶ経ち、また今月末のスーパースターガラの方が注目を集めているのか平日とはいえ客入りは寂しかったものの
久々の来日公演における全幕上演や、何よりもお洒落な世界観を体感できた幸福がカーテンコールでの拍手に表れていたと思えます。


※ご参考までに。2016年のボリショイ・シネマ鑑賞時の感想です。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/in-bc3e.html




開演前、1人でお茶を。



終演後、1人でお酒を。


0 件のコメント: